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予防線 |
以前、100兆クリッカーに対して、こんな質問を頂いたことがあります。 「本当に100兆回も押せると思っているんですか?」 思っていません。当然です。 本当は「そのくらい分かれ」と言いたかったのですが、気弱な私がそんな無礼な ことを言えるはずもなく、結局 そのときは 普通に「あれはソースを見て、ツール のスクリプトの頭の悪さを楽しむものなんですよ」と、丁重に返答する程度に とどまったのでした。 上の話を見て、「そんなに誤解されるのが嫌だったら、100兆クリッカーのどこかに 『ソースを見て、スクリプトの頭の悪さを楽しんでネ』とか書いておけばいいじゃん」 と思う人がいるかもしれませんが、そのような予防線を張ると、ただでさえ面白く ないものが、さらに面白くなくなってしまいます。これは、寒々しいギャグの後に、 今のギャグはどこが面白いのかを説明すると、さらに寒くなるのと同じ原理です。 しかし、だからと言って予防線を入れないと、文の狙いが伝わらない可能性が 残ってしまいます。例えば、100兆クリッカーを見た人が 私に対して、「こいつ、 マウスを100兆回もクリックできると思ってるのかね。バカ決定だな」などという 印象を持つ可能性もあるわけで、そうなると書き手としてはとても辛いわけです。 要するに、文章中に適切な分量の予防線を入れないと、文章が寒々しくなったり、 文章の狙いが伝わらなかったりするわけですが、では、適切な予防線の分量とは どの程度の量なのでしょうか? ちょっと数学的に分析してみましょう。 まず、予防線の分量と文章自体の面白さの関係を関数で表してみましょう。 予防線が増加すると面白さが減少するわけだから、x > 0 において df/dx < 0 となる関数 f(x) で表現できるはずです。 そのような関数として、まず最初に考えられるのは f(x) = ax + b , (a < 0) ( f : 面白関数 , x : 予防線量 , a : 衰微係数, b : ネタ自体の面白さ ) という比例関数ですが、これに沿って考えると、予防線を無限に増加させたとき、 面白さが−∞に発散してしまいます。実際には0に収束するのが望ましいので、 比例関数は面白関数として不適切であると考えられます。 そこで、次に考えられるのは、 f(x) = c/x , (c > 0) ( f : 面白関数 , x : 予防線量 , c : 面白関係定数 ) という反比例関数ですが、これだと予防線を全く入れない場合(x=0)に面白さが 未定義となってしまいます。そこでこれを変形して、 f(x) = bc / (bx + c) , (c > 0) ( f : 面白関数 , x : 予防線量 , b : ネタ自体の面白さ , c : 面白関係定数 ) とすることで、f(0)=b かつ x→∞でf(x)→0 となる関数となり、予防線の分量と 文章自体の面白さの関係を表す関数としてふさわしいものとなります。 次に、予防線の分量と文章の理解度の関係を関数で表してみましょう。 今度は逆に、予防線の増加と共に理解度も増加するわけだから、x > 0 に おいて dg/dx > 0 となる関数 g(x) で表現できるはずです。 そのような関数として、まず最初に考えられるのは、 g(x) = a'x + b' , (a > 0) ( g : 理解関数 , x : 予防線量 , a' : 増強係数, b' : 最初の理解度 ) という比例関数ですが、これに従うと、予防線を増加させればさせた分だけ、 理解度が増加することになってしまいます。しかし実際には、盲目の人に「赤い」 という概念を言葉で完全に理解させることが無理なように、いくら言葉を尽くし ても理解できないものというのは存在するので、理解関数としては x→∞ で g(x)→d となる関数がふさわしいと考えられます。そこで、 g(x) = (b'-d)c' / ((b'-d)x + c') + d , (c' < 0) ( g : 理解関数 , x : 予防線量 , b' : 最初の理解度 , c' : 理解関係定数 , d : 理解上限定数) という形にすることで、g(0)=b' かつ x→∞でg(x)→d となる関数となり、予防線の 分量と理解しやすさの関係を表す関数としてふさわしいものとなります。 次に、面白関数と理解関数から、適切な予防線量を推定するわけですが、 面白さと理解しやすさは論点の次元が違うため、一概に比較できません。 そこで、理解関数g の理解上限定数d を、面白関数f のネタ自体の面白さb に 置き換えることで、理解関数を面白さの次元上に近似することにします。 理解関数g を面白次元上に近似した関数gdを、次のように設定します。 gd(x) = (bd-b)cd / ((bd-b)x + cd) + b ( bd = bb'/d , cd = bc'/d , c' < 0 ) それでは、適切な予防線量を計算してみましょう。 最も適切な予防線量xにおいてf(x) = gd(x) となるはずなので、 bc / (bx + c) = (bd-b)cd / ((bd-b)x + cd) + b の解x が最も適切な予防線量になるわけです。この方程式を解くと、 x = (-bdcd±√(c(b2c-4(bd-b)2cd))) / (2b(bd-b)) , (c>0, cd<0) となります。つまり、文章中に上記の式で求められた x の分だけ予防線を 張れば、その状況において文章が最も良いものとなるわけです。 : : 一応、念のため言っておきますけど、上の数式とかは全く根拠のないものだし、 ロジックも破綻してるので、変に信じたりしないで下さいね。 (↑こういう予防線を張っておかないと、「この文章の論理は間違いばかりだよ。 書いてる奴はかなりのアホだな」などと思われないか心配なのです。 (↑これも予防線なのですが、こう書いておかないと、「最後に余計なのを付け やがって。書いてる奴は相当な腰抜けだな」と思われないか心配なのです。 (↑ちなみに、これも予防線なのですが、こういう事を書いておかないと… (↑これだって予防線なのですが… (↑これすらも予防線で… (↑これにしても予… (↑これ… : というわけで、誤解されるのがいやだからって、メタ予防線を張り続けていると、 無限ループに陥ってしまうよ、というお話でした。(←これも予防線(←これも… |
01/11/10 |