
○1970年当時
体験と言っても,たいした体験をしたわけではありません。
小野和子さんは,ワタシが中学3年生から高校1年生の頃に,よくラジオの公開番組に出演されていました。
番組の中で,吉田拓郎さんが「お前,凄く良いよ!」という様な発言をして,小野さんのことを非常にかっていたと記憶しています。
当時,拓郎さんや岡林信康さんとか,赤い鳥とか,日本のフォークをよく聴いていました。
その頃のノートを見ると,1972年2月6日(70mジャンプの日)に,「小野和子に痺れた。良い。もっと人気が出ても良いのに。良い。バツグン。カッコいい。フォークには珍しく顔も良い」と書いていました(なんという表現!)。
また,同時にジャネット・リンにも痺れたと書いてました。
しかし,その後何故か日本のフォークにはほとんど興味を失ってしまいました。
今でも好きで必ずCDを買うのは,遠藤賢司さんくらいかな。高田渡さんや中山ラビさんも好きだな。
その頃一番気になっていた,一番好きだった女性フォーク・シンガーが小野和子さんでした。
しかし,レコードを買うお金がなく,もっぱらラジオで楽しんでいました。
小野和子さんの曲の中では,「I Love You Superman」と「黒いカラス」,加藤和彦さんの曲でご本人も唄っていた「ふしぎな日」が好きで,特に「I
Love You Superman」は,30年たった今も胸の中に残っています。
次第に日本のフォークに興味を失ってからは,自然と小野和子さんのことも忘れがちになってしまいました。
長い年月がたってから,小野和子さんはどうしているんだろうか? とか,昔買えなかったレコードをもう一度聴いてみたい,という感情がわき上がり,レコード屋さんや中古のショップをずいぶんと廻りました。
しかし,なかなか手に入れることが出来ず,ようやく数年前に最初のシングル盤である「帰らない人/明日をもとめて」にめぐり会うことが出来ました。
これらの曲は小野さんご本人の作品ではなく,何か違うという印象を持ちました。
本来の小野和子ワールドを(帰らない人がそうではないと言うわけではありませんが)もう一度体験してみたいと思い続けていました。
○2000年以後
パソコン通信からインターネットの世界を垣間見て,小野和子さんを検索してみました。
水戸市で,”ぐぁらんどう”というお店をやっていらっしゃるという情報を目にしました。
また,ミュージック・マガジン誌において,小野さんが自主制作されたアルバム”歌詞1999”を紹介している記事に出会いました。
さらに,ずーと好きだったTin Pan Alleyやはっぴいえんどの再評価がなされ,写真家の野上眞宏さんが撮影された小野和子さんの写真がはっぴいえんどの初期のライブ写真と共に,”はっぴいな日々”に掲載されていることを見つけました。
そして,新世紀に入った1月24日,ワタシは”ぐぁらんどう”を訪れました。
お店に入って,いきなり小野和子さんが迎えてくれたことに,心底驚きました。
2時間ほどでしたが,小野和子さんは”歌詞1999”や昔の曲をかけてくださいました。
「I Love You Superman」や「黒いカラス」を30年ぶりに聴きました。
昔の感動が蘇ってくるのではなく,まったく新しい感動を覚えました。何とも形容することが難しい気持ちです。
小野さんは気軽に話をしてくれ,昔のレコーディングとか,帰らない人は1テイクで歌録りを終えたとか,難曲のI
Love You Supermanのレコーディングでは泣いたとか,興味深い話をしてくださいました。
ワタシの記憶で”小野和子と花籠部屋”っていうグループを組んでライブ活動をしていたのではないかと訊ねると,あれは誰かが勝手に付けた名前だと説明してくれました。
小野さんは年齢よりも若く見えるとてもキレイな人で,毎日のようにお店で唄っていらっしゃるそうです。
お会いした小野さんは,昔の小野さんではありません。大きく成長した大人のシンガーの小野さんが,そこにいました。
そういうわけで,30年ぶりの初対面のひとときを過ごすことになったのでした。
小野さん,お好み焼き,おいしかったですよ〜