世界経済と幸福論

 

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人間の幸福について

(現在は、よもやま話に統合)

第一回 世界観について                

                                        

 

 今週も、更新が遅れました。お詫び申し上げます。

 

 最近、税の問題が議論されることが多くなってきた。

首相が、税制改革に熱心なのが主な理由だが、問題はどうも議論

がおかしいと感じるのだ。

 

 特に問題なのは直間比率の見直しでいわれる消費税率の引き上げだ。

直間比率という言葉で表されるとおり、財政再建には消費税率の引き上げが

必須であるというのだ。

 

 かなり以前に少しふれたことがあるのだが、これは検見法と定免法

の考えと全く一緒である。

 江戸時代吉宗のころ、税収減と財政赤字を背景になんとか、税収を安定

させて、増収を図りたいと考えられた。

 というのも、当時の検見法は、その年の作柄を見てから年貢の額を決めて

いた(要するに定率ということだ)ためである。

 

 これでは、不作、豊作で幕府の収入は大きく変動してしまう。

そのために考え出されたのが、定免法である

 これは、年貢を定額にするものである。豊作だろうが、不作だろうが

一定額を供出させるので幕府の収入は安定すると考えられたのだ。

 

これを見るとどうだろうか?

今の直間比率の議論と同じである。

直接税は、金持ちから税金をとってやる気を阻害しているので、

みんなから公平に徴収しようというものだ。

 

一見すると非常にもっともらしく聞こえるがこれには重要な視点が欠落している。

一つは、給料の多少が本当にやる気と直結しているのかということ。二つは、金持ちの

財負担を軽減することが経済の活性化につながるのかということだ。

 

 前者は、非常に興味深い話である。この議論はテーラー以来経営学において

重要なテーマだった。万人だれでもやる気は給料に比例しており、最適な賃金モデルが

存在するはずだというものだ。そのために、たくさんの実験が繰り返された。

 ところが、人間のやる気は賃金に比例してないことが明らかになってきたのである。

人間関係や職場の雰囲気などに人間の仕事量というものを左右されていることが

分かってきたのだ。

 

 となると、果たして直接税の負担が重いことがやる気を阻害しているのだろうか?

この議論をするときに、私は黒柳徹子さんの言葉を思い出す。

「私の司会の仕事は最初の10分だけで、あとは税金なんです。こんな税金とられるのは

おかしいと思います。

多くの人はこういわれると日本はなんて税金の重い国だと思われるかもしれない。だが

税金を差し引いても彼女の給料は、一般の国民の平均よりも遙かに多いのである。

 

税金が高いのには理由があるわけだ。私からするとそんなにもらっているのにまだ

お金がほしいのだろうか?と思ってしまう。しかも、彼女が税金の高さでやる気を

失っているようには私には見えない。彼女のやる気は別のところにあるのだ。

 単に税金の高さをやる気に直結させるなど、人間を金しか考えないどん欲な

動物であると決めつけるようなものだ。全くこまったものである。

 

もう一つ、金持ちの税負担が軽減され、所得の無い人に税金をかけることは

いいことなのだろうか?

 

 どうだろうか?通常、金持ちだろうと、貧乏なかただろうと、使う固定費に大きな差はない。

となると、金持ちの税負担が減ると金持ちがもっと金持ちになって貯蓄が増えるだけだ

ここで議論になるのが、アメリカのレーガン減税だ。この際に金持ちが消費をしたので

景気が良くなったといわれている。しかしだ。これはアメリカの家が広いことが見過ごされ

ているうえ、金持ちが投機を行ったあげく、現在の様な株式市場を作り出した

ことを考えるととてもまともな議論とは思えない。わずか2-3年の一時的な現象を

評価してはならないのだ。

 

 ここで話をもどそう。定免法を導入したあとどうなったのか?定免法により

幕府は豊かになり、農民にやる気はでただろうか?

たしかに、導入した直後はよかった。豊作だったからだ。しかし、不作がやってくると

状況は一変してします。農民は年貢を払えなくなり、一揆が頻発した。

幕府の収入も安定するどころか、農民が払えなくなったのでもっと安定しな

くなったのだ。

 

 結局、幕府は検見法に戻さざるを得なくなってしまった。

 そもそも、税収とは国民経済を安定させるためにあるべきもので、

政府が安定的にとろうなどと考えてはならない。

 消費税の導入時もそうだ。これによって政府の税収は安定するはずだった。

だが、税収は逆に減ってしまった。物価が上昇してそうでなくても弱い内需が

いっそう弱くなったからだ。内需が弱いということは企業の業績悪化を通じて

法人税が、ボーナスの減少を通じて、所得税がいっそう落ち込んだからだ。

 

 全く財務省はどうかしている。東京大学出身でえらいのがご自慢のようだが、

実態はこの程度のことも理解できないのだ。まあ出身学部が法学部では仕方ないかも

しれないが?

 

結局、もっともうけたいと考えるどん欲な人々が増えすぎたようだ。税の問題も

おそらく金持ち優遇となろうが、それは決して喜ばれるべきものではない。

おそらく、消費税のさらなる上昇で、日本の弱い内需はいっそう落ち込むだろう。

それで結局税収はマイナスになり、税収の安定など全く達成されないだろう。

 残念だがそう予想せざるを得ないのだ。

 

ここに記されている世界経済への見方は私個人の見解です。

できるだけ信頼できる情報をもとに書いていますがデータの信頼性、

完全性を保証するものではありませんし、有価証券、商品市場など

への投資勧誘をおこなう目的のものでもありません。ご了承ねがいます。

 

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