二人の不思議な世界 〜奉納オチンチン相撲〜

期末テストも終わり、学校ももうすぐ夏休みを迎えようかという頃の
土曜の短い授業を終えて下校する光君と洋助君。

この年代の少年は大抵仲良しグループの中で適当に違う顔ぶれで騒ぎながら
下校するのが普通ですが、光君と洋助君だけは常に二人っきりで
他の男子達とは帰ることのない、まるでカップルのような下校をしていました。

自分でウンチを拭くことができない光君を支えてあげるという
普通の少年だったら絶対嫌がりそうなことを頼まれたのに、今では喜んで
光君を支え、唯一無二の親友になっている洋助君と、自分の恥ずかしい姿を
晒すことに悩みながらも今ではすっかり洋助君の優しさを信頼しきっている光君。

そんな二人だからこそ結びつきも強いのでしょうし、他に友達がいなくても
二人っきりの方が良いという思いになっているのかもしれません。
ましてや、実は光君も洋助君も相手に対してお互いに性的な気持ちの
芽生えすら感じているのですから、二人の関係に
他の誰も入ってほしくないとすら無意識に思っているのでしょうか。

女子への興味が異様に高まる年頃の男子が、学校でも外でもいつも二人っきりの
男同士で行動していれば妙な噂が立ってもおかしくはないのですが
二人が美少年として国に指定されているぐらい可愛いことと
もともと大人しくあまり集団にならないという美少年のイメージが二人を守っているのかもしれません。

心は深く繋がっていても口下手な二人は、一緒に下校をしていても
ただ黙々と歩くのみであまり会話はなく、やっと口を開いたと思ったら
お別れの挨拶だったということも珍しくありません。

今日も特に話すことはなく、黙々と歩くだけの二人ですが
その沈黙を二人が気まずく思っているということもなく、それが普通の感覚なのです。
信頼しあっているからこそ、二人っきりで歩くだけで充分嬉しく
毎日の下校も二人にとっては時間の短いデートのような気持ちなのでした。


そんな時、光君が道端の壁に貼ってある貼り紙を目にしました。
そこには町内の神社による夏祭り、奉納祭の一環として恒例になっている
奉納相撲の日程が予告されています。

光君達の町内の奉納相撲は特に力が入っていることで有名で
奉納相撲といってもただの相撲ばかりではなく、赤ん坊の反応を競う泣き相撲や
笑い声と表情を競う笑い相撲、不満を大声で叫び飛ばしてスッキリする叫び相撲など
様々な相撲が数日にわたって行われる行事になっているのです。

もちろん一般的な少年相撲も行われており、少年達が見よう見まねで
土俵の上で相撲を取るほのぼのとした光景も立派な町内の風物詩になっています。
勝ち負けを競うよりも少年の元気を神様に奉納するという意味で
あえて相撲部などの経験者を除いて普通の少年のみの参加に限定することで
細身の少年達が一生懸命頑張り、一方的な相撲にならないように工夫がされています。

美少年の積極的な参加を推奨するなど、単なる力自慢のための行事ではなく
頑張ることが大事という理念を大切にしていますが、一方で大勢の美少年を
半裸という見せ物にすることによって他地域からの見学や支援を増やし、
寄付金を必要以上に稼ぎたいのではという一面も指摘されています。

「洋助君は今年も相撲に出るの?」

光君の質問に、洋助君はそうだよと頷きました。
光君よりも運動が得意な洋助君は、同じ細身でありながら体格は良く、
少年相撲の参加者の中では充分に優勝候補でもありました。
色黒でクールな顔立ちと真面目な性格もあって、町内のお母さん達の中でも
一番応援されています。

光君も運動音痴というわけではありませんが、臆病な性格のため
相撲も痛くて怖いスポーツという印象を持って参加したがらず
さらに過保護な光君のママがそれを後押ししているので、まだ一回も参加したことはありません。
少年相撲で賞状をもらったマワシ姿の洋助君と、私服姿の光君が並んで撮った写真が
夏祭りの思い出の一枚になっているのがいつもの事でした。


その頃、光君のママと洋助君のママは共に町内会の集まりに参加していました。
集まりの内容はもちろん夏祭りの日程のことですが、特に奉納相撲の事が
話題の中心になっています。その話題とは、今年から新たに

相撲の種類を増やそうということでした。

「あくまで実験レベルではありますが、今年の奉納祭に新たに加える相撲の一つとして
 『オチンチン相撲』を提案させていただきたいと思います」

町内会長の口から堂々と宣言された思わぬ単語に、集まったお母さん達は目を丸くします。
光君のママと洋助君のママも目を合わせて何かの間違いではないかと確認し合いますが
それは聞き間違いでも何でもありません。本当にオチンチン相撲なのです。

オチンチンと言えば、それは男の子のオチンチン以外の何物でもありません。
もしかしたら他に何か意味があるのか、それとも奉納行事に関係のある言葉なのか
集まったお母さん達は顔を赤くしながらヒソヒソと相談しあっています。

「ちょっと…よろしいでしょうか?」

一人のお母さんが、恐る恐る質問をするために手を上げると
町内会長は笑顔でそのお母さんの言葉を遮り、全てお見通しと言った表情で
オチンチン相撲の説明を始めました。

「分かっています。オチンチン相撲と言われただけでは混乱して当然でしょう。
 単刀直入に言えば、美少年の元気に勃ったオチンチンで相撲を取るものです」

「元気に勃った」の一言で、またお母さん達は困ったように顔を赤くしています。
オチンチンというだけで恥ずかしいのに、勃起まで付け加えてしまうなんて。
ですが、ここまで堂々とされると恥ずかしさを通り越して素直になってしまうのか
赤面しながらも思わず顔がほころんでしまうお母さんもいました。

年頃の息子を持つお母さんなら、誰しも息子のオチンチンの成長と勃起には
色々な思いを抱えるはずです。勃起をはしたないと思いながらも
一人前に勃起が出来るオチンチンになった事を褒めてあげたくなったり、
勃起をするのは男の子として元気な証拠と理解しつつも
あまり勃起ばかりしていると不安になってしまったりするでしょう。

一人の男性としてのプライバシーを尊重してあげる時期に来たことを感じながらも
息子の勃起したオチンチンのことまで把握していたいお母さんの葛藤。
いやらしい事を考えるようになったのは良くないことと思っているのに
性に目覚めた息子に対して、オナニーやセックスの意味を教えようと
お節介を焼きたくなる矛盾を抱えながら、息子の思春期を共に過ごすのです。

「これは、おふざけでも何でもありません。ちゃんと意味はあるのです。
 成人した男性のオチンチンは、不潔で汚らわしい性的な物でしかありませんが
 美少年のオチンチンは、男の子の元気と明るさを象徴するものであり
 神様の前でそれを勃起させるというのは、男の子の元気と明るさを
 神様に奉納することによって、これからも男の子達が健康で笑顔でいられるように
 お守りくださいとお願いするということになるのです」

大まじめな町内会長の言葉に、お母さん達も少しずつ納得していきました。
さらに美少年のオチンチンということになれば、少しは邪な気持ちも働いて
賛同の声がちらほらと上がってきました。

「それでは皆さん、オチンチン相撲の追加に一応は肯定してくださる
 ということでよろしいでしょうか?これは町内会としても是非成功させたいことです。
 そのためには、皆さんの理解と協力が必要なのです」

世の中には男性が半裸になる祭りは多いです。
本来は神聖のためには全裸が正しいのでしょうけど、公共と倫理の問題で
半裸になっているだけなのです。もちろん汚い男の裸は見たくないのが
女性の本音でありますが、可愛い美少年のフルチン姿なら見たいと思うのも本音なのです。
汚れなき美少年が、汚れないフルチン姿になる。それならオチンチンをさらけ出すことも
神聖な奉納の儀式といって充分通用するとお母さん達は思ったのです。


「今年はあくまでオチンチン相撲を定着させるための実験的な場でありますが
 神聖な儀式として行うために、何名もゾロゾロと参加させることはせず
 毎年一組、町内会が指名した二人のみとしたいと考えています」

土俵の上で行われる取り組みの様々な結果に一喜一憂するための相撲ではなく
奉納することに目的を置いた、おごそかな儀式としてオチンチン相撲を行いたいと
町内会長は告げます。そのためにも美少年が適任なのでしょう。

「そこで私には今回のオチンチン相撲に適任と思われる美少年の腹案がございます。
 浅見光君と大葉洋助君の二人に、私は是非参加していただきたいと思います」

町内会長がそう発言すると、お母さん達の目が一斉に
光君と洋助君のママに向けられ、二人の反応と返事を待ちます。
自分の息子のオチンチンを公衆の面前で晒させることに当然抵抗はあるものの
神聖な奉納の儀式という建前を押しつけられてしまった上に
夏祭りの成功のためという重圧までのし掛かっているのですから
この状況で断れるはずもありません。

「分かりました。私の息子が適任というのであれば、断る理由はありません。
 ただ、息子も年頃なのですから、正式な返事は
 息子を説得して納得してくれるのを待っていただきたいと思います」

町内会の重圧を察知した洋助君のママは、一応は承諾の返答をしつつも
少しでも時間稼ぎが出来るように上手く答えました。
町内会長もそれを認め、洋助君のママの素早い決断を讃えると共に
光君のママにも早い返事を求めます。こうなると尚更拒否するわけにもいかず
返事に迷うことすら場の空気を壊すことになりかねない雰囲気に
光君のママもそれが光栄であるかのように参加を承諾しなければなりませんでした。

「これでほぼ決まりですね。夏祭りの成功のために快く協力してくださった
 お二人に拍手をお願いします。お二人の力で是非オチンチン相撲を成功させましょう」

一斉に拍手に包まれる集会所の中で、拍手に困りながらも
愛想でお辞儀を返す光君のママと、すっかり腹を括った様子の
洋助君のママがどうしたものかと立ちつくしていました。


その後、会はひとまず解散しましたが、光君のママと洋助君のママは
町内会長にオチンチン相撲の説明を一通り受け、協力をよろしくお願いしますと
念を押されて帰宅することになりました。

どう神聖な儀式だと言われても、あまりにも恥ずかしいオチンチン相撲に
光君のママは、光君が大丈夫なのかと帰り道でもしきりに心配していますが
洋助君のママは、もう参加を前提で割り切って考えています。

「まあ、こうなったらなったで息子に頑張ってもらうしかないわね。
 むしろ、洋助と光君が一緒になったことを幸いと思わないと。
 二人一緒なら何とか頑張れるだろうし、心の準備も早く出来るわよ」

光君のママは光君に対して甘く過保護ですが、洋助君のママは
さばさばした言葉遣いの通り、多少の無理は頑張らせる育て方をしています。
洋助君のことをしっかり見守りつつも、時にはあえて突き放して甘やかさないことで
強い心を作らせたからこそ、洋助君は光君を守れる存在になれたのでしょう。

女性にしては立派な体格は、いかにも洋助君の母親という雰囲気で
肌の色も強い性格も、しっかり洋助君に受け継がれているようです。
こうして光君のママと洋助君のママが並んでいる姿を見ると
光君と洋助君の関係がそのまま写されているようでもあり、面白いものです。

「うちの洋助はもうオチンチンを勃たせることぐらい覚えていそうだけど
 光君の方はどうですか?ウブそうですから浅見さんも
 教えるのに苦労するかもしれませんよ」

子供なりに男としては成長していそうな洋助君に対して、光君の方は
いかにも性について何も知らなそうな印象がありありなのは
見た目でも性格でも一目瞭然です。

「そんな事…。うちの光君だって、もういじる事ぐらいはしてますから…」

実際には、光君はもう立派にオチンチンを勃起させて遊んでいるのですが
光君のママが知っているのは、光君が寝ているときに布団の中で
オチンチンを触っていることがあるという事ぐらいのようです。

顔を赤らめながら、恥ずかしそうに光君の性の芽生えを告白する光君のママ。
息子のはしたない行為を明かす恥ずかしさはあっても、光君もちゃんと
男としての当然の行為をするという成長をしてる事を認めさせてあげたかったのです。

「あはは、それなら安心ってところかしら。
 もし、光君がどうしても無理そうでしたら相談してくださいよ。
 いざとなったら洋助一人だけでも奉納の儀式に出来ないか掛け合ってみます」

光君によって頼りになる洋助君のように、洋助君のママもまた
頼りになるお母さんなのでした。

(続く)