※※ Angelic Egg vol.4 Sample -----

 

「……という事で…今後のアムロのサポートを君達にもお願いしたいのだ」
 シャアの口から説明された事実は、あまりにも信じ難い夢物語の様な世界である。常人ならばまさかそんな、と全く信じないか…あるいはただひたすら驚くだけであろう。
 しかしその説明が終わっても、総帥夫妻に仕える大変優秀な老執事と女中頭の表情には、全く変化が無かった。
「…つまりアムロ様は…身体が女性に変化してしまう病気になられた、と?」
 執事マクレインの口調は怖いほどに淡々としていた。
「何とも不思議な病気ですわね」
 ミセス・フォーンの表情もいつもと変わらない。
何となく予想はついていたのだが…これは、仕える者として、いかなる場合でも動揺を見せてはならないという二人の信条の表れなのだろうか…凄いプロ意識だな、とアムロはしみじみと思う。
 ふとミセス・フォーンがこちらに視線を移してきた。
「アムロ様、お身体の方は?痛みの方は…もう大丈夫なのでしょうか?」
 そこで初めてアムロは「とても心配している」という感情を彼女から受けた。少し安堵して笑顔を見せる。
「うん…あの日以来、強い痛みは感じて無いよ…ありがとう、ミセス・フォーン」
「それならば安心致しました…本当にお辛そうでしたから…とても心配だったのですよ」
 ミセス・フォーンと同じ様にマクレインも「良かった」という表情で頷いた。
「承知していると思うがこの件は、今は我々だけの秘密だ…協力を頼む」
「それは当然です、お任せ下さいませ、旦那様」
 シャアの真摯な表情を受けて、二人も力強く頷くのだった。
「とりあえずアムロの病気の事もあって、カミーユも暫くこの邸に住んで貰う事にしたのだが…その点もよろしく頼むよ」
 アムロの隣に座っていたカミーユが二人に対して頭を下げる。
「仮住まいになりますが…よろしくお願いします」
「いいえ…アムロ様の体調を考えれば、極当然の事です故…喜んでお世話をさせていただきます、カミーユ様」
「いつも通りにと、どうぞ我々にお気遣いはなく」
 頼りになる二人の笑顔がカミーユも素直に嬉しかった。
「それからミセス・フォーン…まずこれを出来る限り早く用意して貰いたい」
 シャアから手書きのメモを受け取って、ざっと目を通し彼女は頷く。
「承知いたしました……ところでサイズが三種類も書いてありますのは…正確に測っていないという事なのでしょうか?」
「…いや実は…凄い勢いで『成長』しているのでな…その対策だ」
 シャアが何とも言えない視線をアムロに向けると、彼も真っ赤になってコクコクと頷いた。
「まあそうですか…それはとても楽しみですね」
 何故かとても嬉しそうなミセス・フォーンである。そんな彼女に、全くの下世話な事も悪意も感じない分、アムロはただ愛想良く笑うしかなかった…


「では今夜は宿舎に帰って、荷物を持って明日また来ますね」
「解った…本当に迷惑掛けるね、カミーユ」
 カミーユは心底すまなそうな様子のアムロを、優しく抱き締めてハグをした。
「アムロさんの事で迷惑だなんてものは何一つ無いです…だから安心して…」
「…ありがとう…カミーユ……」
 目尻に熱さを覚えて、アムロはカミーユの頬にキスを贈る。シャアの強いプレッシャーを感じながらも、長身の青年医師はその額に優しくキスを返した。



 カミーユを見送った後、二人は専用居間で長く話をする事になる。
 アムロは二週間程前の…街で出会った不思議な女性占い師の話をシャアにきちんと話しておこう、思ったのだ。その体験の全てを知っておいて欲しいから。
「でね…そのお店の扉は何処を探しても無かったんだよ…本当は白昼夢だったのかもしれないけれど…」
「……成る程ね…確かに不思議な事件だが、アムロが其処まできちんと記憶しているのだ…幻ではあるまい」
 アムロの入れた紅茶はすっかり冷たくなってしまったが、シャアはカップを取って口に含んだ。予想通りの苦い味がした。
「信じてくれるんだね…ありがとう」
「君の言葉が真実か嘘なのかは私には解るよ…夫婦なのだからね」
 傍らのアムロの柔らかい癖毛に指を絡ませる。その仕草を合図に、アムロが寄り掛かるように自分に身体を預けてきた。その重さがシャアにはとても心地良い。そのまま赤い髪にそっとキスをした。
「…アムロ…つまりは君がそれを『強く願った』という事なのか?」
「……………」
 アムロは直ぐには応えない。暫く無言で肩に置かれたシャアの手に、何気なく自分の手を重ねたりしている。
「それは…解らないよ……意識して考えるなんてさ…」
「しかし…」
 シャアの掌がアムロのコットンシャツの上からその部分をそっと包み込む。
「?!…っわわっっ……ちょっ……シャアっっ」
「…今此処にある現実は…君が望んだからなのか?」
 柔らかい…かなりの存在感になってきた胸を、後ろから抱きつく体勢でその膨らみを指で弄ぶ様に動かした。途端にアムロが甘い声を上げる。以前から弱い部分なのだ…仕方がない。
「ぁあっ…やっ……だめ…っっ」
 先端を布の上から摘む様にして、優しく刺激を与えると、更に硬くなる感触が指先から伝わってくる。
「っつ……シャア…ぁあっ…怒っているの…か?」
 アムロは後ろを振り返る様にして、シャアの表情を見ようとしたのだが、彼は項に口付けをしていてよく見えない。項のその感触にも身体が震えた。
「怒っている…というわけではないよ…ただ…」
 困惑するアムロは、その先端をやや強めに摘まれる。
「っ!…ぁあっっ」
 布の上からとはいえ、途端に甘い痺れがぶるるっと
アムロの全身に駆け抜ける。相変わらず此処がとても弱いが、更に敏感さを増している様だ…シャアの口元が無意識に上がった。
「あの時もだ…とにかく君の身体の変化が辛い激痛を伴う事で起こるのかと、それが心配なのだ」
「んんっ…そ、それは……」
 アムロは少し力を込めてシャアの掌を胸から外した。彼から残念そうな思惟が流れ込んで来たのに、むうっとしながら、体勢を変えてシャアと向き合う形にする。
「シャア…俺の身体の事を心配してくれるのはとても嬉しいよ…でも…この変化は本当に俺が意識してこうなったわけじゃないんだから」
「アムロ…」



☆☆続きはAngelic Egg vol.4本誌で…☆☆