午餐

− side G −

Kyo



 
 
 

 

リナが何かを考えているのはすぐに判った。
大体、人をたたき起こす時間が、妙に早い。
それに………この笑み。
「にっこり」と表現すればかわいいんだろうが、オレには何やら「にやり」に見える。
あえて言うなら、そう、まるで盗賊いじめに行くときのような───。
案の定、オレの不吉な予感はすぐに形になった。
───オレ用に用意された巨大な荷物となって───。
ぶつぶつと文句を言ってみても、リナは一向に取り合わない。
取り合ってもらえるとも思っていない。
下手な台詞はスリッパを招くと分かっていない訳じゃないんだが、
他愛ない言葉のやりとりが妙に楽しくて、ついつい言葉を重ねてしまう。
今日のリナは結構上機嫌で───でも、何を考えているのかは、オレには判らなかった。
───オレをこき使えるだけこき使うつもりだというのは、その後すぐに判明したんだが───。
魚を釣って、リナが料理するのを手伝って。
でも、それで疲れたと文句を言えるのは、オレ達の日常を考えれば、きっと最高の贅沢なんじゃないかと思う。
作業が終わってみると、リナが敷いた敷物の上には、所狭しとごちそうが並んでいた。
しかも、リナの手作りの。
リナは結構料理が上手い。
だけど、ここまで手間暇かけるのは、旅の途中では珍しい。
なんだか高そうなワインまであるし。
何か理由があるんだろうか。
でも、訳を聞いても、答えはない。
………答えたく、ないのかもしれない。
いつか教えてくれ、と言うと、ふとリナが微笑んだ。
それは、リナが本当に時折見せる、穏やかで、静かな笑み。
「………いつかね。いつか」
そういってリナは笑いかける。
それが、どこか心に痛かった。
オレは、こういう表情を知っていると思う。
それは何かを強く心に決めた人の笑み。
だから、判る。
こいつは、多分、その理由を言うつもりがないんだ。
───オレにさえ───。
『何が』とは思わなかった。
ただ、『誰が』リナにこういう表情をさせているのか、それがとても気になった。
リナ本人に関わるだけのことなら、ここまでかたくなになることは、多分、ない。
リナが口を閉ざすのは、それが自分に関する事ではないからだ。
それは、リナ以外の『誰か』の為。
それが───一体誰なのか。
───でも───。
オレはぽんっとリナの頭に手を載せる。
リナと出会ってから幾度となく繰り返された動作。
子どもにするようなこの仕草を───リナに拒まれたことはない。
オレの動作を受けて、リナの表情がふと和む
やわらかな笑み。
誰かを愛しいと思うのは、きっとこんな瞬間なんじゃないかと思う。
オレが笑いかけると、リナも嬉しそうに笑ってくれる。
だから、いい。
リナが何を考えていようと、オレのそばにいてくれるならそれだけで。
もどかしいような、この近くて遠い距離でさえ、何かの役に立っているのだと思えるから。
だから、オレはリナに笑いかける。

昼寝でもするか? というとリナは喜々として頷いた。
こんな日も、きっと悪くはない。
おれはごろんと草の上に寝転がった。
とりあえず、何もない日を記念して。
 
 

 
 
 

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