量子力学を学ぶための解析力学入門

いつ買ったか覚えていないが、中に鉛筆書きで値段が書いてあるから、学生時
代に古本屋で購入したはずだが、多分一度も開かなかった。

昨年本の整理をした時に、古本屋に持っていったが、値段が付かず、あげるの
ももったいないので持って帰ったもの。1978年第1刷で、1990年第13刷が手元
の本。この後、2000年10月に増補第2版が出る。また、続編「量子場を学ぶた
めの解析力学入門」(1982)も出ることとなる。

増補第2版で付録 対称性と保存則 が章に格上げになったらしい。ところで、
このネーターカレントを論じるところには、符号を2度間違って結果は正しい
ところがあるんだが、たまに真面目に式をおいかけて符号のミスプリでない
ミスを発見してしまうと、他が心配になってしまう。だいたい12年で13刷もし
たんだから、直せよ。(増補版では直ってるんだろうな)。

量子力学を学ぶ、というために限定すれば、解析力学はずっと整理しやすい。
たとえば、第1章で、ラグランジアン形式と、ハミルトニアン形式の両方をとっ
とと導入し、座標変換不変性があるんだ、という利便を主張する、というのは
納得。ともすれば、解析力学は、どこから、どこに向かっているかわからなく
なってしまうので。

こうして並べて説明されると、
ラグランジアン形式、オイラーラグランジュの変分原理、Lの変形、が、
ハミルトニアン形式、ハミルトンの変分原理、正準変換、
とちゃんと対応していることがよくわかる。結局解析力学ってのは、このくら
いの知識量で十分なのね。(ハミルトンヤコビの方程式はカット)。

コンパクトな本、というのは、やっぱりおおくの情報が抜けちゃうんだけど、
対象が手強い場合に攻略の道筋を知るという意味で役に立ってしまうな。

####### 以下、「解析力学と微分形式」(深谷賢治)への感想になってしまった。

ハミルトニアン形式は、やっぱり微分形式を導入した方がきれいに書けると思
う。とは、書いたものの、ここで「微分形式と解析力学」(深谷賢治)にもうい
ちど目を通す。なるほど。

ハミルトンベクトル場を導入する。
X_H = ∂H/∂p ∂/∂/q - ∂H/∂q ∂/∂p
これを、時間微分演算子(ベクトル場)
d/dt = dq/dt ∂/∂q + dp/dt ∂/∂p
と対応付ければ、2つのハミルトン方程式が1つに現わせることになる。
(とは、「微分形式と解析力学」には書いてないんだが)。

座標変換  Φ(q,p)=(Q(q,p),P(q,p))
          Φ_*(v)=V
引き戻し  ω=Φ^*(Ω)

内部積の座標変換非依存性
  Φi_ΦX(ω)=i_X(Φω) と、
  i_X(dp∧dq)=-dH ⇔X=X_H から、dP∧dQ=dp∧dqならば、
  Φ^* i_Φ_*X(dp∧dq)=i_X(Φ^*(dp∧dq))=i_X(dP∧dQ)=i_X'(dp∧dq)=-dH。
したがって、(p,q)も(P,Q)も同じハミルトニアン H 。
ω=dp∧dq を不変にする変換は、正準変換である。という話になる。

dp∧dq-dP∧dQ
が 0 になるというのは、
d(pdq-PdQ)=0  (q,Qが独立変数のとき)だから、
dS=pdq-PdQ
で、生成関数を導入する。
という流れは、(内部積の話がなんとなく非自明なのを除けば)納得。

ハミルトニアンが時間に依存するときは、
pdq-Φ^*(PdQ)=dS-∂S/∂tdt
したがって、
∫l^*(pdq-Hdt)=∫(pdq/dt-H)dt
=∫l^*Φ^*(PdQ-H'dt)
=∫l^*(Φ^*(PdQ)-H'dt)
=∫l^*(pdq-dS)-∫(H'-∂S/∂t)dt
=∫l^*(pdq-(H-∂S/∂t))-S(1)+S(0)
ということで、H = H'・Φ-∂S/∂t 。
ここの説明は全然わからない。

うーん。私は、ベクトル場と、form場というのは、異なるものと思っていたが、
基底の取り方の問題なのか?ローレンツ変換の議論のように、ベクトル場と
Form場を変換するテンソル演算子があって、自由に行き来できるものなのか?
足をつぶしておけば、座標変換非依存性ははじめから保証されている。という
わけでもないんだよな。そもそも、ハミルトンベクトル場は、ベクトル場だし。
シンプレクティック2formは2formだし。

微分形式を導入して、なにが見易くなったのか、ピンと来ないんだよなあ。
やっぱり、物理屋の視点の本を読んで見よう。ということで、次は「微分形式
による解析力学 改訂増補版」に決定。