SENSIBILITY

 

 

ああ…頭がクリアになっていく…
研ぎ澄まされる感覚…Inspiration……
考えるより感じる…そういう「感触」だ。

その瞬間、頭の片隅に引っ掛かり残っていたモノに対して、いきなりハッと閃いた。

「…あ…!解ったぞ!Dデバイスは…スラスター値を逆に0.05上げて…Sグラビ値を0.2下げてみればいいんだっっ!」

 

----突然叫んだアムロの声に弾かれる様に、その嬉々とした表情をシャアはまじまじと覗き込んだ。
「ふむ…何かモビルスーツ関連で閃いたのかね?」
「うんっ!今日一日悩みまくってたバランス値!やっぱり最初の考えで良かったんだー!
ああ…何だか今ねっっ突然閃いたっっ!明日の朝にすぐに調整しなくちゃっっ!」
「そうか…それは良かったな……ところでアムロ」
「うんっ明日は早めに出て……って何?」
「…君は今、自分がどういう状況かは理解しているのかな?」
「え…?…どういう状況…って……あっ!…えっとぉ…」
今気が付いたような様子にやはり少々腹が立ってくる。
「…口に出して言ってみたまえ」
「ええっ?!……あ…の…怒っている…?」
恐る恐る上目遣いで見てみるその顔は…笑顔を作ってはいるが…明らかに引きつっていた。
「さあ、言いなさい」
「あ…あはは…ゴメン……えっと…今は…」
「今は?」
「…その…貴方と………ベッドの…中です…」
「ふむ…その通りだな…では聞くが我々は何をしている?」
…ああ…ごめんなさい…本当に怒らせてしまったみたいだねっっっ

「………
セックス……の…最中……」
全く聞こえないな」
答える小さな声にはやはりご不満である様子。
「…うう……せっ…セックスしているトコロですっっっ!!」
「その通りだ……私はこんなにも一生懸命に君を愛しているトコロだというのに」
「…………はい………」
「君の温かい胸に顔を埋めて唇で愛し、君の柔らかい太股を丹念に撫で上げて、君の最も敏感なトコロを指で愛して…君はあんなに声を上げて感じてくれていたというのに…」
「…あーのー…い…いちいち言わなくても……」
「いや、それともあの声は演技なのかね?…私の頭の中は君への愛し方で満杯であるというのに…君の方はよりによってMSメンテナンスの数値を考える余裕があるとはな…」
「だ…だからねっっ…それはっっ…」
シャアから感じるその感情が本気でコワイ。
「…よく解った……そんな余裕を与えるな、という事なのだな…?」
「ええーっっ?!ちっ…違うっって!ちょっと待ってーーシャアっっ!!」
いきなり両手首を強く押さえ付けられ、シャアの全体重を身体で受け止める形となる。
「やっ…やだっって!乱暴はイヤだっ…て……っっ!…あっっ…ああーっっっ!!」

 

「…やっ…イヤ……はっ……ぁぁ……ひぃ…あぁ…っ…!」
「…イヤだと言っているわりには……凄い締め付けだな…」
「っっ…ああ…!…んん……はあっっ…ぁあっ…!やっ…シャ…ぁぁあ…!!」
「もっと良い声を聞かせてみたまえ…」

 

ぐったりと弛緩しているアムロの身体をその胸に抱き止めて、シャアは充足感に浸っていた。
「……乱暴に…しない…って言ってたクセに……」
ポツリと漏らすその声の主の、柔らかい癖毛を優しく撫でながら平然とやや傲慢に言い放つ。
「私の事以外は考えられなかっただろう?」
アムロはシャアの胸に顔を埋めたままで溜息を付いた様子だ。
「…だから違う…ってば……シャアとの…その…セックスが……何だか違うんだよ…」
「何が違うと?……だいたい誰と比べているのだ?」
再び不機嫌になりそうな声色に、アムロは慌てて顔を上げた。
「比べているんじゃなくてっっ…!…違うんだよっっ!気持ち良すぎてそうなるんだってっ!!」
「…?」
「あっあのねっっ…シャアと…セックスしてる時……凄く気持ち良くて…その……感覚がとても鋭敏になっちゃうカンジが…してくるワケ…で…」
何かの告白のように、頬を赤く染めて恥ずかしそうに呟くアムロの顔は本当に可愛いものだ。
「何て言うのかな……?…全ての感覚がクリアになって…色々と…そして急に頭の中が凄く……冴えちゃう時が…あるんだよ」
「ふむ……君のニュータイプ能力が冴える、とでもか?」
「それは良く解らないけど……いつも必ずとかじゃないしさ……今夜はさっき来たケド……来るのも…色んな時に…だし……」
「ほう…色んな時にね」
「昼間…凄く悩んでいた事だったからさ……本当にゴメン…口に出すべきじゃなかったデス…」
心底すまなそうな困った顔をするので、何か意地悪な事を言ってやりたくなった。
「解っているのならそれは良い……それより色んな時、と言ったが」
「…?うん何か…?」
「それは大抵……君がイク時かな?」
「!!…なっっ…なんでそんなっっ…べ、別にっっ…いっいつでもっいいだろっ……?!」
それはそれは可愛らしい程にタイヘン真っ赤になっているので…正解の様である。
「図星か…ふむ…これからは気を付けて見ていよう」
「見なくていいーっっっっ!!!」

 

「…参考までに聞きたいが…どのくらい閃くものなのかね?」
「…あん……何でそんな事聞きたいの…かなあ?……ん……
……まあ…最高で……設計図…とかぁ………あっそこ…ダメ……だ…」
シャアに下半身を好きにされるがままの状態で、響く淫らな水音がアムロの身体をますます熱くしていく。
「…設計図…?」
「…う…ん……ν …の…っっ…ひあぁっっ…!ん……ああぁぁ…ん!」
「ほう…ν ガンダム…をね…いつの事だ?」
「あ…貴方が……俺を…呼んで……そこで…したあの夜……何だか…凄いのが来て……
あっっ…ああぁ…っっ!」

ああ、あの夜の事か…と思い出す。
自分がネオ・ジオン総帥としてスウィート・ウォーターを占拠する2ヶ月前ほどに…内密にアムロをとあるコロニーヘと呼び寄せて、密会をした事があったのだ。あの時…アムロは自分の手を取らずに別の道を行くと宣言し…2人は別れの最後の(…とその時は思っていた)夜を、それはそれは激しく過ごしたのだが…
…そうか、君はあの時に、あの機体の姿を閃いた、というのか…。

今後あの白い機体を目にする度に、何とも言えない気分になりそうである…。

 

彼をこうして愛する男としても、少々複雑な気分になったのではあるが…。
ましてや、今は彼を「妻」として娶り、毎晩の様に愛し合う関係なのだ。
仕方がない…これはアムロのずば抜けたニュータイプ能力の為…であるだろう。
決して……自分の愛し方が足りないのではなくっっ!!
むしろそういう快感の高みにまで彼を持って行っている事を誇りに思わねばっっ!!
……そう…思わねば…ならん…!自分のプライドに賭けてもだ!

より一層己の技巧に磨きをかけよう、と決心した妙にプライド高い夫に…その妻は今後も毎晩散々啼かされる事になるのであるが…まあこれも幸せな愛の形…である。

 

 

END

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「良い夫婦の日」…に捧げる小話でした☆…あまりにもエロくなく…ゴメン…(2008/11/22)