加奈 〜いもうと〜

99年6月発売  発売元 ディーオー

ネタバレの感想


今更という気もするのですが、このHPの開設直後にいろいろと「ゲームにおける死」を考えさせられることがあり、その問題に対する一応の回答という意味も含めて書いてみます。なお01年6月発売の再販「もう一度君に逢いたい」シリーズを購入しているので、初回版などとは微妙な修正があるかもしれません。



ただやっぱりどうしても今更な感があるので、キャラ紹介とかははしょってネタバレ中心で書いてみたいと思います

 

シナリオの感想

人の死というおそらく最も重いテーマに真剣に取り組んだ作品であると言えます。同世代のKanonが安易な奇跡の安売りに走り、前世代のToHeartマルチシナリオが最後で泣ける展開に走ってしまったのに対し、加奈はしっかりと人を殺しています。ToHeartがハートフルコメディに死をスパイスさせ、Kanonが奇跡を起こすための手段として死を使ったのに対し、加奈はそのまんま人を死に追いやることがテーマのゲームです。ここがまず他の感動系ゲームとの大きな違いだと思います。妹加奈の死を主人公がどう受け止めるか、がこのゲームの本質です。本当は兄と妹との禁断の愛とかいろいろあるのだろうけど、とりあえず今はそういう事は置いておきます。


シナリオは6つに分岐しますが、1つを除いて全部について、加奈は死にます。その1つというのが「加奈」というゲームがゲームである唯一の根拠事項であろうと思われますが。では順番に感想などを書いていきますが、本当にネタバレ度が強いので見たくない人はさっさとスクロールさせた方が良いと思います

 

 

 

 

非知的エンディング1 加奈寄り

「加奈」というゲームがゲームであるところから生まれたエンディング。すなわち加奈復活エンド。俺は本来死すべき存在が生きかえるという復活エンドが大嫌い(だから栞も真琴も死んだままのほうがより感動的であったはずだと思っている。ただあっちは「奇跡を起こす」のがテーマのゲームなので畑違いなのだが)なのですが、このエンドについては特に文句は浮かび上がりませんでした。というのも、結局最後の最後で加奈は家を出ていってしまうではないですか。なんだかんだ言って結局兄の元から離れていく存在としては同じことだろうと。俺が嫌いなのは「加奈復活→『もうこれからはずっと一緒だよお兄ちゃん』→二人抱き合ったままエンディングへ」という展開なのであって。

それにしても血の繋がりがないのにミスマッチゼロっつーのはやめて欲しかったな。いや、「ゲーム」だからいいんだけど


非知的エンディング2 ノーマル

ノーマルだけあってさすがに納得行かない所だらけです。その最たるものはラスト。
移植を受ける主人公→移植中夢を見る→移植終わる「ああ、移植は成功したんだな」→再び主人公眠りへ→加奈の墓参りシーンへ

ちょっと待て加奈はいつ死んだんだよ

このゲームが加奈を殺すゲームだと認識している俺にとって、加奈の死ぬシーンを描かないというのは肉のないハンバーグのようなものではないですか。というわけで最も不満が残ったエンドでした。ノーマルエンドだから良いんだけど


非知的エンディング3 夕美寄り

プレイしたはずですが、特に感想はなし。夕美の献身さにはほとほとびっくりしましたが。あと、あれだけ夕美寄りの選択をしながら加奈が死ぬと狼狽する主人公ってのはナンですかあれは


知的エンディング2 ノーマル

知的エンディングはいろいろ都合があってノーマルから書きます。誰が知的になるかって、まずは加奈です。知的ルートに入ると叔母の死を間近で見ることになるのですが、叔母の死を通して加奈は何かを学び全てを悟って死んでいきます。その死に様が非常に良い。「死にたくないって思うのは、まだ人生にやり残したことがあるから」という一文には思わず納得。このシナリオは加奈が死んでエンディングになります。あっさりしていてさすがノーマル


知的エンディング1 加奈寄り

このエンドでは加奈が死んだあと加奈が書いていた日記を読み返すところまで話が続きます。ところで知的になる人は加奈以外に主人公も知的になると思うのですよ。自分と加奈の関係もアルバムを見ていて自ら気付くし(非知的ルートでは親に言われて初めて知る)、加奈の死をしっかりと受け止めているし。


知的エンディング3 夕美寄り

加奈が死んだあと加奈が書いていた日記を読み返し、加奈の日記を原作として本を出版し、それを読んだ夕美が主人公を許すというところまで話が続きます。おそらく、最も完成度の高いシナリオじゃないかと思います。知的になる人その3は夕美です。中盤〜終盤であれだけ夕美を裏切っておきながらそれを許して再び主人公の元に帰ってきた夕美は充分知的じゃないかと思います

 

ベストエンドはどれか

ぶっちゃけた話、全てがベストエンドになりうるのが「加奈」です。どれがベストエンドかを決めるのは個人個人です。「加奈萌え萌え〜」の人は加奈復活エンドをベストエンドだと言い張るでしょうし、シナリオ展開を重視する人は知的エンディング3をベストエンドに指定するでしょう。じゃあ、加奈の死とそれをどう主人公が受け止めるかをこのゲームのポイントとした私は、どれをベストエンドに選ぶべきなのか。

まず非知的ルートは却下。加奈の死に様に疑問は残るし、主人公の受け止め方がやはり良くない。

では知的ルートの中でどれを選ぶべきかなのですが、ここで私は余韻なるものを重視しました。余韻、すなわち後味です。全てシナリオを読み終えたときに最も「良い気分」になってるのはどれか。

プレイした方は分かっているでしょうが、知的ルートのラストは以下のようになっています。

加奈死ぬ→エンディング曲(ノーマルはここで終わり)→日記を読む(加奈寄りはここで終わり)→夕美と和解(夕美寄りここで終わり)

さて、どこで切るのが最も良い「余韻」を味わえるのか。

あっさりノーマルエンドが最も余韻を味わえるんです。日記を読んだり夕美と話したりすると(私的には)無意味に話しがダラダラ続いてしまい、余韻が薄れていくんです。加奈の死というクライマックスで終わってくれた方が物凄い余韻でした。しばらくこの余韻は味わえないと思います。というわけで、前々から加奈が「私が死んだら雪を降らせてあげる」と言っていて加奈が死んだ直後に雪が降って「そうか……お前が振らせてくれたんだよな」と感動しつつエンディング曲が流れてそのまま終わった「雪」が一番良かったエンディングでした。

 

歌とBGM

ゲームを買う前に一部の音楽を聴いてしまうのは私の悪い癖なのですが、今回もエンディング曲「あなたへ」については前々からリサーチしていました。その結果

ギターアレンジバージョンのMIDIを聴く     ええ曲やなあ
        ↓
普通のMIDIを聴く                 ええ曲やなあ
        ↓
歌詞を読みながら聴く               だー(涙ざばざば)
        ↓
ゲームを買って歌付きで聴く           だー(涙ざばざば)

見事にはまりました。美少女ゲームの歌を聞いて「ええ曲やなあ」と思ったことは何度もありますが、涙が出てきたのはおそらくこれが初めてです。上の図を見て分かるように、歌詞がたまらなく良い。加奈のお兄ちゃんに対する精一杯の恋心が綴られているのですが、タイトルが「お兄ちゃんへ」ではなく「あなたへ」となっているところが、加奈が兄を1人の男性として見ていることが読み取れてこれまた良い。こんな良い詩を書ける人がなぜ精霊召喚(やべリンク間違えた)の小説版であんなヘタレ文しか書けないのか不思議です。


エンディングばかり書いていますが、オープニングの「白い季節」もこれまた良い曲です。惜しむらくは歌い手(KANAさん)の音域が狭すぎて、ときどき音がずれたり声がかすれてしまう事でしょうか。まあこれは加奈が精一杯の声で歌っているという好意的解釈をしておきます。

 

最後に

おそらくスタッフはこれほどまでにこのゲームが話題になるとは思っていなかったと思います。親父とお袋の名前ないし

個人的且つ主観的評価
キャラクター:78点
シナリオ:93点
サウンド:87点
システム:78点
総合:84点

(最終更新 2003,1,4)


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