図解でわかる 多変量解析

涌井良幸, 涌井貞美

微妙にターゲット読者層の不明な本である。
日本実業出版社、図解でわかる、というあたりを見ると、経済系あたりがター
ゲットっぽいが、内容的にはわりとまじめに数学を書ことしている。
偏微分も行列も固有値も出てくる。

とすると、理系初学者向けかと思いきや、行列自体の説明があったり
偏微分の説明があったり、理系にはちとたるい。

まあ、でも、全般としては、理系初学者むけだな。

そんなに悪い本じゃない。多変量解析の重回帰分析、主成分分析、因子分析あ
たりを概観したければいいんではないかと思う。「統計学の基礎I 線型モデル
からの出発」が、S/N比が非常に高い圧縮された本だとすれば、こっちは、S/N
比かなり大の本となっている。

で、この本を読んで「因子分析」をはじめて勉強した。
  奥野「多変量解析法」ではずっと後に出てくるのでまだ読んでない。
  柳井、高根「多変量解析法」では、中ほどに出てくるが、この本は1章で投げた。
  竹村「統計学の基礎I」では、そもそも因子分析は出てこない。
ということで、この図解でもって、はじめて因子分析を勉強することとなった。

因子分析ってのがあること自体は、以前別の人と話をしていて登場して、なに
を言っているかわからなかった。

で、勉強したわけだけど、ピンと来ない。

観測される統計量をX, 因子をZとして、
X=AZ
と書きましょう、というのが、因子分析らしい。

主成分分析が本質的に、
Z=BX
でもって、Zが独立になるように分解しましょう、という方法だったので、
因子分析と主成分分析でなにが違うのか、ただの逆行列じゃないか、と思えて
しかたがない。

ZとA(B)が求めるべき量であるわけだから、因子分析では、
X=AOtOZ
と行列をはさむことができる。ま、直交でなくてもよいけど、直交だと、Zの
ノルムが保存してよいように思う。

これが、回転の自由度。

因子分析は、未知行列が両辺にあるので、
OZ=OBX
とも書ける。書けるけど、Bは固有値が大きい順に並べたという建前なので、
たぶんこの自由度はあまりない。

という理解でいいのだろうか。

そして、実にこの後一ヶ月にわたって因子分析とはなにかを悩み続けることになる
のであった。 

(2005/04/04)