昔々ある国に、珍しい服が大好きな王様がおりました。
ある日、お城に男がやってきて、こう言いました。
「私は不思議な布を織ることができます。
その布は馬鹿な人には見えない布なのです」
珍しい服が大好きな王様は、
その男にその布で服を作るように命令しました。
数日後、できあがった服を持って、男がやってきました。
しかし、王様には服が見えませんでした。
(なんという事じゃ。わしは馬鹿者なのか?
そんなことがばれたら恥ずかしいぞい)
「うむ、見事な服じゃ」 王様は大きな声で褒め称えました。
家来たちにもその服は見えませんでした。
でも、みんな馬鹿だと思われたくなかったので、
その服を褒め称えました。
「見れば見るほど素晴らしい服じゃのう。
よし、早速、この服を着てパレードじゃ」
王様はたくさんの家来を連れて、町に出かけました。
町の人々にも、馬鹿には見えない服の噂は広がっていました。
「なんて素敵な服なんでしょう」「王様にぴったりだ」
町の人々も褒め称えました。
そのとき、一人の子供が叫びました。
「あ、王様は裸だ! 裸の王様だ!」
それを聞いた大人たちは言いました。
「やっぱり子供は馬鹿だなぁ。あの服が見えないなんて」
パレードはそのまま続き、馬鹿には見えない服は、
王様の一番のお気に入りとして、その後も大切にされましたとさ。
「これがその王様の着ていた服なんだってさ」
「へぇー。確かに素敵な服よね」