過去読んだ解析力学の本のなかで、もっとも判り難い本だと思う。
Frobeniusの定理は私の蔵書で説明してある本が3冊以上あるけど、多分一番判
り難い説明。
言葉の定義がいい加減すぎるよ。完全積分可能とか直交とか良く知っているよ
うで、知っているわけではない言葉について、正確な定義もイメージも与える
ことなく次々と議論を展開する。Frobeniusの定理で一番重要なのは、積分多
様体が定義できる場という意味で、それを書いてくれればすごく判り易いのに。
(完全積分可能という観点からは、書いてあるんだけど)。
ベクトル場のリー微分を、ベクトル場の引き戻しを使って、
L_XY=lim 1/t(φ_t^*(Y(φ_t(x)))-Y(x))
と書いているが、ベクトル場は引き戻しではなく座標変換なので、
L_XY=lim 1/t(φ_-t_*Y)(x)-Y(x))
と書くべきだと思う。引き戻しというわかりにくい概念を簡略的にそう表示し
ているのだろうけど。
形式の方のリー微分の定義もちょっと納得できてないんだけど、本当は。
L_Xω=lim 1/t(φ_t^*(ω(φ_t(x)))-ω(x))
なんとなく
L_Xω=lim 1/t((φ_t^*ω)(x)-ω(x))
と書いてくれる方がわかりやすいような、わかり難いような(ωが定義されて
いる時刻を(私が)混同してる?)。
また、ラグランジアン形式は接バンドルで、ハミルトニアン形式は余接バンド
ルにある、というのはわかるような気がするけど、そういいつつ、
Ω=p(q,dq/dt)dq-Edt for Lagrange formalism
*Ω=pdq-Hdt for Hamiltonian formalism
が基本1formで外微分をほどこせば、Lagrange方程式や、Hamiltonian方程式
が出てくるのか?
接バンドルというぐらいなら、ベクトル場で表示し、余接バンドルを、形式
で表示する、ということにならないのだろうか。途中からξ=dq/dtと置いてし
まって独立変数っぽい取り扱いをしてしまうし。
dq/dtとpを独立変数の取り換えをしてLegendre変換したのが、HとLの対応とす
ると、確かにξ=dq/dtとpおよび、L(ξ,q)←→H(p,q)のLegendre変換という話
が対応するんだけど、それが接バンドルと余接バンドルに住んでいるという意
味がわからない。かなり混乱中。
---引用
ω1=p_idq^i (4-1-14) (一部略)
空間Qにおいて、(局所)座標 q^i と共変ベクトル場 p_i を座標とする2N次元
空間をQ上の余接バンドルT*Qという。Qの各点 q^i における接空間TQ上で定
義される1-形式を点 q^i におけるQの余接ベクトルといい、この余接ベクト
ルのつくる線型空間を点 q^i におけるQの余接空間という。余接ベクトルは
共変ベクトルに相当する。したがって、(4-1-14)のω1は dq^i を基底とし、
p_i を成分とする余接ベクトルである。というわけで、位相空間の点
(q^i,p_i)は余接バンドルT*Qの元と見なせる。
---引用終了
なにが、「というわけ」、なんだ。接空間だ、余接空間だ、バンドルだ、共
変だ、反変だ、言葉を使いすぎ(しかもこの本では共変反変の定義はしてない)。
共変、反変は形式とベクトル場を導入したんだから使う必要はないと思う。
Q={q^i}に対してT*Qは、各点各点に dq^i を基底とする、形式の張る空間が
くっついたもの、だろう。{ω∈T*Q|ω(p)=f(q)dq}。ω1が、T*Qの元であるの
はOKだ。あ、それを、(q,p)1組に対して ω(q)=pdq が一つ決められるから、
配位空間を(PQ)と書けば、(PQ) =~ T*Qだと言ってるのか。
途中の説明が余計なんだ。
正準変換(5章)までは読むつもりだったけど、4章の途中でダウン。その前に3
章の後半もスキップ。2章の後半もスキップ。
この本で解析力学や微分形式が勉強できた人はいるのだろうか。
判り難い本(私見)で渋滞して苦しんでいるのも時間がもったいないので、次の
本に行こう。解析力学繋がりで、「解析力学」(山本義隆) というのも考えて
いたが、解析力学自体に疲れたので、違う方向へ。
$Date: 2003/03/25 14:33:25 $ (GMT)