日本の選挙制度と国会について考える


ようやく持論が固まってきたので、選挙制度改正案などを出してみます(^^;。

 

新制度は機能するか

参議院の選挙制度が改正されて幾ばくか経つ。改正のモットーは「金のかからない選挙」であった。しかし、非拘束名簿式に直したとして、果たして「金のかからない選挙」が実現できるのか?非拘束名簿式に直すということは、かつての全国区を復活するということに他ならない。かつて全国区はその金のかかりようと遊説の忙しさから「残酷区」「銭酷区」と呼ばれつづけて来た。

☆☆非拘束名簿式のおさらい☆☆
参議院選挙において有権者は都道府県選挙区に1票、比例代表に1票を投じることになっている。選挙区ではその選挙区に立候補している人名を書き、比例代表では政党名を書く。
比例代表では割り当てられた議席ごとに名簿上位者から当選が決まっていく。当然、名簿上位を巡ってカネが動く。これを是正しようというのが非拘束名簿式である。
新方式では、有権者は比例代表の欄に政党名かあるいは比例代表名簿に載っている人名を書く事ができる。人名を書いても政党の票数には加算される。比例順に議席数が割り当てられたときに、その名簿の中で多く人名を書かれたものから当選が決まっていく方式である。

結局のところ、比例代表制度は金がかかるという結論に達する。それはなぜか。旧制度に戻すと名簿内順位を巡って金がかかる。改正した制度にしても選挙費用が莫大なものになる。マスコミでは既に「五当四落」という言葉も飛び交っている(五億金を使うと当選するが、四億では落ちるという意味)。

この「比例代表は金がかかる」という法則は参議院のみならず衆議院でも同じことであろう。いくら11のブロックに分けたとはいえ、ブロック内の順位を巡って先の衆議院選挙でもごたごたが起こった。だからもし本当に「金のかからない選挙」を目指すならば、行きつくところは現行の比例代表制廃止ということになる。

 

衆議院ではどうするのか

かといって衆議院で比例代表制を廃止したりすると、全て小選挙区になってしまう。小政党にとっては死活問題である。そこで小政党にもある程度議席が配分されるように、私は「小選挙区比例代表併用制」の採用を提案したい。

☆☆小選挙区比例代表併用制☆☆
現行のドイツで使われている選挙制度。日本でも93年の政治改革当時、案の1つに上ったことがあった。
この制度は、基本は比例代表制度である。全国1区の比例代表では、有権者は政党名を記入する。比例の議席配分によって、各政党の議席数はほぼ決する。
では、当選するのは誰なのか?その当選する人物を決めるのが小選挙区制度である。小選挙区で当選した人物から優先的に議席を与えていく。
その上で小選挙区の当選者数が比例代表の当選者数に満たなかった場合に、名簿から当選者を補充させる。
もし小選挙区の当選者数が比例の議席数を上回った場合は、小選挙区の当選者全員を当選とする。これを超過議席という。
したがって一応の定数はあるものの、実際の当選者数及び過半数は全議席が確定しないと分からない。

この方式でいけば基本が比例代表であるため、国民の意思がほぼ反映される。さらに当選者は小選挙区で決定されるから名簿拘束もほとんどない。現行の「小選挙区比例代表並立制」では小選挙区と比例代表を独立させてしまっており、ここに名簿を作らなければならないという欠陥があった。両者を併用させたこの制度ならば、比例代表の良さを残しつつ金のかからない選挙ができるのでは、と思っている。

 

参議院ではどうするのか

参議院で比例代表を廃止した場合、残りは大選挙区のみになる。私としては、これをいじる必要はないと思う。むしろ、より発展させたい。すなわち完全大選挙区化である。議席全てを大選挙区で選ぶ。
その際に、各都道府県の議席数を全て5議席とする。5×47=235。現在の252とそんなに変わらない。
私が「1票の格差」を無視してまで都道府県同一議席数にこだわるのは、日本連邦制論に乗っ取っての事である。イメージには、アメリカの上院がある。

☆☆アメリカ上院の選挙制度☆☆
上院は各州2名づずつで構成される。任期は6年。2年ごとに三分の一が改選される。
人口に関係無く各州2名なのは、もともとアメリカは連邦制度を採っているからである。上院議員は各州の代表という意味合いが濃い。
これに比べ下院は人口に比例配分された小選挙区制である。下院議員は地域の代表の意味合いが濃い。
ちなみにアメリカ下院では1票の格差が極限まで追求され、アパートの1階と2階で選挙区が違うということもある。そのため選挙区は常に小規模ながら変化し、1票の格差は1.1倍まで狭められるという。

これから地方自治が進み、都道府県クラスの権限が強化されてくると思われる。もともと5倍すら許容の範囲といっている参議院の1票の格差だが、都道府県の代表という意味合いにしてしまえばそんなものは関係ない(^^;。民主党の中に「日本道州制論」もあるようだが、道州制にしていくにあたっては選挙制度改革もやらなければならない。

 

参議院無用論を変えてみよう

衆議院が比例代表制も取り入れる事になったことにより、ますます声高に叫ばれる「参議院無用論」。もともと衆議院に優越がある上に選挙制度まで似通ってしまったといえば、叫ばれても仕方の無いところである。

しかし、前述の私の日本連邦制論に基づく参議院上院化に乗っ取れば、なんとしても参議院を衆議院に優越させなければならない。少なくとも、同等の地位を与えなければならない。

☆☆憲法に基づく衆議院の優越☆☆
一般法律案において衆参で異なった議決をした場合、衆議院で出席議員の2/3以上の多数で可決すれば法律となる。
予算案は衆議院に先議権がある。
予算案において衆参で異なった議決をし、両院協議会を開いても解決しない場合は、衆議院の議決をそのまま通す。
予算案が参議院に送られた後30日以内に参議院が議決しない時は、衆議院の議決を国会の議決とする。
条約の承認についても、予算と同様の規定になる。
内閣総理大臣の指名に於いて衆参で異なった議決をし、両院協議会を開いても解決しない場合は、衆議院の議決をそのまま通す。
内閣総理大臣の指名において衆議院の議決の後10日経っても参議院が議決しない場合は、衆議院の議決を国会の議決とする。
内閣不信任案を決議できるのは、衆議院だけである。

反対に参議院が衆議院に優越しているのは、敢えて言うなら解散がなく任期が長いということくらいしかない。ただ解散がないというのは内閣不信任案を決議できないということに直結するから、厳密には優越とは言えない。さらに言えば「代議士」を名乗って良いのは衆議院議員だけである。

これだけ衆議院が優越している理由は、かつて大日本帝国憲法下では参議院が貴族院と呼ばれ、国民の投票によって選出されていたわけではないからである。しかし今では両院とも国民の投票で選出される。なのにここまでランクに違いがあるのはおかしい。

そこで、現在の衆議院の優越のうちいくつか、適当に予算案及び条約の承認に関しては「衆議院」と「参議院」の文字を入れ替えてみてはどうだろう。これだけでかなり衆議院の優越はなくなってくる。

もちろんここまで来ると公職選挙法ではなく憲法問題になってくるが、私は「9条さえいじらなければ」という条件つきの改憲派である。国会関連意外でも、例えば司法権では抽象的争訟性を明示して、違憲立法審査権を強化すべきでは、と思っている(現行では具体的に事件が起こらないと、その法律について違憲審査ができないとされている)。だから憲法改正に関して特に拒否感があるわけではない。

 

日本の国会や選挙制度がころころ変わったり荒れたりするものだから、私のような素人でもこのように一言書きたくなる。自民党も、自党のためだけに国会及び選挙制度改革をするのではなく、本当に日本の将来を考えて政治を動かしてほしいものだが。


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