微分形式とその応用

栗田稔

微分形式を知るとベクトルなどの量の座標変換の計算が楽になる、と、微分形
式を勉強する前からなんとなく思っていた。

で、これまで「微分形式の幾何学」「微分形式と解析力学」「物理学のための
幾何学的方法」「物理学のためのトポロジーと幾何学」といった大量の本で微
分形式が登場し、その度に判ったつもりになり、でも実は私が大学時代から感
じていた「微分形式を勉強すると座標変換が楽に計算できる」という部分につ
いては、宿題としてほったらかしてきた。

その宿題をもう一度今考えてみた。契機は多分クーロンの法則をマックスウェ
ルの方程式から出してくるのに、球対称を仮定して積分する。その球対称系に
変換するのはどうすれば楽かを考えたから。折角マックスウェルの方程式は微
分形式で書けるんだから、座標変換も微分形式の利点を使わねば。

大学時代、電磁気の授業で、「このような(普通の)ベクトルを反変ベクトルと
呼ぶ」と言われて、「普通のベクトルなのに「反変」と普通じゃないみたいな
のはなぜ」と質問にならない質問をして教官を困らせた(「そういうもんだか
ら」、みたいな返事をされた)。
いやしかし、あれば恥かしい質問だったかも知れないが、その時教官は、反変
と共変ベクトルについて、局所座標系とパラメトリゼーション、基底と成分、
その座標変換性を説明してくれたら良かったのに、と今では思う。

それともあのとき、座標変換性についての説明をしていたのに、私の統合力が
なくて、理解できてなかったのだろうか。(「反変ベクトル」という言葉を出
してくるからには、きっと座標変換の説明をしていたんだろうな)。

力学の最初に出てくる動径座標についてもう少し深く理解していたら、その場
で判ったのだろう(当時の学生はみんな判っていたのだろうか)。結局そのまま
にして今までずっとモヤモヤしていたが、今回宿題を考える過程であの時の質
問にやっと答えられるようになった。

結局、ベクトルの基底と同じ形式で座標変換するものが共変。それと反対の座
標変換をするのが反変なのだそうだ。

成分と基底がかけられたものがベクトルであるから、座標変換に対して基底が
ある変換をされるなら、成分はその逆方向に変換されないとベクトル自身が座
標変換不変でなくなる。だから基底と成分は逆向きの座標変換性をもつ。

曲線がsでパラメトライズされているとき(x(s))、曲線上各点各点に接線方向
の単位ベクトルを考えることができる。それが動径座標(の接線成分)の基底。
曲面x(s,t)上の点は2パラメータで指定することができるが、ある点(s0,t0)に
つきその2パラメータ方向曲線が2本(x(s0+s,t0), x(s0,t0+t))あり、接線が2
本引ける。接線方向に2つの基底を取れる。
3次元中の3次元は、3パラメータで指定できる。その一つが、r,θ,φ。

積んどくだった宿題の一つが15年かかってかたづいた。

そして、同時に、微分形式とベクトルの関係がやっとわかった。

ベクトルと形式は、足の上げ下げと同じで、計量で互いに行き来できる。結局
rotや、divや、gradは、形式で定義してベクトルとの関係は計量で定義する方
が素直。

結局このへんは、相対性理論への入口となっている。内山先生の「一般相対性
理論」も第一章で、これに近いことを説明している。ただし、形式という技術
がその当時はないので、反変ベクトルと共変ベクトルという説明になってしま
うのだが。

で、この本への解説は、もうやる気がなくなったので、パス。
とりあえず、5章までは読んだ。ハール測度の説明はいくらなんでも何が書い
てあるか意味不明。わかりやすくしようとして、日本語として破綻してしまっ
た感もある。今回の私の目的である、微分形式と座標変換。微分形式とベクト
ルの関係。という意味では、動径座標の方法はタイムリーなはずなのだが、4
章までの動径座標の方法以前の部分が大変参考になったのに対して動径座標の
方法の数章は読み切れなかった。

ま、なんとなく雰囲気だけは見た、感じとなった。

QAを書いてくれるのはとても読み易い。やらせちっくでもあるが。

(2003/12/14)