《赤い朝焼け》

 

 

愛する彼と何年越しもの想いをやっと実らせて…同衾する生活になってまだ半年程だ。
その間にお互いの仕事やら何やらの都合で、何日も一緒に居られなかった日々もある。
当然触れ合えない夜は初めてのワケではないのだ。
……だが今夜は……
「触れ合えない夜」でも、この邸の同じ屋根の下に愛する彼…アムロはちゃんと居るのだ。
アムロを此処に迎えてから、こうして寝所を分けたのは初めてである。
……何故だ…アムロ…
自分が怒らせてしまった様なのだが…何故彼がそこまで怒るのかがまだ色々と理解出来ないシャアであった。アムロと一つになる前の、あの空しい想いが沸き上がってくる。
…つまり、寂しい…と…。
アムロのあの温もりを…あの甘さ柔らかさを知ってしまった自分の身体は「空しい」だけでは済まされぬようではあるが…。
この歳にして情けなくも悶々とした夜を過ごさねばならない…シャア・アズナブル33歳であった。

 

当然の如く思いっきり寝不足状態で朝食の席に着いたのだが、アムロは「気分がすぐれず」に未だ寝ているという…。その事実がますます彼を不機嫌にさせた。シャア自身は今日も総帥府に赴いて仕事をこなせねばならない。一言も言葉を発せずに黙々と用意された朝食を食する主人を、使用人達はただ固唾を呑んで見守るだけであった…。

出掛ける前に、アムロが籠城している部屋を訪ねてみる。予想通り一番上等な客間を使っていたので、ミセス・フォーンにわざわざ尋ねずとも直ぐに解った。時代がかった重厚な装飾の木製ドアには、大変不釣り合いな電子ロックが取り付けてある…。取り敢えずノックをしてみる。
「アムロ…」
呼びかけてみるが、やはり応答は無い。
「…アムロ…私は仕事に行くが…今夜、2人で話し合おう。頼む…」
ドアの向こうに…微かにアムロを感じた。例え大した事は無いニュータイプ能力でもありがたいものだ…とシャアはその気配に安堵する。そして名残惜しげに踵を返し去っていった。
シャアの気配が完全に消えてから、ゆっくりとそのドアが開いてアムロが姿を見せる。
「…シャア……」
アムロとて素直になれない自分を情けない…とは思ってはいるのだが…。

「ミセス・フォーン」
総帥公邸の女中頭を務める女性は、この邸の執事であるマクレインに呼び止められる。
「何でしょうか?ミスター・マクレイン」
「…いや…旦那様とアムロ様の事なのだが…」
「…それが何か?」
「旦那様の落胆ぶりがあまりにもお気の毒に思えて…な」
「ふふ…やはりミスターは旦那様のお味方でいらっしゃいますのね」
「茶化せんでくれ。…お2人は…その…大丈夫なのだろうか?」
楽しげな様子の女中頭を窘めながら、初老の執事は心から心配そうに呟く。いつものポーカーフェイスが、さすがにこの場では少々崩れているようだ。2人を見守り心配しているのはこの邸に働く者、誰でも同じ気持ちなわけで。
「…大丈夫ですわよ。お2人には少しだけ時間が足りなかっただけですわ」
見た目通りの堂々とした態度でミセス・フォーンはキッパリと言い放つ。
「明日には仲直りなさいますわ…間違いなく」
「…その予言…信じる事にしよう」
信頼する女中頭の言葉に、マクレインはいつのもクールな表情に戻ったようだ。そんな様子がミセス・フォーンには微笑ましく感じるのであった。

 

…アムロは衣装の最終打ち合わせの為に総帥府…シャアの到着から2時間後くらいであろうか?…の内部のとある場所に赴いていた。
ナナイが笑顔で出迎えてくれる。彼女は今回のイベントのメイン・プロデューサーを務めていた。2人を少しでも多く知る人物が良いであろうと言う事での抜擢であったが、本来彼女自身がこういった仕事に向いているのであろうか…水を得た魚の如くの働きぶりである。
「このイベント『結婚式』の成功は、このネオ・ジオンだけでなくスペースノイド全体の士気向上、団結に大きく影響するのです。何と素晴らしい…それを考えると興奮しますわっ」
…という戦術士官らしい発言もある。
「…アムロ少佐?…顔色があまりよろしくありませんわね…」
観察眼鋭い彼女はアムロの様子に直ぐに気付く。
「あ…すみません…あまり眠れなくて…」
やはり来たるべきイベントに緊張しているのだろうか…と思ったのだが、ふと昨日今日と不機嫌な総帥の様子も気になった。
……おそらく他人から見たら、ただの痴話喧嘩ね…放って置くに越したことナイわ…
彼女の判断は実に正しい。
アムロはふとナナイに聞いてみたくなった事があった。それは…
「ナナイさん、貴女との時、シャアはどーゆーSEXしてました?」
…という事なのだが…しかしっっいくらシャアの元カノとはいえ、いきなり女性に質問するのはとても失礼な内容だ、と思う。それに「昔のコトに嫉妬しているのか」と思われてヘタに気を遣われても困る。アムロの中にはナナイに対して不思議とそういう感情は起こらなかったので。それに聞いたところで、彼女はシャアと一緒に暮らしていたわけではないのだし…アムロの望むような回答は得られないだろう…とも思う。聞きたい気持ちは自分の中に仕舞い込んだのだった。

「アムロ様…少しお痩せになりました?」
「え…そうですか?」
「この辺り、以前よりかなり緩めになってますわ…もう少し詰めませんと…」
式典用の特別な白い礼服をお針子達に合わせられながら…こうして他人の手で為すがままでいる行為は絶対に慣れないなあ…とアムロは思う。
そんな様子を少し離れた位置でナナイは眺めていた。ふと後ろ手のドアからノックの音がして、そっと顔を覗かせた人物が居た。
「…あら?レズン中尉…何か急用ですか?」
「失礼いたします。警備の最終打ち合わせに来たのですが…我らが隊長がお見えになっていると聞きまして、お顔を少し拝見出来たら…と思いまして」
そう言いつつ既にナナイの脇に立っている。
「もう…ったく…特別許可よ?レズン…」
「恩に着るよ♪……へえー…ホントに何というか…可憐?可愛いじゃん!少佐」
「…でしょう?私もちょっと驚いた可憐さよっっ」
グーよっグーっっ…と指を突き立てている2人。そんな様子にアムロは振り返り、レズンに気付いてちょっと手を振った。レズンも軽く手を振り返す。
「…しっかし…少佐ってホント…細いねぇ」
「……ウエスト…私達より細いわよ…」
ナナイは手にしていたファイルをそっと彼女に見せる。それには礼服の全身サイズが記されてあるのだが…それを確認して、うーむ…と眉間に皺を寄せるレズンである。
「…私達より細いだけでなく……お肌も…綺麗なのよね…」
「ああソレ!アタシも思ってた!何であんなに綺麗なのかなーってさ…」
「少佐に聞いたコトあるのよ…何をしてそんなに綺麗なんですかーって。そしたら何もしてない、って…水で洗うだけで…此処に来てからは総帥の愛用石鹸をたまに使うかもとか何とか…。今まではお風呂入ったらボディーシャンプーだけで頭から顔から全身洗うタイプ…だったよーね…」
「はあ…それだけであんなに綺麗なんだー…化粧しないからかもしれないけどさー、ったくホント女性の敵だよねー」
苦笑いするレズンとは対称的に、むうーっとした表情で呟くナナイなのである。
「ワタシなんかどんなに忙しくても毎晩お肌のお手入れに最低40分以上はかけてるのに…お高い化粧品と毎日のマッサージと週2回の美顔マスクと月2回のエステは欠かさず…でこの美肌をキープしているというのに…ズルイわっ」
「……まあアンタが美肌に金かけているのは知っているケドね…」
キッとレズンを睨み付けてナナイは叫んだ。鬼気迫る、という表現が正しい。
「ナニ言ってるの?!レズン!今、ちゃんとしておかないと10年後、20年後に思いっきり差が出るのよっっ?!ナノコラーゲン配合美容液とプラチナ配合美白化粧品と目元リフティングとイオントリートメントは日々絶対に欠かしちゃ駄目なんだからっっ!!」
「…そんな顔で力説するとシワ増えるよ……」

衣装合わせが取り敢えず無事に終わり、遅めのランチを3人でどうか…という事になり、総帥府内のオープンカフェに3人で入る。昼の時間を大分過ぎていたので人は疎らであったが、アムロの姿を見かけると皆一様に会釈をする。一人一人にそれを返しながら、それはアムロは未だ慣れない行為の一つでもあった。
「少佐…もうすぐ『人妻』…って気分、どーですかー?」
遠慮無いレズンの言い方にアムロは苦笑いをするしか無い。MS隊の連中はそれがウリなのだし…。
「少しは気配りの物言いをしたらどう?レズン中尉…」
窘めるナナイにアムロはふと思った事を聞いてみた。
「そういえば…2人って昔から仲が良い…のかな?」
「いいえ全然…!」
ビシっと間髪入れずに否定される。
「ヤな女ーって思ってましたよー。身体で総帥に取り入ってさあ…ナニあのスマした女!ー気にくわないわって…ね」
「やたら下衆な噂信じて人に突っかかる女なんで、いつかシメてやろーと思ってましたわ」
「…はあ……」
2人の美人はニッコリ笑い合ってる……コワイ。
「それが…どうして仲良く…?」
「何がきっかけだったか忘れちゃったけど…ひっぱたき合い取っ組み合いの喧嘩になったんですよねぇ…もう殴る蹴るで…。で、何だかんだでその後一晩酒を酌み交わしたら…」
「何だか意気投合してしまったのよねーー不思議よねー?」
お酒の魔術ねーっっ…とケラケラ笑い合うアマゾネス2人を見つめ、きっと彼女達の本質は「男」に近いんだな…だからバリバリやってけるんだー…と妙に納得するアムロであった。

「そういえば…総帥閣下はずっとお仕事…なのかい?」
「そうよ。前日の午前中までビッシリ働いてもらいます」
「あらら…大変だねー」
「式の後に休暇取る為ですもの…仕方ないですわよねー?アムロ少佐」
「え…?…あ…うん…」
今更ながらにシャアの居る地位の大変さを思う。彼はネオ・ジオン総帥として決してお飾り的な立場ではなく、政治的にも軍術的にも立派に仕事をこなしている。特にアムロが来てからの彼の働きぶりは立派だとナナイは言う。「少佐の前ではいいトコロ見せたいんじゃありません?」と笑って。…そんな彼をちゃんと理解して支えるのが自分の「本当の」仕事…なのかもしれないのだけれども…。
この建物の最上階に彼は居る。ちゃんとその気配を感じている…機嫌悪いな、というのも。
一方のシャアも階下のアムロの気配にはずっと気付いていた。顔を見たい、という衝動を必至に抑えて…。

 

アムロが帰宅すると、ミセス・フォーンがお茶の用意をしてくれた。
朝と全く同じの浮かない表情で紅茶を口に運んでいるアムロに、女中頭はさり気なく質問をしてみる。
「…アムロ様…今夜も別室でお休みになられます?」
う…と返答に詰まる。
「旦那様は本日のお帰りはお早いようです。…お話し合いの機会もあるとは存じますが…」
どう答えたら良いか解らずに…黙ってしまうアムロである。
「…アムロ様の今召し上がっているお茶…旦那様は昔から大好きなのですよ」
え?と弾かれた様にミセス・フォーンを見つめる。…昔から?貴女は昔のシャアを知っている…の?と瞳が訴えていた。
「昔はお子様でしたから、これに蜂蜜を入れてましたけれど…」
ふふふ…と彼女は優しく思い出し笑いをする。
「…昔の事…子供の時のあの人を…知ってるんですか?」
意外な表情で問う、自分のレディとなる立場の彼に優しく微笑む。
「…私は昔、ダイクン家に仕えていたメイドでございます。そのご縁があって今こうして此処にお世話になっているのですよ」
「…ダイクン家……そうなんですか」
「ちなみに執事のマクレインさんも同じ様にダイクン家にいらっしゃいましたわ…」
あの寡黙な執事とシャアとの何気ない信頼関係は…その辺からきていたのか、とアムロは納得した。シャアの子供時代…彼自身から詳しく聞いた事は無いが、相当過酷な時代を過ごした様子だ、とは知っている。シャアの過去を俺は何も知らないままで…彼と添い遂げようとしている。
アムロの中にふとした渇望が生まれた。
「…ミセス・フォーン……お願いがあります…」
きちんと姿勢を正してから、アムロは女中頭に頼み込む。
「貴女の知っている…あの人の子供時代を…俺に話してくれませんか…?」
「…私の思い出話…でよろしければ喜んで…」
彼女は懐かしい瞳でゆっくりと語り出した…。

 

「お帰りなさいませ!旦那様!」
今日も邸の使用人達に明るく出迎えられるシャアであったが……
愛しいアムロは今日もお出迎えをしてくれない…その事実が端で見ても解る程に濃い落胆の色を彼に映し出す。さすがに常にアムロの味方であるメイド達でさえも主人が「少し」可哀想に思えてきた。
どんよりと落ち込むシャアにメイド達の長であるミセス・フォーンが声をかける。
「キャスバル様…アムロ様が居間でお待ちでございますよ」
嬉しい知らせと懐かしい呼び方の2つの驚きに、思わず目を見開いて彼女を見つめる。
幼少時の自分を知るこの女中頭は殊の外、優しい笑みを浮かべていた。
「…ありがとう…メイベル…」
こちらも昔の呼び方で素直に礼を言い、シャアは階段を駆け上がっていく。
残された彼女は、まだ心配そうにその後ろ姿を見つめる執事に大丈夫、と目配せを送った。

 

それぞれの自室とは別に、2人が寛ぐ為だけに用意されている居間がある。少々慌て気味にそのドアを開けると…アムロがちゃんと待っていた。
「…お帰りなさい、シャア」
ソファーから立ち上がってシャアに近付いてくる。だが彼は、思わず抱き締めようと伸びてきたシャアの腕をスルリと交わすのであった。思わず恨めし気味にアムロを見つめるシャアから慌てて視線を外すアムロ。
「え…えっと…疲れているでしょう?お茶を入れるね」
「……君が…か…?」
思わず疑問の声になってしまう。アムロがお茶を入れてる姿なぞ見た事が無いからだ。
「ミセス・フォーンに習ったんだ…大丈夫っ出来るから…!」
任せて、とサイドテーブルに用意されている茶器の前で何やらガチャガチャと始めている…。その全く慣れない様子にシャアは思いっきり不安になった。
「あつっっ……!」
「アムロ…!!」
思わず駆け寄ろうとするシャアをアムロは手で制する。
「大丈夫だからっっ!…座っててっっっ!!」
真剣な瞳に…とりあえず大人しく待つ事にはした…。その間ガチャンっという派手な音や、うわぁっというアムロの声にハラハラドキドキしながら…。

「…どうぞ……」
何とかどーにか紅茶は飲める状態で出されてきた。ソーサーを持つアムロの指先が幾分赤くなっているのに気付く。
「…火傷…したのではないか?」
「いいよ、これくらい平気だよ」
「良くない」
引っ込めようとするアムロのその右手を取り、その指先をゆっくりと舐め取った。アムロの身体はビクリ…と思った通りの反応を示す。感じ易いのだ…指は。
「も…もう良いからっっ…早くお茶どーぞっっ!」
右手を名残惜しげなシャアから無理矢理引きはがし、アムロはソファーの向かい側に座る。
目の前のシャアは優雅な仕草でカップを口に運んでいく。
「…この銘柄も…ミセス・フォーンから聞いたのか?」
「うん…貴方が昔から好きなのだって…」
「……そうか…」
だからあんな昔の呼び方をしたのか…彼女は。…だとしたら。

「…アムロ……聞いたのだろう…?」
シャアの静かな問い掛けに伏し目がちな瞳でアムロは答えた。
「……うん……昔の思い出話を少しだけ……」
「そうか……」
「…ごめんなさい……俺が頼んだんだ…」
本来ならばちゃんと貴方から話すまで待つべきなのに……
「謝る事はないさ」
シャアは穏やかに答える。
「…貴方の子供の時の思い出とか…聞いた。…それから…貴方のお母様の事も…」
シャアの身体が少しだけ緊張したのをアムロは感じた。やはり触れてはいけない事だったのだろうか…?
…でも…
「ごめんね………俺は知りたかったんだ…少しでも貴方の事を…」
「アムロ…」
自分を真っ直ぐに見つめるアムロの瞳は何も隠す事なく…真摯である。
「俺は…パイロットとしての貴方しか知らない。自分の敵としての貴方しか知らない…それじゃ…駄目だと思ったんだ。だって…」
自分から少し視線をずらしたアムロの次の言葉を待つ。
少し頬を赤く染めて、意を決したようにアムロは視線をシャアへ戻した。
「……俺達……家族…になるんだし……」
「…アムロ……」
もう待てない。シャアは立ち上がり、アムロの側に移動する。そのまま強く抱き締めた。
アムロもシャアの背に手を回し…2人はそのまま唇を重ねた。何度も何度も慈しみ合い睦み合うキスの後に、深く口付けする。こんな互いを愛し合うキスは…きっと3日以上ぶりだ、と2人は感じていた。
「アムロ…嬉しいよ……私も君の事がもっと知りたい…」
長い口吻の後、シャアはアムロの潤んだ鳶色の瞳を見つめる。
「…俺だってもっと…話して欲しい……シャアの事……」
再び熱いキス…。
「…アムロ…私は常に清らかな道を歩いてきたわけではない…。血に塗れた罪人としての自覚がある。
…それでも…聞いてくれるか…?」
「…それは…俺も同じだよ……知っているくせに…」
それでも良いのだ。その罪事貴方を受け止めて愛する…と誓ったのだ。その十字架を貴方だけに背負わせるのは辛過ぎる。…辛過ぎる貴方が道を誤らない為に…貴方の苦しみをその傷を2人で分かち合う為に…
俺は此処に来たのだから…。
「…ありがとう…アムロ……だが…その話す前に…な」
「…なに…?」
意外に真剣なシャアの表情に少し不安を感じる。
「一度だけ君を抱かせてくれ…!…私はもう限界だっっ!!」
あーあ…と脱力しているアムロをガシッと抱き上げて、それこそ3倍速の速さで主寝室へと走り出すシャアに「まだ夕食の前なんだよーっっ」と抗議するアムロの声は当然の如く唇を塞がれて………

 

「…今夜はお2人とも夕食は要らない、とのお申し出です」
「……ミセス・フォーンの予言通り、用意してなくて正解でしたなあ」
「ああ、でも簡単なお夜食は用意して差し上げてね?料理長…きっとお疲れだから…」

 

その夜は…ベッドの中でたくさんの話をした。
2人でこんなに話し合ったのは初めてだろう。辛い話も哀しい話も楽しい話も…出来る限りの事を互いに聞かせる。東の空が赤い朝焼けとなっても、まだ足りない。
だが…これから2人にはまだまだ…多くの時間がある。お互いをもっと知る為の時間が。
結婚が先なんて普通とは逆だろうけれど…自分達らしい、とも考える。

「…貴方の昔の話を聞いたら…今『甘えん坊』なのは仕方ないと解りました…」
「どういう意味だ…?私はそんな甘ったれた子供時代は送ってないぞ?」
ふふふ…と笑ってアムロはシャアの黄金色の頭を自分の胸に引き寄せた。
「…俺…自分に母性は無いと思うんだけど……意外にこれも気持ちイイかも…」
「……私はとても気持ちイイな…」
自分の胸の中で甘える仕草をして見せるシャアに、全く…と苦笑しながらも、アムロはとぴきりの幸せを感じているのだった。

 

結婚式まであと5日……。

 

FIN

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…次こそ…ケッコンシキでしょーか…ぜいぜい…(2008/8/24)
阿呆なミスで修正UP…→(2008/8/26)