※「Sleeping Beauty」 SAMPLE




地球連邦軍に民間人の身分から「強制」入隊させられて…そしてその後、連邦軍大尉として生きていくしか道しか選べなかったあの時代…

まず「安眠」とは無縁であった。

勿論、戦場に身を置く身分ならば大抵の人間が「安眠」など出来ないだろうが。しかし戦争が終わっても、あの「軟禁時代」は更に辛いものであった。精神的にも自分は「死んでいた」のだろうから、安眠など出来るはずもない。身体も心も不調のままで…ずっと…自分はこのまま「死んでいるまま」なのか、と。…あの彼に再会する事も出来ないで…

このまま…ずっと……??

ただ空しい日々が、虚ろに過ぎていくだけの地獄の様な生活の七年間だった。


そんな辛い時代も経て…

とにかく色々とあって、無事にネオ・ジオンに亡命し、自分はシャア・アズナブルの生涯の伴侶となった。これで永遠に彼と一緒に居られるのだ。彼の隣で眠る事にそれは最大の幸福を感じている。
それからはあんな「不眠」とはすっかりお別れ出来たのであった。彼の隣ではいつもぐっすりと眠れて…

そう…お別れしたハズであったのに……



「ん…?!」
自分の隣で寝ているはずの気配が無い事で、シャアの意識は一気に覚醒する。
アムロが居ない。こんな真夜中に起き出してベッドから離れるとは、彼にしては珍しい事もあるものだ、と考えた。
…今夜はセックスをしていないからな…シーツは未だ温かいか…)
何気なく意識を巡らせてみる。愛の力?故にで強く繋がるその能力のせいか、彼には愛しい妻の存在はすぐに捉えられた。
「ふむ…自室に居る様だな」
シャアは静かにベッドを降りると、素肌にガウンを羽織ってアムロの自室へと向かった。


総帥公邸の二階は、総帥夫妻が使用する様になってから、彼ら専用の部屋は内部で全て繋がる様に改築されている。つまりわざわざ廊下へと出なくとも、寝室から夫婦専用居間、そこからアムロの部屋へと続く扉があるのだ。灯りが着いている事と部屋の中の彼の気配はハッキリと解った。
「アムロ…こんな時間に何をしている?」
ノックと共に返事は待たずにシャアは扉を開けた。
「…わわっ?!…シャアっっ起こしちゃったっ?…ゴメン…」
アムロは振り向いて、驚きと謝罪を一度に向けてくる。寝室には時計を置いていないが、この部屋の時計を見ると…
今は午前二時半頃…
「構わないよ、君が心配で来ただけだ…こんな時間に急ぎの仕事なのか?」
ディスプレイに向かって盛んに入力を繰り返しているアムロに、シャアは近づいてそれを覗き込んだ。
「…ん……まあそんなに急ぎではないのだけれど…夜中に目が覚めて…急に気になってさ…」
これはMSのジェネレーター部品の何処かの設計図だな…とシャアにも理解出来る代物であったが。
「その気持ちは解るが…朝までちゃんと寝て、日中に取りかかるのが一番良いぞ。身体に悪い」
「うん…解っているんだ…けどさ…」
シュンとうなだれてもピピピ…と入力を止めないアムロを、椅子の後ろからシャアはそっと抱き締めた。
「眠れないのかい?」
「……そうなのかも…」
「そうか…昨夜も今夜もセックスしてないからな」
シャアの掌がそのパジャマの上からアムロの胸を弄る。
「…?!…ばかっ…何言って…んっ…」
ビクンっとその敏感な身体はシャアの予想通りの反応を返してくる。
「…眠らせてあげようか?」
掌の動きは更に目的を持って不埒になり…そしてシャアはアムロの項に軽く唇を押し当てた。
「んんっ…い、今から…したら…朝起きられないじゃないかっ…絶対にダメっ!」
流石に今度は振り向いて、赤い頬で自分を思いっきり睨み付けてくる妻を、シャアは「本当に宇宙一可愛いぞっ!」と心が和んだ。
「おや?別にセックスする、とは言っていないが?」
意地悪く笑ってみせると、アムロは一瞬大きな瞳を更に大きく見開いて…「ばっばかっっ!」と小さく叫び、からかうなーっと殴り掛かってくるポーズを取ってくる。この恥ずかしがる彼の態度も「本当に本当に宇宙一に可愛いらしいのだからして♪」と再び頭の中で惚気る、そんな宇宙一の愛妻家は誰にも止められない。
「まあとにかく、これ以上私を心配させたくなかったら、作業を止めたまえ」
「………うん…」
確かにこのまま自分が起きていたら、絶対にシャアも一緒に起きているよな…激務の総帥閣下にそれはマズイ…と直ぐに判断したアムロ「総帥夫人」は、ディスプレイを落した。
「いい子だ」
アムロの頬に優しいキスを落すと、シャアはそのまま軽々と彼の身体を抱き上げて、寝室へと戻る。
妻の身体を抱いたままベッドに腰を掛けて、ゆっくりと優しく唇を重ねた。優しく甘く、時には激しく…何度も角度を変えて…いつもの様に最大の愛しさを込めて。
「…んっ…ふっ……」
時折漏れるアムロのその甘い声がシャアを喜ばせる。長い長い真夜中のキスタイムは、アムロの寝息が聞こえ始める頃に終わり、シャアもその姿に安心して再び眠りの中へと戻っていった。


次の夜はセックスをしたので、アムロも朝まで目覚めなかった様だが…
あの夜以来、彼はセックスをしない時は特に(早い話が疲れていない夜…という事か…真夜中に時々目覚めてしまうという現象が続)いてしまった。
しかしシャアもその気配を感じて必ず起きてくれて、長いキスタイムを与えてくれる。それでアムロは再び安心して眠る事が出来ていた。
「…シャア…キスして」
そんなおねだりも聞かせてくれる様になった事が、シャア自身にはとても嬉しい。
熱いキスを何度も繰り返していると、そのまま愛しい妻を抱きたくなるのだが、それら及んでしまうには、アムロが朝に起きられないかもしれないな…という時間帯だった。
だが一度着いた欲情の炎は消すことが出来ず…
「ぁあ…んっ…だっダメだよっシャア…」
「君を一度イかせてあげるだけだ…優しくする」
シャアの指がアムロのパジャマのズボンの中へと入り込み、不埒だが目的を持って動き出す…

 

 

     ※続きは「Sleeping Beauty」本誌でどーぞー※