世界経済と幸福論
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| 臨時増刊、生産性のパラドックスについて考えます。
まず、最初にお断りしたい。今回の話はすこし経済学の話に立ち入る。 臨時増刊ということもあり、ご興味のない方あるいは難しいと思った方 今回の論をとばしていただいても全く問題ない。
では本題にはいろう。 前回のつづきになる景気回復の方法Aは、通常の回にお話するが、 その前にひとつ触れておかねばならないことがある。以前、舛添参議院員 もいっていたのが、自由貿易で付加価値の高い仕事をすればいいといっ てたことがある。この付加価値の高さは、高い生産性によって実現できる のだが、この生産性の伸びを学者は非常に大事にしている。
生産性さえ伸びれば利益がたくさん出て、多くの人が金持ちになって幸せに なれるといっているのだ。 だが、これはほんとうだろうか?、日本の生産性は、90年代、高度成長期ほどでは ないにしても、伸びていた。しかし、実質賃金は横ばいか減っているのだ。 このことは、このHPでいままでも主張していた。だが、どうも分かりにくいとの指摘 があった。 このため、具体的に示めそうとおもう。あいにく、生産性の具体的資料を持っていな いので仮想の数字になるが以下の表を見てほしい A国の生産性と実質賃金
90年を100として生産性が2%向上すると仮定する。一方で、輸出による通貨高を カバーするために賃金の伸び0.5%に抑える。すると2000年にには生産力は20% 増えるが賃金は5%しか増えない。となると、この差はどうやってうめるのだろうか?
方法は三つしかない。財政赤字か、不自然な企業投資、あるいは輸出しかない。 80年代は輸出がこれをカバーしていた、そのごバブルが発生し、不自然な企業投資が 膨大な仮需を発生させ、需要がないにもかかわらず、生産性が刺激された。 90年代は、輸出の伸びがとまり、バブルに伴う企業投資がなくなると、政府が代わりを やらさえたのだ。結果は膨大な借金である。
それでも刺激された生産性の伸びと賃金の伸びのギャップを完全に埋めることは できなかった。結果が、いま起こっている価格の下落=デフレである。 結局、日本のGDPが一所懸命生産性をあげるべく努力しても、賃金はあがらず、 需要が増えないので、価格が下がるという悲惨な状況にあるのだ。
そう、このデフレはみんながこの不景気でも利益をあげようと努力した賜物だった のだ!なんということだろうか!金持ちがもっと金持ちになろうと、従業員を搾取した 結果がこのざまなのだ。 自由貿易が、それをいっそう阻害しているのだ。製造コストに占める人件費が惜しい ため、安い賃金を求めて工場を建ててしまうと、物価が下がって、結局儲からないの である。そのためにますます、工場が移ってしまうのである。
このあたりについては次回とするが、結局需要が足りないので、生産性があがっても 誰も、幸せになれないのだ。生産性は確かに大事な指標だが、これとてバランスが 取れていないと、恐ろしい事態を引き起こしてしまう。 なんということだろうか。メーカーの必至の努力はまったくの無駄になってしまっている 一刻も早く事態の対応が必要といえるだろう。
ここに記されている世界経済への見方は私個人の見解です。 できるだけ信頼できる情報をもとに書いていますがデータの信頼性、 完全性を保証するものではありませんし、有価証券、商品市場など への投資勧誘をおこなう目的のものでもありません。ご了承ねがいます。
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