T.ビネツ

 

シャアと毎晩同衾する様になって1年が過ぎた。
つまりそれはアムロが此処ネオ・ジオンに来て1年…結婚して半年程が過ぎた…という事である。
公務の忙しさのピークも少しは過ぎた様で、最近はほぼ同じ時間にベッドへと入る。SEXをするかどうかは彼次第…というか、アムロが自分から誘った事は「未だ一度も」無い。
此処に来た最初の頃は、二人の世界に浮かれていた彼の、熱い愛情と欲情に流されるままに付き合っていたのだが…流石に身体もキツかったし、それが原因で喧嘩もしたし…まあとにかく色々あったが、ちゃんとお互いの本音も話し合って…今ではシャアの方も無理強いも(元々本当に無理矢理的なSEXを強要される事はないが)我が侭も言わない様になった。
ベッドに入っても二人は必ず抱き合って多くのキスを交わす。シャアが自分を求めてくる時は、そのキスからして何か熱く扇情的に仕組まれている様に思う。
そして耳元で殊更の甘い声で「…いいかい?」と言われれば…断れなくなってしまうのは…自分が彼に甘いからか?

そして…アムロは最近不思議に思う事があった。
当然今までアムロから「誘った」事などはないのだが…そんな彼にも、「欲しい」時がちゃんとあるのだ。さほどはっきりとした欲望ではなく漠然と「今夜はシャアに抱かれたいな…」と思うくらいなのだが…
何故かそう思っている日は、必ずといって良いほどに甘く囁かれて誘われる。
最初は偶然か?と思っていたが…あまりにもその確率が高過ぎるっっ
……俺の思惟が…漏れちゃっているのかな?
だとしたらそれはかなーり恥ずかしい事だ。
シャアと自分はニュータイプ同士ではあるが、当然全ての思考が通じ合うワケではない。NT能力はそんな万能な能力では無い。ただやはり強い思考ほど感じる傾向はあるので、食欲とか欲情は…やはり通じ易いらしい。
だからと言って毎回自分の欲情が筒抜けだなんて考えたくもないのだが。
逆にシャアは……いつだって自分を求めている気がする…
ちゃんと大人の節度の範囲でだけど……
そして…そんな貴方が大好きなんだ…俺は…

 

ディナーの後の二人だけのティータイム…夫婦の大事な時間だ。
アムロがお茶を入れて、二人で並んでいつものソファーに座る。シャアは必ずアムロの身体を引き寄せて、その身体の何処かに触れている。でないと安心出来ないとでも言わんばかりだ。
そして今夜の彼は
「お茶の時間なのにすまないな…」
と心底申し訳なさそうに言って、何かの書類に目を通していた。それ自体は忙しい彼には珍しい事では無いので、アムロもさほど気にしてはいない。
上半身をその逞しい胸に預けて、ゆったりと寛ぐ…そんな時間も大好きだから。
シャアの蒼氷色の視線は真剣に書類上の文字列を追っている様だが…右手はアムロの柔らかい赤い癖毛を弄んでいる。その優しい指先を何気なく見つめて…ああ、彼はこんなトコロも美形だな、とか今更ながらもしみじみと思う。
彼の手は大きくて指が綺麗に長くて形が整っていて…そして立派に男の手だ。自分ももちろん男なのだが…人種的な違いもあるだろうが、シャアの手より小さくて…不格好にさえ思えて。だから彼の手が「凄くかっこ良いな」と思ってしまうのだ。そんなアムロのコンプレックスな手をシャアは「愛しすぎる手だ」と何度も繰り返して、そして愛してくれるけれど……
シャアが自分に触れる熱い指先は…いつも熱くてそして不埒で…自分をこの世の誰よりもその気にさせてくれる…そんな彼の手だ。
視線を変えて真剣なその横顔を見つめる。こういう表情の…仕事をしている時の彼も大好きだ。寛いでいる時の彼も好きだけど…自分に甘えてくる時の彼も好きだけど…優しい笑顔ももう全部……
ああ…俺って本当にシャアが大好きみたい…何なんだっもうっっ
今更…今更こんなにも想う事なんだろうかっっ
恥ずかし過ぎて何故かワケもなく苛立ってしまった。

そしてシャアは…
当然アムロの視線には敏感に直ぐ気が付き、優しく笑って軽くキスをしてきた。
「…見とれていたかな?」
「………うん……」
素直に白状してしまうのは、どうせこの感情の隠し事が出来ないからだ。
シャアは嬉しそうに笑ってもう一度キス。
「私もいつだって君には見とれてしまうよ…奥様」
「…どうだか…」
シャア・アズナブルの愛の言葉に、こんな風にツンっと返せるのは、この宇宙でアムロ・レイたった一人だけ…
赤くなっているその頬にシャアは優しく唇を押し付ける。
「もう少しで終わるから機嫌を直してくれ…このお詫びはベッドの中で…かな?」
思わず身体が緊張する。
…まっ…また…解っちゃった…?!
そんな妻の様子に、シャアは再び優しく笑った。

 

熱い指先がずっと身体中を彷徨って……やがてその熱さを感じないくらいに自分も熱くなってゆく…
「…んっ…あ…ぁっ……」
重なる汗ばんだ肌が心地良い…そのまま二人が溶け合って、一つになる様な錯覚さえ感じる。
「…あっ……だ…めっ……く…」
「我慢しなくて大丈夫だよ…アムロ」
そんな優しく甘い声にまた陥落してしまうのだ。
シャアの視線が自分のそれと重なり…見つめ合ったそのまま、アムロは両腕を伸ばして彼の首へと抱き付いた。
「……き…て……俺のナカに…」
こんなおねだりが出来る様になったのは、本当に凄い進歩だっ自分っっ…と思っている。
…シャアが欲しい…自分の中を貴方でいっぱいにして欲しい…
今の俺は…貴方の事しか考えたくないよ……
「…動くよ…大丈夫か?」
「んっつ…だ…いじょうぷっ…」
1年経って…もうとっくに自分の身体は全て彼に知り尽くされて…こんなにも淫らにさせられていく。
「…ぁあっっ…しゃ…あ…っっ…もっもうっ…」
こんな時に自分の名を呼ぶのはとても気持ちがイイからだ、とシャアもちゃんと知っている。
「私も…とてもイイよ…アムロ…」
君のナカは本当に素晴らしい…とても私を安心させるよ……
そんな思惟がダイレクトに伝わってきた。それに素直に喜ぶ反応を見せる自分が解ってしまう…

ああ…こんなにも…
俺は貴方を愛しているんだ……

 

「あの…さ…シャア…」
「何かな?」
今夜こそ勇気を出して聞いてみるしかない。
「…その…何というか……やっぱり解る…のか?」
「?…何がだ?」
腕の中の愛しい妻を覗き込んでみるが…何故か視線を逸らしている。
「だっ、だからっっ………俺がっ…
アナタが欲しいってコト…」
小さくなる語尾も旦那様は当然聞き漏らさない。
「ああ…それははっきりと解るが?」
うわああっ…やっぱりっ?!
「君に触れればもっと良く解る」
そのまま強く抱き締められて、アムロの鼓動はもっと早くなった。
「そっ…それって…NT能力の…せいっ??」
「それもあるかもしれないが…その前に解るのは君の体温だな」
え?とアムロは思わず顔をあげてシャアを見つめる。
「君は欲情を感じている時に…体温が少し上がっている」
「?!なっ…なんだよーっっっ?!……それっっ!」
驚くアムロにシャアはニッコリと笑って続ける。
「抱き締めたりキスしたりするとすぐに解るぞ?いつもより身体が熱くなっている」
「…?!…うそっ…」
「アムロがもう興奮してくれてるのだと…私はとても嬉しくなるのだよ」
アムロの顔がどんどん真っ赤になってゆく…まあこれでも体温が上がるな、とシャアは感じていたが。
「絶対に嘘だっっ!…貴方の勘違いだよーっっっ!!」
そんな興奮する妻もやっぱり可愛い過ぎるっっ…とシャアは再び思いっきり抱き締めるしかないのだが。

 

まあ…欲情によるものかどうかは別としても…
今でも旦那様に恋をしている奥様は
いつでも微熱状態が正しいのかもしれない…☆

 

THE END

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総帥夫人がいかに旦那様を大好きか…というお話でしたっ
もちろん旦那様からバージョンも書きたいですわっっっ
(2011/1/16 UP)