句集
噪 鳴 より
春暁
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万緑を和へて食みたく欲る心
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若き日の句碑に緑の風遊ぶ
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八十五友の帰真や落椿
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はくれんの模様となりて空透ける
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口説きつつ功徳を積むか彼岸婆
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春暁や帝鳥を聞く有難さ
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土割りて気配覗う蕗の薹
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目で香り匂はせてくる蓬餅
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番犬が預かってゐる麦の秋
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母の忌に次ぐ叔母の忌よ梅青し
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渋り腹げんのしょうこは母の顔
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敗戦忌 平成9年1月号
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敗戦忌戦勝記念碑巡り来て
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父の忌や勲章手廻す秋灯下
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木犀に余香八十八祝ふ
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| 武者行列草鞋関せず灼舗道
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選挙カー案山子は身体障害者
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門を閉づ開放地主の蔦紅葉
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| 念仏をしつつ枯菊老婆焚く
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目に紅葉心は荼毘のはらからに
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一樹から散りて別れの紅葉かな
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これがまあ俺の位牌か初笑い
浩然
俳諧浄土主人弟、浩然和尚の俳句、終戦時、弟玉砕の報あり造牌供養す。
翌年正月一日生きて帰還の浩然和尚の一句。その弟、今永眠す。
| ほんものゝ位牌となりて八十の暮
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舎弟逝く年賀はがきを買い置きて
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盆の沙汰
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梅雨の柵中里介山ここに在り |
蛞蝓の這って螺鈿の鉢となる |
骨抱いて墓なき人の盆の沙汰 |
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雲水と舞妓すれ合う片陰り |
枯山水目より入りくる滝の音 |
父の日と言はれて父の日なりけり |
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半開のバブルの禍福青い山 |
寺若葉故人の時計刻み居り |
核実験平和は遠しパリー祭
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親が居り兄夫婦居り盆帰省
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台風一過瀬音逆さに鐘を撞く
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碁敵
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行く雁よ湖面にひびく神楽笛 |
裏山に雉鳴く日なり母の忌よ |
ひとゝきを舞楽目で聞く花吹雪 |
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樫落葉亡き母焚きし日を想う |
梅たわわ母の忌二十三年に |
柿色づく数えし母の今や亡し |
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初景色目を閉じダムの底を見る |
碁敵のお出でましたるお元日 |
満悦を風呂にひたりて遠蛙< |
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新年会定年教師名刺交ふ |
初富士へ富士へと山波海の波 |
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春浄土
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野も山も百色百光春浄土
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背高泡立草占領軍に見ゆ
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住持かと村里をきく暦売り
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歳聞いて世辞を失う年始客
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ダム干いて市民のいのち計られる
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山茶花に人の佇む難解の碑
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庭石が商談に飽く大晦日
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年賀書く後より受くる喪の報せ
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泥酔に誰何されしもお正月
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焼芋が出て震災が目をよぎる
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嬰児の我の唯かなり木の芽吹く
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流燈
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椿落つ五色に咲いて音一つ
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校庭の目に在り口に卒業歌
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侵略を帰化としタンポポ本土占む
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十薬を採り尽くしてや病む男
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叩売りバナナを買ひし語り種
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手に掬う伏流水やほととぎす
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田植機と時世を隔つお八ッかな
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夕立もそこまでは来て浄土晴
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花茣蓙に添寝の母の置き去られ
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流燈の戻るをなだめ手波立つ
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落椿
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松落葉の如くありなむ夫婦句碑
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甘茶かけ一滴は目に婆合掌
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気負いげに整列させて甘茶番
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下校時の子に浴びせらる甘茶佛
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渦巻より逃れ出でたる落椿
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落椿瓦礫と見れば呻き声
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二人行く一人は濡れる遍路かな
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剪定の傷に命の水はしる
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木の芽晴万朶の雫陽を宿し
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梵鐘を怪しみ解せず蝶去れり
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万両
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子離れて娘の一人くる女正月
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万両を活け軸は本来無一物
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寒念仏睨のきかぬ嫁が君
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日向ぼこ一処穴あく程みつめ
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ダム涸れて父祖の生活の畑の跡
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湖の町高速道より凧も下
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仕手の手に渡るも知らで山眠る |
世の鬼が打たれて見たく節分会
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平成の陽を縄文へ土返す
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風林火山
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静脈に似て春川の海に入る |
麗かや海はすべてを忘れさす |
風林火山の旗が許さじ葡萄郷 |
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世の中に動き出したる花筏 |
シャボン玉一生を見せ消えにけり |
結ばれて解けて元の弧蝶かな |
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茶摘女の話に株の妨げず |
みの虫に天は逆さと問ひ見たし |
開眼の愛の歯ブラシ新樹光 |
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五月晴れ邪魔にはならぬ富士の山 |
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無芸の芸
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忘年会無芸の芸に湧く拍手
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白い息吐いて題目地を撥ねる |
冬うらゝ忌の笑声も供養なり
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有難や南無阿弥陀仏年暮るゝ
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大辞林枕に伸びる冬日射
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太古絶つ夢の大橋冬もみじ
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立冬の鯉観客の餌を余し
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春一番
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名月やかつては湖底の祖を照らす
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貝塚や砂丘に立てば秋の声
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穴まどい老人ホーム南向
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煩悩の百八越すか師走中
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星月夜機影北斗に背き行く
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元日や匆々眼鏡置忘れ
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乗り継ぎてアルペンルート冬隣
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初日の出孫高々と二度三度
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目こぼしの草にぞ花のいじらしき
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春一番人さまざまに黙し居り
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紅葉狩
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渋滞の車窓に葡萄の籠照れる
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血脈の流れのごとく盆帰省
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小使を貰って孫は敬老日
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雪頭巾腹に懐炉の富士の山
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座禅する富士に戯むる秋の海 |
百日紅他生の縁の墓参り
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茸狩り遥かに見ゆるビルの茸
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鶏の木の実追いかけ糞一つ
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紅葉狩火消の如く騒ぎ立て
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天の川眼を閉じて観る座禅かな
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新幹線
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ダム工事迫る運命の芝ざくら
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頬杖のはずれ春愁そのまゝに
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恋猫の仲をとりもち居眠りの
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主なき句碑に緑の風遊ぶ
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人生は弥陀に預けて午睡かな
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風落ちて動く物なし夏の庭
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新幹線青大将の目を掠む
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福寿草キセル啣へる父の影
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黒光る重文民家春立てり
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ぬくめ合い呟き明くる塒鳥
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燃え尽きて色即是空曼珠沙華
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蟻地獄
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世の中は同じ風吹く蟻地獄
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涼しさをゆらして弁天池の銭
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句碑立てゝ年重ねつる百合の人
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ダム干いて祖田に通う好奇心 |
棚経やここにも掲ぐ兵の額
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音沙汰のなければ句碑に穴まどい
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アンテナを持って生まれし蝸牛
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大花火闇押しのけて返さるゝ
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行く程に止んでゆくなり虫時雨
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赤い羽根つけ放鳥のごと消ゆる
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会者定離 平成9年4月号
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会者定離来住一人椿落つ |
悉有仏性正月おせちに先ず合掌 |
初夢の初旅青い国を見る |
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初診日は只飲み過ぎと聴打診 |
少欲知足硯海を干し吉書かな |
初富士の尼公の如し御来迎 |
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山起きて鼓動高まる渓の音 |
石仏へ参るがごとく蕗の薹 |
園児卒名前書くことだけ覚え |
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春一番雉の出て来ず暮れにけり |
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ヘールボップ
平成9年7月号
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回遊のヘールボップに夜や短か |
来客に失礼侘びる四月馬鹿 |
花御堂帰化タンポポも所占む |
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五月節句武者の如くに孫座る |
菖蒲湯に余生を沈め腕を撫す |
人質の解放春の海を越え |
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鯉のぼり隣の庭へ影落し |
母の日の母に母あり車椅子 |
句碑祭いくとせ棕櫚の花に逢ふ |
初富士 平成11年3月号
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落葉掃く余生八八の六四
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帰り花色香も薄く実も入らじ
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広告の程には買わず師走かな
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初夢の飛行士夢の宇宙婚
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初夢やラッシュアワーの宇宙基地
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初富士の独坐大雄峰波に聞け
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四元号生きて賀状のババを抜く
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二人三脚 平成11年7月号
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亡き人と見られ永ふ敬老日
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臘八や異人に開く無門関
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老梅や二人三脚五十年
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花粉症又一人乗り路線バス
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滝龍と化し万緑に紛れけり
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万緑を絞りてダムの放流す
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余生なほ囀りに起き鐘を撞く
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師走空 平成12年1月号
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虫時雨二人心の傘の中
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祝長寿泣く人のあり敬老日
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葉辷りの思出遠し彼岸花
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柚子ひとつ他生の縁の貰い猫
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布団干すくるまりごっこ他所の子も
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文化の日益々殖ゆる廃棄物
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先づ会って又うどん屋で酉の市
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火の用心字幕あらたに師走空
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他生の縁 平成12年4月号
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冬の蟻考へて居り動き出す
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賀状にも他生の縁の重みかな
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大合唱悉有仏性初日の出
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山眠るバブル禍の山も中にあり
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木魚の音に馴れたる嫁が君
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核弾頭の化石夢見て日向ぼこ
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ためらいの国旗建国記念の日く
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接木 平成12年7月号
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接木も臓器移植も諸法無我
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花御堂台より低く婆注ぐ
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石垣に彼も独尊すみれ草
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花の雨日を打つ音は師の声か |
少子化の議論百出明易し
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月給袋かかえ良性五月病
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紫陽花のほどには変化なきたつき
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ダイヤ婚 平成12年10月号
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蛙きく古池の句に参禅す
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子に情かけて祭りの金魚売り
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富士山を奏づ忍野の泉かな
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鳥渡る国際婚の句碑一基
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震災忌地の胎動を吾がことに
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動かぬとなったら蝦蟇の意固地かな
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ごつい葉の八ッ手の花やダイヤ婚
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宇宙移住
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寂聴の姿に富士の裾もみじ |
敬老の日は町長子の如く |
夏季五輪空は地球を一包み |
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大寒や赤提灯に人消ゆる |
犬の目の怪しく聞くや朴葉落つ |
若井汲む滾ゝと太平の曲奏づ |
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初夢や宇宙移住の志願パス |
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地球公園
平成13年1月号
| 地球公園正月休暇南国で |
餅搗くや子供の声をつきまぜて |
酒に人呑ませて新年巳の笑ふ |
| 小鳥にも会話あるらし初湯殿 |
焚火の輪おじさん幾つと声かかる |
寒梅を活け忍耐の二字の軸 |
| 新年の賀辞も笑いの隣る仲 |
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少子化
平成13年4月号
| ケーブルも山と一緒に笑い出す |
さっさっと最前席へ彼岸婆 |
少子化に代母議論や明易し |
| 虹立つや心経の色即是空 |
早起きは三文とやらほととぎす |
父祖の史沈めてダムの緑となる |
| 風死んで寄らば大樹の蝉の声 |
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重文民家
平成13年7月号
| 本陣の火代の寒く史のあと |
武者行列纏突き上ぐ秋の天 |
銀杏拾い遠い昔のことゝなり |
| 投宿の叶い巡礼落葉掃く |
法輪を踏んで90年迎う |
初夢や三脚風情ミール墓地 |
| 女正月もう一泊と電話くる |
学習の重文民家炉火ゆらぐ |
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自爆テロ 平成13年10月号
| 終戦日知る人ぞ知るその一人 |
水打つやうまく避けたる郵便夫 |
終戦日塔婆をあげに未亡人 |
| 防災と言う日の朝のビルの火事 |
被爆手帳持って誌友のダイア婚 |
同時多発生中継のテロ事件 |
| 自画賛に終わる自爆のテロリスト |
変化なき予約年賀の葉書書く |
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紡ぎ歌
平成14年1月号
| 落葉掃くまだ丈夫かと世辞のあり |
年賀状来て幽明境隔つとは |
初富士や皇孫誕生噴火せじ |
| 泣初や乳呑児あやし睨まれし |
床軋む本陣舘蕗の薹 |
万音に勝る梵鐘花かすみ |
| 母逝きて三十二春紡ぎ歌 |
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脳死論 平成14年5月号
| 献体者炬燵に眠る脳死論 |
なむなむで安心遍路無事の人 |
一喝に少し振り向き恋の猫 |
| 春愁や当って砕けず音の沙汰 |
つつじ滝句念の人の滝不動 |
棕櫚咲くや句碑は二十に主米寿 |
| 遠慮する程の長寿や実梅落つ |
センサーに人驚かせ猫の恋 |
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蝉しぐれ 平成14年7月号
| 万緑を出て万緑に鐘消ゆる |
釣鐘草鳴らし下校の子供達 |
少子化に誉れの如く鯉のぼり |
| 蝉しぐれ婆石段に小休止 |
水に生き又洪水に悩まさる |
上下水還元しては清水かな |
| 見せらるゝ水百態の中に生く |
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平成14年10月号
| 山茶花を膝に耽りて思羅漢 |
定年なき父母に勤労感謝の日 |
難聴へ孫の言葉の息ぬくし |
| ご破算で願ひましてはお元日 |
正月も近く富士山初化粧 |
初詣もまれつ電話かゝりくる |
| お年玉下の二人は札数で |
任せざる自然に任せ大晦日 |
どんどや焼それぞれ願ひ咒いて |
紅葉狩 平成15年1月号
| 敬老の日を本人は忘れ居り |
身に泌や力みて風呂に沈みけり |
万燈のごと群落の曼珠沙華 |
| 人類の化石に文化の日を重ね |
紅葉狩りなんて虜にされて居り |
ドライブイン連トイレやら連おでん |
| 忘れ帽被りて人の冬めける |
百歳の人と思へず石蕗の花 |
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涅槃図 平成15年4月号
| 成人式二十の文字の別れかな |
涅槃図に黙るどころか泣き返す |
節分会世の鬼あつめ福はうち |
| 弔切りの母の影さす梅の花 |
忠勇院の塔婆を杖に彼岸婆 |
雛つれて春一番の翌日かな |
| 春一に信号無視の新聞紙 |
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生死一如
平成15年7月号
| 縁に腰奥では女子の歌留多とり |
バス停へ咳きして一人又一人 |
狡るい子に訳を話して甘茶番 |
| 春愁や老いの緩みの腕時計 |
俳人も生死一如の遍路かな |
木魚も色に出にけり梅雨の音 |
| 落梅の淘汰とは言へ見事かな |
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短夜
平成15年11月号
| 健忘や開襟シャツのポッケ撫ず |
短夜を破り暴走族一過 |
夏痩せを自ずと知れる腕時計 |
| 時の日の時計屋に居て正午かな |
雨宿り我が家の見へて夕立かな |
帰省子を吠えて家犬の体たらく |
| 句友逝く螺鈿の畦が遺句集に |
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旭日賞
平成16年1月号
| 宣言を告ぐ天皇の声偲ばるゝ |
蝉落ちて大地を床に往生す |
坐禅組む打成一片虫の声 |
| リウマチの父触るゝごと墓洗う |
錦秋や旭日賞の初女性 |
五右衛門の辞世の一句文化の日 |
| 暦買う年齢表から外されし |
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億土から
平成16年2月号
| 億土から賀状も来ねば出せもせず |
松飾すませ一服立ちばなし |
落葉掃き老の箒の右ひだり |
| 万歳や難聴手話に暇乞い |
年酒や老老介護お積りに |
新築に万歳寄せて笑ふ門 |
寒の夜半
平成16年4月号
| 寒の夜半メモに頭年の時の経つ |
初音きく千万両の寝耳かな |
泣き崩る着の身着の侭涅槃の図 |
| 老梅に妣の影消えて暫し立つ |
及落を見て見ぬ振りの餓鬼頭 |
木魚の音にも知れる寒の明け |
| 一杯が何となく欲る蕗の薹 |
久闊をいやす彼岸の墓参り |
四枯四栄日没月照涅槃の図 |
寝釈迦
平成16年5月号
| 大往生呼気延長の寝釈迦かな |
手敬のマスクの人の忘られず |
お祓に逃げる方なき紅つばき |
| 妣の声や彼岸の入りの夢うつつ |
春の風邪秒針虫のごと運ぶ |
光号さくら前線何の其の |
| 花まつりゲートボールの老男女 |
青大将新幹線に仰天す |
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落し文
平成16年6月号
| 四月号額に眼鏡在りどころ |
気をつけて言ふ間に転ぶ雪の下 |
招魂祭桜吹雪に白い髪 |
| 花御堂葺くや岡目の囁きに |
動物園蚤とる猿も料金に |
我いれて十九羅漢芽木の山 |
| 五月雨や生死をつなぐ心電図 |
妻の呆け昼寝朝寝に違へられ |
おみくじに覚しく拾ふ落し文 |
五月晴
平成16年7月号
| 五月晴予感の当救急車 |
万歩計一病息災ほととぎす |
朝顔の句を誦し蛇口ひねりけり/b> |
| 国際婚奉納句帳鳥雲に |
栓を抜く炭酸水の夏の音 |
ご遍路や御飯とご判いただいて |
| みどりの日煙草一服展望所 |
子供の日伯父御の先生遁走す |
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父の日
平成16年8月号
| 落ち椿故意の如くに頭打つ |
西行碑文字の難解に苔つかず |
高見より下りるを神輿先拂い |
| 色恋を見せて蔓延る蛇いちご |
海開き水着のショーに波狂ふ |
栓を抜く炭酸水の笑はする |
| 梅雨晴の土日予感の救急車 |
織女星伝説ならぬ中国女 |
七夕や宇宙飛行士恋に落つ |
| 父の日や父に父あり墓参り |
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景気厳し
平成16年9月号
| 山寺や南瓜の一句嘲笑ひ |
西行の腰掛石や蝉しぐれ |
夏椿頭に落ちて誰何かな |
| 河童忌や橋は流れて月止む |
作務僧の大暑の構へ国師めく |
鶏頭が又通行人と話してる |
| 要害に残る野菊や足のあと |
暑気厳し瑞巌只呼ぶ主人公 |
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江ノ島没す
平成16年11月号
| 江ノ島没す震災今昔物語り |
脅かされ入れば本所穴まどい |
敬老の日二者択一の電子辞書 |
| 茸雲消えて拡散燻り出す |
背の子が目で球拾ふ野分けあと |
秋彼岸貴寺は浄土真宗か |
無病息災
平成16年12月号
| 勤労や無病息災感謝の日 |
来客に昼寝繕ふ暫しかな |
熊手より孫の手が欲し酉の市 |
| 反芻の牛にも秋思ある如し |
秋場所や消音見る診療所 |
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大根引き
平成17年1月号
| 大根引き大地に諸手放しけり |
渋々と座布団を退く正月猫 |
裏山の狩猟解禁愚痴もまた |
| 切符拝見お年玉袋の間に出づ |
相席す流感注射で合ひし人 |
転がりて弾む賽銭寒の声 |
| 湖の黙相模湖事件五十周 |
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拭き掃除
平成17年2月号
| 拭き掃除冬至南瓜もあと十日 |
煤払ひ足踏みミシン又保存 |
文字通り師走笑ってお茶汲めり |
| 決済後新規通ひで年用意 |
焚火の輪町村合併歪見ゆ |
年の暮会へば一期の別れとも |
| 余り物ならぬ焚火のサツマ芋 |
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父よりも
平成17年3月号
| 父よりも母よりも生き九十七 |
元日の郵便配達裏から来る |
出せば来ず出さねば来るし賀状かな |
| 初詣足音絶へて一日来る |
帰路尋ね帰りし嫁に初笑ひ |
鳥鳴きて鏡餅降る山の神 |
| 書初の子等に息みて顎で書く |
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春の富士
平成17年5月号
| 芹龍の遠くて近し孫のあし |
野火畦火裾を焦がして山覚むる |
喫茶去や啄同時の和煦の日よ |
| 遠足の早起き朝西夕ひがし |
ミミの日や補聴器子等の贈り物 |
卒業式祝辞に残る窓の雪 |
| 春の富士法を広げて日本一 |
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花まつり
平成17年6月号
| 花まつり支度良しかと考の声 |
花まつり玄爺店より甘茶番 |
瞬も出来ずうれしく甘茶番 |
| 甘茶継ぎ一期一会の人去れり |
下校時僧も手伝ふ甘茶番 |
花御堂立たす佛の無一物 |
| 花御堂八万四千の法の花 |
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虹の橋
平成17年7月号
| 春一一過出る出る芥が失せ物が |
ドライブや戦時がよぎる麦の秋 |
子供の日爺婆の日はなぜないの |
| 母の日や妣よりも生きて母は母 |
猫は鼠今日はバードデー分かるかい |
人生は色即是空虹の橋 |
| 五月雨や聞くも聞かぬも五月雨るる |
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蛍とり
平成17年8月号
| 国際婚鳥雲にの句碑見る度に |
杜若知る人言はず物納地 |
時の日や駅の時計に時合はす |
| 祭月空を自由に復習かな |
蛍とり足をとられて星を打つ |
紫陽花に今と言ふ今色のあり |
| 父の日や唯合掌す父は亡し |
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七夕
平成17年9月号
| 七夕や竿の届かぬ天の川 |
雛僧のナムカラタンノ−盆の経 |
作礼而去盂蘭盆法話父母の恩 |
| 二人聞く一人は芭蕉蝉の声 |
中元の極り文句の礼手紙 |
夏季休暇通信簿は胸に伏せ |
| 冷やかして鬼灯二タ鉢これも縁 |
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平成17年 月号