‐望まぬ奇跡‐  
〜 作:Ceruberusさん

 夢
 夢を見た
 あゆが木の上から落ちたころの夢だ
 あの時俺は何か願ったような気がする
 あゆのことの記憶を閉ざす前に何を願ったんだろう
 思い出せない

 ‐望まぬ奇跡‐

 『朝〜、朝だよ〜』
 『朝ご飯食べて学校行くよ〜』
 朝から脱力するような目覚ましの音に起こされて、部屋を出る。
 一階からトントンと料理を作っている音とともにテレビのニュースが聞こえる。
 そう言えばあゆが家に来てだいぶたつんだよな。
 祐一「おはようござ…おわっ!」
 あゆ「おはよう、名雪」
 台所にはなぜか"あゆ"がいた、それに"名雪"って。
 祐一「どうしてあゆが朝ご飯を作っているのですか?」
 あゆ「どうやらあゆちゃんと入れ替わってしまったみたいですから」
 こんな非常識な事態でも動じない秋子さんだった。
 鏡を見てみると確かにそこには名雪が映っていた。
 名雪「ということはまさか」
 慌てて名雪の部屋に駆け込むとそこには俺が寝ていた。
 祐一(名雪)「…くー」
 名雪「起きろ名雪!」
 おれの肩をつかんでぶんぶんと前後に振る。
 祐一「あれ、なんでわたしがもう一人いるの?」
 名雪「どうやら入れ替わってしまったらしい」
 祐一「何で?」
 名雪「それはこっちが聞きたいくらいだ」
 名雪「それと、秋子さんとあゆも入れ替わったらしいぞ」
 祐一「えっ、お母さんとあゆちゃんも?」
 名雪「そうだ、とりあえず下に言って秋子さんに相談してみよう」
 祐一「そうだね」
 居間に行ってみると秋子さんとあゆがいた。
 秋子(あゆ)「うぐぅ、どうしてぼくが秋子さんになっているの?」
 名雪「俺に聞くな!」
 ぴろは入れ替わったわけではないようだ、入れ替わっていたら困るが。
 祐一「今日はどうしよう」
 名雪「学校は行かないわけには行かないだろう、それに今日は土曜日で半日で授業も終わるから大丈夫だ」
 秋子「ボクは?」
 名雪「おまえは秋子さんの姿だから行くわけには行かないだろう」
 秋子「そうだね」
 あゆ「そうですね」
 名雪「さて、着替えていくぞ」
 祐一「え?」
 名雪「着替えなきゃ学校へ行けないだろう」
 祐一「そうじゃなくて、祐一わたしの裸見ないで着替えてね」
 名雪「どうやって?」
 祐一「わたしが着替えさせるからこれ付けて」
 おれ(名雪)が渡したのはアイマスクだった。
 名雪「これつけるのか?」
 祐一「いやならこれで気絶させようか」
 おれ(名雪)のかまえたのは一本の剣だった。
 名雪「どっからそんなもの手に入れたんだ」
 祐一「川澄先輩にもらった」
 名雪「舞のやつ…」
 目がまじだ。
 時間もないのでおとなしく従うことにする。
 朝からいろいろあったのでいつもよりも早く走っていた。
 名雪「急ぐぞ名雪」
 祐一「急いでるよ」
 名雪「あの二人は…」
 学校の近くまで来て前のほうに舞と佐祐理さんが歩いていたのに気がついた。
 名雪「おはよぅ、おふたりさん」
 つい、癖で名雪になっているにもかかわらずいつもどうり挨拶をしてしまった。
 舞「祐一さんたちも、おはようございます」
 佐祐理「………」
 佐祐理「…おはよう」
 この状態を見て俺はある疑問が出てきた。
 名雪「もしかして二人とも入れ替わったとか」
 舞「あははー、よく分かりましたねそのとうりです」
 さすがの佐祐理さん(舞の姿だが)も困った顔をしていた。
 佐祐理(舞)「…朝になったら佐祐理になっていた」
 舞(佐祐理)「珍しく舞が佐祐理のうちに泊まりに来たんですが、朝になったらこうなっていました」
 舞「おかげで遅刻しそうですけれど」
 佐祐理さん達もらしい。
 名雪「俺達は名雪と入れ替わったみたいだ」
 祐一「困ったね」
 とりあえず秋子さんとあゆのことは言わなくてもいいだろう。
 名雪もそのことは分かっているらしく言わなかった。
 話しながら歩いていくと学校へついたのでそこで解散になった。
 別れ際に小さな声で佐祐理さんに話し掛ける。
 名雪「今日は佐祐理さんの体なんだからな夜の学校に行くなよ」
 佐祐理「…わかっている」
 名雪「よし」
 祐一「祐一、遅刻するよー」
 おれ(名雪)にせかされて教室へと急ぐ。
 教室に入ると妙な違和感がある。
 まあ入れ替わっているのだからしょうがない。
 名雪「おはよう」
 香里「おはようございます」
 祐一「なんか今日の香里いつもと違うような…?」
 香里「わかりますか、朝になったらお姉ちゃんと入れ替わっていたんです」
 名雪「もしかして栞か?」
 香里(栞)「はい」
 香里たちもらしい。
 扉が開き石橋が入ってきた。
 名雪「とりあえず話は後だ」
 3人とも席につく。
 朝のホームルームは特に何もないのか早く終わった。
 祐一「香里たちも入れ替わったんだね」
 香里「あゆちゃんもですか?」
 名雪「ああ、秋子さんと入れ替わってる」
 香里「そうなんですか」
 名雪「それで香里はどうしてる?」
 香里「とりあえず家にいますが、お昼になったら来るそうです」
 名雪「それまでばれないようにしないとな」
 3人そろってため息をつく。
 後ろで北川が不思議そうな顔で見ていたが気にしないでおく。
 何事もなく放課後になった。
 名雪「何事もなく放課後になったな」
 祐一「そうだね」
 香里「お昼どうします?」
 祐一「わたしは学食で食べるけど、祐一たちははどうするの?」
 香里「わたしも学食へ行きます」
 名雪「俺は佐祐理さん達と食べる、相談もしたいしな」
 祐一「分かった、じゃあ栞ちゃん行こう」
 教室から出るといつもの屋上へ続く階段の踊り場へ向かう。
 しかしそこには誰もいなく1枚の紙が貼ってあるだけだった。
 『今日はお弁当作れなかったので舞と学食にいます  佐祐理』
 名雪「仕方ないか」
 いなければ仕方ないので学食に向かう。
 そこにはAランチを食べる俺と、アイスを食べる香里、牛丼を食べる舞と佐祐理さんがいた。
 名雪「こんなときでもいつもどうりかよ」
 栞(香里)「あんたもね」
 いつのまにかいたらしい栞がため息をつく。
 名雪「って、制服着てこいよ。」
 栞「いいじゃない、もう放課後なんだから」
 祐一「まあいいけど、これからどうしよう」
 舞「どうしましょう」
 名雪「どうしようもなにも何でこうなったのかわからなければどうしようもないだろう」
 栞「相沢君、またなにか君がやったんじゃないでしょうね」
 名雪「どうやって?」
 栞「奇跡でも起こしたんじゃないの」
 名雪「奇跡は起きないから奇跡って言うんじゃないのか」
 香里「そうですよ、祐一さんは奇跡を起こせるほど凄くありません」
 名雪「そこまで言わなくても…」
 名雪「それに俺がどうやってやったていうんだよ」
 栞「それもそうね」
 佐祐理「…祐一」
 名雪「なんだ舞」
 佐祐理「…お昼食べないの?」
 名雪「食べるけど」
 佐祐理「…はい」
 舞の持っていたトレーにはひとつの牛丼が乗っていた。
 俺はもちろん受け取る。
 名雪「ありがとう」
 俺は舞が買ってきてくれた牛丼を食べながらひとつのことを考えていた。
 それは今朝見た夢のことだ。
 かつてのあゆのことのように薄いもやのかかったような過去の記憶の夢を。
 そしてそれを思い出さなくてはいけないような気がしていた。
 祐一「祐一、どうしたの難しい顔して?」
 名雪「いや、なんでもない」
 栞「どうせまたくだらないことでも考えているんじゃない」
 みんなが笑い出した、といっても佐祐理さん(舞)はいつもどうりだが。
 結局相談したところで何も解決することはなかった。
 そして家に帰りあゆに聞いてみる。
 名雪「あゆ、俺がおまえが木から落ちたとき俺がなにを願ったか知ってるか?」
 秋子「さあ、知らないけどそれがどうしたの」
 名雪「いや、知らないならいいんだ」
 秋子「?」
 あゆ「あゆちゃん祐一さん、ごはんですよ」
 秋子さんはいつもと変わらずマイペースだった。
 姿が違っていてもいつもどうりの楽しい食事だった。
 俺もこのマイペースさに染まってきたのかもしれない。
 名雪「さて、風呂に入って寝るか」
 祐一「駄目」
 名雪「何でだよ」
 祐一「わたしの体なんだよ」
 名雪「それじゃあ風呂に入らずに寝ていいのか」
 祐一「よくはないけど、明日の朝入るからいいの」
 祐一「それから着替えのときはわたしが着替えさせるからね」
 名雪「…分かったよ」
 祐一「それから…、わたしの体に変なことしたら本当に怒るからね」
 名雪「分かったから剣を構えるな」
 名雪って結構危ないやつだったんだな、はじめって知った。
 そして夜遅くになってから布団にもぐりこんだ。
 そのまま眠りにつく。


 …夢
 夢を見た
 あたりの雪が血に染まっている
 あゆが木から落ちたころの夢のようだ
 切り株の上に子供が座って泣いている
 それは俺だった
 「このとき君は願ったんだよ」
 誰だおまえは
 「誰だっていいよ」
 俺はなにを願ったというんだ
 「君自身に聞いてごらん」
 小さい俺はかすれるような声でこう言っていた
 「…あゆ…おまえと入れ替わってやりたい…」
 「…おまえがいなくなるなんていやだ…」
 「…おまえが戻ってくるのだったら俺はどうなってもかまわない…」
 そうだ、このとき俺は願ったんだ
 入れ替わることを
 でもなんで今ごろになって
 「それは記憶を閉ざしていたからだよ」
 「記憶が戻ることで願いはかなう」
 「奇跡は起きたんだよ」
 でももういいんだ、こんな奇跡は要らない
 あゆは戻ってきたんだ奇跡は要らないんだ
 「でもこの奇跡は起きた」
 元に戻らないのか
 「無理だよ、奇跡をまた起こさない限りもとには戻らない」
 …そうか
 それなら願おう
 この望まぬ奇跡が終わるように
 「本当にいいんだね」
 …ああ
 「…奇跡は再び起きる…」
 あたりが白くかすんでくる
 …ところで君は何者なんだ?
 「わたしは…」
 それっきりその声は聞こえなくなる

 次の日目覚めると元に戻っていた。
 誰一人として入れ替わったことを覚えていないのだった。
 あの日のことは夢だったのだろうか。
 そして、あの声は誰なのだろうか。
 すべてはあの夢の中だった。
 しかし思い出す必要はないかもしれない。
 名雪、あゆ、そしてみんながいるのだから。

 <完>

  あとがき

 どうもCeruberusです。
 今回は完全版ということで、話の間の補完等を行いました。
 しかし、最後の永遠の世界っぽいところとかは直せませんでした。
 次回作はちょっと違うネタでいってみたいと思います。



なゆくらみゅ〜じあむへ戻る