アカイイト

04年10月発売  発売元:サクセス

全体的な感想


 マリみてブームに乗ったのか、百合ゲーが登場です。家庭用ゲームの百合ゲーとしては「あやかし忍伝くの一番」以来なんじゃないかと思います。
 あ、でも一応公式的には「和風伝奇ホラーノベル」ってことになってるんで、そこんとこよろしく。

 ちなみに自分、当初はこのゲームをエロゲーの移植かなんかと勘違いしていました。

 

購入動機

 やはり百合ん百合んですかね。
 調べてみたところG’sマガジンでも2004年の9月号と11月号で紹介されていましたが、9月号は見開き2ページあるものの11月号は1/6ページのみ。扱いは決して良くありませんでした。そしてこのゲームを最も大々的に宣伝していたのが百合姉妹だったらしいのですが。
 結局発売当時は買いそびれてしまい、その後の評価を聞いても「期待していたほど百合じゃなかった」という声も聞かれ、興味も失われていきました。中古屋さんでたまに見かけることはあっても5000円弱していましたので、さすがに買う気もせず。
 おそらく2005年10月に廉価版が出なかったら、もうこのゲームに再会することはなかったと思います。
 通常版はアンソロジーコミックか何か?がついているそうですが、廉価版のほうははジャケットがリバーシブルになっています。裏にすると和服と洋服のの少女が抱き合っているのですが、この2人どう見てもぱんつはいてn

 ちなみに廉価版はソフマップで買ったのですが、ちょうどソフマップのポイントが5千ポイント近く溜まっていたのでそれを使って買いました。言ってみればタダですよ。タダでこんな良作ゲームに出会えるなんて

 

お話の始まり

父親を早くに亡くし母親と二人で生活していた羽藤桂でしたが、母一人子一人の生活がたたったのか母親が過労で死亡。一人になってしまいます。
とそこに、実は父親の故郷に無人の実家が残っており、その所有権をどうするかという話が持ち込まれます。
こうして、親の実家である「経観塚」を訪れることになった羽藤桂。彼女を待つ過酷な運命。彼女は生きて帰ることができるのか。

……いや、本当に桂死にますんで。

 

キャラクター

キャラクターデザインはHal氏。サクセスの女の子が出てくる作品ではHal氏が原画を務めていることが多いようです。

羽藤 桂 (はとう けい) CV松来未祐
本作の主人公。お人よしでのんびり屋のため、知人からは何かと世話を焼かれる。
和食派で時代劇や落語が好きという意外な趣味あり。
実は妖(あやかし)にとって最高の餌である「贄の血」の持ち主であり、それ故にいろ〜んな人から血を狙われることに。
松来さんはこういうトロい女の子を演じさせれば天下一品だと思う。これもひとつの才能かと。

ユメイ(ゆめい) CV皆口裕子
桂が経観塚に来て以降見るようになる夢の中で度々出会う少女。なぜか桂のことを知っていて、桂を守ってくれようとする。
ゲームのパッケージには彼女と桂が絡み合う姿が描かれており、メインキャラを貼っていると思われる。
皆口さんの声は不思議だ。この声はなんで可憐な少女の声にもお母さんの声にも聞こえるのだろう。

千羽烏月(せんば うづき) CV渡辺明乃
桂と同じ列車で経観塚を訪れた、立ち居振舞いの美しい黒髪の少女。
実はこの若さで千羽党という鬼を切る部族の当主を務めている。

浅間サクヤ(あさま さくや) CV真田アサミ
桂の母の古くからの知り合いであるはずなのだが、歳を感じさせない年齢不詳の美女。
ざっくばらんな姉御肌で、何かと桂の面倒を見てくれる。

若杉葛(わかすぎ つづら) CV釘宮理恵
桂の父親の実家でなぜか一人暮らししている少女。若い身空で放浪の一人旅をしている。
桂より数歳も年下と思われるのに、何かと物知りなしっかり者。このゲーム内の薀蓄王。相棒の子狐の名前は尾花。
突如狐耳と尻尾が生えてケモノっ娘に変身したりするので、釘宮だからって適当に遊んでいると痛い目見ます。要注意人物。

ノゾミ(のぞみ) CV小林恵美
桂の血を狙う子鬼。夕刻から夜にかけて、鈴の音と共に現れる。夢を操る力や言霊を持っていたりする。本名おそらく藤原望。
桂を守ろうとするユメイとは当然対立関係。
ミカゲと違い積極的に桂にアプローチ(?)。

ミカゲ(みかげ) CV小林恵美
ノゾミの双子の妹。「はい、姉さま」が基本台詞。
理知的で、ともすれば暴走しがちになるノゾミを抑える役目を持っている。その時の基本台詞は、「ですが、姉さま」。

奈良陽子(なら ようこ) CV能登麻美子
桂のクラスメイト。桂を「はとちゃん」と呼ぶ、自称桂の親友。学校での出席番号が桂の一つ前だったので桂と仲良くなった。
ちなみにグラフィックは後姿のみ。ほとんどは電話の声でしか登場しない。おそらく桂にスキスキ光線を一番出しているのは彼女と思われるが、当然個別エンドもない。悲劇のヒロイン。
CVが能登だって、スタッフロールを見るまで全然気付きませんでした。ウィスパー系だけではなくこういうハイテンション系のキャラも演じられるのならもっとやってくれてもいいのに。

東郷凛(とうごう りん) CV沢城みゆき
桂のクラスメイト。本編には名前しか登場しない、そのくせ用語辞典にはしっかりと名前が載っているキャラ。
出席番号は奈良陽子のさらに一つ前ということで、よく三人組を組んでいるらしい。どこかの大企業のお嬢様らしい。通称お凛。
ゲーム版では名前しか登場しないため当然セリフもなく立ち絵もなく、CVは三人組が大活躍するドラマCD版で付いたもの。お凛の声が沢城だと知って即ドラマCDを申し込んだ俺はどこか腐っていますか

ケイ(けい)
経観塚で桂が会うことになる、桂と同じ名前を名乗る謎の青年。
どうも烏月が追っている人物らしいが……。
ところでこのゲームに若い男が出るなんて俺は聞いてないのですが。

 

カップリング

 掲示板とか小説サイトの情報を総合すると、ユメ×ケイ、ウヅ×ケイ、サク×ケイ、ツヅ×ケイ、ノゾ×ケイが基本で、見事に桂総受けです。逆はたまにケイ×ツヅを見かける程度であります。これは桂の構ってちゃん属性が如何なく発揮されているものと思われます。ちなみに桂役の松来さんは総誘い受け声優として声優界にその名を轟かせているそうですので、まあ適材適所ってやつだったのかもしれません。
 その他マイナーなところとしてヨウ×ケイ、リン×ケイ、桂が絡まないパターンだとサク×ウヅ、サク×ユメ、ノゾ×ミカ、リン×ヨウなどが見受けられます。特に桂、陽子、お凛の3人組の仲については本編であまり語られなかったので妄想がしやすいようです。やはり百合は妄想力が勝負なんだなと思い知らされました。

 

システム

セーブ箇所は20箇所あって、それほど困らないかと思います。以下当ゲームの目玉となっているシステムについて幾つか。

吸血システム
 桂は「贄の血」という特殊な血の持ち主であるため、いろ〜んな人から血を吸われることになります。このいろ〜んな人というのはノゾミやミカゲのような敵方だけではなく、味方となる妖に血を与えることにより味方のパワーアップに役立つのです。例えば妖だったユメイさん、例えば鬼だったサクヤさん、例えばケモノっ娘化した葛ちゃん(以上はあくまで例示ですよ例示)とかに血を与えると血を吸ったキャラがパワーアップすることになります。
 この吸血時において、桂の残りの血を示す血液ゲージが表示されます。これがゼロになると桂は死ぬという設定になっていますが、実際血液不足でバッドエンドになるのは1つのエンディングしかないので、当初はドキドキするのですが慣れてくると血液の大盤振る舞いになってしまいます。
 ちなみにこの吸血シーンが百合的にかなりエロイと巷では評判で、幾つか例を挙げると
 ・双子に襲われる際は、必ず浴衣ががはだける(桂は旅館に宿を取っているので夜は浴衣です)
 ・料理中に桂が誤って指を切ってしまい、勿体無いので指チュパ
 ・桂が鼻血を出してしまい、勿体無いのでそのまま舐める
 ・崖から落ちた桂が大量出血し、治療する力を得るために地面にばら撒かれた血をユメイさんが犬のごとく舐める
などなどで、特にラストは「皆口裕子のチュパ音が聴けるのはこのゲームだけ!」などともっと大々的に売りにしても良かったのではないかと思われます。

TIPS
 和風伝奇ノベルなので、当然日本神話や伝説を基にした話や単語が多く出てきます。そうした言葉を解説するTIPSが付いています。言葉が出てきたその場で見ることもでき、アイウエオ順に整理されますが直近に参照された言葉は別に見ることも可能、と使い勝手は良いものに仕上がっています。TIPSはゲーム中だけでなくメニュー画面のオプションからも見ることが可能です。

分岐図
 ノベルゲームの定番ともいえる分岐図も装備済み。ただL季やMBみたいな複雑怪奇な分岐ではありませんので、当然ながら2Dです。通ったことのないルートは表示されませんが、おおよそ分岐点合流点の目安はつくようになっています。

システムメッセージ
 オペレーターを奈良陽子や脇役キャラを含めた人物から選択可能。デフォルトは羽藤桂。また、プレイ中の声のオン・オフを選択できますが、オフにすると「なんでオフにしちゃうの?」みたいなキャラクターの悲しい声を聴けます。これは某掲示板で指摘されるまで全く気付きませんでした。こういう細かい芸は好きですね
 また、タイトルコールも同様に変わるのですが、例えばオペレーターをノゾミにしておいて昼に起動させると「私…太陽は嫌いよ」のようなセリフも聞けます。かっこわらい。

その他、アルバムモードや結末一覧を鑑賞可能。

 

シナリオ

 期間は最長4日間(一部キャラクターは3日間)。とはいっても、1日目は桂が経観塚に着くシーンから実質始まりますが、もう時刻は夕方。半日もありません。だから4日といっても実質は3日半と捉えればいいでしょう。
 逆に言えば3日半しかないので、凝縮度は物凄く濃いです。事件が何も起こらない時間帯などありません。
 ゲーム開始当初は烏月ルートか葛ルートしか行くことができませんが、烏月ルートのグッドエンドを見ればユメイルートの扉が開き、葛ルートのグッドエンドを見ればサクヤルートの扉が開きます。さらにそれぞれのルートにおいて「ある選択肢」を選択していれば、敵方なのに実は攻略キャラクター(このゲームの場合は受略というべきか)だったノゾミルートに行くことができます。そして、多くのルートについては一度バッドエンドを見ないとグッドエンドに行けない仕組みにもなっています。

 シナリオの中身はかなり難しめ。特に前半部分で鬼についての説明をいろいろしてくれる烏月やひたすら薀蓄を垂れる葛は、ちょっとウザく感じました。特に昔話や日本神話に弱い自分としては、TIPSをフル活用しても理解できなかった部分も多々あり。

 エンディングは全部で32あり、それぞれエンディングにタイトルが付いています。グッドエンドが各キャラクターそれぞれ1つずつの5、桂が生きて帰るノーマルエンドが12、バッドエンドが15あり、約5割の確立で桂は死ぬわけです(必ずしも死んだという描写はないが、例えば「双子の鬼が迫ってきて周りに助けてくれる人もいない。そこで意識が途切れる」ようなエンディングは、こりゃ死んだだろという推測が立ちます)。このエンディングも結末一覧から見ることができます。
 また、ゲーム中盤になってくると周りのキャラクターから「危険だからあんた帰ったほうがいい」と忠告され、帰るか帰らないかの選択肢が出ます。ここで「帰る」を選ぶと本当に桂は帰ることになり、後日陽子に慰められる(いや、そういう意味じゃなくて)エンディングになります。これはノーマルエンドに分類されるのですが、真の奈良陽子ファンはこれを陽子グッドエンドだと言って憚りません。
 このようにノーマルエンドといっても、途中で離脱するものからグッドエンドにかなり近いものまで様々です。特に「鬼切りの鬼」エンドはこれがトゥルーエンドじゃないかと疑うほど自分の中ではお気に入りです。

最終的には百合エンドになりますが、ジャンルはあくまで和風伝奇ホラーノベルってことになっているので、その雰囲気はたっぷり味わえると思います。

 

歌とサウンド

 オープニング曲は「霜月はるか/riya」の歌う『廻る世界で』、エンディング曲は「riya/霜月はるか」の歌う『旅路の果て』。なんで2人の名前があるかというとツインボーカルになっているからなのです。クレジットが逆なのは、メインで歌う人が別であるため。エンディング曲はツインボーカルというよりハモリがメインなのですが、オープニング曲はBメロとサビで見事に2人で別々の歌詞を歌い上げています。その歌詞がリンクしているもんだからこれまた憎い仕上がりになっています。

 その歌詞ですが、シナリオ担当自ら手がけているだけあってゲームの雰囲気を程よく出せています。特にゲームでは流れない2番の歌詞はネタバレてんこ盛りなので、ぜひともサウンドトラックを買うことをお勧めします。
 エンディング曲の中で「あなたとふたりでいきたい」というフレーズが何回か出てきます。この「いきたい」を歌詞に直すと決して「イキたい」ではなく「生きたい」になるのですが、最後の1回だけが「逝きたい」になっているのです。よくよく歌を聞いてみると確かに「ゆきたい」と歌っているようにも聞こえます。これを見たときは「作詞者のヤロウなんて細工しやがる」と感激してしまいました。

 このように両曲については、作曲、作詞、編曲ともに自分の中ではトップレベルの出来です。どれくらいかって、今現在Media Playerで再生した回数はこの2曲がダントツでトップというくらいです。近年2曲ともこんな高レベルの作品には、会っていない気もするなあ。

 両曲を含めゲーム中BGMを手がけたのはLittle WingのMANYO氏。ジャンルが和風伝奇ホラーノベルであるので、やや暗めの落ち着いた曲が多くなっています。BGMでの秀逸曲は『泡沫』。修羅場のクライマックスで掛かる曲なのですが、修羅場でここまで悲壮感漂う曲は初めて聞いたような気がします。
 いや、修羅場なんでメロディラインは暴れていて格好いいのですが、例えば久遠の絆の『若神』やToHeartの『テクニカルパワー』のようないかにも「決戦です!」なアレンジになっていない。作曲者がそれを意識したのかどうかは分かりませんが、あくまでアカイイトという作品の作風に合わせたアレンジになっているのです。それだけいい曲だけに、サウンドトラックで聞くと音が少し割れてしまうのは大変残念でした。

 歌つきの2曲にこの『泡沫』を含めた3曲は、某所より携帯着メロとしても落としています。今度は違うジャンルでのMANYO氏の作品も聞いてみたいと思いました。

 

最後に

いろんなマイナーキャラに萌えてきたけど、まさか鬼に萌える日が来ようとは思わなかった。ノゾミかわいいよノゾミ

 

個人的且つ主観的評価
キャラクター:88点
シナリオ:83点
サウンド及び歌:94点
システム:92点
百合度:88点
総合:92点

百合属性がない人は−5点してください

(最終更新 2006,9,10)


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