『朝ご飯食べて学校行くよ〜』 朝から脱力するような目覚ましの音に起こされて、部屋を出る。 祐一「おはようござ…おわっ!」 秋子「おはようございます、裕一さん」 食卓に顔を出すなり、机の上に異様な物体を見つけ驚いたのだが、それに対する秋子さんの反応は いつも通りだった。 相変わらず周りに流されない人である。 声「…うにゅ」 祐一「おわっ!」 突然、机の上の謎の物体がのそっと動き始めた。 名雪「…おはようございます〜」 謎の物体が挨拶をする。 名雪「…くー」 謎の物体は、寝ていた。 祐一「…なんだ、名雪か」 机の上に突っ伏していたので、長い髪の毛が散らばって異様な物体に見えていた。 名雪「…くー」 祐一「しかし、俺よりも先に起きているなんて珍しいな」 秋子「わたしが起きたときもここに居ましたよ」 名雪「…くー」 祐一「またか…」 秋子「またテーブルに座ったまま、寝てしまったみたいですね」 名雪「…くー」 祐一「器用なやつ…」 秋子「ごめんなさい、起こしてもらえますか?」 祐一「…分かりました」 名雪「…くー」 少し体を起こしていた名雪だが、力尽きたのかまた机の上にぽてっと倒れる。 祐一「名雪っ!起きろっ!」 とりあえず、体を揺する。 名雪「うー…地震…だおー…」 だおーってなんだ、だおーって…。 名雪「くー…」 すでに、何事もなかったように熟睡している。 今日の名雪は、いつにもまして手強かった。 秋子「あまり寝ていないのかもしれないわね」 秋子さんが、俺の分のトースターを運んでくる。 確かに、昨夜は見たいテレビがあるとかで遅くまで起きていた。 祐一「そう言えば、こいつは8時になると寝ていることがあるようなようなやつだったな…」 ため息をついて、そしてもう一度体を揺する。 名雪「くー…」 慣れきってしまったのか、机に倒れこんだまままったく反応なく眠り続けている。 さて、どうするか…。 1.作戦その1 2.作戦その2 俺はもっと確実な作戦その3を実行することにした。 祐一「秋子さん、甘くないジャムありますか」 秋子「ありますけど、食べますか?」 祐一「ええ」 名雪「くー…」 秋子さんからジャムを受け取ると名雪の分のトーストに塗る。 言うまでもないが、そのジャムは秋子さん一番のお気に入りの鮮やかなオレンジ色をしたジャムである。 そして、自分のトーストにはイチゴジャムを塗る。 名雪「イチゴジャム…」 名雪がイチゴジャムのにおいに反応する。 寝ぼけている名雪に甘くないジャムを塗ったトーストを渡す。 名雪が、トーストをかじる。 名雪の目がパッチリ開いた。 名雪「ごちそうさまでしたっ」 トーストのほとんどを残し慌てて自分の部屋へ行き着替えて玄関を飛び出していく。 祐一「ごちそうさま」 俺も玄関へ向かう。 秋子「いってらしゃい」 玄関の外に出ると名雪が首をひねっていた。 名雪「なんでイチゴジャムがあのジャムになっていたんだろう」 祐一「そんなことより遅刻するぞ」 走り出すと名雪もついてくる。 しかし、名雪の表情には、終始『?』が浮かんでいた。 数日後、名雪にばれてその日の晩御飯が俺だけ紅しょうがになったのは言うまでもない。
今回のは以前の作品の修正版です。 次回は『‐望まぬ奇跡‐』の完全版を送ります。
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