《  LOVE AND AFFECTION 2 》

 

St. Valentine's Day …
恋人達の愛の誓いの日……

「今日はバレンタインデーだわねぇ…」
「…そうだね…まあ、アタシにはぜーんぜんっ関係ないけど」
「え?この間…恋人出来たって…言ってたじゃない?」
「……先週…『君の様な素晴らしい女性には僕ごときは相応しくないよ』と言われてさあ……
一発殴ってお別れしました」
「…ふうん…彼氏と呑みに行ったんでしょ?あれ程止めとけって言ったのに」
「その理由が解らんわね…何で駄目なのよ?」
「……それが解らんよーじゃ…ま、当分は彼氏作るのは無理ね。それと…此処で大盛り頼むような女はモテないわよ」
「…ランチに特製スタミナギョーザ・ニンニク3倍増入り…頼む女もね」

いつもの様にザワザワと喧噪の士官食堂ランチタイム…。
そこで、二人の女性士官、ナナイ・ミゲル大尉とレズン・シュナイダー中尉は、いつもの様にコンビで昼食を共にしていた。見た目は二人とも大変な美人なので、普通に座って食事している姿は男共からしたら大変な目の保養と憧れの存在…マドンナになれる二人、なハズなのである。そう…見た目は本当に華やかで美しいコンビ…ただ彼女達の食しているモノが特盛卵2つ付豚丼定食とか特製餃子定食でなければ…そして会話さえ周囲に聞こえなければ、である。
この軍部内では彼女達の実態を知る者達が密かに「ネオ・ジオン軍最強のアマゾネス・コンビ」と呼んでいるのだが…もちろん彼女達の耳にもしっかり届いているので「職場ではもう彼氏は望めないし」と愚痴っているとかなんとか。

「…というワケで今夜はいつものメンツで呑み会ねっっ♪皆レズンの復活を待っていたのよ♪」
「嬉しそうに言うなっっ…そういうアンタはどーなのよ?ナナイは彼氏は作る気ないの?」
「負け惜しみじゃなくて本気で仕事が面白いから…あまり男は考えられないのよねぇ…」
「まあ…アンタの場合は最高スペックの男と付き合っていたからねえ…並の男ではさぞ物足りないコトでしょうよ」
「…付き合っていたっていうのかしら?アレ…今の総帥のご様子を見ると…どー考えても違ってた気がしてくるのよ…うん」
ふと入り口辺りがざわめいた。其方に顔を向けた二人の予想通りに…アムロ総帥夫人がお供のギュネイ中尉を伴って入ってくるところだった。皆に軽く会釈をしながら、アムロは二人を見つけて真っ直ぐ此方にやってくる。
「ああ良かった、二人に会えて」
ニッコリと微笑みながら彼女達の隣に座るアムロに、二人の美人士官も笑顔を向ける。
「どうかなさいました?アムロ少佐」
「うん…これを二人に渡したくて」
アムロはそっと…周囲に気付かれない様になのか…綺麗な赤い包装に小さなゴールドのリボンが付いた小箱を取り出してそれぞれの前に置いた。
「…えっ…こ…これはっ?!…もしやっっ…このパッケージはっっ?!」
「ええっ…まさかっっ?世界一のショコラと謳われるノ○の…しかも今年のヴィンテージ物ではなくてっ?!一粒300ハイトもするっあのっ!」
「さすが二人とも知っているんだねー…お裾分けになるんだけど…良かったらどうぞ」
「きゃーっっっ嘘っっ!…いーんですかっっ?!もちろん喜んで戴きますわっ!」
「これ地球圏でも取り寄せ不可と言われる幻のショコラですよっっ…ああっ凄い幸せっっ!」
そんな喜ぶ二人の様子を横目で見てギュネイ中尉は『こいつらも普通の女性みたいなトコあったんだ…』と心の中でしみじみ感心した。それこそ口に出したら二人に裏拳喰らわされるに決まっている。
「あ…少佐…もしかしてコレは……総帥…から?」
「えっっ…そうか…そんな大切なモノを戴いて宜しいんですか?」
急にすまなそうな表情になった二人にアムロはまた微笑みを返す。
「他にもたくさん色々と貰ってるからさ…気にしないで。だいたいソレ…俺にとっては全く良さが解らないモノだしね…喜んでくれる人が食べてくれた方が良いと思うよ」
アムロの気遣いがとても嬉しいと思うのと同時に気付いた事をナナイは言葉に乗せた。
「総帥と言えば…今年はちょっと寂しいバレンタインになってしまいましたね…少佐」
その言葉にアムロも苦笑いの様な表情を作る。
「ううん…でもまあ…大事な仕事なんだから仕方ないんじゃない?」
実はシャアは昨日からサイド6のニュー・マデラまで連邦の政府高官達との会談の為に出向いており、不在なのであった。此処に帰ってくるのは明日の午前中…バレンタインデーをまるまる留守とする日程である。
「俺は気にしてないけど…向こうは色々と拘る人だからさ…相当気になったみたいで凄いプレゼント攻勢…もうホント呆れているよ」
惚気だな…と思いつつ、ちょっと意地悪い口調で言ってあげるナナイ。
「少佐はそうおっしゃいますけど…きっと総帥は今夜は思いっきり愛を誓いたかったんじゃございませんー?ねえ?」
「うんうん、そういうのに拘る人なんだ…ものねえー?」
うんうん、と頷きあって「呆れているなんて言っちゃ総帥可哀想ーっっ」と全く思ってもいない言葉でアムロをからかう美人士官達であった。
そんな二人の様子にふと首を傾げて総帥夫人は呟く。
「…そうかな?…だって愛の誓い…なんて
毎日毎晩言ってるんだから…今更は別にいいんじゃないかな?」
思わず…黙りこくる二人である…。
…たった一言に撃沈されたわいっっ!…さすがっっアムロ・レイ少佐っっっ!!

 

アムロ専用のリムジンエアカーが静かに帰路を急いでいる。
運転手のギュネイ中尉が、今日何度目になるか…の事を再び聞いてきた。
「…本当によろしいんですか…?少佐…」
「まだ言ってるんだ?ギュネイってば…ディナーに来るの初めてじゃないだろう?」
「そりゃそーですけど…その今夜は…総帥は居ないし…
そして何よりも今日はバレンタインデー…だし…もにょもにょ…」
「?良く聞こえないけど…?まあ逆に居ないから…気楽になれるんじゃない?それにカミーユも来るしさ」
「少佐が良いっていうなら…そのまあ…いいんですけど…」
何故か逆に緊張するんだが…と思いつつ。
「ギュネイ…本当は一緒に過ごす相手が居たのかな?…だとしたらごめんよ」
「とっ…とんでもないですっっ!!俺にはそんなのは居ませんからっっ!!」
「そうなの?…ギュネイ…モテるのになあ…不思議だ」
いいえっ…アムロ少佐!…今の俺は…貴方を守り仕える事に全身全霊かけていますからっ!彼女…なんて要らないし欲しくないです!仕事の邪魔ですからねっっ!
実際今日も幾人からの女性士官から…花や何やらを貰ってしまったのだ。告白を仕掛けてきた女性も居たのだが…「今は仕事以外の事が考えられない」という理由で断ってしまった。だいたい今の自分の中では、全てがアムロ少佐優先で…それ以上に考えられる女性なんて出来るものかっっ!…と思っているのだが。…果たしてその思考が良いのか悪いのかは…今のギュネイには未だ解らないのである…。

 

公邸に着き、程なくしてカミーユが訪れ…三人でディナーとなった。
「お前が居なかったら…アムロさんと二人っきりの楽しいディナーだったのになあ」
「…そういう事は心の中で思うだけにしといてくれよ…先生」
「思うだけでも多分聞こえるだろーから、敢えて口にした」
「言って置くけどさ…先生のその頭の中で考えているドス黒い事、全部俺に聞こえたら…俺の精神崩壊するわっっ!」
「……ホーント言う様になったなあ……ギュネイ…誰に向かって言ってるんだ?ええ?」
ゴスッという音と「ぎゃうあっっっ!!」という声が響いた。テーブルの下でまた向こう脛でも蹴られたか…とアムロは察する。
「本当に二人見ていると…仲良くなってくれて嬉しいって思うよ?」
心からの笑顔を見せて言うアムロに「だから仲良くなんてないって言ってますっっ!」と口々に否定し出す…そんな二人の様子もアムロには微笑ましいのだ。
料理長の最高に美味いディナーの後のデザートには、アムロ手製のケーキが付いて…ギュネイも、そして本日ギュネイと同く山の様に贈り物を貰ったカミーユにとっても…どのプレゼントよりも嬉しいモノとなった。

「幸い明日は皆、休暇だし…今夜は一緒に呑もうか?」
…と珍しくアムロが言ってきたので…三人は銘酒が数多く揃うシャアの書斎に移動した。
ギュネイには初めて訪れる場所であったので「うわーっ」「凄えっっ」をひたすら連発している。そして自分には珍しい酒瓶の数々を色々と質問してくるそんな様子を「ったく子供だなっ」と呆れた調子で言いながらも、ちゃんと答えて教えてやっている…そんなカミーユを、執事が持ってきた酒の肴を受け取りながら…アムロは優しい視線で眺めていた。
美味い酒と肴…弾む会話…とても居心地が良くとても楽しい。
しかし、カミーユはアムロの呑むペースが記憶しているものより早い事に気付く。
……アムロさん…やっぱり寂しいのかな?
いや、もうその事実には、彼が「夫のグラス」を使う事にした時点で気付いたのだけど。
…ああ…何だかモヤモヤするっっ…!
「アムロさん…やっぱり今日は…その…」
「今日…?…ああ…バレンタインデーだねー…二人はモテるだろーからぁー…いっぱい告白されちゃったあ?」
酔い始めたのか…明らかにいつも以上に陽気な口調だ。
「えっ…ええっ?!…いや…まあ…一人くらい…には…その…」
馬鹿正直に答えているギュネイに阿呆か、という視線を送りながらカミーユは『勝った!』と心の中でガッツポーズしてたりする。
「やっぱりそーなんだー…ふふふ…あのね…二人ともー可愛い彼女出来たらぁ、ちゃんと俺に紹介してよね?」
ニコニコと笑いながら言うアムロに
「「いやっっ!!絶対に出来ませんからっっっ!!」」
と同時に叫ぶ美青年二人なのだが…もしもこの場にあのアマゾネス・コンビの二人が居たら、何かが間違っているわっっっ!!と叫ぶに違いない…。

 

…ああやっぱりね……
向かいのソファで静かに寝息を立てているアムロを見つめて、カミーユは溜息を付いた。
「…なあ先生…やっぱり寝ちゃったけどさ…このままにしておいていいのか?」
ギュネイのその言葉を合図にカミーユは立ち上がり、アムロの側へと歩み寄る。
「このままにしておいたら風邪ひくに決まっているだろうが…寝室へ運ぶよ」
「…運ぶ…?……どーやって…?」
何故かじいぃぃっと自分にキツい視線を送ってくるギュネイに、ふふんっとワザと意地悪い顔を向けるカミーユ。
「…俺が抱いて運ぶから安心しろ。アムロさん…軽いしな」
「なっっ?!そっ…そんな事っっ…許されると思っているのかよっっ?!」
「非常事態だ。致し方あるまい」
……何だか口調が総帥に似ているなあ、とギュネイは素直に思った。そしてこの助平医師に大事な上官の身体を任せてよいモノなのかっっ?!と考える。
「…俺の方が…先生より背が高いし…力…あるぜ?」
思わず出た台詞はある意味、とっても不敬ではあるが…。
「お前が…抱いていきたい、というワケか?それこそ越権行為だろう?ギュネイ中尉」
「なっなっっ…違うっっ!!そっそーゆーイミで言ったんじゃなくてぇーっっ!!」
「そういう意味以外で聞こえないぞ?」
そう言いながら、カミーユはひょいっとアムロの身体を抱き上げた。ああ…やっぱり軽い…
目を見開き焦るギュネイに「ドアを開けろよ」と命令する。仕方なく書斎のドアを開けて、そのままカミーユの後をついて行く。カミーユが腕の中の自分の上官を時々…何ともいえない視線で見つめるのがとても気になって仕方ない。
廊下の最奥の、かなり時代かかった重厚な木製扉の前まで来るとカミーユが言った。
「ギュネイ…アムロさんの指…そのノブの下に触れさせろ」
「えっええっ?!俺がっっ?!」
「早くしろよ…俺は両手が塞がっているんだからさ」
仕方なく、ギュネイはおずおずとアムロの右手を取った。はっきり言ってこれだけでも心臓が飛び出そうな行為だーっっと焦っている。その手を金属部分のドアノブの下の方にそっと触れさせた。何かが解放される様な小さな音…。カミーユに促されてその重厚なドアをゆっくりと開ける。
「開け方…良く知っていたなー先生…」
「…大尉から聞いたんだよ…ある時間を過ぎると外からは夫婦しか開けられない設定になっているんだとさ」
あのクソ大尉はわざわざそれを教えて「私の居ない時にアムロに夜這いをかけようとしても無駄だぞ」と付け加えてくれたのでっっ…誰がするかっっそんな卑劣な行為っっ…!と怒ったものだった…。
「へえ…さすが総帥公邸…」
まあ普通はそう考えるよな…と思いながら、カミーユも初めて入る主寝室へと足を踏み入れた。

身体が部屋に入り込んだ瞬間にセンサー反応で間接照明だけが灯る。広い室内は思いっきり豪華ではないが…それでも総帥夫妻に相応しいだろうの落ち着いた調度品と…そして何よりも目が行く中央のかなりのキングサイズのベッド。カバーリングはこれまた落ち着いたワインレッドで統一されており、淡い灯りでぼんやりと映るそれを…若い二人にははっきり言ってもの凄く艶やかで淫猥過ぎるものに思えた。そしてこの漂う雰囲気は……
「…な…何というか……す、凄く……」
「ああ……何だか『濃密』…って感じだな」
シャアとアムロの…二人の「寝室」なのだ…自分達がそう感じても仕方がないだろう。カミーユはそのベッドに近付き、細心の注意を払ってアムロの身体を横たえた。
「…うん……」
小さく呻いて、アムロがコロンと身体を開くようにベッドに手足を伸ばした。
ぎょわわーーーーっっっっっっっ!!!!!
その格好は、二人にはもの凄く刺激的なポーズに思える。寝息を立てるうっすらと開いた唇…顎を上げているので、首筋から鎖骨、胸元までよく見える白い肌…ゆっくりと上下する胸…片膝だけ立てて開いた下半身も……淡い灯りとワインレッド色のベッドカバーにとても良く映えて……今の二人にはまさにトンデモナイオイシイシロモノが目の前に転がっていますっっ…の状態である。とっくに酔いは冷めているが、それでも速くなる鼓動と体温の上昇…その艶やかな身体から暫く視線が外せずに…じいぃぃっ…と見つめていてしまった。
ああっっイカンっっ!!…とカミーユはぶんぶんっっと頭を振って、同じ様に惚けていたギュネイの肩をガシっと掴み「行くぞっっ」と言う。ふと素直な言葉をギュネイは口にした。
「…あ…のさ……服……あのままでいいの…か?」
思わず再びアムロの姿に目が行く。確かに薄手のシャツとそしてキッチリとしたジーンズを履いているが…
「……お前……そんな事したら本気で殺される…ってのは解っているよなあ?」
確かにっっ脱がせた方がっっアムロさんは楽に寝られるだろうがっっ!!
「わっ解っているよっっ…!確実に銃殺刑だってなっっ…!……でも…毛布くらいは掛けてやんないと風邪ひくの同じだろっ?…医者としてどうなんだよっっ」
まあ…確かにそうなんだろうけど……ちゃんと夜着に着替えてベッドの中に潜り込んでもらった方が良いに決まっているのだが。
「…起こして…みるか…」
カミーユは再びアムロの近付き、身体を折ってアムロの耳元で囁いた。
「…アムロさん…起きてください……そのままだと風邪ひくから…起きて着替えて…」
「んん……」
うっすらとアムロは瞳を開けた。ぼう…とした表情でカミーユを見つめている。その様子が思いっきり扇情的でカミーユは大変焦ったのだが。
「……ん……脱げば…いいの?…シャア……」
寝ぼけた口調でそう言うと…アムロはいきなり自分のシャツの釦を外し始めたのだった…
ぎゃーっっっっっ!!止め……っっっ!!ダメですーっっっ!少佐っっ!!」
「スっ…ストップっっ!ストップっっアムロさんっっ!!何してるんですかーっっ!!」
慌てて止めに入り…その勢いで二人ともそのままベッドに倒れ込んでしまった。咄嗟にどちらもアムロの身体に落ちる事を避けた為、彼を挟んでそれぞれ両脇にドサッと倒れ込む。
「…ん……あれ…?…カミーユ…?…ギュネイ…?」
アムロは両脇に落ちてきた二人を交互に…まだ寝ぼけた顔で見つめている。
「あっ…アムロさんっ…あのっ…」
「しょ…少佐…これ…その…」
焦りまくりどうしたら良いか解らぬ二人に…にっこりと笑顔を向けると、アムロは不意に両手を伸ばして、硬直している二人の頭を抱え込んで引き寄せたのである。

でぇえー…っっっ?!…□◎×▲※〜〜〜?!!

「…うん…二人とも…可愛いよ……」
クスクスとアムロの笑う声…そして……再びスースーと寝息が聞こえ始めた。
「……アムロ…さん……??」
「…ね…寝ぼけて…たの…?」
二人の至近距離には優しいアムロの寝顔がある。思わずじぃぃっとその顔を見つめ…本当に可愛いなあ…と互いに思った思考は通じ合ってしまった。
二人の頭に置いてあるアムロの手は、当然無理矢理退かせば良い…そのくらいの強さであるのだが…何故かどちらもそれが出来ない。身体の一部は密着しているし、若い二人にはどーにかなってしまいそーな状況なのだが……パニック状態の頭の中を、落ち着け落ち着けっっ!絶対にナニかしてはいけないっっ!!と互いにも思考を飛ばし合う。
……しかし…
次第にそのアブナイ性的衝動よりも…温かく心地良いものに包まれている事にとても安堵している自分達に気付いていった。
「……温かいな……アムロさん…」
「…ああ…何だか…すげぇ…優しい感じする…」
急に何だか切ないモノが込み上げてくる。自分達が無意識にアムロに求めていたものを知ってしまったような…そんな感触。
「…気持ち良い…のは…ベッドのせい…だよな?」
「うん…多分……そー思う事にするぜ…」
そっと…まるで子犬が母犬に甘えるような仕草で…二人はアムロの身体に寄り添った……。

 

………………?
………イタイ………
……何だよ…この頭痛……
…ああ…誰かが……凄い……焦っている……怒っている…?

カミーユはいきなり覚醒し…そしてズキンと再び頭痛を感じた。
「え……あれ?…此処は……あ…ああーっっっっ!!」
広いキングサイズベッドの上に横たわっている男三人…昨夜の出来事を一気に思い出した。その途端にゾクゾクっと感じる…このプレッシャー……そしてその瞬間…その主の姿が見えてしまった。
「おっおいっっギュネイ起きろっっ!起きろってば!!」
ビシバシっと容赦なく頬を叩くと、当然直ぐに彼は目を覚ました。
「いっ…イテぇなっっ!!ナニすんだよっっカミーユっ!!」
「いーから早く起きろっっ……敵はもうスペースポートを出たぞっっ!!後二十分もしないうちにやってくる!!」
普段なら直ぐに飛んでくる、呼び捨てにするなっ…というもう一発の鉄拳がやってこない…という事を考えてた瞬時、全ての今の状況を理解し、彼も焦りまくる。
「な…な…だっ大丈夫だよなっっ!!ちゃ、ちゃんと服っっ…服着たままだしっっ!!」
「…確かに俺達は潔白だが……服を着たままでも一緒のベッドに寝た、という事実はある……それだけで充分だろう…」
「でぇーっっっ?!!…確かに…あの総帥なら………だあーっっっ!!もう隠すしかっ…隠すしかないじゃないかあっっっっ!!」
「当たり前だっっ!!死んでも隠し通せっ!はっ早くアムロさんが起きる前に此処を…っっ!!」
しかしながら…アムロを挟んでぎゃいぎゃいと騒いでいたので…当然の如くそのアムロはゆっくりと身体を起こしてきた。
「ふあ……何の騒ぎ…?……あ…れ…?」
「…アムロさんっっ!!」
「少佐…?!あのっっっ!!」
「…?……何で…カミーユとギュネイがここに…居るの??」
ふあっと欠伸をし、まだ眠そうな顔をしてアムロは自然な疑問を口にした。

 

「……アムロっっっ!!」
専用リムジンを降りてから本気で走ってきたシャアは、細君の姿を目にして思わず叫んだ。
「お帰りなさいシャア…ゴメン…今起きたばかりで……どうしたの?」
彼は自分をギュッと力強く抱き締めて幾度も頬ずりをしてくる。いつもの彼らしくなく、とても余裕が無い様子に見えて…。
「…ああ…此処のポートに着いた途端にとても胸騒ぎがしてな…君に何かあったのかと」
「えっ?!そうなんだ…大丈夫だよ?…ほら…俺は何ともないし」
アムロは自らもシャアにキスを返す。幾度か繰り返した口付けでシャアは落ち着きを取り戻した様子であった。
「…寂しかったかい?」
「うん…ちょっとね……だから昨夜はついついカミーユ達を誘っちゃったんだ」
ピキーンっっっ!…と総帥閣下に閃くアレ。
「……………ほお……カミーユと…ギュネイか…?」
「うん、折角のパレンタインデーだったんで、うちのディナーに誘ってね…ちょっと珍しくお酒も呑み過ぎちゃってさあーー…朝起きたら三人でベッドの上に雑魚寝しちゃってーー二人がねえ………って……どうしたの?…シャア…?……凄い怖い顔……して……」
「…いいや……何でも無いよ…可愛いアムロ……で?その二人は今は何処に居るのかね?」
「突然急用が出来たって…貴方と行き違いに帰っていった。何だか凄い慌ててたんだけれど…どうしたんだろうね?」
「…ふむ……事の重要性は理解出来ている様だな…それは利口な事だ」
シャアは携帯電話を取り出して、とある場所に連絡を取っている。
「…ああ…私だ。今直ぐにカミーユ・ビダンとギュネイ・ガスを捕らえて連れてこい。例の探索システム使用を許可する…うむ…では邸で待っている」
電話を切ると、アムロににっこりと「普通の」笑顔を向けて腰に手を回した。そのまま公邸内へと入ってゆく。
「…ねえシャア…二人が…どうかしたのか…?」
心配そうに問い掛けてくる愛しい妻に再び笑顔を向けた。
「留守中に君が随分と世話になったようだから…私からきちんとお礼がしたいだけだよ?心配は要らないよ…私のアムロ」
そして再びアムロにキスを落とすのだった…。

 

総帥閣下から二人がいったいどんな「きちんとしたお礼」を受けたのかは…それは神のみぞ知る……??
合掌………

 

END

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リクエストは「時節ねたのバレンタイン!モビルスーツ隊のこりない面々の画策!んで、正統派、アマゾネスからの贈り物に、やきもち総帥と、便乗するドクターカミーユで、まわりで慌てるギュネイとか」……だったのに…だったのにーっっっっ!!…すみませんすみません「やきもち総帥」しか合ってないわ……私にキリリクは無理なのかっっ?!(…涙…)
…こんなのでも30047の貴女に捧げますーっっ
(2009/2/15UP)