リー群入門

松木敏彦

みんな大好き日評数学選書。リー環の話を読むつもりだったが、こっちからに
した。なんせ入門だもんな。

この本は、あまり親切でないです。いろいろと接続詞や修飾語を補ってやる必
要があります。プロの数学者は、この方が読み易いのかもしれないけど、素人
数学書読みにとっては、時々落ちます。

SO(3)の作用とΔは交換する(ΔLg=LgΔ)から SO(3)は、Δの核 Unに作用する、

と言われても、私にはさっぱりです。そりゃなんにでも作用するだろうさ。

X∈Unに対して、ΔX=0だから、
ΔLgX=LgΔX=0となるので、
X∈Unに対して、LgX∈Un である。(SO(3)の作用に対して、Unは閉じている)。

ということを指して「SO(3)が作用する」と言っている、と想像されます。

万事この調子です。でもまあ、線型代数の範囲でリー群を解説しようという試
みはそれなりにうまくいっていて、リー群が最近やっと判り始めた私にもわか
りそうです。手を動かせば結果が出てくる、というあたりが良い点でしょう。
既約ディンキン図がA〜E8までしかないことは、どのリー環の本にも載ってい
ますが、大抵その前後で疲れてしまって読み飛してしまっていました。今回は
早い時期に登場しますので、理解できました。なるほどー。拡大ディンキンの
意味ってそういうことなのね。

ちなみに、B型のディンキンチェンバーはルートで仕切られた空間になるが、A
型は、ルートの間に仕切りが来るはず。ということについて全然書いてなくて、
B型やD型の話しかしてないと勘違いしそう。

球関数とSO(3)、SU(2)の表現論については、(x,y,z)や、(x,y)の同時n次多項
式のx,y,zに対してSO(3)なり、SU(2)なりをApplyしたときの係数の変換が、既
約表現をなしている、という説明は、これまで物理屋の出してくる例たちより
具体的でおもしろかった。

SU(2)は、2x2の特殊ユニタリー行列のなす群なわけだけど、SU(2)の3次元表現
とか、1次元表現ってのはいったいなんなんだ。と思ったり、納得したりを繰
りかえしている。
g∈SU(2)から、GL(n,C)へのリー群としての準同型写像があって、それをn次元
表現と呼ぶわけだけど。そのへんがやっと判ってきたかなあ。

付録は全パス。