※※ Outbreak Z 1.5 Sample

 

 

身体にあたる熱いお湯がとても心地良い。
ホンコン・シティの海に着衣のまま飛び込んで…此処の気候のせいか割りと早く乾いていた様だけれど…それでもあまり気持ちの良い感触では無かった。
アウドムラに戻るなり、自分に向かって何やら捲し立てる彼女をあしらって、自室に戻り直ぐにシャワールームに直行した。こんなにもお湯が気持ち良いなんて…久し振りに感じる。

身体も充分に温まった処で、タオルを腰に巻いてシャワールームを出る。別のタオルで髪を拭きながらの良くある光景で冷蔵庫の飲み物を物色していると…ふと、ドアの前にある気配を感じた。そのままドアの所まで歩いて行き、内側からインターフォンを押す。
「カミーユ…だよね?どうかしたのか?」
もの凄く驚いている様子が解り、暫くして遠慮がちな声がする。
『あ…す、すみませんっ…ちょっと…その…話したくて…』
アムロは自然と笑顔になる。
「いいよ…キー解除するから入って来て」
あの事件で…アムロと心が更に繋がった気がした。カミーユは無性に彼ともっと話したくて、部屋の前まで来てしまっていた。しかしどうしようか…と迷っている時に、いきなり中から声を掛けられて心臓が止まるかと思うくらい驚いてしまった。
ドアロックが解除される微か電子音の…五秒後あたりにドアを開けてアムロの部屋へと踏み込んだ。
「失礼します……ってっ…!?」
カミーユの視線に飛び込んできたアムロは、タオル一枚腰に巻いただけで缶入りの何かを開けていた。思わずドクンっと心臓が跳ねる。その感情に驚きながら彼は部屋の中へと入る。
アムロが近付いてきて、笑顔で「はい」と同じ種類の缶を手渡してきた。湯上がりの肌が自然と目に飛び込んでくる。剥き出しのその胸や腕…
------やっぱり…綺麗な肌しているなあ…
少し東洋系の血が混じっている様でもあるし…そのせいかもだけど。ああ、もっと見ていたい…
アムロがTシャツを着る仕草を少し残念に考えながら…なんでこんなにドキドキするんだ?と焦りも感じる。
------アムロさんは男なのに…
自分は彼とクワトロ大尉の「関係」を知ってしまっている。だから興味が湧くのか…しかし決して興味本位だけではないこのザワザワとした感情。
「カミーユが訊ねて来てくれるの、とても嬉しいよ」
客人にはソファーを薦め、自分はベッドに腰掛けてアムロは素直な笑顔を見せてくれた。
「あ…俺こそ嬉しいですっ…何だかアムロさんとその…もっと親しくなれる気がして…」
あの戦闘の後、確かにカミーユの自分に対する視線は更に変化してきた様な気がする。
「今まで以上に…戦闘とかっMSの事を教えて下さいっっ…だからっ色々と話したいんですっ」
何故か妙に熱い視線に苦笑しながらアムロは、彼に慕われるのはやはり悪くない気分だ、と素直に思った。
「ありがとう…クワトロ大尉以上には無理だろうけど、地球でのカミーユの『先生』は俺が頑張ってみるよ」
「…なんでそこでクワトロ大尉が出てくるんですか…」
露骨に頬を膨らませたので、アムロは更に苦笑した。
「そりゃ俺だってプライドあるからね…君をちゃんと鍛えなければシャ…クワトロ大尉に会わせる顔がないよ」
それだけの理由じゃないだろう、とはカミーユにだってはっきりと解っている。
-----解るんだ…アムロさんが大尉の名前呼ぶ時の…微妙な感情…がさ
ニュータイプの勘ってヤツなのか?アムロさんもそうだから余計に感じ易い。その感情が妙にモヤモヤしてしまうのだ。
まるで…これは嫉妬の様な。
「解りましたよっ…じゃあお願いしますっクワトロ大尉とは話していない事を特にっっ」
どう考えても嫉妬だ。
「んーと…じゃあやっぱりMK-2の操縦の事とか…かなあ?聞きたい事ある?」
でもアムロには通じてない様であったので…それはそれで良しとして、カミーユはアムロに考えられる限りの質問をしようっと決心する。
「で…カミーユはそんなにクワトロ大尉が嫌いなのかい?」
唐突に逆に質問された。しかもそんな事を…
「……嫌いじゃないですよ…好きになれないだけです…」
「ふーん…成る程」
正直に応えたカミーユの言葉にアムロは納得している様だった。
「そうだね…好きになるとまでは行かなくても…」
アムロの長い睫毛が伏せられて、微かに揺れている。
「色々と抱え過ぎちゃっている人だから…カミーユには最後まであの人の味方で居てあげて欲しい…って思うよ」
そんな優しそうに、そんな綺麗に…笑わないで欲しい…
自分には見えない二人の絆をもっと感じて、カミーユは再び露骨な不機嫌さを見せるのであった。


アムロとの会話は楽しい…と素直にカミーユは思う。
やはりMS技術的な事でアムロとは話が合う。
一年戦争時の体験話もMS技術の変遷を確認する意味でも興味深かった。そして…
------何だろう?アムロさんと居ると…温かくて優しい何かに包まれる気がする…
初めて出逢った時の…覇気の無さを感じていた時と、今の彼のオーラはまるで違う。この静かな温かさがアムロの本来のモノ…なのだろう。
------この温かさ…何故か懐かしい気がする…
もっと…ずっと触れていたいと思うこの温かさは……
アムロにもっと近付いてみたい。
「…アムロさん…そっち…行っていいですか?」
思わず無意識に言葉が出た。
「は?…えっと…此処って事?」
アムロは自分の隣のスペースを指で示した。頷きながらカミーユは立ち上がり、ベッドの上でアムロと並んで座る。そしてそのまま、ゆっくりと身体を傾けてきた。アムロの肩にカミーユの髪が掛かる。
そんな様子をアムロは別の感情で納得した。

 

☆…続きは「Outbreak Z 1.5」でどうぞ…