峠越え
これは、高校時代の友人から聞いた話。
彼女が東北地方のの某大学に通っていた頃のこと、大学の近くには険しい峠道があった。
峠の上から見下ろすと、そこは断崖絶壁。 何故か事故が多いことから、地元の人もあまり足を踏み入れない所だった。
彼女の友人のA君は山の向こうに住んでいたので、明るい時間には、峠を抜けて、大学まで通っていたそうだ。
ある夏の昼下がり、悪友達と飲んでいたとき、
肝試しをやろうということになって、その峠が選ばれた。
あそこはやばいぞ、彼の中で誰かが言った。
そして、その夜。
すっかり出来上がった男達は、峠に向かって車を走らせた。
峠の頂上に差しかかったとき、一人の友達が、汗だくで「帰ろう」と言い出した。
酔っぱらったみんなは、お構いなしで車を止め、ガードレールを背にして、Bくんのカメラでビデオ取りが始まった。
「変なもん写ってるかなあ?」
予感は的中した。
ビデオ鑑賞会が始まり、一人が泣きそうな声で叫んだ。
「何だ? これ」
ビデオには、楽しそうな顔が並び、足下には事故者のための花束。 そして後ろに写ったガードレール。
その上には・・・。
ポールに刺さったおびただしい数の武将の生首。
流れて乾いた血の跡もはっきりと・・・。
それからだった。Bくんがおかしくなったのは。
誰か話しかけても、ぶつぶつ言うばかりで目をぎょろぎょろさせ、だんだんと痩せていくようだった。
A君がはっきりと聞いたのは一言。
「行かなきゃならない・・」
Bくんはしばらくして姿を消した。 友人達はくまなく探したが、寮にも彼は帰ってないらしい。
とうとう、失踪届が出され、彼の母親が大学にやってきた。
母は大学に聞いても埒があかず、友人達を問いつめた。
すると、肝試しの夜から様子がおかしくなったことが分かった。
それから、1年たっても、結局Bくんは見つからなかった。
母親がその日、荷物を整理にきていた。
昼下がり、寮に響き渡る、はりさけるような悲鳴!
あわてて、かけつけた寮生の目に飛び込んだのは半狂乱で何かわめいている母の姿。 指さしたTV。
部屋にはビデオが流れていた。
ビデオの隅、武将の生首の横に写っていたのは、 Bくんの生首・・。
今切ったばかりのように、新しい血を流していたそうだ。
れおん さんの投稿でした