世界経済と幸福論

 

過去のバックナンバーです 

2002年前半分です

バックナンバーコーナー

2001年分です

バックナンバーコーナー

2000年分です

バックナンバーコーナー

99年分

バックナンバーコーナー

98年分

バックナンバーコーナー

人間の幸福について

(現在は、よもやま話に統合)

第一回 世界観について                

                                        

 

 株価とドルの下落です。

 

今週も、大きな動きがあった。ドルが急激に下がり始めたのだ。

 

 対円では、一時120円台、ユーロでも1年ぶりの安値をつけたのだ。

きっかけは、貿易赤字の拡大だった。

だが、いままで貿易黒字がどんなに拡大しても、ドルが下がることは

ほとんどなかった。今回はいったいどうしてだろうか?

 

 これは、アメリカへの不信がある。エンロンに端を発した信用の低下だ。

これまでアメリカへの投資は、透明性が高いので完全に自己責任で行える

と思われていた。ところであるエンロン以降、明らかになったのはCEOに

よる会社の私物化だった。

 

 CEOは、取締役会を懐柔し、会社を打出の小槌と化していた。

不明朗な債務の肩代わり、融資、不当な報酬。まったくひどい話だ。

アメリカのCEOの給料は、一般従業員の実質給与が下がり続けている

のとは対照的にうなぎのぼりだった。HPの会長は、数千万ドルの現金

何万株のストックオプション、自家用機のプレゼントを受けてご満悦だった。

MSのビルゲイツ会長も、何十億の富を持っていた。

 

 これが、アメリカの繁栄の実態だった。中世ヨーロッパの封建領主が、

農民を奴隷にして搾取したのとどうちがうのだろうか?

私には、違いはみえない。

 

 話をもどそう、このような暴虐無人な行いが、欧州とアジアの投資家の

信用を失ってしまったのだ。年初にもいったように、アメリカはすでに

加熱した発動機ではなく、収益率は低下していた。

 このために、貿易赤字を穴埋めしてくれる投資が減少に転じたのだ。

 

 これがドル安の原因である。そう、私がずっと予想しながら、長い間

はずしてきたドルの崩壊の構図そのままなのだ。

 危険な兆候だ。アメリカは貿易赤字から利益を得てきた唯一の

国である。それゆえ、逆転するとドルの下落に歯止めがかからなくなる恐れが

ある。市場介入がなんどとなく繰り返されるだろうが、それとて一時的だ。

 

なぜなら、資本逃避だからである。かつて通貨危機の際、タイやインドネシア

で起こったことを思い起こせばよくわかるだろう。

 あのとき、貿易赤字の増加を受けて資本を逃避させようとした人々が、

まず通貨を売り始めた。そのあと投機家がぼろもうけしようといっせいに

追随したのである。

そのとき、通貨当局はなんとかしようと一所懸命に介入したが、

結果は悲惨だった。

 

 ドルもこうなる可能性がある。私は、ずっとそう考えてきたが、いままで外れて

ばかりだった。さて、今回はどうだろうか?

 

 そして、もうひとつ株価の暴落である。資本逃避によりアメリカ株はいま下落局面に

ある。これも重大な危機を呼び起こす可能性がある。

 なぜなら、アメリカからの再投資が逆流するからだ。ラビ氏の著作とこのHP以外

ではほとんど知られていないが、90年代の資金フローはおよそこういう流れであった。

 

日本景気の悪化⇒金融緩和⇒不景気で資金需要なし⇒利率の高いアメリカ国債購入

⇒金利低下⇒株価急上昇⇒含み益が増えた米機関投資家が世界中へ再投資

⇒世界中の株高

 

いま、不景気で資金需要がないところまでそれほど構図は代わっていない。しかし

アメリカ国債を買う動きが衰えている。しかも、金利が下がっても収益が

出ないので株価が上がらないのだ。含み益が増えない状況に陥っている。

このため、米国機関投資家は、自国の損失がひどくて国際分散投資ができない。

それどころか損失を埋め合わせるために外国株を売らないといけないのだ。

 

そこへ、エンロンである。米国の投信などを買っている欧州の投資家は、

売却に動いているようだ。となると、機関投資家はますます、アメリカ株も

海外株も売らないといけなくなっているのだ。

 

 このため、日本株も大きな影響を受ける。もともと、空売り規制は無茶な

政策だと私は言った。これによって一時的に下落は止められたが、

内需の弱さに加え、外需もドル安でこれから落ち込む可能性が高まっている。

しかし、竹中氏は回復宣言をしてしまった。マクロの数字が落ち込むのは

まだ数ヶ月かかる。その間、事実誤認がもとで株価は大きく下がること

になるだろう。

 

 実際、いま株価は2月の急上昇を埋めるように暴落している。

明らかに世界経済は、奈落の底に落ちようとしており、危険な状態だ。

 おそらく、日本政府はこれからの株価急落でまた、空売り規制をするだろう。

しかし、今回の下落の原因は、2月の上昇時に空買いをした人たちの損切り

なのだ。そのため、今度はほとんど効果がないと思われる。

なんどもいうが、株価が下がるのにはわけがあるのだ。単に投機だけでファンダ

メンタルを崩すことはできない。

 

 そこへ、本国の損失の影響で外国人が売ってきてたどうなるだろうか?

また、 空売りの買戻しも望めないまま、株価がずるずる下がったら、

小泉氏も、塩川財務相も、竹中大臣もどうするのだろうか?

 そのときには小泉内閣はもう崩壊しているのからよいということだろうか?

 

 おそらく、本当の混乱はラビ氏のいうとおり2005年だと思われる。だが、

それまでも、驚かされるようなことが続出するだろう。

 われわれは備えたほうがよい。

 

 

 

ここに記されている世界経済への見方は私個人の見解です。

できるだけ信頼できる情報をもとに書いていますがデータの信頼性、

完全性を保証するものではありませんし、有価証券、商品市場など

への投資勧誘をおこなう目的のものでもありません。ご了承ねがいます。

 

(home)