MAY
それから、しばらく後。
《レイヴの場合》
「レイヴ!」
真夜中、宿の部屋にいきなり現れたラビエルにレイヴは慌てた。
唐突に現れるのはいつもの事と承知してはいたが、寝ている最中に訪ねられてはたまったものではない。
一発怒ってやる、と息を吸い込んだ時。
「レイヴ、ごめんなさいっっ!」
ぐしぐしとべそをかきながら、ラビエルが頭を下げる。
「私が全部悪いんです!レイヴが捕まったりしたのも、中々レベルが上がらないのも、いつまで経っても魔物より行動が遅いのも、全部私のせいだったんです!」
「いや‥‥それは違うと思うんだが‥‥」
出端をくじかれ、気圧されながらも口を開くレイヴの言葉などラビエルは全く聞いていない。
「今更遅いんですけど、受け取ってくださいっっ!」
布で包んだ長い物を押し付けると、ラビエルは一方的にしゃべって消えてしまう。
「‥‥何だったんだ‥‥‥?」
呆然とつぶやいたレイヴの手には、大振りの両手剣だけが残されていた。
《フィアナの場合》
夜、心安らかに寝ようとベッドにもぐりこんだ時、覚えのある気配と共にラビエルが現れた。
賞金稼ぎと言う仕事上、穏やかに寝られる夜は貴重である。それを邪魔されるのは何より腹が立つ。
「あんたねぇ!何も人が寝ようって言う時来る事はないでしょう!」
眉を吊り上げて怒鳴りかけたフィアナは、顔を涙でぐしゃぐしゃにしたラビエルに思わずたじろいだ。
「すみません、私が悪いんです!お金も払えないのに無理ばかりさせてしまって、どんな文句を言われても仕方なかったんです!」
「あ‥‥あのね‥‥‥」
こうまでボロ泣きされると、まるでフィアナの方が悪いことをしているように思えて来る。
「これ、受け取って下さい!せめてものお詫びですっっ!」
布に包んだ片手剣を押し付けて、ラビエルは消えてしまった。
「‥‥どーしろってのよ、私に」
《グリフィンの場合》
珍しくも気が向いて修行などしていた時、いきなりラビエルが姿を現した。
「お前なぁ!折角人が‥‥」
グリフィンの場合、修行する気になるのはめったにない。非常に貴重なこの時を邪魔されれば腹も立とうと言うものだ。
が、グリフィンはボロボロと涙を溢れさせているラビエルの泣き顔にギョッとした。
「おい、何だよ?また腹でも減ってんのか?」
わずかに身を引いたグリフィンに、ラビエルはずずいっ、と迫った。無論、ボロボロ泣きながら。
「ごめんなさい!私、本当に世間知らずで物を知らなくて‥‥だから村が襲われても間に合わなかったりしたんです。全部私が悪かったんです!」
「な‥‥何言ってんだお前?」
「これ、使って下さい!私に出来る事はこれしかないんです!」
グリフィンにも両手剣を押し付け、ラビエルは泣きながら去ってしまった。
‥‥そして。
「おい、フロリンダ」
シーヴァスが、風変わりな妖精を呼んだ。
「はぁい、なんでしょぉ勇者さまぁ」
間延びした返事と共に現れたフロリンダに、シーヴァスが多少、身を引く。
ペンギンの着ぐるみをすっぽり着込んだフロリンダの姿は、何度見ても慣れない。
「最近、ラビエルを見ないんだが‥‥どうかしたのか?」
シーヴァスの問いに、フロリンダは困った顔になる。
「天使様はぁ、今APを節約して武器の調達してるんですぅ」
「‥‥何だそれは」
人間には、APの概念もなければそれと引き換えに武器を手にする習慣もない。
首をひねるシーヴァスに、それ以上説明しようがないフロリンダは頭を抱えた。
「まぁ、いい。それより何か最近、インフォス全体に不穏な空気のようなものが感じられるんだが、放って置いていいのか?」
「‥‥天使様に、お伝えしておきますぅ」
ラビエルが武器の調達に追われているうち、時は流れてもう九年の月日が過ぎていた。 世界のあちこちに姿を現した堕天使達を倒すには、移動時間も含めてかなりの時間がかかると予想される。
インフォス崩壊まであと一年、果たして勇者は間に合うのか?!
‥‥落ちてません、でも終わる
実話です。ゲーム開始直後、ガブリエル様からただで装備品がもらえたため、「こりゃラッキー☆」と装備一式をレイヴに貢ぎ、それっきり放って置いたんですね。だってエレメントソード、なんて他のゲームなら最後の方で出て来るような武器じゃないですか?
おかげで私は、リーガルとの再戦直前まで初期装備のままにして置いて、他の勇者にやろうと思っていた武器と偶然比べて、あまりの違いに引っ繰り返ってしまいましたよ。
ステータス画面を見れば分かったろうって?そう言われると一言もないです‥‥。