4章まで読んだ。5章まで読む方がトポロジー入門としては自然だと思うが、5
章は微分形式というようりホモロジーとかトポロジーの話のようなので、今の
私のニーズから外れる。6章、7章あたりには、また読みたい部分もあったりす
るが、今回はパス。
ちなみに、庶民の味方Dover の1200円しないペーパーバック。初版は1963年。
第一章の終りには、Differential Formについて、
Physicists are begining to realize its usefulness; perhaps it will
soon make its way into engineering.
と、たからかにうたわれているのであった。多分彼の予想より大きく後にずれ
たが、物理業界ではようやく微分形式はメジャーになって来たような気がする。
実際自分で再構築してみて感じたのだが、微分形式は、一般相対論あたりを目
指すなら十分に活躍するのだが、それ以外の分野で、座標変換だけを考えるな
ら、ちょっと道具として立派すぎるような気もする。
この本の2章では、結局座標変換を直交行列による微少変換で書けるものに限
る。それによってメトリックを考える必要がなくなり、文字通り、ベクトルと
微分形式は同じもの、となる。
なので、基底を正規化して選べばそのままベクトルを微分形式に読み換え、い
ろいろと計算することができる。物理で座標変換として出てくる極座標、円柱
座標なら、それで良かった。物理の人はそれしかしないのだから、計算を楽に
する道具として微分形式を導入するのも悪くない。
しかし、結局私が微分形式で判らなくなったのは、まさにそこなのだ。
微分形式とベクトルは、どう考えても違うものだ。座標変換式も違うし、基底
の取り方も違うし。フランダースの本の第2章には微分形式を成分とするベク
トルが登場する dx^{i}e_{i}。それは一体なんだ。微分形式は基底も込みで書
けるものではなかったか?ω_{i}dx^{i} で、dx^{i}が基底ではなかったか。
結局かなり混乱してしまった。どこまで微分形式を使ってよくて、どこから単
純な読み変えじゃだめなのか。使用可能な範囲が見えないものは使えない。
計量などの説明を抜けばとても簡単に使える道具だし、物理の普通の分野では
それで十分。微分形式が一番生きる分野では計量などの説明が不可欠だが、説
明は結構重いし、普通の物理研究者はそこはいらない。
結局代替手段、つまり、微分演算子の円柱座標表示、で済むならそれで良いの
だとなってしまうのだ。ということで、まだまだ少なくとも工学分野では微分
形式は流行りそうにない。
しかし、物理では、微分形式の考え方が、そのまま計量を導入するので、座標
変換と計量、基底、成分という、物理の本質的な部分を見せてくれる。それは
特殊相対性理論や、一般相対性理論のイントロダクションにもなっている。
座標変換によって計量は変化する。時間まで入れた空間の回転を考えることか
ら特殊相対性理論が出てくるし、計量は座標系によって変わるが、ならば座標
系によらない、空間の曲りを測る量とはなにか?という問いが、一般相対論に
なる。
物理の学生へは、ベクトルが大活躍する電磁気学などで、こういう視点でぜひ
微分形式を導入して欲しい。
どうでもいいが、フランダースさんの英語はナタで割ったような、というか、
無駄のない、英語、というか、ぶっきらぼうな英語だ。というか、実はあんま
り英語は得意じゃないんじゃないか。
(2003/12/14)