環と体 1

岩波現代数学の基礎

一ヶ月かかって、1,2章を読み終えた。というか、1,2章しか読めなかった。

多分、もう読めません。別の本に行ってしまうでしょう。

堀田良之先生は、もっと初等的な例を挙げて欲しい。手を動かせば、それなり
にわかるのだが、独学で読むには辛い。証明も「明らか」、とか言って省略
しちゃうけど、それが明らかに感じられない人もいるわけで、。
mが極大イデアルだから、a∉mのとき m+Aa=1 と言われても全然ピンと来
なかった。a∈mなら、m+Aa≠1 ならわかるんだが。
中山の補題、線型代数の常套手段が使えるって言われても「加群十話」で出て
きた方法だけど、その時も判らなかったし、今回もいま一つ判らなかった。
3章、Noether環は、ほとんど理解できなかった。グレブナー基底は面白そうだっ
たけど。

以下、読みながらメモっていた事項

難しく感じる理由は、代数的な考え方に慣れてないせいもかなりある。
なにしろ、イデアルって概念が私の中で登場したのもはじめてに近い。
もう、イデアルが環だか体だかすらわからない。(環でも体でもない)。

第一章でイデアルについて、いろいろ試行錯誤。

イデアル

A=Z/6Z を考える。これは、環になっている。剰余環。
(6Zは極大でない→Aは体でない(2*3=0なので整域でない))。
A={0,1,2,3,4,5}の巡回群。
この部分加群 I={0,2,4}は、イデアルである。AI⊂I。
2+2=4,2+4=0,4+4=2なので足し算は閉じている。
2*2=4,2*4=2,4*4=4なので、かけ算も閉じている。
足し算は、0が単位元で、2+4=0, 4+2=0なので、-2=4, -4=2 で群になっている。
かけ算は、4が単位元で、2*2=4, 4*4=4なので、2-1=2, 4-1=4で 単元
Ax={2,4}=A\{0}だから、{0,2,4}は、体をなしている。
Aのイデアルは、{0,1,2,3,4,5}=(1),{0,2,4}=(2),{0,3}=(3)。
Aの極大イデアルは、{0,2,4}, {0,3}。Aの素イデアルも{0,2,4},{0,3}
A/{0,2,4}={0,1}, A/{0,3}={0,1,2}。これらは体。(後半:2*2=1なので、2-1=2)
{0,1}=Z/2Z, {0,1,2}=Z/3Z と書くと、2Z, 3Zが極大であることから、やはり、
これらは体。

{0,3}は、3*3=3。3が単位元。体。


それでは、A=Z/8Zを考える。8Zは極大イデアルでない→Aは体でない(4*4=0)。
A={0,1,2,3,4,5,6,7}
I={0,2,4,6}は、イデアルである。AI⊂I。部分加群になっている。
しかし、かけ算は、
2*2=4,2*4=0,2*6=4
4*4=0,4*6=0
6*6=4
ということで、閉じてはいるが、単位元はない。ということで、これは、環で
はない。
Aのイデアルは、A,{0,2,4,6}=(2),{0,4}=(4)。
極大イデアルは、{0,2,4,6}。4=2*2,2∉{0,4} 極大イデアルでない。
{0,4}は、4*4=0。乗法の単位元がない。環でない。
A/{0,2,4,6}={0,1}  これは体。Z/2Z
A/{0,4}={0,1,2,3}   これは、環。
1が乗法の単位元になっている。
2*2=0,2*3=2
3*3=1
2*2=0→整域ではない。(体でもない)。
{0,1,2,3}=Z/4Z とも書けるが、4Zは極大でない。だから、やっぱり整域でな
い。

{0,2}(4=0)は、2*2=0 で、環でない。

環であり整域であり体 {0,1},{0,3},{0,1,2},{0,2,4},{0,1,2,3,4},{0,1,2,3,4,5,6}
環であり整域であるが体でない。
環であるが整域でない。{0,1,2,3},{0,1,2,3,4,5},{0,1,2,3,4,5,6,7} 
環でない {0,2},{0,4},{0,2,4,6} 

巡回群の最初の方だけでも、いろいろあるんだ。(結構感動)

追記(2003/06/13)

上を書いているとき、{0,2,4}は体のようだが、
  命題1.15  mが環Aの極大イデアル⇔A/mが体
について、A/m={0,2,4}となるような、環Aと、極大イデアルmはあるのだろうか
と思っていた。(それは一般的な話なのか?)

今日歯医者を待ちながら、考えていたのだが、例えば、
{0,2,4,6,8,10,12,14,16}/{0,6,12} だ。
{0,2,4,6,8,10,12,14,16}が環になっていることは、10が乗法の単位元であるこ
とを言えば良い。で、{0,6,12}は、極大イデアルである(これ以外のイデアルは、
Aそのものとなる)。

というのを調べながら、{0,2,4}は4を乗法の単位元とする体だが、これは、
0→0
2→2
4→1
とマップすれば、{0,1,2}と同型なんだ、とか、

{0,2,4,6}、{0,2,4,6,8,10}は、環にならない(乗法の単位元がない)とか、

{0,2,4,6,8}は6を乗法の単位元とする体だが、自明以外のイデアルはない
({0,2,4}も自明以外のイデアルはない)。
これは、多分、{0,2,4,6,8}は、{0,1,2,3,4}にマップできて、それもやっぱり自
明以外のイデアルはないのと関係していて、
だったら、要素数が、7の{0,2,4,6,8,10,12}も自明以外のイデアルはない体だが、

要素数 9の{0,2,4,6,8,10,12,14,16}は、9=3*3で、{0,1,2,3,4,5,6,7,8}には、
{0,3,6}というイデアルがあるから、自明でないイデアルがあるだろうな、と思っ
たら、やっぱりそうだった。

多分一般的な議論があるのだろう。(というか、「環と体」を注意深く読んでい
たら、どこかで証明されていたことなのだろう)。

第2章は、加群だ。

加群はOKだ。が、それ以外は詰りまくり。

射影演算子

射影的であって、自由群でないものとして、(2,1+√-5)⊂Z[√-5]と書かれて
いる。証明は難しいらしい。

でも、Z[√-5]は、射影的ではないのだろうか。
Σan(√-5)n ∈ Z[√-5]
なのであるが、これは、行列表示すれば、
(1 √-5)(1 0 -5 0  (-5)^2 0       ... )(a0)
        (0 1 0  -5 0      (-5)^2  ... )(a1)
                                       (a2)
                                       (a3)
                                       (a4)
                                       (..)
である。とすれば、

(a0,a1,a2,a3,...)∈Z[X] → Σan(√-5)n
は、全射であるが、
Σan(√-5)n → a0+a1√-5
というmapをすると、
    p
Z[X]→Z[√-5]
↑g
Z[√-5]

Id=g・p と分割ができる。この時、Z[X]は、
(g(Z[√-5])=(a0,a1))⊕(a2,a3,a4....)
で、直和になっている(と思う)。ということで、Z[√-5]は、射影的。
で、自由では、ないような気がするんだけど。それは多分間違いなんだろうな。


短完全列
0→M1→M2→M3→0
に対して、常に
0→Hom(P,M1)→Hom(P,M2)→Hom(P,M3)→0
が短完全列となるとき、Pを射影的というわけだが、

上のZ[√-5]の例について、これをあてはめると、
0→Zn→Z[X]→Z[√-5]→0
に対して、
0→Hom(Z[√-5],Zn)→Hom(Z[√-5],Z[X])→Hom(Z[√-5],Z[√-5])→0
が、完全列、なのかなあ。M1→M2のところは、生成系を導入してるのだろうか。

テンソル積

Z加群である、M=Z/6Z, N=Z/8Z から、Z加群Lが得られるとする。
φ: M x N → L
双線型を表わす、
φ(x1+x2,y)-φ(x1,y)+φ(x2,y)
φ(x,y1+y2)-φ(x,y1)+φ(x,y2)
φ(ax,y)-aφ(x,y)
φ(x,ay)-aφ(x,y)
を満す部分集合で、剰余を取ればいい。Z加群だから、積はただの積で、
(x1+x2)*y-x1*y-x2*y
この第1項は、6の倍数部分は0に落ちる。 x1+x2=x+6a=x
=x*y-x1*y-x2*y    後半の計算は Z として見てる。
=(x-(x+6a))*y=-6a*y
6Z
同様に他の式から、8Z
従って、L≅Z/(6Z+8Z)≅Z/2Z 同型。
(3+4)*2-3*2-4*2 = 1*2-3*2-4*2 = 2-6-8 = -12 = 0 (最後の等号は、Z/2Zの元と
して)。
なるほど。

係数拡大

B⊗A[X]=B[X]
Z/6Z⊗Z[X]
(a1+a2)*ΣbnXn-a1*ΣbnXn-a2*ΣbiXn
=-6a*ΣbnXn=Σ6a*bnXn  ≅6Z[X]  =0 で剰余を取ると
Z/6Z⊗Z[X]=Z/6Z[X]
正しいなあ。

分数化(局所化)

A=Z/6Z={0,1,2,3,4,5}
を考える。1を含む積閉な部分集合Sは、
{1},{1,5},{1,2,4},{1,3},{1,2,4,5},{1,3,5}
0はどれにでも入れられるが、0を入れると、t(as'-a's)=0 となる t∈S がt=0
で常に成立するためすべて同じ類になり、0写像になってしまう。(2),(3)の元
を両方含むと、積が0を含んでしまうので、それも外した。

t(as'-a's)=0 となる t∈S が存在するとき、a/s〜a'/s'で同値類を作る。
 S   :    同値類
{1}  :    {0/1},{1/1},{2/1},{3/1},{4/1},{5/1}
{1,5}:    {0/1〜0/5},{1/1〜5/5},{2/1〜4/5},{3/1〜3/5},{4/1〜2/5},{5/1〜1/5}
{1,3}:    {0/1〜0/3〜2/1〜2/3〜4/1〜4/3},
          {1/1〜3/1〜5/1〜1/3〜5/3〜3/3}
{1,3,5}:  {0/1〜0/3〜0/5〜2/1〜2/3〜2/5〜4/1〜4/3〜4/5},
          {1/1〜1/3〜1/5〜3/1〜3/3〜3/5〜5/1〜5/3〜5/5}
{1,2,4}:  {0/1〜3/1〜0/2〜3/2〜0/4〜3/4},
          {1/1〜4/1〜2/2〜5/2〜1/4〜4/4},
          {2/1〜5/1〜4/2〜1/2〜2/4〜5/4}
{1,2,4,5}:{0/1〜3/1〜0/2〜3/2〜0/4〜3/4〜0/5〜3/5},
          {1/1〜4/1〜2/2〜5/2〜1/4〜4/4〜2/5〜5/5},
          {2/1〜5/1〜4/2〜1/2〜2/4〜5/4〜1/5〜4/5}

つまり、x/1をxと書いて、代表元とすれば、
A/{1}=A/{1,5}={0,1,2,3,4,5}
A/{1,3}=A/{1,3,5}={(0〜2〜4),(1〜3〜5)}
A/{1,2,4}=A/{1,2,4,5}={(0〜3),(1〜4),(2〜5)}
A/{0,1....}={(0〜1〜2〜3〜4〜5)}
と写像する準同型写像。分母の範囲によっていろいろな準同型写像になる。

ちなみに、Aの素イデアルは、(2),(3)であるから、上のうち、
S_{(2)}=A\(2)={1,3,5}
S_{(3)}=A\(3)={1,2,4,5}
で割ったものが、Aの局所化
A_{(2)}: Aの(2)における局所化: {0/1〜0/3〜0/5〜2/1〜2/3〜2/5〜4/1〜4/3〜4/5},
                               {1/1〜1/3〜1/5〜3/1〜3/3〜3/5〜5/1〜5/3〜5/5}
A_{(3)}: Aの(3)における局所化: {0/1〜3/1〜0/2〜3/2〜0/4〜3/4〜0/5〜3/5},
                               {1/1〜4/1〜2/2〜5/2〜1/4〜4/4〜2/5〜5/5},
                               {2/1〜5/1〜4/2〜1/2〜2/4〜5/4〜1/5〜4/5}

(この節は、実際にこの文書を書いて、結構楽しかった)。

中山の補題

A加群Mを、f∈End_A M を通じて、Tx=f(x)より、A[T]加群と考える。
これの意味がねえ。

MはA加群なので、a(x+y) = ax+ay, a∈A, x,y∈M
MからMへのA自己準同型写像fを考える。
Mとfが与えられると、Tx=f(x), x∈M とすることで、作用域をAから、A[T]に
広げられる。

Mを、自由表示してやって、基底を作れば、Tは行列表示みたいなもの。
fが与えられると、Tx=f(x) で、A[T]環と見える。  End M⊂A[T]環 M
A[T]環はEnd Mの要素内で拡大される              A[T]環M ⊂End M
A[T]環M≅End M

A[T]環Mについて考える。
 ΣaiTi*(x+y) = ΣaiTi*x+ΣaiTi*y  x,y∈M, ai∈A

もとに戻って、Mがn生成A加群であるとき
f(x)∈IM
のとき、
fn+a1*f(n-1)+...+an=0
なる、a0,...,an∈I が存在する。というのが、可換論版のCayley-Hamiltonの
定理。

生成系を考えることにより、
f(xi)=Σaij*xj  aij∈I と書ける。
一方 
x=Σaixi
Tx=TΣaixi=ΣaiTxi
したがって、xiにTをかけたものは、Txi

Σ_j(Tδij-aij)xj=0  (これ本文は、かっこの位置がおかしい)。

(T-a11  -a12   -a13  )(x1)=0
(-a21   T-a22  -a23  )(x2)
(-a31   -a32   T-a33 )(x3)

det(Tδij-aij)=0
Tn+a1*Tn-1+....+an=0   ai∈I
fn+a1*fn-1+....+an=0
なお、fn(x)=f(f(f(...f(x))))のこと。

体の場合であるが、
A=Zと置く。M=Z2 とする。(x1,x2)で生成される。
x=a1*x1+a2*x2, a1,a2∈Z
f(x)=(2*a1)*x1+(4*a1+6*a2)*x2とする。f(x)∈(2)M
このとき、f(f(x))+a1*f(x)+a2=0 と書ける。
f(x)=Tx

行列表示すれば、
   Tx=(x1 x2)(2 0)(a1)
             (4 6)(a2)

T(a1*x1)=(x1 x2)(2 0)(a1)=2*a1*x1+4*a1*x2
                (4 6)( 0)
T(a2*x2)=(x1 x2)(2 0)( 0)=6*a2*x2
                (4 6)(a2)

f(a1*x1)=2*a1*x1+4*a1*x2
f(a2*x2)=6*a2*x2=a21*x1+a22*x2

f(x1)=2*x1+4*x2=a11*x1+a12*x2    a11=2, a12=4
f(x2)=0*x1+6*x2=a21*x1+a22*x2    a21=0, a22=6

(T-2  -4  )(x1)=0
(0     T-6)(x2)

(T-2)(T-6)=0

T2-8T+12=0
(4  0 )-8(2 0)+(12 0)=(4-16+12   0     )=0
(32 36)  (4 6) (0 12) (32-32   36-48+12)

f(f(x))-8f(x)+12=0

なぜか正しい。いや、これは、可換環論というか、線型代数なんだけど。

第3章はNoether環。こここそ、可換環論のメインらしいんだけど。。。。

$Date: 2003/06/16 14:48:29 $ (GMT)