《 心配症 2 》

 

 

「ああ…やっぱりファンネル・ポッド付きのも設計してたんですね」
「うん、メインスラスターが随分大型化しちゃうんだけどね」
「でもこちらの方が両翼あるから…バランス取れてて俺は好きかな?」
「せめてパックパックとブースターがもう少し小さく出来ないかと思って…カミーユはどう思う?」

アムロの膝の上のモパイルパソコン画面を見ながら、2人でMS談義に花を咲かせている。
そんな様子の後部座席をバックミラーで眺めながら、アンタらくっ付き過ぎだっつーのっっ…と舌打ちする運転手のギュネイなのである。

「…さすがにアナハイムに発注まではいかないんですか?」
「うーん…今の
ν と違って規格品流用で設計してないからさ…コストも全然考えてないから凄くお高いMSになるんだよね…。シャアは私費で造るか?とか冗談言うけどさ」
「……造ってもらっちゃえばいーじゃないですか。どーせ金払うのが大尉個人なら」
「ははは…いくらなんでもそんな法外なお願いは出来ません」
……数十億ハイトの高性能オーダーメイドMSを奥方にプレゼントする……奥方にベタ惚れの大佐ならマジでやりかねんっっ!アムロ少佐が「お願い♪」っておねだりしたら、その場で即アナハイム社に連絡するんだろうな…ああっ簡単に想像出来るぜっっ!!
目に浮かぶ様だ…と、何故か想像上の「お願いアムロ」がとんでも無く不敬罪な格好であったので…ギュネイはちょっと焦ってしまったのだった。
「だいたい今の状況で新型MSをアナハイム社に造らせたら…それをネタに連邦側に何を言われるか判らないよ?会談や交渉でシャアに迷惑かけたくないし…」
……もしかしたらこれはノロケだろーか?…とカミーユとギュネイは奇しくも同時にそう考えた。
「…そう言いながらも、量産型の設計図とかも作ってるんですね…アムロさんは…もしかしてコレはべースが
ν ガンダムですか?」
「うん。インコム装備版もあるんだよーホラ」
嬉々として設計図を展開する本当に楽しげな様子のアムロを見つめて、変わらないなあ、とカミーユは心から嬉しくなる。
「まあ…ガンダムタイプはジオン側にはいくらなんでもアレかなー、と思ってね…こういうのも考えてみたんだけど…」
「え…?量産型…MSN-04…?」
「ええーっ?!お、俺っっソレ見たいですーっっっ!!」
いきなりギュネイが思いっきり振り向いたので仰天する2人。
「…わっっ!ギュネイーーっっ!!前っ前っっーっっ!!」
「…は?え?えぇ…?…うわあーっっっっっ!!!」
ガードレールに突っ込みそうになってしまった事がSP達や総帥にバレたら、本気で生身のまま宇宙空間に放り出される事だろう…。

 

「ありがとうギュネイ…また明日よろしく」
いつも通りのアムロの優しい笑顔にギュネイは会釈で返す。公邸の使用人達に出迎えられて消えていく2人の後ろ姿を眺めながら…ハンドルを持つ手にそのまま顎を乗せて軽く溜息を付いた。
…別にどうってことはない…自分のコンプレックスを刺激する人物が一人増えただけだ。
今更いちいち気にしていたらキリが無いことなのだが。上司であるアムロが自分に優しい理由も薄々は解っているのだ。戦災孤児で強化人間で…何かと心配してくれるのも『総帥夫人』の立場が影響しているようにも思える。この待遇に甘えている自分もよく解っているが…別にこれ以上の『特別』の立場を求めているわけでは無い。…無いはずなのに…
…何でこんなにムカムカモヤモヤするんだろうな……
ああ、盗られてしまう…そんな気持ち。…?何を盗られるって?
自分のこの感情は本当に理解出来ていないのか、それとも単に気付きたくないだけなのか……ギュネイには未だに解らないのだった。

 

「こちらは執事のマクレインさんと女中頭のミセス・フォーン。俺がとても頼りにしている2人だよ」
「カミーユ・ビダンです。御世話になります」
礼儀正しく挨拶をする好青年を2人は快く迎えているようだ。
「ご滞在中は私共に何でもお申し付けくださいませ、カミーユ様。ではお部屋に…」
「あ、俺が案内するよ。その間にお茶の用意をお願いします。珈琲で、あまり甘くないの付けて…よろしく」
頭を下げる2人に手を挙げて、こっちだよ、とカミーユを促す。
「ふふ…メイド達がカミーユを見て騒いでいるね…って何笑ってるの?カミーユ…」
「いえ…アムロさん、本当に『奥様』してるんだなあ、と思って」
「…ううう…まあそれは言われるのは覚悟の上だから…もういいよ」
少し頬を染めて口を尖らせて言うアムロに、こういう顔されると本当に年上には見えないんだよなあ、とカミーユは思う。
アムロに案内された客間は申し分なく広く、品の良い調度品が更に落ち着いた雰囲気を演出している。彼の自分への気遣いを充分感じると共に、最初にこんな所で寝泊まりすると今後の寮での生活が空しく感じるかもな…と苦笑する。
「夕食はカミーユのリクエストに応じるよ?何が良いかな」
「あの料理長さんの作ってくれるものなら何でも良いですよ」
「その言葉、彼は喜ぶだろうなあ。少しこの部屋で寛いでて。着替えてまた来るから」
優しい笑顔と共にアムロは扉を閉めた。
その姿を見届けながらカミーユは、昔とはまた少し違う…アムロの温かさを感じていた。
メカ好きなところもその自分に向ける優しさも変わりはしないのだが、この全体を包みこむ様な柔らかい温かさを持つオーラは…以前のアムロには無かったはずだ。
…何というか…本当にまるで“母性”の様な…だよな
あの日幾重にもフィルタを掛けられて届いたアムロからのメール。
『ネオ・ジオンに行く事に決めた。落ち着いたらまた連絡するから』
見た瞬間に本当に怒りが頂点に達した。彼がネオ・ジオンへ行く、という事はつまりシャア・アズナブルの元に行く、あの男のモノになる、という事なのだ。
「何故アムロさんが犠牲にならなきゃいけないんだっっ!」
カミーユにしてみれば、あの危険な男の持っている憎悪や冷酷、狂気といった負の部分を、アムロが自らを犠牲にして押さえ込む為に…彼の側に居る事を決心した様に思えてならない。何とかアムロを連れ戻せないかと考えていた矢先に、あのご成婚騒ぎだ。もう放心するしか無かったとしか言いようがない。
そして届いた久し振りのメールには
『知ってると思うけど…結婚する事になったんだ。色々とあって式には招待出来ないのだけど…俺は幸せだから、どうかカミーユも幸せになって欲しい…』
とあり……あの日は本気で泣いた。自分のアムロへの想いは恋とか愛とか…そんなもので簡単に表現出来る想いでは無いのだけど。本当にアムロがもう自分の手の届かないものになってしまったのだ、と思い知らされたから。
お祝いの言葉を送れるまで随分と時間がかかってしまったけど…
『俺も貴方の幸せだけを願っています』
と伝えるのが精一杯で。…あれからもう1年は過ぎたが。
アムロの優しさはあの男の全てを許すのか…と考えるだけで辛い。確かにその優しさがあのシャア・アズナブルという男を変えているのだろう。昔の鋭利な冷酷さが更に影を潜めて、カリスマ的な指導者としても民衆の絶大な支持を得ている。ネオ・ジオンの総帥夫婦はスペースノイド全体の希望なのだ、とはどのコロニー行っても聞く噂だ。
しかしカミーユには未だアムロの温かさに包まれてデレデレしているだけの男にしか見えない。
「…大尉はアムロさんに甘えて過ぎているんだよ…」
そう独り言ちた時に、ノックの音がして私服姿のアムロが姿を見せた。

珈琲の芳潤な香りの中で2人で昔話に花を咲かせていると、ふとアムロが顔を上げる。
「…シャアが帰ってくる…ちょっと待っててカミーユ」
アムロが立ち上がるのとほぼ同時に、女中頭が彼を呼びに来た。
自分は誰が見ても憮然とした表情になっているに違いない…とカミーユは思う。


「お帰りなさい」
邸の主人はいつも通りに出迎えた妻を微かに片眉を上げて見つめていたが、その細腰を引き寄せて挨拶にしては少し濃厚すぎる口吻を与えた。
「…っっ…」
使用人達の手前、抵抗するわけにはいかずにそのまま受け入れる。
「……我慢してないキスだった…」
2人でシャアの自室に向かう途中の廊下でアムロはポツリと言う。
「充分、我慢している」
明らかに不機嫌な表情を作って言い放つシャアに軽く溜息を付くのと同時に、カミーユがドアを開けて姿を現した。2人に軽く会釈をする。
「…お邪魔してます、シャア総帥閣下」
「…招かざる客でも一応は歓迎はしよう、カミーユ君」
再び暗黒オーラが取り巻く雰囲気をアムロの声が制御する。
「もう…子供じみた事を言ってないで、ほらっシャアは早く着替えてくるっ」
背中をグイグイと押されながら、シャアは実に不満そうに自室へと消えていった。
「ったく良い歳だっていうのに…何であんなに大人気ないんだか…」
やっぱりアムロさんは天然だ、と思うカミーユ。
「さあ…“猿に爆弾”を未だに根に持たれているのかもしれませんね」
「?…何?それ…」

 

3人での晩餐はアムロとカミーユが2人だけで楽しげに談話しており、シャアがずっと押し黙っているので…
給仕をする者達は冷や冷やしながらその様子を見守るしか無い。
「じゃあ研修期間が終わったら、そのままずっと此処での勤務もあり得るんだ」
「まあ内定貰えれば…ですけどね」
「カミーユなら大丈夫だよ。ふふ…正式な医者になったら俺達の主治医になって貰おうかな?」
「それは同意しかねる」
初めてシャアが口を挟み、もーっとアムロは眉間に皺を寄せてシャアを睨んだ。
「そうですよー…俺もアムロさん『だけ』の主治医になりたいですからー」
「…それこそ即却下だな」
ハラハラしている使用人達の中で、執事と女中頭の2人だけが、実に面白そうにそのやり取りを眺めていたのであった。

 

「…食後のお茶の時間も来ないなんて…子供かっあの人はっ…もうっ…」
ブツブツと文句を言いながらアムロが紅茶を入れている姿をカミーユは眺めていた。
「ここは紅茶しか出せないんだけど…大丈夫?」
「いや、俺は平気ですけど…逆にアムロさんの方が大丈夫だったのかな…と」
「俺も平気になったよ…はい、シャアの好きな銘柄のだけど」
うーむ、と思いながらカミーユは自分の前に出されたカップを手に取る。
「…アムロさん…やっぱり言いたいんですけど」
「何だい?」
少し首をかしげて自分を見つめる目の前の彼に、はっきりと言わねば、と思う。
「アムロさんは…大尉に甘過ぎますよっっ…何で自分をあのヒトに合わせたりするんですかっ?!」
アムロは瞳をパチクリとさせた。
「うーん…甘過ぎる…のは認めるけど…別に合わせてなんか無いつもりだけど」
「いーえっっ合わせてますっっ!あんな男の為に自分を押し殺す事なんてないっっ…あのヒトはアムロさんの優しさに甘えているだけなんですからっっ!」
アムロは手にしていたカップをソーサーに戻し、カミーユにニッコリと笑顔を向けた。
「…カミーユは俺を優しい…って言うけど…全然そんな事ないよ?」
「何言ってるんですか?アムロさん…貴方に優しさが無かったらあの人とはっっ!」

「カミーユは…シャアが嫌いなのかな?」
「えっっ?!」
いきなりの核心の質問に焦るカミーユである。何と答えようか、奥方の前でいきなり嫌いはマズイか…と考えていると、アムロは少し目を伏せて静かに話し始めた。
「…俺ね…カミーユに初めて会った頃……君に嫉妬していたよ」
「え…?ええーっっっ?!!」
予想もしない告白に驚く。…アムロさんが俺に嫉妬って…?!
「ふふ…まあMk-Uに乗ってたってのもあったのかもだけど……何よりも…君はシャアに可愛がられていたからね」
「……それはアムロさんの思いっきりっっの誤解ですっっ!」
「そうかな?…あの人は興味の無い人間にはとことん冷たい人だからさ…君には優しかったと思うけど」
何でそーなるんだ…と頭の中がグルグルする。クワトロ大尉に可愛がられてたって?…それでアムロさんが嫉妬って…それって…それ……
「…結局さ…俺はずっと…シャアしか見てなかったからね」
そう言ってアムロはとても綺麗な笑顔をカミーユに見せた。
「シャアしか見てないし、シャアの事だけ考えて…シャアの為に闘うって決めた俺は…ちっとも優しくなんかないよ…とても身勝手な人間だと思う」
「…アムロさん……」
「俺はシャアの側に居たいだけ…シャアの側で彼の進む道を見極めたいだけなんだ」
ああ…充分解ってはいたけれど…アムロの口から聞くと本当にダメージが大きいな、とカミーユは思った。
「…その道が…誤ってしまったら…やっぱりアムロさんが…」
「うん、彼を殺して俺も死ぬよ」
何と迷いも躊躇いもなくその言葉を言うのか。
その覚悟でお互いを側に置いているのなら…誤るわけなどない。あの男がアムロさんを死なせるハズなど無いのだから…。本当に究極の優しさなのだ…彼があの人に向けている愛情は。

「……アムロさん…もしも…ですが」
「なんだい?」
カミーユにはずっとアムロ自身に問いたかった事…。
「大尉が…もし…アムロさんでなく…別の人間に殺されたとしたら…」
アムロは真っ直ぐにずっと自分を見つめている。一呼吸置いてから聞く。
「…アムロさんは…どうしますか?」
「その人間を俺が殺すよ」
これも迷いのない即答に…身体が本気でゾクリとした。
「…その時シャアが間違っていたとしても…他人には絶対に殺させない。…シャアを殺す権利は俺にだけあるのだから…」
だからね…とアムロがカミーユを見つめる瞳は本当に綺麗だ。
「…喩え…それがカミーユであっても……」
俺は殺せるんだよ?…と彼が呟く前に目を反らす。
そんな事を言う彼の表情を、正面から見られる程にはまだ自分は…吹っ切れていない。
「……解りました…もういいです…すみません…俺…」
膝に置いた拳が震える。…本当はとっくに解っている。ずっと知っている。この2人の間の愛情は誰も踏み込めず、干渉も出来ない…ずっと高みにあるのだ。シャアが大人気ないというより、自分の子供じみた嫉妬による意見など…全く受け付けぬ程に遠い。

「…俺…変な喩えかもしれないけど…思うんです…」
カミーユはアムロに笑ってみせる。無理に見える笑顔かもしれないけれど…。
「…アムロさんと…大尉の…子供として生まれたかったなあ、って」
は?…とアムロは大きく瞳を見開いた。
「…えっ…ええっっ?!…俺は子供産めないよっっ?!」
ワタワタと思いっきり焦ってるアムロに今度はちゃんとした笑顔になった。
「喩え、ですよー…2人の子供なら…幸せだろーな、って思って」
…そうしたらこんな疎外感は感じずに済んだのかな?…という言葉は口に出しはしないが。

 

 

「…寝室を別にするとは言わないのだな…」
「皆に要らぬ心配かけたくないし…貴方が我慢してくれれぱ良い事だからね」
もぞもぞと先にベッドに潜り込む。
「…てっきりカミーユと一緒に寝る、と言い出すかと思っていたが」
「あのね…カミーユも疲れているんだから、そんな迷惑な事言うわけないでしょう?」
「……疲れている以前の問題だろうがっっ」
シャアは手にしていた本をバタンと些か乱暴に閉じて、ベッドへと早足で向かう。
そのままの勢いで上掛けの上からアムロに覆い被さった。
「が、我慢はっっ?!」
「…キスだけだ」
唇を重ねて舌を絡め合う。そのまま手を上掛けの中に入れて、アムロの身体をパジャマの上からゆっくりとまさぐり始めた。
「…んんっ……だっだめ…だって…」
「撫でているだけだよ…」
「か、カミーユもっっ…一晩安静にしていた方が良いって言ってたけどっっ」
「……直撃は避けたぞ?」
「え……」
「…試してみるか?」
「えっ…あ…ん………ってーっっっ!ダメっっ!本当に今夜は駄目だってっっっ!」
アムロはシャアの両頬を挟み込む様に手を添えて、キッと睨み付ける。
「…昔…貴方がアウドムラで俺にしたコト、全部カミーユに筒抜けだったじゃないかっ!だからっっ…駄目ですっっ」
「……まさか一週間も我慢しろというのか?冗談ではないっ!」
「取り敢えず今夜だけは言うこと聞いて…ってばっ!」
大袈裟な溜息を付いて、シャアはアムロの胸に倒れ込むように顔を埋めた。そのまま大人しく動かない様子なので…アムロはそっとその金色の髪を撫で始める。
「…あのさ……今日カミーユが変なコトを言ったんだよ…」
シャアが無言で答えないので、そのまま続ける。
「カミーユさ……俺と貴方の…その……子供として生まれたかった…って…」
「……成る程…予想通りのエディプスコンプレックスだったか…」
「シャア……」
身体を上にずらしてアムロの表情をよく見てみる。戸惑いの色しか無いようだが。
「少しは…自覚していたか?」
「…解らない…よ…そんな事…」
「ならば尚更…君は罪作りだな」
何故…?というアムロの言葉はシャアの唇にそのまま塞がれる…。

 

 

 

今日もいつも通りの喧噪のMSドッグ内…。
「…何だ…先生、また此処に来てたのかあ?」
どうりで女性士官達がきゃあきゃあウルセーと思った…と付け加える。
「昨日は、コレが見られなかったからね」
カミーユが指差す方向には緋色の専用色に輝く総帥専用機がある。
「ああ…別の場所でメンテナンスしてたからな」
2人はその威風堂々とした機体を並んで見上げた。
「何ともあのヒトそのものって感じのMSだな…まあ…昔のよりは似合っているだろうね」
「…そういや同じ組織で一緒に闘ってた時…あったんだよな?」
「ああ、彼はその時は金色の機体に乗っていたよ」
「きっ…金色っっ?!…そりゃ宇宙空間ではますます目立つだろうな…大佐らしいケドさ」
「一応ビームコーティングの効果もあったらしいけど…あまりソレは感じなかったなあ」
クスクスと笑うカミーユに何とも言えない視線を送るギュネイである。それに気付いたか、カミーユは腕組みをしてギュネイに向き直る。…背は対して違わないのになんて威圧的なっっとムカついた。
「…色々と心配しているようだけどな…安心しろよ」
「なっ…何をだよっっ!」
「お前の仮想ママも仮想パパも…取ったりはしないからさ」
「…なっ…何だよっっ!…それっっ?!!」
ギュネイは本当に真っ赤になった。ああ…やっぱり少しは解っていたのか…?
「そう恥ずかしがるなよ、俺も同じ…だからな」
…えっ…?と思わずカミーユを見つめる。彼の視線はもう自分へではなく、目の前のサザビーに再び向けられていたが…。
「……俺さ…」
暫しの沈黙の後、ギュネイが口を開いた。
「……大佐の事、昔ほど嫌いじゃないよ…。アムロ少佐のお陰だとは思うケドさ…」
「………まあ…俺もムカつく度が100から80くらいには下がったかな?」
「…分かり易いな、ソレ」
2人でククク、と忍び笑いをしてしまった。
「カミーユ先生さ…研修終わったら軍医として此処の医局に来ればいーんじゃね?…MSドッグにも頻繁に来られるぜ?」
「まあ…平和な時期なら軍医もアリ、か…でもやはり俺としてはアムロさん個人の主治医の道を目指してだなあ…」
「……さっきさ…安心しろって言わなかったか?…先生よ…」

自分の不安と心配事はまだまだ解消されたワケではなさそーだ、とギュネイはしみじみと思い頭が痛い。これからこの年上の、外面だけは良い美形医師にも散々振り回される日々が続くのだが…案外それはそれで幸せな日々なのかもしれないのだった…。

 

 

END

BACK

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アムロがどれ程にシャアを愛しているかを語りたいだけの話だったのか…ふっっ
長男カミーユ・次男ギュネイ…とある人から言われて納得してしまいました。成る程。(2008/10/10)