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「あれ? イヤリングかえたんですか? リナさん。」 洗面所で寝ぼけた頭をかしかしかきながら、あたしはぼーっとアメリアを見た。 アメリアは既に着替えている。 あたしは、ただ捕らわれていただけとはいえ、結構疲れていたらしい。 寝起きが決して悪い方ではないのに、眠気が取れず、何か頭がすっきりしなかった。 「ま、ね。ちょっとした気分転換よ。気分転換」 あたしはあくび混じりにアメリアに答えた。 冷たい水で顔を洗い、アメリアが差し出してくれたタオルを手にとる。 「ありがと」 「あ、キスマーク」 アメリアがぼそっと呟いた。 「え?」 あたしは自分の首筋に手を当てる。 アメリアの視線がじっとあたしの仕草を追った。 あたしは、ぱたっと硬直した。 ちょっと、まずかったろうか。 今の行動って、ひょっとして………。 すごくすごくまずかったろうか。 恐る恐るアメリアを見ると、 「ふーん。ほほー。へー。そうなんですか。今日はお二人とも、やたら遅いとおもったら………。なるほど………そーゆーことだったんですね」 アメリアが意味ありげに何度も頷く。 「ちょっとちょっとちょっとアメリアっっ。何よ。そのいかにも何かあったかのような言い方はっっ。誤解よ誤解。そんなこと何もなかったのっっ」 「心当たりが何もなかった方の行動パターンじゃありませんでしたね。今のは」 冷静にアメリアが指摘する。 横を向いて口元に手を当て、 「でも、ま、ガウリイさんも結構やりますね。リナさんを取り戻したその日に………なんて。やっぱりお部屋いっしょにとるだけのことはありますね」 「ア〜メ〜リ〜ア〜」 あたしはアメリアの首筋に手を回して、ゆさゆさと揺さぶった。 「お願いだから、そーゆー言い方するの止めてよっっ。あたしは別に───」 「そうですか? でも、喉元に───」 「ええ?」 あたしはぱっとアメリアから手を離す。そして、慌てて鏡を覗き込んだ。 露わになっている首筋には───特に何の跡もない。 鏡の中では、アメリアが吹き出すのを寸前でこらえ、あたしを覗き込んでいた。 「見事に引っかかってますね。リナさん?」 「ア〜メ〜リ〜ア〜?」 今度のあたしの声は地を這うぐらいに低かった。 捕まえようとするあたしから、きゃーきゃー言ってアメリアが逃げる。 その背中に追いすがり、再び首根っこを捕まえる。 アメリアがきらきら光る瞳であたしを見た。 「だって、引っかかるリナさんが悪いんですよ」 「だからってねえ」 アメリアがにまっと人の悪い笑みを浮かべる。 「あら? じゃあ、そのイヤリングどうしたのか、って突っ込んだほうがよかったんですか? 一体『誰に』もらったのかって。『どうして』リナさんがそんなイヤリングしてるのか、って。いつものリナさんらしくないですよねえ。魔法の道具じゃないイヤリング身につけてるなんて………。きっとよっぽど特別なことがあったんですよね。ね、リナさん?」 あたしは一瞬言葉に詰まった。 その隙にアメリアがするりとあたしの腕から逃げ出した。 「まあ、指輪でももらうようになったら、ちゃんとあたしにも教えてくださいね。ちゃんとお祝いしますから」 「ちょっと………アメリアっっ」 にっこりと大きく笑ってみせると、ぱたぱたという音だけを残して、アメリアはあたしの前から走り去っていった。 「全くもう………」 あたしはぼやきながらタオルを取り上げた。 本気で怒る気には何故かなれなかった。 何となくくすぐったいような………嬉しいような不思議な気分。 朝の光に浮かれているのかもしれないけれど、こういう感覚はイヤじゃなかった。 部屋の外、廊下の向こうからやはり今起きたばかりのガウリイの声が聞こえてくる。
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