1 まさこさまスレッドのもとねた? 投稿者:Poyal Police  投稿日:04月18
日(日)16時12分38秒

92年秋にある草の根BBS(死語です)に書き込まれていた文章です。全くの
創作なのかもしれません。各自ご判断を。長文ごめん。
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 昔々、あるところに小さな王国がありました。そこの王様はとても立派な人格
を備えておられ、いつも人々の幸福の事ばかり考えておられる方でした。国民
も、そんな王様をとても敬愛していました。
 
 美しいお妃様と、2人の王子と1人のお姫さまとの生活もうらやむばかりの仲
睦まじさで、国民は皆この王室を頂くことに深い誇りを持ち、日々仕事に励んだ
為、近所の国から妬まれるほど豊かな国になりました。
 
 ところが、側近なら皆な知っていたことなのですが、この王様には一つだけ困
った癖がありました。それは、女性への慎みに欠ける行動を押さえることが出来
ない、言い換えれば女癖がとても悪い、と言う事だったのです。そもそも町娘出
身のお妃さまは、自分が玉の輿に乗ったきっかけもそれだったため、あまり強い
事も言えず我慢をしていました。
 
 しかし、お妃さまが第一王子を出産された後お身体をこわされ、もう御懐妊が
望めぬ事になったため事態は深刻になりました。
 
 王様がお付きの女官や、出入りのはしためなどにお情けをお掛けになり、世継
ぎ懐妊となるたびにお妃様は世間の目をさけて、それらのものの出産を待ち、自
分が生んだかのように振る舞わねばならなかったのです。
 
 情けを得た女官のなかには、そんなお妃様に堂々と反抗する者まで現れ、お妃
様はとても悲しい日々が続いたといわれます。
 
 先先代の王様までは、側室という制度もあったのですが、先代の王様はとても
剛直にして潔癖な方であられたので、そのようなあやふやな物を王室から追放し
てしまわれたのです。この国の基礎を築いた、この偉大な先王様への反抗があの
女癖の悪さな
のかな、と口さがない王室すずめ達は噂していたものでした。
 
 国民のなかにも、そういえば第一王子と他の方があまり似ていない、頭の出来
も後の二人はあまりおよろしくない様子だ、などと疑問を持つものもいたのです
が、あえて口に出すものはおりませんでした。
 
 というのも、この国はとてもよく治まっていたのですが、王室のことになると
何故かタブーがあり、妙な事を言おう物なら、恐ろしげに吠える竜を載せた車を
ぞろぞろと引いて来る無法者の竜使い達が、家の周りに一日中たむろして脅す、
ということが
しょっちゅうだったのです。悪者をとりしまる役人も、竜使い達だけにはてんで
いくじがありません。大臣のなかにも竜使いの扱いに困って、はしたないことを
して地位を棒に振った者がいるほどです。
 
 でも、そのうち王様も年を取られかっての悪癖もおさまってこられ、お妃様の
御不幸もいやされたかに見えたのですが、宿命とは恐ろしい物です。王様の悪い
癖が、第2王子にそのままうけつがれていることが、次第に明らかになってきた
のです。
 
 学舎に巣くう遊び女などと、適当にお楽しみになっておられるうちはよかった
のですが、側近の博士の一人娘が王子に礼畏怖され、身ごもってしまい、問題は
複雑になりました。博士は森外れに住まう魔女のところで泣く泣く娘に水子の術
を受けさせま
したが、それが幾度にもおよび、ついに王様に直訴しました。

 躊躇される王様に対して、お妃様はいつになく強く御進言され、第一王子に先
だって第2王子を博士の娘と結婚させました。うすうす事情を知っていた国民
も、愛くるしい新しいプリンセスをみて、心から祝福しました。ここの国民はと
ても単純でした。
 
 それで割を喰ったのは第一王子です。彼の結婚話は何故かお妃様にことごとく
気にいられず、ずるずると先延ばしになっており、街衆の適齢期などとっくに過
ぎてしまっていたのです。父王や弟みたいな行動をとるには、いささか品位が高
過ぎ、しかた
なく王子はあちこちと山に登ってみたり、父王以上に公務に精を出してみたりし
てイライラをおさえておられました。
 
 お妃様にしてみれば、自分をいじめてきた女官や王室の小姑にすこしでもつな
がる者を、愛するただ一人の息子の嫁になど出来ない、と言う気持ちだけでな
く、散々泣かされてきた女癖の悪さの遺伝を王室から一掃したい、という気持ち
もあったのかも
知れません。といって、町屋の娘と結ばせるには、第一王子はいささか積極性に
かけ、なかなかうまくいきません。積極性が過ぎるのも困ったものですし、昔か
ら世の中はうまくいかないものだったのです。
 
 さて、この王国はこれからどうなったのでしょうか。なんでも、この国はあれ
ほど栄えていたにもかかわらず、このあと程なくして滅んでしまったとかで、い
までは言い伝えさえも残っていません。今となっては、お妃様と第一王子の不幸
が、この国の没落と無関係であったことを願うばかりです。

                    おしまい