歴史からの警鐘−歴史は繰り返す−


原爆はまた落ちるか?

太平洋戦争開戦当時の昭和16年に、昭和20年8月の原爆投下を予想できた人は、恐らく日本には、誰一人としていなかったとろうと思います。あんなに酷く負けるとは、誰一人として予想だにしなかったはずです。

旧体制の疲弊による組織の崩壊現象が起こり、同時に起こる財政破綻から一つの時代が終焉するという歴史の法則は、いつの時代にも当てはまります。明治維新や太平洋戦争はまさにその実例です。
近年のバブルの発生も体制転換を伴わない景気回復の手段として、採用され後に深刻な禍根を残しましたが、私はこのバブル期間を太平洋戦争の初期の段階と同じと捉えています。帝国主義万能を信じていた軍部の起こしたのが太平洋戦争であり、これにより軍部自身が壊滅してしまったのはイソップ童話のような歴史の事実です。
公共工事万能論による景気回復はありえません。それは戦艦大和を作っても戦争には勝てなかったように、公共事業という戦艦大和をいくら作っても景気は良くなるどころか、逆作用が出てきます。つまり長期金利の上昇とか、国債を多く引き受けている日本の銀行の信用力の低下など、ますます現体制が崩壊に向かうようになります。

私は現在は丁度昭和20年4月頃ではないかと考えています。現在の株価は16000円で、なにか悪い予感を感じない人はいないでしょう。
つまり、体制転換を伴うポツダム宣言を拒みながら戦争を続行させた帝国陸軍と現在の自民党/霞ヶ関は全く同じ存在であると思います。開戦を決定させた東条内閣以降、首相が短期間に変わりましたが、バブルを発生させた宮沢氏以後の首相も短期間に交代しています。つまり根本原因を取り除かない限り事は解決しないのです。
かつての陸軍を支援した産業や人間が数多くいたように、自民党支持者も数多くいます。自民党の政策の欠点は、一部の人たちの権利を守ろうと固執するために、国民全体が良くならないことにあります。
現代の広島原爆とは、国債の大量発行による、国債の信用低下で国債の引き受けて手がいなくなることでしょうか。(私の祖父は太平洋戦争当時戦時国債を御国の為に買いましたが、戦後全くの紙切れとなりました。)これは国債を大量に保有する銀行の焦げ付き債権として新たなる問題の発生に繋がります。
それと、長崎の原爆に匹敵するのが、円安でしょうか。現在の購買力平価は160円と思いますが、少なくとも160円までは下がると思います。これは日本から海外への資金逃避が起こると予測しています。これにより日本経済は壊滅的な打撃を被り、トランプの全とっかえ的な再スタートが必要になると思います。

要するにもう一度ゼロから出発しない限り、しがらみが多すぎて何も手を打てない状況です。倒産寸前の会社とよく似た状況にあります。
本来の三権分立、生産者中心から消費者中心の体制への変革、規制の撤廃など、霞ヶ関/永田町の体制崩壊に繋がるようなことですが、ここを通らない限り日本は良くなりません。
明治維新、太平洋戦争と過去の歴史は大きなうねりの中にありました。よってこれからの歴史も平坦なものではないと思います。明治維新は成功の内に変革に成功しましたが、太平洋戦争は、間違った指導者の選択で300万人以上の死者とアジアに1500万人の死者を出す結果を招いてしまいました。現在1日90人の自殺者を出していますが、神の国発言をしているようなリーダーで日本のこの窮状を打破できるでしょうか?殆ど広島原爆投下の秒読み段階に入ったといえるでしょう。

歴史の類似点を更に探すと、昭和初期の田中義一内閣の疑獄事件(陸軍の莫大な機密費を個人的な資金に流用)が、田中首相のロッキード事件と名前もモラルハザードという点からも酷似しています。又”省益あって国益なし”など帝国陸軍時代と全く同じで、戦前昭和天皇が、陸軍は愛国といっているが、それは全く表面的な発言で実は、自分たちのことしか考えていないではないかと激怒されたという逸話があります。
さらに不安をかきたてるようで申し訳在りませんが、1923年の関東大震災も、その後1929年のウォール街の大暴落に歴史は繋がっています。つまり現代の原爆とは新たなる大震災です。よって、現体制はいやでも崩壊に向かうことになります。

大正のデモクラシーが線香花火で終わり、本来日本が進むべき道をはずしたツケは非常に大きかったといわざるを得ません。変革を好まないものは、滅亡するという歴史の法則があるからです。19世紀の産業革命はまさに変化に対応した国家と対応できなかった国(植民地化された国)に分かれてゆく結果になっています。
まさにこれから10年の国家運営は21世紀の日本の運命を決める非常に重要な時期にあると言えます。賢明な国民となるか、再度絶望の淵に落ちるのか我々の政治選択に掛かっています。

文京区 岡戸知裕 Email: tom-okado@hat.hi-ho.ne.jp


生活者通信第63号(2000年11月1日発行)より転載