※現代版パラレル話ですが…
男同士で恋人同士だったり結婚したり…がごく当たり前!の「やほひWORLD」と
なっております…ご注意くだされ……
ってーー…我が家では今更ですかっ(苦笑)
《 JUST WONDERFUL THE WORLD… 》
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『少し距離を置こうね』
その短いメッセージをプライベート用携帯電話の画面で確認した時、それは今すぐにでも自宅に帰りたい衝動は必至であったが…仕事の立場上それが適わずに、悶々とした半日を過ごした。
帰宅してみれば既に玄関から予想通りの冷たい空気のみが己を迎える。
各部屋のきちんと掃除された…ハウスキーパーではなく彼がやった…様子を見て、課せられた務めを終えてから出て行くとは彼らしいな…と溜息混じりの苦笑を浮かべる。
案の定、冷蔵庫のドアにそれぞれの食材に対しての電子レンジの操作法等が書いてあるメモがマグネットで止めてあった。…そんな気遣い無くとも自分は使い方くらいは知っているよ、と常に思うのだが。そのドアを開けてみると今夜の夕食分と翌朝の朝食分と思われるモノ…冷凍庫にもきっちりと何日か分の「少しでも困らないように」という気遣いの調理された食材…。料理だけはハウスキーパーに頼んではいないのは事実なのだが…しかし…こんな気遣いをするくらいなら…
「…出て行かなくとも良かったのではないか?…アムロ」
昨夜は確かに今までで一番酷い『喧嘩』をした…のかもしれないが。完全にキレたと思われる彼の言動に、自分も我慢に出来ずに相当キツい言葉で返した…と思う。しかし自分にしてみればそれはアムロを愛するが故に…だ。挙げ句の果ては遂に理性がブチ切れて、酷い抱き方をしてしまった。本気であんなに抵抗してきたアムロを見るのは初めてだった。
その昨夜のアムロの様子を思い出して---やはり自分が悪いのだろうな、と少しは考えたのだが…元々の原因はアムロにも悪かった部分があるハズっっ、と身勝手に考えてしまう。
出逢ってから15年、正式に妻として迎え入れて7年目…やはり距離を置いて考える時期なのだろうか…?
永遠の愛を互いに誓っても…どうしても解り合えない事柄は出来てしまうものなのか…
綺麗に整えられたプラチナブロンド色の髪を片手で乱暴にかき乱して、シャアは深い溜息を付いた。
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耳障りなエラー音。
いったい今日何度目だ?
舌打ちをしながら、ヤケクソ気味に思いっきりキーボードを叩いた。
こんなにイライラしている原因ははっきりと解っている…
もおーっっぜーんぶっっっあの男のせいだっっっ!!
「……クワトロの莫迦……」
ボソリとその呟きは無意識にアムロの口から出た。「アムロさん…今夜の呑み会、やっぱりダメですか?」
ざわめく社員食堂の中…一人でランチを取っていたアムロに、同じフロアの同僚がおずおずと声を掛けてきた。確かに一度断っているのだけど…。何となく「酒でも呑まないとやってられるかっ」という気分が沸き上がってきたので…
「…ん…もし今からでも大丈夫なら…参加しようかな?」
と愛想笑いで答えた。途端にその同僚の顔はパッと歓喜の表情となり、「大丈夫ですっ!大歓迎ですよっっ!アムロさんっっ!」と叫んできた。集合場所と時間を簡単に告げて彼は去っていき…後ろの方で「アムロさん今夜参加するってよ!」「マジかっ?!」「やったあ!」という声が聞こえてくる。何で彼らが嬉しそうなのかアムロには全く解らないが…。
元々交流ベタであるので、この手の呑み会は進んで参加しようと考えた事は今まで無かった。そして最近は…恋人から参加禁止令を言い渡されている。
「何でそこまで束縛されなきゃいけないワケ?!」と怒ったが、頑としてダメだと言われた。
自分の恋人の愛情が良く解らない……それがアムロの最近の悩みなのである。
彼…クワトロには1年程前…まだ学生の頃、とある技術系の見本市会場で出逢った。今考えると、かなり強引に付き合いを始めさせられた様な気がする。何だか気が付くと身体の関係が出来てしまって、恋人の位置に彼が居て…今では完全に同棲状態だ。
彼の愛情は独占欲は結構強く、前述の様な事を言い渡される事もしばしばだが…かと言って全てを縛り付けるワケでもなく…逆に時々放置される。アムロはこんなに深い付き合いをした相手はクワトロが初めてだったので、他の男だとどうなのかは全く解らないのだが…それでももうすぐ23歳になるくらいの身の上としては、恋人とはいつも甘い時間を持っていたい…と願ってしまう。ただ優しくずっと抱き締めてくれるだけで良いのだ。
だが5歳年上の恋人は…たまに気まぐれにそれをしてくれるだけで、甘い愛の囁きも…そんなに貰ってない気がする。なのにセックスは激しくて独占欲が強い、という我が儘男に時々心底腹が立って、喧嘩になってしまう。…喧嘩と言っても大抵はアムロが一方的に怒って泣いて八つ当たりしている様なモノで…ますます悔しくて苦しくなるだけだ。
仕方がない…そんな男でもアムロは絶対に嫌いになれないのだから…
…いっそ大嫌いになれたら楽なのに……といつも思うのだ。
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その馴染みの店にはかなり久し振りで訪れたのだが、マスターは変わらぬ笑みで歓迎してくれた。お久し振りですね、と言ってシャアの好みの酒を自然と出してくれる。
マスターとの差し障りのない自然な会話と、静かな雰囲気が気に入っており、独身時代から度々訪れていた場所だった。アムロと2人で来た事もある。
しかし…今夜は何故か奥の方がこの店にしては騒がしい。
「常連の方が連れてきた若いお客さんに元気な方が居るようで…申し訳ないですな」
シャアの何気ない視線にマスターが頭を軽く下げた。
「構わんよ…若い連中のエネルギーは羨ましい限りだな」
「…私から見たらシャアさんも随分と若い部類に入りますがねえ…」
その後もマスターと時々何気ない会話をしながらゆっくりと一人酒を味わっていた。
ふとその奥の席から一人…ふらあ〜と歩いてきた者が居る。カウンターの横をすり抜けてトイレにでも行こうとしているのか…
-----ん…?
普段なら他人のそんな行動に気を止めもしないシャアだが、その人物の容姿があまりにも気になる感じであったので。
暗がりで顔がはっきりとは解らないが、赤毛のショートカットの細い身体…は、どう考えても彼の妻を思い出させた。ドアの向こうに消えたその姿に暫し考え込んでしまう。後ろ姿を見つめて本人で無い事は確信したが…。
酔いつぶれてしまったのだろうか…なかなかそこから出てこない。ふと心配に思っていると、彼の居た同じ後方の席から2人の男が出て来た。そそくさといった感じで急いでレストルームへと向かっていく。その様子と何気なく耳に入った会話に不快な邪気を感じて…シャアはゆっくりとカウンター席から立ち上がった。「失礼する」
ドアの向こうは洗面台となっていたが、そこには上半身を洗面台の上に倒れ込む様にグッタリとした様子の赤毛の彼…とその彼を両脇から抱え込んでいる男2人…。その2人の手の位置などが「予想通り」どう見てもこれから介抱するようには見えなかったので、シャアは微かに片眉だけを上げた。
「…酔いつぶれてしまったのかね?大変な様子だ。お手伝いしようか?」
その高級スーツを着込んだ紳士…な見た目と裏腹に、大変威圧的なオーラと迫力を受けて、アムロの同僚達は本気でビビった。
「あ…あのっっ…お、俺達はっど、同僚なんでっっ…」
「そっそのっっ…俺達でちゃんと介抱します…んでっっ…」
何故か焦って言い訳のような言葉で返す2人に、シャアはあくまで紳士的に
「ふむ…私から見ると君達自身も大分酔っている様に見えるのでね…ここは私と店のマスターにその子を任せてみないかね?」
とニッコリ笑って言い放つ。笑顔で人を脅せる人間がこの世には居るのである。
冷や汗を感じて2人は赤毛の同僚の腰に回した手や、胸元を開けようとシャツを掴んでいた手を、慌てて離すのであった。
それこそ逃げる様に出て行った彼らに代わって、その細い身体を抱き止める。
-----本当に…似ている……似過ぎなくらいだ
目を閉じていてもそう感じるのだから…この瞳が開いたらもっと感じるのだろうか?頬や身体のラインで自分の妻よりは年下だろう、と判断する。強いて言えば結婚した時期辺りのアムロ…に一番近い。
そっとその赤みを増した柔らかな頬をゆっくりと撫でる。
「…君…大丈夫か?」
そう囁くと…「ん…」と呻いてうっすらと瞳を開けてきた。その瞳の色が…違った。
妙な安堵感を感じていると、じっと自分を見つめる大きな瞳の彼がポツリと呟く。
「……ク…ワトロ…?」
何?と思った瞬間、いきなりギュッと抱き付いてきた。
「クワトロのばかあっっ…もうもう…俺は知らないんだからねえぇっっ……」
スリスリと何度も頬ずりしたかと思うと…ピタッと動かなくなり、寝息が聞こえてくる。もちんシャアに強くしがみついたまま…である。
-----クワトロ…と言ったか?…成る程ね…
苦笑しながらその身体を軽々と抱き上げて、その場を後にした。
戻ってきたシャアのそんな様子に驚いているマスターにはタクシーの手配を頼み、念の為に…奥の席の常連に後で渡しておいてくれ、と自分の名刺を置いた。
見ず知らずの若者…しかも意識が無い…を自宅までこんな状態で持ってきてしまった事は、親切心だろうか?それとも犯罪に近いのだろうか?
…などど考えながら、自宅の廊下を彼の身体を抱き上げたまま歩いている。
見ず知らず…と言っても妻に檄似、しかも「クワトロ」の関係者とあっては…親切心で良いハズだ、とシャアは既に自分の都合の良い様に頭の中では解釈しているのだった。
さて、何処に寝かせたらよいのかな…と考えていた時に、腕の中の彼が呻いた感触がした。
「…気が付いた…のかな?」
しかし答えは無く、ふとその身体が震えているのに気付いた。覗き込むと俯いている顔は…青白い。
……何となく察するものがあるのだが…
「……き……きもち……わる……」
当たりだっっ!…とシャアはそのままバスルームへと一目散に走り出した………
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泥沼からズルリと這い上がる様な感覚で……目が醒めた。
……頭…重…っっっ!!
何て最悪な気分っっ…ああ…コレって二日酔いなのか…?
とアムロはぼーっっとしたまま天井を見つめている。暫く眺めていて…その光景が自分の記憶が何処とも一致しない事にふと気付く。
……??……え…?……此処…って……?
…ドコだあぁーっっっっ?!と飛び起きた。ズキズキと頭が痛み続けているが、そのまま周囲を必死で見渡す。
全く知らない部屋…どうやら寝室の様だ。
しかも何だか……色々と高そうっっ!!と感じるハイセンスなインテリアの数々…この広いベッドのカバーリングでさえもこんなモノへの知識が疎いアムロでも「高そう」というのは一目で解る様な……
「な…何?…ここっいったいドコだよっっ…?!」
ふと…自分の姿に気付く。…何故かパジャマの上だけを着ている。もちろん身に覚えのないモノだ。そして…下着…履いてる…履いてるけど………コレも……全然身に覚えないんですがーっっっっ??!!
頭が頭痛とパニック状態でトンデモナイ事になっていた。
いったい何があったのだっっ?!…と焦りと恐怖もあって少し身体を戦慄かせてしまう。
その時…ドアをノックする音がして、ビクリと身体を震わせた。
ゆっくりとドアが開かれて、長身の男が姿を見せてくる。
「…やあ…起きたかい?気分はどうかな?」
「ええっ…?!…ク…ワトロ?!」
アムロはその大きな瞳を更にパチクリとさせた……
差し出されたグラスに注がれていたのは馴染みのあるスポーツ飲料の味…。
「これも飲んでおくと良いな…二日酔いの薬だ」
そう言われた錠剤も素直に受け取って飲む。両手でやや厚めのそのグラスを持ってコクコクと中身を飲みながら…目の前の優しく自分を見つめている男を少し上目遣いで観察する。
見た目と声が自分の恋人に本当に良く似ているけれど…この持っている雰囲気はまるで違う。彼より4、5歳以上は年上だろう。優しく紳士的で洗練された様子の身のこなし…クワトロとはまた違う空気を身に纏う大変な美形だ。
……何だろう?…凄くドキドキする……
頬の熱さを必要以上に感じてしまった。
「あ…あの……此処は……」
やっと出てくれた質問にシャアは苦笑しながら答える。
「私の家だよ。君は昨夜…BAR Ammanで呑み潰れてしまった上に私にしがみついて離れなくなってしまってね…申し訳ないと思ったが此処にご招待となってしまった」
「ええええーっっっっ??!!…あ…ああっ…す、すみませんーっっっ!!」
まるで記憶に無い事とはいえ、見ず知らずの他人の前でなんという醜態を曝してしまったのかーっっ…と顔から火が出る思いであった。必死で頭を下げているアムロをシャアは微笑ましく眺めている。
…妻と同じ顔で何とも新鮮な反応をしてくれるものだ…
「…あ……あの……そ…の……ですね…」
更に顔を真っ赤にして恐る恐る聞いてくる様子に、直ぐにその質問の意味を理解した。
「君の服は洗濯中だ」
先を読まれた様な答えに思わず驚愕し…別の疑問が沸き上がってきた。焦る表情にと変化する彼を見つめながら…思わずクスクスと笑いが零れてしまった。
「…何があったかは知らないが…弱いクセにあそこまで呑むのは感心しないな。流石の私も介抱するのがちょっと大変だったよ」
え?と暫く考え込む様な表情になると…見る見るうちに顔が青ざめていくのが解る。
…まっ…まさかっっ…俺ってばっっ……赤の他人の前で…前でーっっっ??!!
ぎゃーっっっ!と心の中で叫びながら
「すっすみませんっっ!!本当にごめんなさいーっっっ!!!」
と赤くなったり青くなったりしながら、ひたすらに頭下げた。
そんな様子が本当に可愛く思えてしまう…参ったな……とシャアは苦笑せざるを得ない。
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何気に見る携帯電話の画面…。わざわざ開かなくたって、着信あるかメールあるかなんて解るのに…今日何度目だろう?こんな不毛な動作。
……莫迦みたいだ……
何だか目元が潤んでくる気がしてグッと堪える。既に冷めてしまったカフェオレを口に含むが…本気でマズイと感じてしまう。
自分で決心して自分から出て来たクセに…何でこんなに気になるのだろう?
一週間…経ったのに……何の連絡も寄越さないなんてっっ…謝ってこいっ!バカっ!
我ながら何とも身勝手な怒りだとは思うが。
既に両親が他界しているアムロが実家代わりにしているのは、父の教え子である人物の家だった。10代時の自分の後継人を務めてくれた人でもあり、新婚当時は喧嘩の度に逃げ込んでいたのだが、その度にシャアは直ぐに迎えに来てくれていた。今回は久し振りの「実家戻り」となったのだが、彼は相変わらず手放しで歓迎してくれている。
「俺はずっとあの男との結婚には反対だったんだ。だからこれを機会に別れてしまえ、アムロ」
…なとど平気で言って、「何て事言うのっ」と彼の妻に窘められていたが。
とても居心地が良くて、甥姪の様な立場の子供達も自分にとても懐いてくれているけど……でも。
でもだっっ
…本当に何で謝ってこないっっ?!自分が悪いと思ってないのかっっあのバカはーっ!!
思わずテーブルを強く叩いたので、その音に隣のテーブルの人達が自分をチラリと見たのに気付き…少し恥ずかしかった。
10代の半ばでシャアに出逢って…その時点で熱烈なラブコールを受けた。直ぐに結婚したがったシャアに「大学をちゃんと出てからにして」とお願いした為…卒業と同時に結婚。暫くは大人しく専業主婦をしていたが…暇を持て余したのと、どうしてもやりたい事もあって…勝手にシステムエンジニアとして勤めだしてしまった。その時も大喧嘩したが、しぶしぶ彼が承諾してくれた…のが3年前。
かなりの優秀な仕事ぶりのアムロに、会社が米国のとある研究機関への1年間出張を決めてくれた。はっきり言ってこれが自分の夢だったので、それはもう大変喜んでシャアにも報告。
……もちろん彼は大反対で大喧嘩。
シャアが反対するだけでもアムロには横暴だっ、と思うのに…事もあろうか、会社にその名前で圧力を掛けてきたのだ。アムロは当然のように旧姓を使っていたのだが、上司に「まさか君があのダイクン家の若奥様だったとは…」と言われて愕然とした。会社に辞表を叩き付けるのと同時に、夫にはその勢いで離婚届を叩き付けたが…目の前でアッサリと破られる。
更なる大喧嘩の末に……とにかく顔も見たくないですからっっ…と決心して家を出て来たのだが…。…ちゃんと食事しているかな…?…掃除洗濯はハウスキーパーの人が居るから大丈夫だろうけど…あの人、食事はどーでもよくする傾向があるから…お酒ばかり呑んでないと良いけど……
こんな事ばかり考えてしまう自分が本当に情け無い。どうして夫にもっと厳しく冷たく出来ないのだろうか……ああ本当に俺って俺って……!!
このままだと激しく落ち込みそうだ…とガックリと肩を落としていると……
「…アムロ…さん?」
思わずその声色に驚き、もの凄い勢いで顔を上げた。そのあまりの勢いに相手も驚いたようだったが、優しい笑顔を自分に向けて傍らに立っていたのは……
「え…?…クワトロ…君…?」
意外な所で意外な人物に出逢ったなあ…とアムロは、その自分の義弟のその顔…夫によく似たそれをしみじみと見つめてしまった……
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大分遅くなってしまった22222リクエストは「パラレルW不倫モノ・3429と2722が3422で2729にーっっ」というものでしたー☆☆
キリリクで続きモノってどうよっ…ってカンジですが、リクしてくれた方が特別な方だったので…実際に会ってじっくりとお話しましてっっ…好きなようにやってくだされば全然OK!…でしたので…あははは
…こんなパラレルもたまには…意外に書くの楽しい事を発見しましたヨ♪ (2009/5/10UP)