微分幾何

細野 忍

途中まで読んで積んどいてしまったので、これを機に読み終る。
記号などが物理で親しんだものなので、その点ではなじみがある。曲線と曲面
の微分幾何が、あくまでもタイトル通り、曲線と曲面に限定していたのに対し、
こっちは曲線と曲面から入りつつも一般の微分幾何をめざしている。

といいつつ、曲線と曲面以外の具体例はでてこないので、その点はちょっと残
念。第3部はホモロジー、コホモロジーを具体的に計算している。ガウスボン
ネの定理で、微分形式のコホモロジーが三角分割できる多様体のコホモロジー
と等しいことの証明を何ページもかけてやっていて、ちゃんと読むのも大変。

平行移動の説明の所で、球面上をベクトルを平行移動する計算と説明図がかか
れているのだが、結果の式に付いている、図の例が経度に沿う場合と、赤道に
沿う場合だけ載せているが、あまり意味がないように思う。赤道以外の緯線に
沿った場合移動ルートによって行き着くベクトルが異なるというのが重要だと
思うのだが。
曲線と曲面の微分幾何では、その点を説明するための例として、同じ問題をの
せている。(ちなみに、両者でθの取り方が異なるのは文化圏の違いなのか)。

曲線と曲面の微分幾何の微分形式θ^{i}は、なんだか得体が知れなくて不思議
な印象を受けたが、こちらの本では、e^{i}として書かれていて、ああ、
と、その筋の人ならわかりやすい。なるほど。

全般に具体計算でゴリゴリ押すという方針で、式を追うのは大変だけど、追え
ば見えてくる。記述は無駄があまりない。

物理屋の観点と数学屋の観点と差がみえておもしろかった。

物理屋のための、幾何学入門あたりを目指している分ちょっと欲張りで、コホ
モロジー、ホモロジー、リー群やリー環、までが守備範囲になっている。こ
のリー群、リー環の説明なんて、過去読んだリー群の説明の中でも最も判り易
いものであったが、微分幾何を読みたかった人にとってはちょっと外れた話と
受けとられるだろうな。