HYSTERIA

 

貴方が側に居るだけで……
どうしてこんなに気持ちが高ぶるのだろう…?
どうしてこんなに冷静になれないのだろう…?
この落ち着かないイライラする感情…何とかしてくれ。

 

7年ぶりの再会だった…。
その男は初めて会った時より随分と大人びて見えた。あの時の同じ様に…あの時はマスクで今度は濃いスクリーングラスで、彼の細かい表情は読み取れないけれど…彼は順当に歳を重ねている様子だ。厚い胸板や鍛え上げられた逞しい二の腕が余計に自分のコンプレックスを刺激する様に見える。だからこそか…
「君は変わらんな」
その言葉は自分を妙に苛つかせた。彼と自分の今の立場を考えれば尚更だろう。こんな自分でもそれでもまだあの時からの矜持が残っているからこそ…苛つくのだ。

------勝手な事を言う!そりゃアンタはあの後も自分の思う様に自由に好きに生きて来られたんだろうけど!俺は違うんだ…俺は…変わる事も進む事も許されなかったんだ…!そんな事も知りもしないで…!

後で考えれば自分もかなり勝手な言い分してたのだけど…。彼の過去も知らずに…。

「…貴方…さ…俺に何を期待して…そう言う?」
必要以上にキツイ眼差しを向けてしまうのは仕方ない。でも彼は口元を少し吊り上げて…笑っている。その様子は自分の感情を更に沸騰させた。
「……存分に笑えよ……"期待外れ"で悪かったなっっ…!」
そんな悪態にも彼は気にする様子もなく、いやいや…と軽く首を振った。
「私は君があの時と変わらぬ事が…嬉しいのだが?」

……はあ?!何を寝ぼけた事を言ってるんだ…アンタはっっ!
そうか…曾ての敵の腑抜けな様子が嬉しいワケねっっ!意外と小心者だなっっ!!

殺意を込めているのでは…と思える程の激しい感情を彼に向ける。…なのに彼は相変わらず楽しそうで、口元に指をあてがいクックックッと笑い声さえ漏らしているのだ。……ますます感情が高ぶってしまう。

「……笑うなよっっっ!!」
「先程は笑え、と言ったが?」
「…言葉の揚げ足を取るなっっっ!本当に性格悪いなっっ!貴方はっ!」
「いやいや…君は本当に相変わらず可愛い」
「…?!……なっっ…何だよっっ!そ、それっっ…?!」

可愛い、と言われて真っ当な男で喜ぶヤツなどこの世に居るモノか!
……そう、普通は怒りが増すハズだ。怒りが……増すハズなのに……

-----------何……?……この高揚感……俺…ナンで顔が……赤くなるワケ…??

「やはり照れる姿も可愛いな」
「てっってれっっ!?…照れてなんかっっっ…!」
いつの間にかすぐ側に彼の姿がある。そして大きな両手で赤くなった頬をそっと包まれて……

「ずっと想い描いていたアムロ・レイだ…君が私の記憶のままで居てくれて嬉しいよ…」
ポカンと開いた唇にそっとキスをされる。…目の前には蒼氷色の美しい瞳とプラチナプロンドの豪華な美形…彼はいつの間にスクリーングラスを外したのだろう…?

何故こんなにもドキドキするのだ…。目の前の男は曾ての憎い敵だ。しかも突然キスをしてくる無礼者だぞ…!…こんな男に…こんな男にっっっ!!

……でも…この人は………………

………………名前……呼んで…くれた……ずっと…想っていた…って……

たったそれだけ…それだけの事が……自分の中の何かを溶かしていく。
「変わった」という非難の声だけが今までは自分の周りを取り巻いていた。なのにこの男は自分を「変わらない」と言う。…もしかしたら容姿の事だけかもしれない…いやそれでも。それでも…自分には…たったこれだけの事が。
そして自分も……たった一つの拘りである言葉を口に乗せた。

「……シャア………」
「…何かな?アムロ…」
眼前の男はますます嬉しそうに微笑んだ。急に気恥ずかしさがこみ上げて来る。感情の勢いに任せて思いっきり彼を突き飛ばした……つもりだったが、悔しいかな体格の差か、ちょっと2人の間に距離が出来ただけであった。素直に面白くない。
「おっ俺はっっっ…!貴方の期待通りになんかっっ…ならないからなっっ!!」
「ふむ、それで?アムロ」
「ぜーっったいっっ!にぃっっ!……昔と同じになんて…ならないってコトーっっっっ!!!」
「ほぉ…それはそれは」
本当に愉しげな男は自分の腰に手を回して更に引き寄せて………またキス…だ…。

「アムロ…これ以上に私を喜ばせてくれるな」
「なーにを勘違いしてるのさっっ?!…俺は貴方に凄くイライラするってのにぃぃーっっっ!!」

ああ…ナンなんだ、このHysteriaみたいな感情は。…貴方の前ではこんなにも高ぶる感情。そう…この間までの無気力な自分がどこぞへと行ってしまう。こんな感情抱くのは貴方だけ…なんだ。
この感情を整理するにはもう少し時間がかかりそう……だから今は思いっきり反発してやるっっ!
そんな子供じみた決心をする不安定な自分…そして大人の余裕の貴方…。

……本当は……もう……解っているのだけど……ね…この感情は何というか…という事。
…でもっ俺はっっ!絶対に…素直になんかなってやらないっっっ!!

※似たよーなラクガキばかりになってしまってゴメンナサイ…(2008/6/17)

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