溶けちゃいそうだよ　

　

　

キスが上手な人のキスは…ソフトで優しい。

そんな言葉を聞いた事がある。
今…まさしくその通りだと実感しているんだ。
優しくて柔らかで…甘い蕩けるようなキスをしてくれる人は…
本当にキスが上手なんだなあ、と思う。

　

初めて彼とキスした時……
「ああ…やっぱり激しい人なんだ」
…と思った。
互いにあまり余裕がない時代……ただ受け止めるのが精一杯で。
彼が自分に求めるモノ…自分が彼に求めるモノ…
それさえも解らないままに、ただその「快感」だけを追い求めていた。
唯一解っていた事…それは多分この男の事が自分は「好き」なんだろうという事。
「好き」…なのだろうな、と思う。
そうでなくては男にわざわざ抱かれようなんて…死んでも思わない。
「彼」だから…いいよ、と思った。
「好き」だから……これでいいんだ、と思っていた。

でも、それも随分不確かな感情で…本当はまるで自信が無かったのだ。
そして当然彼が自分に向けてくる感情も解らなくて…
このままこの衝動で求め合っていたら…もしかしたら２人とも壊れるのではないか？
そんな事さえ考えた。そのくらい不安定なSEX…の繰り返し。
そう…「愛情」とか「信頼」とか…そんなものは完全に二の次の激しいキスばかり。
激しいただ「欲望」しか感じられないSEXばかり…。
そのほとんどをただひたすらに必死でこの身体に受けて。
…辛かった…のは心。
「彼」が解らなくて…必死で求めてもその手にこの身に…感じる事が出来なくて。
辛くて哀しくてどうすれば良いのか解らなくて。
やっぱり傷付いていた…と思う。
そして傷付けていた…と思う。
最後はこれ以上…一緒に居る事を拒んだ。
…そして彼は…求めても追いかけてもくれなかった。
待っている事さえも…拒まれた、と思っていた。
本当は…本当の自分が言いたかった言葉は…。
優しい言葉や優しいキスが本当は欲しくても……到底言えなくて…

貴方の本当のキスは……きっと優しいんだ…よね……？？

そんな莫迦な事をずっと考えていたんだ……

　

　

　

触れ合う唇が温かい。
今の自分に何よりも安らぎを感じさせる「安心感」をくれるキス。
このキスがとても好きだ。
彼の膝に抱き上げられて、優しいキスを何度も受ける。
その度に自分の身体の中が…「彼」でいっぱいになる様な…そんな感覚。
「…アムロ……」
名前を呼ばれるだけでその声にゾクリと背中が震える程に…自分は貴方の事しか…貴方に愛される事しか考えられないくらいに…もう貴方でいっぱいなんだ…
そのとても綺麗な貌を覗き込みながら、ふと呟いてみる。
「キス…上手だよね……あなた」
「…そう言って貰えるのは嬉しいが…『誰と比べている』と勘ぐりたくなるな…」
複雑な感情を眉間の皺に乗せて自分を見つめる彼の、その独占欲でさえ愛しい。
「そんな架空の人物にまで嫉妬するなよ…」
苦笑してその眉間に唇を寄せる。
「あなたのキスは…いつも気持ち良いから…だから上手なんだと思う」
その言葉に満足したのだろうか…綺麗な笑顔を作って、彼の力強い腕が更に自分を抱き寄せて…頬に優しいキスをひとつ。

「上手いか下手かの問題ではないのだよ…アムロ」
「？…どういう事？」
「私はキスを通して君にメッセージを送っているだけ…だ」
「？？」
腰に回されている手に更に力が入って…この体勢だとシャアが少し自分を見上げるカンジなので…彼は少しだけ伸び上がるようにして、また優しいキスをくれた。
「これは…『君が愛しい』という意味のキス」
思わず頬が熱くなったのが解る。
再び唇が重ねられて…先程よりは長めに唇が押し付けられている。
触れ合うその柔らかさに鼓動がどんどん速まってしまう。
「そしてこれは…『愛しているよ』という想いのキス」
眩暈がしそうなくらい…熱い視線で見つめられて。
「そして…次は……」
軽く合わせてすぐに離れて、そして再び…と何度も繰り返す。リズムカルな音を立てて…啄むようなキスを。
これがバードキスって言うのは知っているよ…。
最後に彼の舌が軽く自分の唇を舐めてきた。
「『早く君とSEXしたい』…というキスだ」
「？！…露骨だよっもうっ…」
２人しか居ない部屋で恋人同士の語らいで…露骨も何も無いな、と本当は思うんだけど。
「君の答えは…？アムロ…」
顔も赤過ぎるくらいだし…このドキドキと身体の震えはとっくに彼にも伝わっている…よなあ。
顔を傾けてゆっくりとそっと彼の唇に己のを重ねる。
彼がいつもしてくれるように…その形の良い唇を優しく全部感じられるように少しずつスライドさせて。ちょっと不安になりながらも舌先をそっと出すと…応じるようにそこを開けてくれたので、彼の口内で自分の舌を遊ばせる様に……まだまだ慣れないのだけど。
湿った水音が響いて…その音さえも自分の腰を疼かせる。
暫くすると、やっと彼の舌が自分のを捕らえてくれて…絡まり吸い上げられる様に引っぱられて…とても痺れる甘い感覚。時々ちょっとその痺れが辛い。
……でも大好きなんだ……コレ……
やっと唇を離し、濡れて光る唾液にはもう別に何も気に止めることなく…
「今のは…どういう意味かな？」
案の定やっぱり意地悪い笑顔を作ってわざわざ聞いてくるので。
ならば…とびきりの艶を作って…どう見えるか解らないけど一応そのつもり！…応えてやる。
「…『早く…ベッドに連れて行って…シャア……』…だよ…」

…貴方の…とても嬉しそうな笑顔が大好きだ。
今は…貴方のその笑顔がいつだって見られる。

再びキスをされてそのまま抱き上げられて……これからもっともっと甘い時間。
キスの上手な貴方に、もっともっと上手なキスをされて…
身体中が甘く熱く蕩けてしまうから……

キスだけじゃなくて…貴方は全てが優しかったよ…。
…身も心も魂さえも…貴方のその優しさに触れて…全部触れて…
やっとあの辛い想いから解放されたのだ…と思う。
その優しさに、自分も精一杯の想いを込めた同じモノで返すんだ。

でもね…
これって…
ただ…貴方を愛しているだけ…なんだけど…

…シャア……それで…それだけでホントに良いのかな…？

『身に余る程の光栄だよ』
…という意味のキスを彼が優しく返してくれた。

　

　

THE END

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……溶けちゃっているのはアタクシののーみそですね……転げ回る様なゲロ甘を目指しました……
あははははははは……　　（2009/9/4　UP）