量子可積分系入門

白石潤一

SG増刊で、目をつけていた本。というかムック的。
図書館にあってしまったので、買わない。

ラックス形式、カロジェロサザランド、なんて大学院時代に集中講義で聞いた
んだが覚えてない。集中講義というやつは、大体1日目の午後あたりでついて
いけなくなるのだ。で、二日目以降はつらい時間となってしまう。

さすがに、本として閉じているので、落ちはしない。
ただ、リュービウの意味での古典系の可積分性、「自由度と同じ数だけ保存量
があれば可積分である」について、証明もなにもないのは。
いやまあ、直感的には、自由度が保存量で書けちゃってるんだから、なんか解
けちゃってるんだろうけど、「積分」可能性とは結びつかない。

というか、この本では、「積分可能」、という題の文言について、ちっとも説
明してくれない。積分が可能とは、どういうことなのか。もちろん変数分離と
かして、形式的にも、解ける形になるかならないかということなんだろうけど
しっくりこない。

あと、やたら計算が多い。交換関係の計算なんて、見ただけではなかなか見切
れない。と言って、計算すれば出てくるんだろうから、手を動かすのも面倒。

ということで、計算は飛ばし飛ばしになってしまう。

とりあえず、カロジェロモーサー系、カロジェロサザランド系を思い出すこと
ができた。そして、ラックス形式、シューア多項式、ジャック多項式について
思い出したり新たに勉強したりすることができた。
この対称多項式の話は、ヤング図とのからみでもう少しあそんでみたいものだ。

マクドナルド多項式はあまり勉強した記憶がないので、3章はある意味たのし
みだったが。3章は結構難解。1,2とかなりスラスラ読めたのに。
シュア関数、ジャック関数が定義だけ言っておわりなのに、マクドナルド関数
だけ、詳しいので、最初どういう流れになっているのかついて行けなかった。

一応メモっておこう。
べき和対称関数
p_n=Σ_{i=1}x_i^n
モノミアル対称関数
m_λ=Σ_{α:λの異なる置換} x^α
z_{λ}=Π_{i>=1}i^{m_i}m_i!    (λ=(1^{m1}2^{m2}...)

において、シューア対称関数
s_λ=m_λ+Σ_{μ<λ} u_{μλ}m_{μ}   (モノミアル対称関数で展開できる)
内積<p_λ,p_μ>=δ_{μλ}z_λに対して、
<s_λ,s_μ>=0 if λ≠μ

ジャック対称関数
P_λ=m_λ+Σ_{μ<λ} u_{μλ}(β)m_{μ}
内積<p_λ,p_μ>=δ_{μλ}z_λβ^{-l(λ)}に対して、
<P_λ,P_μ>=0 if λ≠μ

マクドナルド対称関数
P_λ=m_λ+Σ_{μ<λ} u_{μλ}(q,t)m_{μ}
内積<p_λ,p_μ>=δ_{μλ}z_λΠ_{i=1}^{l(λ)}(1-q^{λi})/(1-t^{λi})に対して、
<P_λ,P_μ>=0 if λ≠μ

そして、ビラソロ代数。懐しい友人に会った気分だ。そうだよなあ。君はそう
やって最高ウェイトで分類されるんだよなあ。

こういう形式的にわかりやすいのが好きなんだよなあ。M1の時の楽しい計算の
日々が思い出される。

感想としては、やっぱりカロジェロ系のような可積分系というのは、かなり特
殊な系と言わざるを得ないのではないか。解けるから、束縛状態や非摂動状態
まで全部あらわに書けると言われてもなあ。解けるような特殊な系を選び出し
たような気がしてならない。共形場理論と言われると少しだけノントリビアル
な気がするのは、多分気の持ちよう。

カロジェロサザランド→ジャック多項式 ←→  ビラソロ代数←共形場理論 

という流れは、とても美しいと感じるけど、さらにマクドナルド多項式と変形
ビラソロ代数まで行っちゃうと、リー代数じゃないとか、特殊っぽい。

ものすごく直感的に言って、組合せ論的な二つの理論が一致したからと言って
そこに意味的を見出す必要が必ずしもあるのだろうか。という気持になってし
まった。確かに不思議なんだけど。

2004/06/14