マキリ -08 アイヌ・マキリの自作(完)

いやぁ、ホンマにしつっこいオッサンですなぁ。
どうです?この終りそうで終らん二枚腰。

一応は完成した積りやったんです。
しかし、桃の種はどう考えても似合わんなぁ、何ぞ無いかいな?
と考えてたら、捕鯨華やかなりし頃、得意先の捕鯨船団からお土産に貰ったマッコウ鯨の牙が何処かにあったのを思い出しましてん。
ナガス、とかセミのでっかいヒゲも貰ってたんですが、哀れヒメマルカツオブシムシに食い散らかされ、震災後の大整理の際に思い切って廃棄しました。
ペンギンさんは防虫剤のお陰で今猶健在で、座敷でにらみを利かせて居ります。
しかし、ペンギンは美味しないねぇ、妙な脂臭い匂いがしまっせ。
ん?何の話やった?そうそう根付。
さて、要るとなると急には出て来んのですねぇ。
さして広い家でもなし、まぁそやからかえって、ゴチャゴチャになってて、中々見つからんのです。

薄れた記憶をたどりつつ、鋭意、探索に勤めたところ、やっと見つかりました。
もっと有ったように思ってたけど、3つしか出て来ませんでした。
その内の2個は幾ら何でもでかすぎる。
ものには程度言うもんがおますがな。
こんな物を付けたら邪魔になってしょうが無い。
一番小さいのにドリルで穴を開けて付けましてん。
写真は残った2個ですわ。
さて、残ったからというて別に何というて使うあては無いんですけどね。
ウチに来てから何十年もたって、一番小さいのにやっと出番が廻って来たんやから、その内にマゴの代にでもなりゃぁ、何か使い道が有るやろう。
そんな事いうてるから、訳の判らん物(ゴミ、ガラクタと言う説が有力です)がどんどん増えるんですわ。

やっぱり、桃の種よりはコッチの方がエエなぁ!と自己満足。
事のついでに、柄頭にも滑り止めを彫って、今度こそ完成。

作ってしもてから手遅れもエエところですが、民博へあらためて展示品を見に行ったんです。
樺太(サハリン)型の刃に北海道風の拵えが付いたのが結構有ります。
清朝の官服が交易で北海道へ渡ってきて「蝦夷錦」と呼ばれていたくらいやから、刃物も各地域、種族のが入り乱れてるんでしょうね。
大陸型というのは沿海州のがそうなんやろか?
なぜか樺太(サハリン)型のは鞘しか無いんですね。
とても全部は掲載できませんが、こんなに種類がおまっせ、というのを民博のと、印刷物から寄せ集めた一部をご覧下さい。
(すんまへん著作権等に問題あったら言うて頂戴ね)

こないして、マキリで遊んでると、何と今度はエムシ(アイヌ刀)が転がり込んで来ましてん。
「あんた、アイヌの刀の事書いてたねぇ。多分アイヌのやと思うんやが、どないしたんか判らんけど、ウチに確か汚ったないのんがあってなぁ。多分捨ててないと思うから、要るんやったら持って来たげるわ。言うとくけどボロボロで汚いで、ホンマに汚いねんから」
「汚い」の国から「汚い」を行商に来たみたいに、思う様「汚い」を連発してましたが「是非おくれ!」と頼んだら、探し出して新聞紙に包んで持って来てくれたんです。

いや、なるほど、包みを開いたらホンマに汚い・・・。
しかしまた、汚いのも汚いけど、保存状態が恐ろしく悪いねぇ、崩壊寸前やがな。
埃落としたら無くなるのちゃうやろか?
イヤイヤ、ただのもんに贅沢をいうたらいかん。
「こんなん有ったら又おくれや」と大正橋たもとのラーメン定食六百五十円を奢らせて貰って、せめてものお礼。

落ち着いて表で埃を払ってよくよく見たら、多分もヘチマも、マトモにエムシやがな!
飾りがボロッと取れそうで、危のうて、雑巾で拭くのも憚られる。
しかし、このままでは部屋には持って入れん。
崩壊したらした時の事や、と覚悟を決めて拭けども拭けどもきれいにならん。
ともかく素手で触っても手が汚れん程度にはきれいにしました。

幸い鞘はガタガタで刀身は簡単に抜けたのがせめてもの救い。
しかし、ホンマもんかなぁ?拵えはどう見ても胡散臭いね。まぁ、枯れ木も山のか、とガジガジの錆びを落としたら、刀身に何やら刻んで有りますねん。
刃はどうやら間違いなく本物らしい、ラッキー♪
しかし重ねは薄いし、どう見てもたいした鋼や無いなぁ。
柄の裏には窓が空いてて中子(ナカゴ)が丸見え、裏に窓が開いてるもんやから目釘は片持ち、かろうじて柄と刃が離れん程度の信じられへん据付ですわ。
ここまで頼り無い柄の付け方には始めてお目に掛かったねぇ。
こんなもん危のうて振り回せんよ・・・。
元々実用品というよりも装飾品やったんでしょうね。
長すぎてペーパーナイフにも使えんし、これは全く何の使い道もないなぁ。

こないして、ガラクタ刃物がまた一つ増えました。
何なんでしょうねぇ、仲間を呼ぶんやろか?。

ホンマに今度こそ「マキリ(完)」でおます。

とか何とかいうて、ひょっとして「マキリ(完)-その二」てな事を言い出すやも知れず。
その接は平にご容赦の程を。

2004/05/26