《  最後の恋人 ・ 2 》

 

機体が何かにぶつかった鈍い音が響いた。
頭部にあるコクピット内には衝撃はさほど伝わらないが…。
暫く様子を見る……どうやらぶつかったままの状態で完全に停止しているようだ。
システムは完全にダウンし、コクピット内は機器類の補助バックライトのみの薄暗さが広がるだけである。
「…モニター…この状態で付くか?」
コンソールをいくつか叩いてみると…パパパと次々に外の様子が全周囲モニターに展開されてゆく。
センサーカメラのシステムには影響が無いようで、素直に安堵した。
しかし機体周囲の状況がはっきりするにつれ…アムロの心情は徐々に落胆へと変わってゆく。
「……機雷群…か?…凄い数だな…」

サザビーの周囲を取り囲んでいる無数の機雷…正確にはサザビーがぶつかり取り付いている状態となっている…なにやら巨大な機械の残骸を、だが。
「ジェネレーターの一部が見える…かなり大きいな…MSの部品ではない様だけど」
…廃棄コロニーからの流れてきたのか、それとも前戦役時の戦艦の残骸なのかは判らないが。
その廃機械から時々発せられる光源を認め…どうやら完全に停止はしていない様子と見える。これが何らかの磁場を発生させていて…サザビーや機雷群を呼び寄せたのか?
ネオ・ジオン総帥専用機であるサザビーの装甲はかなり重厚であるが、この機雷群全てを浴びることになったら…さすがにどうなるかは判らない。
「…ヘタに動くのは危険…と言っても…こっちも今は動けないけどね」
機械の残骸も機雷も今は静止している…慣性で漂っている状態だ。
総帥専用機を行方不明のままにするわけはないだろうから、必ず捜索に来るであろうが…後はどうやって此処から脱出するか、が問題だ。
アムロはヘルメットを外して大きく息を吐いた。

 

「…!!?…さっ…サザビーの反応が…消えましたっっ!!」
その報告に瞬時にブリッジ全体が凍り付く。みるみる血の気が失せる艦長を横目にギュネイは叫ぶ。
「俺が出る!ギラ・ドーガを5分で出させる様にしろとメカニックマンに伝えろ!」
「ごっ5分は無理ですよおーっっ!中尉っっっ!!」
格納庫向かって走っていくギュネイの背中に向かって、オペレーターの一人が叫んだ。
「量産型は起動の素早さもウリなんだよっ!知らないのかっっ!」
捨て台詞を残してギュネイはエレベーターに飛び込む様に乗り込んだ。

MS格納庫に到着すると、案の定此処も凄い喧噪で大騒ぎとなっている。
「ギュネイ中尉っっ…!…サザビーと少佐に何かっっ?!」
それには応えず、ギュネイは思いっきり床を蹴って、ギラ・ドーガのコクピットへと上がっていく。
「調整は簡易的にしかしてませんよっ?!…大丈夫ですか?!」
コクピットに取り付いていたメカニックマンが心配そうに叫んでくるが、ギュネイは彼をどけるようにして勢いよく中に乗り込むと
「火が入ればそれでいいんだ!とにかく直ぐに出る!!」
メカニックマン達が感心する程の凄い速さで機器類を立ち上げて行った。
「あ…中尉っっ!ノーマルスーツはっっ?!」
「そんな時間あるかっ!オペレーター!サザビーのトレースデータを大至急転送しろ!それとこのギラ・ドーガの信号は絶対にロストするなよっっ!!」
『りょ…了解っっ!あとは頼みますっっ中尉っっ!』
「よしっ出るぞっっ!!カタパルト・ハッチを開けっっ!!」
「ええっ?!もうっっ?!……ギラ・ドーガを出すぞ!!全員下がれ!!」
「何だって?!」「無茶過ぎだっ!」等のあちこちから聞こえるメカニックマン達の悲鳴を聞きながらコクピットを閉じる。
「…総帥専用機と総帥夫人を一度に行方不明になんて…出来るかよっ!!」
ギリっと奥歯を噛み締め、ギュネイは操縦桿をオンにした。

 

荒々しくギラ・ドーガを操りながら、目的の宙域まで来る。
「くそっ!…やはり反応が無いなっ!」
…磁場か何かが影響して信号を捕らえられないのか…サザビーそのものに何かあったのか…。いずれにせよこの後の探索は目視が一番有効と思われる。そしてギュネイ自身の能力。
「…宇宙空間で…少佐の気配を探って…解るものなのか?」
不安に駆られるが、それでも今は何とかしなくてはならない。
…もしも…もしも少佐が傷付いてたりしたら…!!
今のギュネイの頭の中はそれだけで一杯だった。焦る気持ちが余計に集中力を妨げる…一向にアムロの気配は感じられない。
せめてヤクト・ドーガであればサイコミュシステムが大いに役に立つかもしれないのに…!
「…何の為の強化人間だよっ!…俺の力ってこんなもんなのなのかよっっ!!」
あまりの悔しさに叫び、コントロールパネルを思いっきり叩いてしまった。NT能力の万能を信じているワケではないが…それでも今の自分の不甲斐なさに大いに腹が立つのだ。ヤケになっている様にも見える猛スピードでギラ・ドーガを進めていくと…
廃棄コロニーが目に入った。周囲に多くの小惑星や残骸…。数多くの熱源センサーと異常な磁場の数々を捕らえて、モニター画面が先程から警告を繰り返している。
「…随分前から放置されているのか?また危険な場所だな…」
その時、ギュネイの頭の中に一瞬だけ過ぎった感覚…があった。
「………此処……此処だ…っっっ!!」
ギュネイはバーニアをフル加速させ、その中へと突っ込んでいく。

 

「……?!…」
ふと慣れ親しんだ気配を感じてアムロは顔を上げた。
「…やはりギュネイが来たか」
宙域の一点をじっと見つめる。程なくして目視でギラ・ドーガの姿を捕らえる事が出来た。
どんどん近付いてくるネオ・ジオンの主力機体を見つめてアムロは心からホッとする。
「緊急通信回線……繋がるかっ?」
いくつかのスイッチを操作していると…
『……っ佐…!…アムロ少佐あぁぁ……!!無事ですかあっっ?!』
ほぼ泣き声に近い…部下の叫び声が聞こえた。
「大丈夫だ…ギュネイ…俺は無事だよ!」
『しょっ…少佐っっ?!…ああっ良かった!良かったああぁぁ!!』
…暫しの沈黙……ヤダなギュネイ……本当に泣いてるじゃないかっ!!
「……ギュネイ中尉……状況を説明して良いかな?」
『あっ…!はっ…はいっすみませんっっ!…え、えっと…もしかして少佐……サザビーは動けないんですか?!』
「うん、急にシステムダウンしてしまってね…サザビーは後ろのガラクタに引っ張られたみたいなんだ。モニターは大丈夫なんだけど…気が付いたらこんなモノに取り囲まれてました」
『…これは…機雷?!…何て数だっっ!』
「ギュネイも迂闊に近付かないように…何で反応するか解らないから…全然動かないから分析も不可能なんだよね」
『あ、俺がやります…ちょっと待って下さい……やはりセンサー反応は熱源と音源のようです…数値は熱反応値300以上個体範囲1000…MSには明らかに反応しますね』
「ううん…システムダウンしていてラッキーなのか…」
しかしその数値なら「人間」には反応しないはず。もし取り敢えず自分だけ脱出するのであれば…ギュネイに外からコクピットの緊急用開閉装置を操作して貰う手もあるな…少々危険ではあるが。
「ギュネイ中尉、提案があるんだが…少し危険だけど…外に出られる?」
『…はいっ外へ…って……?!ああ…!!…』
「どうしたギュネイっ?!」
『………お…怒ります…よね…少佐…』
「は…?………って!まさかっギュネイ…っっ」
『……はい………ノーマルスーツ着用してません……すみませんーっっっ!少佐っっ!』
「…ああっもうっっ……」
アムロは額に手を当てて嘆いた。それだけ慌てて来てくれたのは嬉しいが…。
「……ギュネイ中尉…至急艦に戻って……シャア…総帥に連絡を入れてくれ」
『…総帥に?!…そ、そうですね……確かに至急報告をしないと……』
「中尉から状況を説明するだけで良い。後は総帥の判断に任せる。…頼むね」
『了解しましたっっ!アムロ少佐っっ!!』
再び猛スピードで引き返していくギラ・ドーガを見つめながら、アムロはポツリと呟く。
「総帥だから…じゃないんだよね……シャアだから……任せるんだ」
ふとアムロは優しい笑顔となった。

 

 

暗い宇宙空間で一人…待っている。
コクピット内は補助電源の出す微かな音が響いているだけで他は何もない。
自分の息や、身体を少し動かす時に出るノーマルスーツの衣擦れの音が…やけに大きく響く。
アムロは相変わらず無反応の、この総帥専用機について考えていた。
もし突然サザビーがまた起動したら…機雷群が反応し爆発するまでに此処を脱出が出来るのか…慣れない機体操作で…と考えて不安にはなる。
「…解っているよ」
ゆっくりと目を閉じてコクピットシートに身を沈める。
「お前が機嫌悪くなったの……俺が……嫌だって…思っているからだろう?」

そうだ…
お前に乗りたく無い…と思ってしまった……
嫌だと…心から嫌だと思ったんだ………
シャアの代わりにだなんて…シャアの後を引き継ぐだなんて……
此処にはシャア以外が座っては駄目なんだ…絶対に……そうなんだろう?

おそらくシャアがこのサザビーのコクピットに座ったのは何ヶ月も前……だが。
ずっと彼の気配を強く感じるこの場所……だからこそ孤独な時間も耐えられたのだ。
「……貴方に……抱かれているみたい……」
そっと自分の身体を抱き締める。
-----ああ気持ち良いな……このまま……眠ってしまいそう……

沈もうとする意識の底から緩やかに…静かに何かが立ち上ってくるのを感じた。
……何…?…不思議な音………なんて澄み切った……
…心地良く響く綺麗な音だが……金属の触れ合う音とも鈴の音とも違う。
何だろう…?…これ……

------??!!--------------------
一瞬で意識が覚醒する。
跳ね起きるように身体を起こし、ほぼ正面の前方の一点を凝視した。
「……シャア………!!!」

ああ…やはり貴方は来てくれたね……
予想通り、希望通りの…その機体に乗って!!

自分の愛機が宇宙空間を駆け抜けてくる姿を見たのは…当然初めてであった。

 

『…無事かっっ?!アムローっっ!!』
何よりも聞きたかったその声を耳にして…本気で泣きそうになった。
『ケガはしていないのか…?!…空調システムは大丈夫なのかっ?!苦しくはないのかっっ!アムロっっ!!』
胸が一杯になってゆく。死を覚悟した状況…というわけでもない。
だけど…ただ貴方の声が聞きたかった…貴方に会いたかった……シャア……
全身に満ちてくるこの喜びは……やっぱり俺はそんなにも待っていたんだ……
一向に通信が返ってこない事にシャアは焦り、心臓が凍り付きそうになる。
「…アムロっっ!!…何故返事をしないっっ?!…アムロっっっっ!!」
『……ごめん…大丈夫……だよ…シャア…』
やっと聞こえた愛しい声に、喩えようの無い安堵感に満ちて震える全身を感じた。
「アムロ…ああ……今すぐにも君を抱き締めたいが……邪魔をする無粋な輩がいるな」
『ごめんね…総帥専用機をこんな惨めな状態にしちゃって…』
「君の責任では無いよ……さて…君もサザビーも傷付けずにこの機雷群を処理する方法か…」
『………出来る…?』
「生憎とこの
νガンダムに私の脳波パターンを組み込む時間は無かったのでな…正直自信は無いが…だがやるしかあるまい」
『大丈夫…貴方なら出来るよ……それに俺も手伝えると思う』
アムロの優しい声がシャアを落ち着かせる。
『どうやらサイコフレームの共鳴が…あるみたい……こんなに離れているのに貴方の事…何だか凄く近くに感じるよ?』
シャアはその言葉に訝しむ表情を見せたが…ふと目を閉じてみた。
…目を閉じると…確かに不思議とアムロの気配をすぐ側に感じる気がする。余計に今すぐにもその身体を抱き締めたい衝動が沸き上がった。

「…では…一気に片を付けるか…」
νガンダムの背中の「羽」がバラバラと外れ、折りたたまれて行く。その中でビームエフェクトがパシパシっと反応し始める。
シャアは意識を集中させる…ふとアムロの温かい手が自身の手に重ねられた様な気がした。
「…頼むぞっっ!フィン・ファンネル!!」
シャアの命令を合図に4機のフィン・ファンネルが猛スピードでサザビーに向かっていく。それは驚くべき流麗な動きで、機雷群を器用に避け突破していった。しかし、その速さの衝撃とジェネレーターの熱源で反応したのか、機雷の一部がフィン・ファンネルの軌跡を次々と追っていった。
「間に合えっっ!!」
シャアはズキリと強い頭痛を感じたが、今はそんなものを気にしている余裕は無い。最後にこのコントロールが出来なければアムロは……!!
激しいビーム粒子の拡散が光の幕を作り…フィン・ファンネルは正確に正四面体のバリアを作り出した。その中にサザビーと巨大残骸を取り入れて。
瞬時にシャアはビーム・ライフルを最大出力で一発だけ、機雷群に放った。後は誘爆に任せる。
次々と起こる凄まじい爆音と光に、流石にアムロも目を閉じて身構えていた。フィン・ファンネルの作り出すバリアは対ビームバリアなので、実弾兵器に対しては多少は不安は有るのだが…それでもこの爆発から確実にサザビーとアムロを守ってくれていた。もちろんこの誘爆が全て治まるまで気が抜けない。…全く初めて使うこのフィン・ファンネル…しかもこの形で維持し続けるのは脳波パターンを合わせていないシャアにはかなりキツイはずだ。
----シャア…シャア……頑張ってくれ…!俺も手伝うから…此処にいるから…!
アムロは必至で祈り続ける。サイコフレームの共鳴のせいか…アムロもシャアの感じている頭痛の一部を感じた。思わず意識の中で捕らえたシャアの姿に思いっきり抱きつく。そのシャアも強く自分を抱き締めてくれた。強い光の中で、そのまま2人の意識は溶け合って………

 

やっと静寂が訪れたようだ。
アムロがそっと目を開けた時に、フィン・ファンネルの放っていたビーム粒子が瞬時に消えた。ファンネル達はそのまま目の前の
νガンダムの背中へと戻っていく。
「…シャアーっっっ!!…大丈夫かっっ?!!」
思わず叫んだアムロの乗るササビーの元に…
νガンダムはスラスターを稼働させて近付いてくる。
『…大丈夫だ…アムロ……君が手伝ってくれたおかげだな…ありがとう』
かなりの精神力を消耗したであろうに…そんな様子は感じさせないように優しい声を掛けてきた。
『助けに来たのに逆に君に心配させてしまうとはな…不甲斐ない事だ』
そんな事どうだっていいのにっっ…とアムロは泣きたい気持ちになった。
今直ぐに貴方に触れたいよ…抱き締めたいよ…抱き締められたいっ…シャアっっ!!
やっと至近距離まで近付いてきた、
νガンダムの手がサザビーの肩に触れた……
その瞬間。
「…えええっっっっ…?!!」
ササビーのシステムが回復し、機器類がみるみる起動してゆく。アムロは驚きながらも操縦桿を操作して、触れられた
νガンダムの手をサザビーの手で押さえた。
「…!…動けるのだな?…回復したか…」
「う…うん……貴方が触れた…途端にね」
アムロは安堵と少々呆れた感情の交じった溜息を付いた。
「…やっぱりこの子……貴方じゃないと駄目なんじゃないか?…貴方の事凄く好きみたいだし…妬けるよなあ」
「嫉妬してくれるのは大変嬉しいが…別に君を拒否している様には私には見えないがね」
「?…どうしてそう思う?」
「君を守る為に、逆にシステムダウンさせた…とも考えられる。ヘタに動き回らない様に…とね」
「そ…そうかなあ?」
贔屓目じゃないか?と思いながら、サザビーの身体をゆっくりと起こす。後ろのガラクタは今は大人しくなっている様だ。素直に離れてくれた。
「取り敢えず…コレも放ってはおけんな」
いきなり
νガンダムがその巨大な残骸に蹴りを入れた。慣性で加速しもの凄い勢いで離れて行くソレにシャアはビームライフルを一発お見舞いする。綺麗に爆発し拡散していく様子が遠くに見えた。
「…お見事…」
「ふむ…射程が長いな…コレは」
「最初から接近戦は考えずに設計してあるからね。その点がサザビーのとは違うよ」
「成る程ね……サザビーの様子はどうだ?自力で帰還出来るか?」
「うん…スラスターバランスが結構狂ったかなあ…アポジモーター値で調整するから帰還には問題ないと思う……ねえシャア…それよりさ…」
「そうか良かった…………アムロ…君の言いたい事は良く解る…私も同じ気持ちだ」
居ても立ってもおられずにアムロはコクピットを開けようと操作し始める。
「…今、そっちに行くからっっ」
「………………すまん……アムロ…」
「…え?……?!…まさかっ…貴方もっっっ?!……着てない…んだ……
ノーマルスーツ…
「1秒でも速くこの
νとシャクルズを出したかったのだっ!!…本当にすまんっっ!!だが私も我慢し…後悔しているのだよっっアムロっっっ!!」
必死で謝るシャアの声を耳にしながら…それは嬉しいけどっ嬉しいんだけどっっ!
「………バカ……」
と呟いたアムロに罪は無い……。

 

サザビーを乗せてきた戦艦に二機共に仲良く帰還し…お陰様で?か、MS格納庫では珍しく衆人環視の元でも熱い抱擁を繰り広げた総帥夫妻であったが…全ての乗務員が安堵感と温かい気持ちで見守っていた。

「…急遽…仕事抜け出したんだ…よね?怒られない?」
「総帥が夫人の危機に対して緊急出撃したというのに…誰が私を怒るのかね?」
…まあ…貴方がそういう人だと言う事は皆解っているか……
スウィート・ウォーターへと帰還するその戦艦の中で、2人は並んで強化ガラスの外に広がる宇宙を何気なく見つめている。
シャアはアムロの肩を掴み自分へと抱き寄せた。その胸に頭を寄せてその心地良さに暫し浸るアムロである。
「……やっぱり…サザビーは貴方だけの専用機であるべきだよ…」
「それは解っているさ…」
「シャア…俺を未亡人にしない努力は…してくれているんだよね?」
「当たり前だろうっっ!」
間髪入れずに即答したシャアが何だか可笑しくて、アムロはクスクスと笑ってしまった。
「…サザビーの件は…君に総帥夫人としてのはっきりした権限を与えたくて…私は少し急いでしまったな…悪かった」
アムロが視線だけをシャアの顔の方へと向けると、心底すまなそうな表情をしている。
自分はそんなシャアの優しさが大好きなのだ……
どんな未来が待ち受けて居ようとも…貴方の側に居たいと、貴方と歩むと決心をしたのに…
幸せが壊れてしまう未来だけが嫌で…それに甘えてしまったのは自分なのだ…
シャアがどんなに自分を大切に想ってくれているか…どんなに愛してくれているか…
今更気付く事ではないはずなのに……それでも今回の件はそれを十分に解らせてくれた。

「大丈夫……お陰で俺も…ちゃんと覚悟が出来たよ…ありがとうシャア…」
「アムロ……」
そのまま唇を重ね合い…そして強く抱き合う。
愛している…とお互い何度も囁きながら何度も口付けを交わした。
総帥夫人の様子を心配して見に来たとある青年士官が、その情景に思いっきり出くわしてしまい…慌てて立ち去って行った、らしい。

----これから貴方といったいどれくらいの人生を歩めるのかは解らないけれど…
------貴方の妻として恋人としてパートナーとして……俺はずっと貴方を支えるよ……

---------でも…願わくば……どうか俺を独り…残さないで…と…
---------どうか今だけは……その我が儘を言わせて………

 

 

THE END

BACK

-------------------------------------------------
色々と捏造しております故…ツッコミご勘弁をっっ(汗っ)…この世界では「ノーマルスーツも
着ないでっっ」が出来るのは総帥夫人だけです(苦笑) (2009/3/26 UP)