魔女たちの眠り



 赤川次郎さんの小説「魔女たちのたそがれ」「魔女たちの長い眠り」を原作にしたゲームです。かなりオーソドックスな作りで、正統派の印象を受けます。
 サウンドノベルなので当然様々なエンディングが用意されています。しかしそれだけではなく、2度目のプレイ以降にある特定のエンディングに辿り着くと最後に「続」という字が出て、それまでの話の続きである第2幕に進めるようになっているのです。第2幕にも4つほどのバリエーションがあり(第1幕の終わり方で決まる)、当然それぞれに複数のエンディングがあるので、なかなか全部を見尽くすのは難しくなっています。さらにその先には「完結編」まであるのです。相当頑張らないとすべて制覇することはできません。また、「登場人物リスト」なるものが存在し、作中で人に出会うごとにその名前が記録されていくようになっています。少しずつ表を埋めていく、というコレクション的な楽しさがあります。
 「得体の知れない村」というのが舞台になっており、そういう意味での「おどろおどろしさ」はよく出ていると思います。よそ者に対する拒否反応が見え隠れしたり、(主人公にとって)意味不明の怪しい会話が交わされたり、殺人を犯した人間が何事もなかったように歩き回っていたりと、明らかに普通じゃない空気を感じることができます。……そうそう、普通じゃないといえば、このゲームにおいて最も怖い人物と思われる「お種婆さん」を忘れるわけにはいきません。マイ斧片手に(時には投げつけて)主人公に襲い掛かってくる、とんでもない婆さんです。見た目も行動も怖さ十分。しかし反面、完結編に出てきて「今夜は帰さんぞ」とか言うこともある(……やっぱり怖いか)。何にしろ、存在感十分のキャラです。
 PSでリメイクもされており、「怖さ」「スリル」「笑いどころ」などといったサウンドノベルの基本をきっちり押さえているので、安心して楽しめる一本なのではないでしょうか。

戻る