久遠の絆 再臨詔

00年5月発売   発売元  フォグ

全体的な感想


PS版とDC版両方やりましたが、基本はDC版。変更点とかも書きつつ行きましょう。

 

購入動機

これはもう、レビューサイトでの点数の高さに尽きます。こちらさんでは星の数ほどあるレビューの中で19作品しかない10点満点を出していますし、またこちらさんでは最近になって点数を改定するまで10点満点は「痕」と「久遠の絆」の2作品だけでした。しかも後者のサイトではほとんどがPC18禁作品のレビューであり、コンシューマのレビューはPS版「To Heart」とこの「久遠の絆」だけ。To Heartだって元はPCゲームですから、コンシューマオリジナルの当作品を特別視していることがわかります。

このことから、プレーしない人は全く気にも留めないが、プレーした人はそのほとんどが『秀作』と連呼する作品であると予想できるわけです。少なくとも、この作品に対して真っ向から「クソゲーだ」と唱えているサイトは見たことがありません。これならプレーして損はないだろうと。

 

予備知識

ジャンルは「シネマティックノベル」となっています。つまるところノベル形式ですが、オープニングやエンディングにも凝っていて「シネマティック」に見せかけています。

お話としては輪廻転生モノ。物語は3章構成になっていて、現代編を中心に展開されながら第1章では平安編の話、第2章では元禄編、第3章では幕末編の哀しい愛が語られます。まー要するに愛し合う2人の愛が引き裂かれて「ああ……生まれ変わっても私を愛して……」「おお……たとえお前が別の姿になっていても俺は必ずお前を思い出してみせる……」みたいなことが3回繰り返されるわけです。「痕」の楓シナリオをさらに特化させたというとわかりやすく……はないか。昨今主流になっている「泣きゲー」に分類されます。

あと、後半になればなるほど日本神話関係の単語がよく出てきます(スサノオノミコトとかヤマタノオロチとか)。神話に詳しい人や陛下万歳の右の人たちはよりドツボにはまれるでしょう(私はあまり詳しくないですが)。

 

キャラクター

とにかく人数が多いので、現代編だけ。

御門武(みかど たける)
主人公のデフォ名。1シナリオ解くと、この名前からして半ネタバレであることがよく分かります

高原万葉(たかはら まよう)
転校初日に御門に向かって「鷹久…やっと会えたわ……。あなたは私が必ず殺して見せるから……」とたい焼き食い逃げ並にインパクトのあるセリフを吐く美少女。ただ基本的に御門は気になる存在だけに、後半に進むにつれてだんだんと従順になってきます。調教成功です(あれ?

斎栞(いつき しおり)
御門の同じ年の従姉妹で、御門の居候先。いつも御門の後ろをひょこひょことくっついてきて、そのたびに誰かに泣かされ、「うえ〜ん、たけちゃ〜ん」などと構ってもらっている妹的存在。

常磐沙夜(ときわ さや)
御門のクラスの担任教師で、大学を出て2年目。大人の魅力と、時折見せる子供のあどけなさの両側面を持っている、ということらしいです。

天野聡子(あまの さとこ)
栞が属するオカルト研の部長。実はとんでもない秘密があり、万葉シナリオでは最後の最後でおいしいところをかっさらって行く。
ところで再臨詔をプレイして「パパぁ(はぁと)」属性が付いた人っています? 俺思いっきり付きましたが。

吉川絵里(よしかわ えり)
栞と同じオカルト研の部員で、栞とは親友。メガネっ娘だが、汰一への失恋から途中で解脱してしまう。

有坂汰一(ありさか たいち)
御門の悪友かつ親友。突然万葉に惚れる。

 

このあと各時代で沢山キャラクターが出てきますが、ほとんどが誰かの転生した姿です。ただメインの中でただ1人、沖田総司だけは転生と関係ありません。さすがに幕末大好きのおねーさん方を敵に回すわけにはいかなかったようです(笑)。

それからとある時代で気が強くて寂しがり屋で口が悪くて関西弁でおかっぱのキャラが出てきます。


・・・・・・・・・もう代打逆転満塁サヨナラホームラン、て感じです(つまるところ保科智子+天羽碧なわけで)

 

シナリオ

まずは各時代の導入部分だけ書いていきます。

現代編
高校2年生の始業式の日。主人公『御門武』のクラスのもとに不思議な美少女『高原万葉』が転校してくる。彼女は武に向かい「鷹久…やっと会えたわ……。あなたは私が必ず殺してみせるから……」と謎の文句を吐く。折から悪夢に悩まされていた武は『斎栞』の所属するオカルト研究会の部長『天野聡子』に診断を頼む。不思議な水面に映ったものは………

平安編
『安部鷹久』は落ちこぼれ陰陽師見習い。陰陽師として大成できないと悟る鷹久は毎日剣術に励む。ある日鹿を追って入り込んだ森で、鷹久は絶世の美少女『蛍』に出会う。これが千年に渡る禁忌の愛の始まりであった………

元禄編
剣術に励む浪人『池田慎之介』は本来は絵師になりたいと思っており、親の目を隠れて絵を描いていた。ある日絵が売れたお祝いにと彼は商人に吉原に連れていってもらう。そこで会った不思議な瞳をした女郎『綾』に、慎之介はどこか既視感を覚えるのだった………

幕末編
浪人『葛城信吾』は京の街の何でも屋。彼は新撰組の『沖田総司』に頼まれ、とある神社の護衛を引き受ける。檻とも感じられるその神社には、宮司『大騎』と、まるで魂を失ったかのような巫女『澪』がいるだけ。いったいこの神社に何の秘密があるというのか………


相変わらず下手クソな文ですが、少しでも分かって頂ければ幸い。


んでシナリオを読んだ感想なんですが……、主人公、かなり苦しいです。何が苦しいかって、口論になった時の自分の主張。

少しネタバレしますが、事の始まりは『鷹久』と『蛍』の禁忌の愛なわけです。この禁忌の愛が神の怒りに触れて輪廻転生を繰り返すきっかけになったそうです。すなわち悪いのはこの2人であって、ほかの登場人物はこの2人に巻き込まれた、ということになります。

ところがほかのキャラがこのことをなじると主人公、適当なことを言ってはぐらかしてしまいます。真正面から口論しているフリをして話をすりかえてしまいます。自分としては相手方の言い分の方に頷いている回数の方が多かったような気がします。そんなわけで主人公にはあまりシンクロできませんでした。


あと、肝心の死ぬシーンですが、これが見事に外しています。なんというか、あっさり死にすぎるんです。製作者としてはあれで盛り上げたつもりなんでしょうが、私はあっさりその部分を素通りしてしまいました。争いの中で死ぬというパターンばかりでげんなりだったのかもしれません。



ただ全体として特に人物関係やその背景の把握が難しいので、ぜひとも2回、同じシナリオをプレイすることをお勧めします。私は2回プレイしてようやく万葉シナリオを理解できました。

 

BGM

始めに書いておきますが、私がこのソフトを買った一因に「音楽」がありました。むしろストーリーよりも余程気になっていたはずです。

その証拠として、ゲームをプレイする1年前にサントラを手に入れていました(99年冬コミにて)。普通サントラはゲームをプレイして音楽が気に入った人が買うものですから、これはある意味冒険です。しかしかつて自分も「この曲良い曲だろ? だからゲームも買おうぜ!」などと強引にソフトを薦めた経験がある人間だけに、ゲームをプレイせずに音楽だけを聞いてその音楽にどこまではまれるか、という部分に興味がありました。そこで、自分が実験台になったわけです。そんな前置きを含めて、読んでください。



えー、私は「10点中10点満点はありうるが、100点中100点満点はありえない」という主義のもとゲームの感想を書いてきました。しかし、しかしねえ……この項目だけはマジで100点つけたくなります。それくらい名曲ばかりです。たぶん語り尽くせないので、3曲だけ語ります。

これだけじゃ絶対ワカランと思うのですが、とにかく良い曲ばかりです。ゲームの中の音楽としてではなく、音楽そのものがゲームから独立したとて違和感ない音楽になっていると思います。その意味でLeafの作曲家さんたちとは全く違いますし、同系統の折戸伸治氏よりも上をいっていると思います。折戸氏に見られるある種の「偏り」も久遠には見られませんし、本当に久遠を作曲した風水嵯峨さんはすごいなあと。

 

システム

おそらくPS版「久遠の絆」で欠点らしい欠点を探すとすれば、ここしかないと思います。とにかくシステム的に不便なところが多すぎます。大きく分けると、「遅い」「少ない」に分けられます。

「遅い」のは、まず画面表示。画面切り替え、キャラクター登場時などの表示に時間が掛かりすぎ。かなりイライラします。1シナリオ早ければ15時間ほどなのですが、この画面切り替えが早ければ10時間切ってるかもしれません。
次に、セーブロード時のメモリーカードアクセス。98年ですからちょうどアクセスが早くなるかならないかという時期ですが、さすがにちょっと遅いと感じました。
もう1つ挙げるなら、メッセージスキップ時のスキップ速度。今までプレーしたゲームの中では1番遅いと感じました。

「少ない」のはメモリーカードへのセーブ。1データ1ブロック使用して最大3ブロックというのはこの手のゲームにしては少なすぎでしょう。幸いシステムデータは別に1ブロック使用して作られているので、途中やり直しで複数のエンディングを見られるようになっていますが…。特に攻略本がないと不安になってセーブしたくなるものです。というわけで俺はメモリーカードを2枚使用していました。これでも6箇所だから少ないのですが。
もう1つ少ないのは、メッセージ読み返し。たった5ページ分しか読み返せないというのは何考えてんだって感じです。

あと通常のノベル状態のときにやや背景の明度を落としすぎていました。特に暗い背景が多いので、これ同様余計真っ黒になってしまったりも。

その他の部分については特に不満なし。メッセージスキップは既読のもののみだし、エンディング後のCGモード、BGMモードもついています。


………というのがPS版に対する感想でした。これがDC版になるとどう変わるかというと、全て改善されています。全くもって恐ろしい。

画面表示も幾分早くなったように感じる。ビジュアルメモリへのアクセスも早くなった。スキップメッセージのスピードも格段に速い。
セーブ箇所は20箇所に増大。メッセージ読み返しもなんと100ページまでOKという大サービス。明度を落とすという欠点も改善されています。

さらにDC版ではテキスト表示の速度、BGM音量、効果音音量も変更可能。CGモードではエンディングロールも鑑賞可能になっています。


というわけで、DC版は欠点がほとんどなくなってしまいました。敢えて欠点を探すとするなら、ミニゲーム中五方星を描くときにPS版では左回り右回りどちらでもよかったのが、DC版では右回りオンリーになってしまったことか。私はPS版のときから右回りで描いていたので特に問題ありませんでしたが。

 

最後に

誰か修学旅行で男女同室という学校、この秋津高校以外で知っていたら教えてください。年齢詐称してでも入学します。

 

個人的且つ主観的評価
キャラクター:86点
ストーリー:90点
BGM:98点
システム:93点
総合:92点

(最終更新2003,1,4)


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