《  誰もが予想が付くであろう…展開?  》

 

 

当たり前だが、この夫婦の寝室には余計なものは置いていない。
サイドテーブルの引き出しには…まあ「ごく普通の性生活の為」の小道具は有る事は有るが…。
(アムロ「いっ、言っておくけどっ…そ、その…ローションとかっそーゆーモノだけだからねっっ!」…わざわざ否定しなくても結構です奥様…)
愛妻家の総帥閣下は、妻の「本当に」嫌がる事は此処ではしないので…その手の小道具など当然持ち込み厳禁なのである。つまり「縛る」ものなど無いわけで。
まあ取り敢えず縄でなくとも…紐でもスカーフとかでも良いわけだ…よしっ!!
まだ自分は夜着を着たままなので、そのまま書斎へ行こうとドアに向かう。後ろで私の可愛いアムロが何やら叫んでいるようだが…全く気にしない。
ドアを開けた途端。

とんでもなく凶悪な恐ろしいプレッシャーが一気に彼に向かって襲いかかってきた。
…ドアを開ける前に気付いても良さそうなのに…!全く気付かなかったとは!
其程に頭の中がどエロ妄想でいっぱいだったのかいっっ?!アンタはっっ!!

「……何処に行こうっていうんです…?…大尉…」
ゴゴゴゴゴゴゴ…という効果音と共に、腕組みして仁王立ちしているのは…誰もが予想通りの最強NTと謳われるカミーユ・ビダン…現在24歳。
「…書斎に行くだけだが…逆にこんな場所で何をしている?覗き見でもするつもりか?悪趣味だな」
そのプレッシャーに対して怯むどころか、逆に「邪魔をするな」という不機嫌オーラを向けてきた。
「……覗き見…?…そうですねぇ……幸いと言うのか残念と言うのか…貴方とアムロさんの先程からの会話がですねぇ…ほとんど俺の頭の中にガンガン入ってきましてねぇ……」
「ふむ…それはほとんど犯罪行為だな…カミーユ…プライバシーの侵害だぞ」
「何が犯罪ですかっっ?!アムロさんが心配だから…アムロさんの声を無意識に拾っちゃうんですよっっ俺はっっ!!…こんなに近いしねっっ!」
取り敢えず夫婦の主寝室もカミーユの寝室も同じ2階にあった。まあそれなりに離れているのだが、彼のNT能力的にはあまり関係ない距離なのだろう。
「カミーユ…それは立派にストーカー行為になるぞ?…まあお前がアムロのその声で自慰行為をしたい気持ちは解るが、私は夫として大変不愉快だな」
「だっ誰がっっ…じっ自慰行為するつもりなんてっっ!!そ、そんな事よりっっ!貴方こそこれからアムロさんにいったい何をするつもりですかっっ?!」

誤魔化したなコイツ…と思いつつ、シャアも腰に手を当ててカミーユを威圧的に見下ろす。…その目線の高さに昔はもう少し身長にも差があったのだがな…などと少しは考えた。
「夫婦間の愛の営みのエッセンスだ。お前が口出しする事ではない」
「な、何ですかっっ?!その屁理屈っっ!アムロさんがあんなに嫌がっているのに何でそんな事考えるんですっっ?!いくら夫だって…やっていけない事はあるでしょうがっ!!」
「あんな事実を聞かされたのでは…今やっておかねば気が済まんのだっっ!…アムロが…あんな連中に…あの柔肌を縛り上げられたなどっっ!!」
「確かにっ…あの時のアムロさんは甘くて…あんな奴等に捕らわれて何だか色々と
念入りにボディチェックされて…脱がされてヘンな事されて縛られちゃってっ!…って聞いてますけどっっ!…その後に海に入って…濡れ濡れの姿はものすごーくっ色っぽかったんですけどっっ!!…昔の事だしっっ…仕方ないですよっっ!!」
「……待てカミーユ……私は…脱がされてヘンな事された…とは聞いてないぞっ?!」
「えっ…アレ?…アウドムラの皆の想像だったんだ…っけかな?…帰ってきた時のアムロさんが本当に色っぽくて…服が透けてて…え、えっと……とっとにかくっっ!大尉が今これから縛りプレイなんてしちゃ駄目だって事ですよっっ!!」
「その晩の君の妄想を咎めない事にしてもな…ティターンズの阿呆共が
アムロを縛り上げたという既成事実があるにも関わらずっっ!私がアムロに縛りプレイさえもしていないっっ…という現実は…この私のプライドを傷付けるのに充分なのだ!!何故解らんっ?!」
「…それはエゴですよっ!!解ってたまるかあぁっっ!!…思いっきり修正してやるうぅぅぅーーっっ!!」
ついにぶち切れたカミーユは、鍛え上げられた拳を躊躇無くシャアに向ける。しかし繰り出されるその鉄拳を難無く軽く交わし続けるシャア…昔と違ってわざわざ殴られてやるつもりは毛頭無いのでなっ!!
「くっっ…速いっっ…!…その欲望がそんなにも力を与えているのかっ?!貴方にはーっっ!」
「いい加減にしないと私にも限度があるぞっっカミーユ!手を出しても良いのかっ?!」

 

ぼすっっっ!! ぼすっっっっ…!!

 

枕が2つ飛んできて、それは正確な射撃で二人の顔にそれぞれ当たった。

「…いっ…いーかげんにしなさいっっっ!!二人ともーーっっ!!こんな夜中にっっ!」
真っ赤になってぜいぜいと息を切らしながらアムロは仮想親子に向かって叫んだ。
「アムロ…」
「あっ…アムロさん……?!ぎゃーっっ!生足っ!は…履いてないのかっっ?!」
見てはいけないっと思いつつ…でも逸らせず逆にガン見してしまう、青年カミーユ24歳。
「本当にもうこれ以上情け無い事で喧嘩しないでっ!!…シャアもっっ…今夜ヘンな事するつもりなら……本気で…本気でっっ
離婚考えるよっっ?!俺もっっ!!」
「なっ…?!そっそれは!……それは駄目だっっアムロ…!」
慌ててアムロに駆け寄り、その身体を抱き寄せるシャアである。
「ああ…本当に悪かった…アムロ……どうしても抑えきれず…君が他の男になどと…」
「…そ…それは…嫉妬してくれるの…嬉しいけど……でも…そんなシャア…嫌だ…」
うるうるとした涙目で見上げてくる妻のその顔に…心臓を思いっきり撃ち抜かれている総帥閣下であった。思わずその細い愛しい身体をぎゅっと抱き締める。
「アムロ…本当にすまなかった…愛しているからこそ、と解ってくれ…」
「…うん…解っているよ…だから……」
アムロはふとシャアを見上げて…意を決した様に呟く。
「あ…あのね……その…それ……お、俺の…心の準備出来るまで…待ってくれる?」
妻の思いがけない言葉にシャアは思わず目を見開く。
「アムロ…!…本当に…良いのかっ?!」
頬を赤らめてコクンと小さく頷く我が妻の…なんと可愛く愛らしい事かっっ!!
「…うん……シャアが…ちゃんと愛してくれるなら…愛しているからって言うなら…」
ぎゅっと夫の逞しい身体にしがみつき…その胸に恥ずかしそうに顔を埋める総帥夫人。
「アムローーっっっ!!ああ…私は何という幸せ者なのかっっ!!愛しているっ愛しているよ!!」
固く抱き合い熱いキスを交わし出す二人……ああ、いつものパターンだ…本当に。

その一部始終をずっと眺めていたカミーユは……
「……さ、寝よう…」と踵を返す。
あーっ本当に馬鹿馬鹿しいなっっ!!まあ取り敢えず…ずっとアムロさんの生足を観察出来たから、それでチャラとしよう…大尉を殴られなかったのは本当に心から残念だけどなっ!!

 

「…どうやら上手く治まったようだな…」
「ええ…さすがアムロ様ですわ。もう立派な奥様におなりなのですもの…」
影からそっと真夜中の事の顛末を見守っていた…執事と女中頭もホッと胸を撫で下ろした。
「…ところで…ミスターは何を手にしていらっしゃいますの?」
「ああ…もし旦那様が所望された場合と思って…な」
老練の寡黙執事の手には赤いスカーフと綺麗に編み上げられた組紐が握られていた。
「…それは…旦那様の礼服用の……ですわね…」
「うむ…その方が旦那様の一番のご希望に添えられると考えたのだ」
「さすが旦那様のお気持ちを良く解ってらっしゃいますこと…ミスター」
その真面目な忠誠心に心底感心して、「私も奥様のお気持ちを一番考えられるようにならなければっ!」と力強く頷き決心する女中頭なのであった。

 

THE END☆

 

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大変楽しく書いてしまいましたっっ…あはははは…(2009/2/7UP)