そんなにしたら

 

 

 

愛する者に触れて抱き締めて、そして愛情表現としてのキスを幾度も贈りたくなるのは、人間として至極当然の欲求だと思っている。
ましてや積年の想いの果てに結ばれた相手…となれば、今まで触れられなかった想いを込めて、もっともっと…それはたくさんの愛情表現をしたくなるのは当然ではないか。

「…スキンシップ……し過ぎだと思う……」
いつもの様に熱いキスを繰り返した後に、腕の中で少しだけ粗い息を吐きながら…
アムロはシャアの腕の中で「今更ながら」呟いた。
「私は全くそうは思わないが」
やはり「いつも通りの」答えが返ってくる。
「我々は夫婦なのだから、この程度の事…ごく普通だろう?」
そう言ってもう一度軽いキスをしてくる「夫」をアムロは少々キツい瞳で見上げた。
「…俺の両親はこんなに…キスばっかりなんかしてなかったぞっ」
「私の両親もそうだな…少々複雑な立場の2人であったのでな」
「…だったらさっっっ…」
「だからこそ…私は自分の妻にはたくさんのキスを贈ろうと思っていたよ」
そう言ってもう一度キス。
ああっもうっっ…と思いつつ…結局それを全部受け入れているのだが…。

 

アムロはシャアとキスするのが嫌…というわけではない。
2人だけで過ごす時間は、抱き締められて彼の体温を感じていると安心するし…キスしてくれるのは嬉しい。
だが…いい加減、回数に問題あるんじゃないかっ?!…と最近思うようになってきた。
もう少しさり気なくても…ちゃんと愛を感じられるのに…。しかも
「君の唇がこんなに魅力的なのがいけない…いつだってキスしたくなるものだ…」
とか言って人のせいにするしっっ!!
シャアを…もの凄ーーーく愛しているけれど…もう少し常識的な行動もして欲しいっ…と考える。 愛されているのだって…もの凄ーーーく解るんだけどっっ…それでもっ!

「少しは遠慮して欲しいのにさー…全く困るよ」
「………」
「結構いい歳なのに…考えて欲しいよねっ…はい、大きめに切ったよー?このマロンパイ、好きだって言ってたよねー」
「………」
「…カミーユ?…もっと大きい方が良かったかい?」
「……いいえ、パイの大きさは問題ありません……その惚気にはもう何も答えない事にしただけですからっ!」
アムロが切り分けてくれたパイにガシッとやや乱暴にフォークを突き刺して、カミーユはヤケクソ気味に口に頬ばった。そんな風に食べてもやはりコレは美味いのだが…。アムロさんお手製のマロンパイ…ああっ本当に美味いっっ!
「惚気ってっっ?!…そんなつもりじゃ…困っているんだけだよっ…」
「…とても本気で困っているよーには
見えませんがあーっ??」
カミーユがやや意地悪な視線を向けると、アムロはううっと口を噤み、赤らんだ頬を少し膨らませて呟いた。
「…カミーユ……意地悪い……」
ぐわっっ?!……股間にモロ来る表情っっ!!
慌てて視線を逸らし、先日から論文に纏めている医学関連の知識をフル動員するのである…そんなカミーユ青年はもう24歳、色んな意味で複雑に辛いお年頃。
「べっ…別に病気認定する程のキス魔では無い様に思いますけどね…確かにスキンシップは熱いかな、とは思いますが…」
「…だって2人だけの時とか…凄くしつこいんだよ?」
「…はーあ…そーですかあーー……そーんなに言うなら、嫌だってキッパリ頬叩いてでも拒否したらどーなんですかあーっ?」
珈琲をゴクゴクと飲み干してから、再びヤケクソ気味に言ってみる。
「うん…したよ…それ……そしたら…シャアが凄く哀しそうな顔してさ…本当に辛そうで…俺も何だか胸が痛んでさ……」

…………ふうーーん…そーですかあぁ……………
だったら…いちいち俺に相談するなってのーっっっ!!
いくらアムロさんでも怒るぜっっっ!…えーいっっ犯したろかーーっ?!


…と思いっきり叫びたくなった。
まあ…確かにノーマルな性癖しか(多分)持ち合わせていないアムロには…あの過剰な愛情表現が戸惑うのだろうな、とは理解できるが。拒めないアンタも悪いっっ!…と言いたくなる自分に否はない!とカミーユは思う。
「まあ…つまりアムロさんは『量より質』なわけですね…正直にそう言ってみたらどうですか?」
「質…って?!…つ、つまり…たくさんより…中身を…って事?」
「ええそーですっ!少なくとも回数を減らしたいならあっっ…あのエロ大尉には効果的でしょーねぇーー」
「うう…中身って……そんな事さ…」
いきなりアムロはカミーユを上目遣いでじいぃぃ…と見つめた。琥珀色の瞳が揺らいでいる。
「…たくさんするより……濃い方がいいんだ……」
!!??ぐはあぁぁぁぁっっ…!!不意打ちくらったーっっっ!!
「…とか言えばいいのか……って?!カミーユっっ!な、なにっ?!鼻血?!」

「大丈夫かい?カミーユ…」
「だっ…大丈夫ですっっ…油断してましたっっ…」
「??何の油断?」
「い…いえっっ…個人的な話でっっ…」
…ったく…アムロさんのこの天然過ぎる色気は犯罪レベルだよっっ…30近い男のクセに…こんなに可愛いなんてっ!…詐欺だっホント詐欺だっっっ!!…ああ…このフェロモンに当てられて…何だか俺も十代の頃に戻ってしまう気がする……
「そうかー…鼻血出た時って…横向いて頭高くして寝ればいいんだね?」
「…そーです…すみません…」
…まあ確かに大尉の気持ちも解るけどな…こんな天然色気の奥さんだったら…俺だっていっぱいいっぱいキスしたい…かも…だな
毎朝毎晩…アムロさんと……なんてっっ!そんなっっっ!!
それに…ああ…なんて柔らかくて気持ちイイんだっっ…ココはっっ!
ああ…アムロさん……こうして毎日…コレもしてもらえたらっっ!!
「?!カミーユっっ…何かまたっっ…?!」
「あわわわっっ!…すっすみませんーっ!!」
ああーっっ!やっぱり逆効果だったぜっ!!
…アムロさんの…
膝枕で休むなんてっっ!!!……でも幸せだよ…はあ…

 

 

夕食後のお茶の時間にこうして並んで座っていれば…いつもの様にキスをされるけれど。
「…ぁんっっ…シャ…ア…」
一度離れた彼の唇に素早く指を押し当てて、次を制する事が出来た。
「…どうした?アムロ」
眉間に皺を寄せてシャアは明らかに不満な表情を作る。
「ね…シャア……そんなに回数重ねるよりさ…」
「何だ?」
…良く解らないのだがカミーユが「大尉にも効果的なハズですっ」と言っていた…
甘えた表情プラス上目遣いうるうる瞳で意見してみる。
「……貴方の愛がこもったの…1回でいいからさ……」
シャアの目にはアムロの背景にキラキラ透過光付きのお花畑が見えた…。
「…アムロ……そんな風に言われては…」
「ダメ…なのか?」(…うるうるキラキラ…)
「……いや…」
いきなりガシっ!と強く抱き締められる。
……あれ?……何だかこのパターン……
アムロの背中に少し冷たいモノが走った。
「…止められなくなるぞっ!!」
途端に激しく唇を、それこそ貪る様に奪われた。
……ああーっっっ!!やっぱり…墓穴とかっ自業自得のパターンだあっっ…!!
今更気が付いても
全く遅いが。
「…んっ…!んんっ…!!」
シャアの舌が口内を激しく動き回り、嫌がるアムロの舌を無理矢理に捉えた。絡められたままシャアの口内の方へと強く引き出される様に…その強引さと激しさに舌が流石に痺れてくる。やっと離してくれたかと思うと次はアムロの弱い上顎の部分を、いつもは優しくノックする様に突いてくれるその場所でさえ、激しく舌でそれこそ犯し尽くされる様に……
そしてそこから全身に走る甘い痺れに…疼く腰に…もうたまらなくなった。
長い長い口吻で…やっと彼が唇を離してくれた時は、アムロは息を荒げてハアハアと必死で呼吸する事しか出来ない。閉じられない口元から、どちらのものとはもう判らない唾液が幾筋も首まで伝わっている。
それよりも……もう身体にスイッチが入ってしまった。ぶるる…と全身を一度大きく震わせる。そんなアムロの様子を口元を吊り上げて満足そうに眺めているシャアである。そっと手を伸ばしてアムロのその胸元へと触れた。
「…ひゃっ!…やめっ…!」
「もう…我慢出来ない様子だね…奥様は」
「うううーっっっ……ばかっっ!!」
赤い目元を潤ませて抗議の声を上げてくるその姿さえも…今のアムロの全てが自分の欲情に響いてくる…全くたまらない。
「毎回こんなキスで良いと言うならば…朝晩1回ずつでも我慢するが?」
そのまま軽々とその愛しい身体を抱き上げた。
「…おっ俺が…持つかーっっ!!こ、こんなの…毎回…っっ!!」
アムロはシャアの背中を1回…思いっきり叩いたが、その後はそのままその逞しい胸へと顔を埋め、大人しく運ばれている。
「………やっぱり……今まで通りでいいや……」
ポツリと呟いた妻の可愛らしさにシャアは自然と口元が揺るんだ。
「うむ…良い答えだ」

その後は……
もう今更書くまでも無い…宇宙一の夫婦の愛の営みなので省略するとして…(おーい)

結局はいつものパターンで、旦那様のペースになってしまうのではあるが…つまりは奥様が甘ーーく、全てを許してしまっているのであるからして。
こういう夫婦はやはり…割れ鍋に綴じ蓋夫婦……と言うのであろうか??

 

ちゃんちゃん☆☆

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「良い夫婦の日」ですからネ……ふっっ……今年もゴメンっっ!
カミーユ先生が相当溜まってらっしゃるご様子…何とかしてやらねばっ!
(どうすんのよ……?)            (2009/11/22UP)