先日、こんな内容の研究報告が学術誌に掲載されたそうです。
『毎日長時間のコンピュータ利用は身体症状ばかりでなく、気力の減退にもつながる』
つまり、毎日長時間コンピュータを使用していると、肩こりなど 身体への影響のみならず、
無気力・不安感・コミュニケーション不全など 精神にも強い影響を与える、のだそうです。
「ほほう。で、その根拠は?」と記事を読み進めると、そこに現れたのはこんな記述。
『2万5千人を対象に調査を行ったところ、一日平均5時間以上コンピュータの前に
座っている人は 上記の症状を訴える率が極端に高かった』
記事元の研究報告を読んだ訳ではないので断言はできないのですが、どうやら上の結論は
この調査結果一点から推論して導き出した結論のようです。
しかし、この推論、
「『xという特徴を持つ人間はyという特徴を持つ率が高い』ゆえに『yの原因はx』」
一見すると正しそうに見える推論ですが、これは本当に正しいと言えるのでしょうか?
------- 上記の推論の反証開始(面倒臭けりゃ読み飛ばそう!) -------
上の推論が正しいかどうかを検証するために、小さな世界を設定してみましょう。
まず、この小さな世界に住む人間全体の集合をUとし、|U|(人間の総数)を100と設定します。
次に、a(コンピュータ長時間利用)という特徴を持つ人間の集合をAとし、|A|(コンピュータ
を長時間利用している人間の数)を20と設定します。また、b(無気力etc)という特徴を持つ
人間の集合をBとし、|B|(無気力etcを訴える人間の数)を25と設定します。最後に、|A and B|
(コンピュータを長時間利用していて、かつ、無気力etcを訴える人間)を18と設定します。
この小さな世界でP(B|A)(コンピュータを長時間利用している人間が無気力を訴える率)
を計算すると、|A and B|/|A|=0.9 となります。これは、P(B|Ac)(コンピュータをあまり利用
していない人間が無気力を訴える率)=|Ac and B|/|Ac| = 0.0875 に比べ、極端に大きな値と
言えます。つまり、この小さな世界では『コンピュータを長時間利用している人は無気力
を訴える率が極端に高い』と言えます。
では、P(A|B)(無気力を訴える人間がコンピュータを長時間利用している率)を計算する
とどうなるでしょう。P(A|B)=|A and B|/|B|=0.72。これはP(B|A)に比べるとやや小さな値に
見えます。しかし、P(A|Bc)(無気力ではない人間がコンピュータを長時間利用している率)=
|A and Bc|/|Bc|=0.0266..に比べると極端に大きな値と言えます。つまり、この小さな世界では
『無気力を訴える人はコンピュータを長時間利用している率が極端に高い』とも言える
わけです。
では、「『xという特徴を持つ人間はyという特徴を持つ率が高い』ゆえに『yの原因はx』」
という推論が正しいと仮定します。ここでxにa(コンピュータ長時間利用)、yにb(無気力etc)を
当てはめると、『コンピュータを長時間利用している人は無気力を訴える率が極端に高い』と
いう事実から、『無気力etcの原因はコンピュータの長時間利用』と推論できます。一方、
xにb(無気力etc)、yにa(コンピュータ長時間利用)を当てはめると、『無気力を訴える人は
コンピュータを長時間利用している率が極端に高い』という事実から、『コンピュータ長時間
利用の原因は無気力etc』と推論できます。この2つの結論『aの原因はb』と『bの原因はa』
は矛盾するので、仮定は正しくない。つまり、「『xという特徴を持つ人間はyという特徴を
持つ率が高い』ゆえに『yの原因はx』」という推論は正しくない、となるわけです。
(”高い率”という概念が抽象的すぎると感じた方は、|A|=|B|=|A and B|=20で計算してみて
下さい。すると、P(B|A)=P(A|B)=1となり、率は最大。つまり、これ以上高い率は有り得ない
のだから、P(B|A)とP(A|B)は”高い率”と結論付けられます)
--------- 反証終了(小難しい話は終わりだー) ---------
上記の反証によってこの推論の不当性が証明されたわけですが、しかしだからと言って、
『無気力の原因はコンピュータ長時間利用』という言及が間違っているとは言い切れません。
しかし、結論を導いた推論の不当性が証明された以上、この言及の正当性が揺らいだのは
紛れもない事実。でも、記事の調査結果を見れば、「コンピュータ長時間利用」と「無気力etc」
の間に強い因果関係があることは、容易に想像できます。
では、ここで逆転の発想。結論の因果を反転させてみたらどうなるでしょう。つまり、『xという
特徴を持つ人間はyという特徴を持つ率が高い』という事実から、『yの原因はx』ではなく、
『xの原因はy』を推論してみるのです。上の例で言うと、『無気力etcの原因はコンピュータ
長時間利用』ではなく、『コンピュータ長時間利用の原因は無気力etc』を推論するのです。
もっと詳しく言うと、『コンピュータを長時間利用しているから、無気力・不安感・コミュニケー
ション不全などになる』のではなく、『無気力だからコンピュータの前でじっとしていれば
良いよいような職種に就く(就かされる)』『不安だから、偶然による揺らぎの少ない
コンピュータを利用する職種に就く』『コミュニケーション不全だから、人間ではなく、
コンピュータを相手にする職種に就く(就かされる)』と考えるわけです。
なるほど、こちらの方がよっぽど因果関係に説明付けしやすい。
このように、「『xという特徴を持つ人間はyという特徴を持つ率が高い』ゆえに『yの原因はx』」
という推論から導き出されたと思われる言及の因果を反転させてみると、世の事象の意外な
側面に気づくことが多々あります。例えば、『バカは風邪ひかない』。これは恐らく、「今まで
いろんなバカを見てきたけど、風邪をひいたと言っているバカは一度も見たことがないなぁ」
という経験則による因果関係だと考えられます。しかしこの因果を反転させる、つまり『バカ
だから風邪をひかない』のではなく、『風邪をひかないからバカ』、もっと正確に言うと、『風邪
をひいても気づかないような人間だからバカと呼ばれるんだよ』と考えるとどうでしょう。
こちらの方がよっぽど理論的ではありませんか?
(精神的ストレスは免疫力を下げる、ゆえに楽天家は風邪をひかない、という研究結果も
あるそうですが、”楽天家=バカ”という図式はあまりにもヒドイと思う)
あと、『理系(特に工学系)の人はモテない』。これは「理系の人で、男女交遊が活発な人
は少ない」という事実から推論された因果関係と思われます。しかしこの因果関係を反転、
つまり、『理系気質だから異性交遊に縁遠い』のではなく、『異性交遊に縁遠いから理系の
道へ進んだ』と考えるとどうでしょう。
この結論は、一見 非論理的な結論にも見えます。しかし、歴史的事実から判断すると、
そう間違っている結論であるとも言い切れません。例えば、日本が技術大国と呼ばれ、
高度成長を遂げていた時代、「貞操は美徳」という概念は 世間一般に広く受け入れられ、
普遍的な価値観として世に君臨していました。しかし、「貞操は美徳」という概念が崩れ、
フリーセックスという概念が世に浸透するとともに、理系に進む学生の数は著しく減少。
そう、『異性交遊に縁遠いと理系の道へ進む』という因果関係は、上記の推論規則のみ
ならず、歴史的事実からも帰納的に推論できる因果関係だったのです。
そして、理系の減少に伴い、日本の技術力は低下。”技術大国日本”の名は崩壊。
さらには、バブル崩壊・平成不況へと推移。未だに不況から抜け出せないのも、
技術力がないゆえの国際的競争力の欠如が原因。
つまり、 今、日本を襲っている不景気風の原因は、性文化の開放による理系減少。
これだったのです!(ビカー!(←雷光))
もう解ったでしょう。今、日本が不況から抜け出すために必要なのは、竹中案でも聖域無き
構造改革でもなく、『若年層の男女交際禁止』。これです!(ビカビカー!)
だから警察は、街中や電車内でいちゃつくカップルをガンガン取り締まるべきなのです!
電車内での抱擁は禁固刑!道端でのキスは懲役刑!未成年の性交は死刑!
これで日本の未来は安泰なのです! ニッポン、ワッショイ! ニッポン、ワッショイ!
◇
「こんなことばっか言ってるから、理系はモテないんだよ」
この文章を読んでそう思った人も多いでしょう。
でも、お生憎さま。割烹はこれでもモテモテなんですよ。
だって、さっきからクシャミが全然止まらないんですもの。
これはきっとね、世の女の子たちが「割烹さん、ステキ!」とか「割烹さんになら抱かれても
いい」とか、私の事を噂してるからなんですよ。グヒヒ。
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