\.欲張りな真夜中には

 

 

「ゾクゾクする光景だな…」
その言葉にアムロは顔だけを思いっきりシャアに方へ向けてくる。明らかに「意味が解りません」とその表情には書いてある。シャアがうっとりとその身体を視線で愛でていると、大抵アムロはこういう表情をするのだ。
脱ぎかけたシャツをやや乱暴に脱ぎ捨てて、トランクス一枚だけになったアムロは、クルリと身体をこちらに向けてきた…とその瞬間、ベッドで待っているシャアの上に彼はいきなりダイヴしてきた。
2人分の体重を突然受けて、キングサイズの丈夫なベッドもやはり派手に弾んだ。流石に勢いよく飛んでくるとは予想してなかっただろう。シャアの鍛え上げられた身体にも少しは効いた様で、珍しく「うっ…」と小さく声を漏らしたのをアムロは聞き逃さない。
「貴方を驚かすのって…やっぱり楽しいな」
悪戯好きの子供と同じ様な瞳を輝かせて、アムロはシャアの金糸の髪に指を絡ませる仕草をした。
そんな妻の満足げな表情を見上げながら、やはりゾクゾクする、とシャアは考えているのだが。
「君一人の体重を受け止めるのはどうという事はないがね…油断はしていた」
実際に彼が全体重を乗せてきても、シャアはまず苦には感じない。笑顔のままで、アムロはシャアに何度か軽くキスをする。
「ふふ…今夜は貴方に対してイニシアチブ取れた気分だな」
不穏な言葉とは逆に無邪気で可愛い笑顔を見せてくれる…と、妻のその機嫌の良さに内心安堵しながら、シャアは掌をその背中から腰へと滑らせた。ピクリと敏感な身体が反応する。
「ふむ…ではどの様に私を楽しませてくれるのかな?奥様」
と意地悪い笑顔を見せると、笑顔はむうっと頬を膨らませた表情に変わった。
「すぐそういう言い方するんだから…」
そう言いながら、今度はゆっくりとキスを仕掛けてくる。アムロの方から差し入れてきた熱い舌を絡ませ合う。
「…んっ…ふっ…っ」
声を漏らしたのはアムロの方だが、返ってシャアの情欲を煽る。アムロがその剥き出しの足をゆっくりと絡めてきた。シャアもガウンの下は下着だけだったので、薄い布越しに互いの雄を擦り合わせる様にしながら足を絡め合う。
その間もシャアの両掌はアムロの背中や腰を忙しく這い回っていた。その愛撫がたまらなくて、アムロの表情がますます艶を帯びてくる。
「…っつ…も…っ…それ…するなってっ」
「君だっていつも私の背中に手を廻しているだろう?アレと同じつもりだが?」
どう考えてもそれと違うだろっっと抗議しようとした時に、更に腰を強く押し付けられた。
「…っっ!」
布越しでもしっかりと判るその昂ぶりに全身がゾクリと震える。それに呼応するかの様に自分自身も反応を返すのが判ってしまう。
「やっ…そ、そんなに擦り付けるなって」
「そう言いつつ…君も気持ち良さそうだが?」
布と隠った水音が擦り合う…それがとても淫猥に響いている様に思う。
「…んっ……はぁっっ…」
「このまま…一度イくかい?」
「あぁっ…それ…難し…いって…んんっ…」
そのままシャアの身体にしがみ付くように身体を密着させて、ほとんど無意識に腰を彼の動きに合わせる。自分は多分このままでイける…それが解ってしまう程にシャアに開発された身体……

浅ましい…と思われてないだろうか?
男のクセに…俺の身体って感じ過ぎやしないか?

そんなコトをいつも考えてしまう…
未だ戸惑っていて
未だ恥ずかしくて

「…私はそんなアムロの身体も愛しているよ」
いきなり身体の下のシャアがそう言った。驚いてその顔を覗き込む。
「君が不安を呟いた様な気がしたのだが…言葉ではなかったのかな?」
「…あ…ごめん……貴方になら解っちゃうよな…」
身体に触れている時…特にセックスの時は普段以上に思惟が通じる様だ。精神が繋がり易いというニュータイプ同士の触れ合いなのだから…致し方ない事なのだろう。…ましてやシャアは自分を感じようと常に意識してくれているから…
「恥ずかしがる君が私は大好きなのでね…大変喜ばせてもらっているが…」
「よ、余計に恥ずかしいコト…言うなっっ」
思わずシャアの左頬を拳で軽く小突いた。そんな妻の仕草に笑って、その拳を手に取ってそっと口付ける。
「君がこんなに感じて…そしてそれが恥ずかしいと思ってくれるのは…私に惚れている証拠だろう?だから嬉しい」
「…なっ!…凄い自信…だよなっっ」
…いや多分…それは図星なのだろうが。
隠しようもなく、アムロは真っ赤な顔をして…口をグッと噤んだ表情で自信満々な…憎たらしい?夫の表情をじっと見つめる。
ああ…何か言ってやりたいっっ
言ってやりたいのだけどっっ

「…シャア…だってっっ…俺のコト…いつも欲しくてたまらないからっ…そんな顔するんだろっ?」
自信満々なその顔が、ますます喜びに満ちてしまった…
「ああ…その通りだよ」
シャアはいきなり上半身を起こして、そのまま簡単にアムロの身体をくるりと組み敷いた。えっ?とほんの僅かにアムロが思う間に、シャアが上になっている。
「いつだって君が欲しいよ…私だけのアムロが…」
一度優しいキスをされる。
「私だけを愛してくれる…他の誰も見ない君が…ね」
思わず瞬きを忘れてしまう程に、熱すぎる台詞…
「も、もうっ貴方って…なんて…」

なんて我が侭
なんて欲張り
なんという傲慢

「何とでも…君に愛される為に私はずっと努力しているつもりだよ?」
もう一度キスを受ける。

…ああ
…そうなのだ

この我が侭で欲張りな愛しい王様は…妻の愛に対して全てを応える為に、辛い茨の道を己の素手で刈り取り…そしてその道の先頭に立って、人々を導く存在たる重責を背負いながら…不安定なその道を、ただずっと前だけを見て、ずっと歩いているのだ。
それがどんなに辛く険しい道なのかをアムロはちゃんと知っている。だからこそ自分は彼の傍に居ようと決心したのだ。
「そしてアムロが私を愛してくれるから…私は全てに耐えられる…」
柔らかい髪と額に…とても優しい愛しさがこもるキスを幾度も落とされた。
「う…ん……解っているよ…」
思わず目頭が熱くなってきて、アムロはシャアの首にギュッと抱き付いた。
「俺…貴方が誰よりも頑張っているの…全部解っているから……」
今度は自分から口付けを贈る。

彼が此処に来るまでに…どれ程までに辛い人生を送ってきたのか…
全てを奪われ、深く傷付き、人の私怨に利用され…
歪められた理想と現実の狭間で…その優しさ故に
どれ程までにその矛盾に苦しんできたのか……

自分はその全てを理解出来る「場所」を彼から与えられた…

俺が愛する男を…もう誰にも傷付けさせはしない…
俺が愛する事で彼が最強になれるのなら……
何だってやってやる

「…俺も頑張って…貴方に相応しい人間にならなきゃね…」
抱き付いたままで呟く、そんなアムロを名残惜しいが身体を離させて、その顔をじっと見つめた。
「解っていないなアムロは…」
そのとびきりの優しい笑顔に、今更ながら鼓動が早くなってしまう。
「君はそのままで充分に素晴らしいよ…だから私が努力する」
アムロの鼓動がますます早くなった。本当に殺し文句がお得意で、とでも言いたくなってしまうのだが。
「…解ってないの…貴方の方だと思うけどなあ…」
頬を朱に染めた表情のままで、こつんっと互いの額を合わせる。
「…いいよ…いっぱい俺を欲しがって…いっぱい奪って……俺はそんな欲張りなシャアが…大好きだから」
殺し文句が得意なのは君の方だろう、と言わんばかりの勢いで、シャアは愛しいその身体を強く抱き締めた。

 

「あ…ぁぁっ……やだっ…そんなに早く…っっ」
身体をぴったりと合わせて、先程の続きを…とシャアは今度は右手を添えて、アムロの雄を早急に責め立てた。何故か今夜は早くイかせたい気分で…
そのシャアの動きにイヤだと無意識に首を振るアムロが、とても可愛らしくてたまらない。その髪に頬に、宥める様にたくさんのキスを贈る。
「んんっ……くっ……はあぁ…っっっ……!」
自分の掌の中で熱い飛沫を吐き出し、その身体を細かく痙攣させている妻の姿を見ているだけで、自分も今すぐに吐き出してしまいそうになるが…それよりも早く、早くアムロのナカに入りたい。
アムロの放ったソレをやや荒い仕草でその奥へと塗りたくると、その羞恥はますます煽られる様だった。
「ああ…もう準備は出来ているね…可愛いよアムロ…」
「…っばかっっ…わざわざ言うなっ…んっ…」
一度イくと何故か無意識になのだろうが、スムーズに自分の指を受け入れるこの身体…そんなアムロが本当に愛しい。暫く何本かの指で愛でて、頃合いを見て脚を抱えて開かせた。その姿をしみじみと見つめて、そういえば照明を落としてなかったな、とシャアは今更ながら気が付く。
「…っっ…そっそんなに…」
見てるなバカっっ、というのは頭の中で感じた。そう言われるとますます熱く見つめたくなる。

愛しいアムロ…
今は私だけの事を考えているね…
夜は本当の意味で君を独占出来る
こんな君は他の誰にも見せるものかっ
君だけが欲しい…
私が欲しいのはアムロだけだ…


「…シャア……来て……」
真っ赤な表情のままで、そして両手を思いっきり自分に差し出して迎えてくれるアムロの前に、シャアは理性を手放した。
そしてその愛と快楽だけを、ただ求めて……

 

It only loves each other at greedy midnight ........

 

ただ求め合って…
ただ愛し合うだけの夜が更けていく…

 

 

THE END

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ただらぶらぶ☆…なだけのお話ですな……ははははは
(2011/2/21 UP)