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清酒の種類

  ■純米酒

  原材料名の表示が「米・米麹」であるものに限られます。醸造用アルコールや

糖類の使用が認められませんから、米の味が生かされます。従って、個性の強い

「濃い」酒になりますが、反面米の欠点もあらわれやすく、「雑味」の多い酒に

なるおそれがあり、現代向きのあっさりした酒質とするためには高度の技術が要

求されます。

 

 ■本醸造酒

 

 醸造用糖類の使用は認められませんから辛口酒かと思うとそれに関係なく、も

ろみの造り方で甘口でも辛口でもどちらでも可能です。アルコール使用量は製法

品質表示基準に定められています。さっぱりとした呑ごしの、旨口の酒というこ

とが出来ます。

 

■大吟醸酒

 

 

 

 ■吟醸酒

 

 酒質は、吟醸香といって果物を思わせる独特の芳香を持ち、味は淡白ななかに

も丸み・なめらかさを備えた「淡麗型」の極致、まさに芸術品と呼ぶのにふさわ

しい清酒の最高峰です。純米もありますが、香りや味が引き立つので若干のアル

コール添加をするのが普通です。上級酒として価格も相当なものとなりますから、

ガブガブ飲むものではなく、冷やのままか冷やしてじっくり楽しみながら賞味す

べき酒と思われます。

 

原酒

一般にアルコール分18〜20%ぐらいのものが多いようですが、個々にはびんに度

数の表示があります。お爛用には度数が高くて不向でしょう。オンザロック向き

と思われます。

 

■ 生酒

 

 できあがった清酒を出荷段階を含めて一切加熱処理しないものを生酒といいま

す。普通の清酒は、びん詰めの際同時に火入れをしますからその後の火落ちの心

配はないのですが、生酒は火落ちの危険があり、流通過程では低温で管理し、早

めに消費する必要があります。清酒が一人前の風味に熟成するために火入れも一

役買っているのですが、火入工程のない生酒では香味も一風変ったものとなり、

それがまた受けているのかも知れません。酵素が活性なので生ひね香や甘だれにな

り酒質が劣化し易いので管理が重要です。

 

■ 貴醸酒

 この酒は、造り方の発想もまるっきりちがえば、製品の酒質も清酒とは思えな

いタイプのものです。仕込みのとき仕込水の約半分を清酒で置き換えるのが特徴

です。最初からアルコール分の高い状態で発酵が進行しますから、大変甘口の清

酒になりますが、酸味も若干多くなります。出来上がった清酒は、出荷まで2〜

3年の熟成期間を置きます。従って、老香という熟成香があり、濃醇で極く甘口

の酒となります。あまり清酒の飲めない方やパーティーなどの食前酒として最適

です。

 

■にごり酒

 

戦前あった濁酒は、現在、一般には製造販売が認められません。そこで、もろ

みを荒濾しした「活性清酒」というにごり酒が戦後市販されています。また、最

近アルコール分6%程度のライトタイプのにごり酒が商品化されました。ビール

程度に炭酸ガスを含ませてあり、酸味もきいていて、すっきりした爽快感で度数

の低さを感じさせません。火入れしてあるので日持ちします。なお、その酸味は

中国系統の餅麹に使われているカビを利用したもので、麹の種類による酒質多

様化の珍しい応用例です。

 

日本酒の利き酒                                                         

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■容器

 

底にあい色の蛇の目模様を入れた白磁製の、容量約200mLの利きじょこを使い

ます。約8分目の清酒を入れて利き酒をします。

 

 

■色

 まず、視覚により色の質と濃さをみます。特殊清酒を除いて、淡黄色でいくら

か緑色がかったものを「青ざえ」といって尊び、褐色がかって色の濃いものを

「番茶色」といって評価が下がります。その際、濁りの有無も同時に見ます。

 

 

■香り      

 次に、鼻に近づけて香りを調べます。良い香りとして吟醸香など、悪い臭いと

して酸臭、つわり香などがありますが、これらは実地に勉強して覚えることが大

切です。なかには木香のように、樽酒では良い香りですが、一般酒についている

場合は異常とされるものもあります。

 

■味

 最後に口に含んで味をみます。含む量は、人によって差がありますが、3〜6

mL程度です。常に一定量を口にすることと、吐きだしたときに口中に残る酒の量

をできるだけ少なくする訓練を早く仕上げるのが、上達への近道です。

 口に含んだら、酒が舌の全面にまんべんなくゆき渡るようにして味をみ、同時

にくちびるを細目にあけて空気を吸い込みながら口から鼻へ抜けるときの香り

(ふくみ香)を調べます。また、吐きだしたあと味も大切な判定項目になります。

味に関する3つの因子

 専門家は、清酒の味を次の三つの因子に分けて考えています。初心の方にはむ

つかしいかも知れませんが、皆さんもこのように酒をみるとその酒のタイプが理

解しやすいのではないでしょうか。

 

甘辛 やはり、「甘口」、「辛口」は、清酒の基本的な味でしょう。最近は、辛口

酒と銘うったものが出ていますが、ワインほど甘辛の差がないのが清酒です。

 

濃淡 アリレコール分の高低ではなく、味全体としての「濃い」、「うすい」を意

味します。うすい酒は度がすぎると同じアルコール分でも「水っぽく」感じます

が、そこに至る前のどちらかというと淡白な酒が好まれています。

 

きれいさ 清酒が過熱すると雑味がふえて来ますが、その雑味の少ない酒を

「きれいな」酒といいます。あっさりしたなかに何ともいわれぬうまみがあり味

のまるさを備えているといった感じで、上級酒の一つの条件です。

 以上のほか、味に関しては調和も大切な項目です。これら全体を通じて利き酒

の名人上手になるには、ある程度の基礎訓練を受けたあとは、色々な酒にぶつ

かってその特徴を覚え、そのなかに共通する良さとは何かを会得する実戦を踏む

ことが必要です。

 

保存・管理のポイント                                                    

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 近頃は、清酒の容器も色々なものが出て来て酒販店の棚はにぎやかです。紙容

器でも壷でも熱酒が詰められていますから、火落ちの心配はありません。しかし、

蒸留酒とちがって醸造酒では、びん詰め後も長時間たつと味や香りに微妙な変化

が生じます。

 この変化は部分的には熟成中の変化と同じです。世界の酒のなかには熟成に

よって生まれた香味を特長にしているものもありますが、清酒では、出荷の時点

で貯蔵中の酒のうち丁度飲み頃になったものを選び出してびん詰していますから、

出荷後流通過程での変化は出来るだけ少ないように管理する必要があります。そ

のポイントは光と温度になります。

■光

 

 清酒を無色のガラスびんに移しかえて直射日光にあてると、2〜3時間で肉限

でもはっきりわかる程度の色の増加があります。時には日光臭と呼ばれる異臭も

発生します。直射日光の場合は強烈ですが、室内の散乱光や人工照明でも役々に

変化を生じます。

 そこで、暗所貯蔵が必要になるのですが、昔は清酒のびんといえば青びんだけ

だったのが、最近は茶褐色や緑色のびんに変って来ているのにお気づきのことと

思います。これらのびんは、太陽光線のうち酒質に影響を与える部分を効率的に

遮光しますから、昔ほど気を使う必要はなくなりました。

 

■温度

  光の全くあたらない場所に置いておいても、1年以上もたつと清酒の色は増加

してきます。光と関係のない着色反応が進行しているのです。めだって色が濃く

なったなと思う頃になると、老香(ひねか)という独特のにおいがつき、味も

さっぱりした味から残味のクドイ雑味と呼ばれる味に変ってきます。

 この変化の速度は、活酒の製造方法によっても大幅にちがいますが、温度の影

響も大きく、保管温度が高ければ進行が早くなります。酒造場の貯蔵庫の室温は、

夏場でも普通20〜25℃です。この程度の温度であれば、普通の酒でも1年間はほ

とんど変化がありません。従って、普通酒の場合は酒販店でも特に冷蔵庫など設

ける必要はないでしょう。ただ、倉庫の屋根裏などで、夏場40℃近くもなるよう

なところは注意する必要があります。

 製造方法や貯蔵温度で大きなひらきがあるため、賞味期間を決めることはでき

ませんが、買い求めた消費者の方々にはなるべく早く飲んでもらうようにすす

めて下さい。

 

飲み方                                                                       

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  お爛がよいのか冷やがよいのか、よく話題になります。まことしやかに、お爛

をすれば二日酔のもとになるフーゼル油が飛び去るから良いなどと説く人もあり

ますが、あてになりません。清酒のフーゼル油含量は他の酒に比べれば少ないで

すし、お爛で飛び去る位なら火入れのときになくなるはずです。

 延喜式にすでにお爛に関する記載がありますから歴史は古いわけですが、お爛

についてもっともらしく理由をつけたのは貝原益軒のように思われます。養生訓

に「およそ酒は、夏冬ともに、冷飲・熱飲に宜しからず。温酒をのむべし。およ

そ酒を飲むは、その温気をかりて、陽気を助け、食滞 をめぐらさんがため也。冷

飲すればこの益なし」とあります。

 しかし、世界的には冷やで酒を飲む民族がほとんどなのですから、医学的な理

由で頭を痛めるよりむしろ日本人の文化として考えたらどんなものでしょう。客

人をもてなすのに、主人はお爛という一労作を加えた酒をお膳にのせ、客人はそ

の主人の心やりに暖かさを感じる、それが日本人のつき合い方なのでしょう。と

すれば、程よく冷した酒も良いことになります。

 あつ爛、ぬる爛も、吟醸酒など特殊な酒を除けば、酒の方からみて何度が適温

ということはありません。ビールなどとちがうところで、むしろ飲む人の好みで

決めていただくことになります。

 ただ、常識とすると、45℃以下がぬる爛、55℃以上があつ爛というところで

しょう。この温度はトックリの中の酒の温度で、チョコにつぐと、チョコによっ

てちがいますが、5℃前後温度が下ると思います。

 ワンカップ型の清酒容器は、冷やで飲むことを普及させました。室温のままで

飲むのを「冷や」といいますが、最近は更に積極的に温度を下げて飲むこともは

やっています。

 ぶっかき氷を入れたオンザロックも夏場の飲み方として普及するでしょう。冷

蔵庫で温度を下げた「冷やし酒」は、ややもすると飲みすぎる心配がありますが、

氷が溶けるに従ってアルコール分もうすまりますから、飲みすぎ防止にも役立ち

ます。うすくなりすぎたら、レモンなど甘味の少ない柑橘類の果汁を1〜2滴た

らすと味がシャンとします。

 

原料・製造法

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 世界の名酒のなかで、清酒造りの特色は何かといえば、次の諸点に要約されま

しょう。この製造面での特色が、でき上がったお酒の特徴を醸しだしているのです。

 

■原料より技術によって

        

甘辛自在の酒が

 良い原料から良い製品ができるのは、どの酒類にも共通したことですが、米を

原料とする清酒では、原料の品種別のちがいが製品に直結しないという面があり

ます。それは、米の品種別の差がぶどうなどに比べて小さいためです。

 ワインでは、できあがった酒の商品特性は大きく原料品種に左右されます。極

端なことをいえば、緑色系のぶどうから赤ワインを造るのは不可能ですし、同じ

白ワインでも原料ぶどうの品種によって香味に特徴がでてきます。ところが清酒

では、国産のうるち品種であれば飯米としての食味とは関係なしにどのような品

種でも甘辛自在の酒をつくることが可能です。

 一方、酒造好適米または醸造用玄米と呼ばれる一群の品種があって、酒を造り

やすい性質を備え、価値を認められています。しかし、清酒造りではその後の精

米とか麹造りの技術のウエートが高いので、原料品種の差がうすめられ、ワイン

のような酒質の多様化を原料面からはかりにくいという面を持っています。

 もち米を主体に米を原料とした醸造酒が中国から東南アジアにかけて造られて

いますが、それらと比べて高度に精米した米を使うのが清酒造りの特徴で、これ

が淡白な酒質を醸しだす理由の1つにあげられます。

 

■香味の特徹は麹菌から

 酒造りは微生物の働きを利用していますから、どのような種類の微生物が関与

しているかで香味がちがってきます。

 タイ国の酒造りでは、ルク・パンと呼ばれる餅麹系の糖化剤が使われますが、

そこにはカビにしても酵母にしても幾種類のものが見いだされます。関与する微

生物の種類が多ければできあがった酒の香味もそれだけ複雑になるわけで、それ

が大陸の酒の特徴になります。

 餅麹に対して日本で使っているような  麹を散麹と呼びます。特に清酒用の麹

では、麹菌というカビの一種が単独で生育してくるような工夫がいろいろされて

いて、それが清酒の香味の特徴となります。

 

■製造法は日本人の知恵

 清酒では、もろみ造りの工程でも目的とする酒質に合致するような性質の良い

酵母が単独に増殖してくるよう工夫されています。もろみを仕込む前にまず、酒

母(もと)を造ります。蒸米と米麹と水で造る小型のもろみ、あるいは種もろみと

もいうべきものです。

 伝統的な生もと系と呼ばれる酒母の場合、最初のうちは乳酸菌や性質の良くない酵

母などもろもろの微生物が生育して来るのですが、それらはお互いに影響し合っ

て、酒母造りの終り頃には清酒造りに都合の良い酵母だけが生き残るという仕組

みになっています。

 もろみを仕込むときにも、この酒母を土台にして、せっかく育てた良い酵母の

活性を弱めないように、倍々となるように蒸米と麹を3回に分けて仕込むように

工夫されています。これを「三段仕込み」と呼びますが、清酒酵母がもろみで

純粋に生育して行くのに役立っています。

 生もと系酒母や三段仕込みは、いずれにしても15〜16世紀に完成された伝統技術

で、日本人の知恵の結晶といえるものです。

 更に最近では、清酒酵母の中で特に優秀な性質を備えたものが市販されていて、

全国の酒造場ではこれを購入して酒母造りの際に利用しています。

 最近の酒質は画一イヒしたとよくいわれますが、戦前の酒造りでは先に述べた優

秀酵母の利用が一般化していなかったために、製品の良し悪しの差が大きかった

と思われます。それが、どこの蔵でも酵母を上手に利用する技術を備えるように

なり、画一化したといわれるようになったのでしょう。

 現在酒質の多様化のためには、色々の目標に合った性質を備えた酵母が開発さ

れつつあります。

 

■特徴ある並行複発酵

  寒造りについて歴史の項でふれましたが、下面発酵型のビールも低温発酵させ

ます。ところが、ビールでは糖化工程が完了してから発酵工程に移るのに対し、

清酒のもろみでは糖化と発酵が同じタンクの中で同時に進行します。これを並行

復発酵と呼びます。

 醸造酒として世界で一番高いアルコール含量を達成する清酒の秘密は、この発

酵形式にあると考えられます。

 もろみの発酵について仕込水の水質の影響があげられますが、現在では鉄分な

ど有害成分の少ないことを主体に良否が判断されています。灘の宮水はあまりに

も有名ですが、その特徴の一つも鉄分が極端に少ない点です。

 古くからの銘醸地は、それなりに発酵に都合のよい水をもって発展してきまし

たが、時代とともにそのウエートは低くなっています。しかし、銘醸地に残る技

術の伝統を見逃せません。

 

■加熱殺菌も伝統技術

  清酒は、栓を開けて長く放置すると白濁して酸味がふえ、香りが悪くなること

があります。酒の中で乳酸菌の仲間が繁殖しはじめたためで「火落ち」と呼ばれ

ます。

 乳酸菌の一種ですから、牛乳と同様熱殺菌が可能です。現在、出荷の時に清酒

を60〜65℃に加熱し、そのままびんに詰めて密栓していますが、こうすればかん

詰食品と同様に殺菌することができます。この加熱殺菌のことを「火入れ」といい                    

ますが、これも16世紀以来の伝統技術です。一時期、火落ち防止のためサリチル

酸が使われていましたが、火入れによって完全殺菌が可能であることが証明され、

昭和45年以来防腐剤は一切使われていません。

 製造場のタンクのなかの酒も火落ち防止のため、できあがってから一定期間経  

過すると火入れされて貯蔵工程に移ります。火入れ、貯蔵によって清酒の香味に

円熟味が増しますから、この微生物が全く関与しない工程も、品質面での清酒の

特徴を造りだすのに頁献しているわけです。

 

工程                                                                                     

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■精米・洗米・蒸米

 入荷した玄米は精米されますが、酒造用には堅型精米機という高度精米用の特

殊な機械が使われます。精米の程度は、用途を考えて決めます。白米は洗米して

表面に付着したぬかを除去し、浸漬槽のなかでちょうどよい吸水率になるまで浸

漬します。

 適当な時間、水切りをしたのち、蒸し工程に移ります。昔は甑(こしき)と

いってセイロのお化けのような大型のものを大釜の上に乗せ、その中へ浸漬した

米を入れて蒸したものですが、最近は連続的に蒸米を造る機械も使われています。

できあがった蒸米として大事なのは、「外硬内軟」といって、1粒の米の内部

はフックラと蒸し上りながら表面はパラッとして粘らないことです。水分の多

すぎる蒸米では、良い麹ができません。

 

■麹造り

 一仕込み分の蒸米のうち4分の3はそのまま仕込まれますが、4分の1は麹に

つくられます。冬でも27〜30℃に保たれた麹室のなかで、約二昼夜かけてつく

られた麹は、純白で特有の芳香があり、あっさりした甘味と焼栗のような旨味を

持ち、手ざわりがフックラしたものが良いとされています。

最近、自動製麹機も色々考案されていますが、各酒造場では自社のお酒の品質

目標からみて、前記した性質の麹をつくるのに十分自信の持てる機種を選んで導

入しています。

 

■仕込み

 麹ができ上がると、酒母仕込み、もろみ仕込みとなりますが、これについては

前にのべました。もろみは低温発酵で、20〜25日間ゆっくりと時間をかけてでき

あがります。もろみの末期には、醸造用アルコールや醸造用糖類が添加されるこ

とがあります。

 

■ろ過・調合

 発酵の終った熟成もろみは、圧搾機にかけて新酒と酒粕に分離されます。この

操作を上槽と呼び、この時点で清酒が製成されたことになります。新酒は、製品

のタイプ別に調合が行われます。もろみは発酵タンク1本ごとに微妙な差がでて、

香味や成分量に若干のちがいを生じます。しかし、出荷する酒の方は、タイプ別に

1年中「定したものでなければなりません。そこで、この調合は非常に大切な作

業になります。

 

 ■火入れ・貯蔵・びん詰

 調合が終わると、火入れ、貯蔵となり出荷を待ちます。出荷のときは、改めて

何本かの貯蔵タンク間で調合をして均質化をはかり、割水をしてからびん詰とな

ります。びん詰は熱酒びん詰といって、65℃前後に火入れした酒をそのままびん

詰密栓をして出荷します。

 

表示と分類

清酒には、品質に格差をつけるために特級、1級、2級の3区分からなる級別制

があり鋭率も異なっていましたが、平成元年3月にまず特級が廃止され、平成4

年3月に級別制は完全になくなってしまいました。

 しかし、平成元年4月から法律に基づいて大蔵大臣により製法品質表示基準が

定められ実施されることになりました。

 この基準の下では、吟醸酒、純米酒、本醸造酒を特定名称の清酒といい、原料、

製造方法等の違いによって8種類に分類され定義されます(表参照)。それぞれ

所定の要件に該当するものにその名称を表示することができます。

 精米歩合とは、白米の玄米に対する重量の割合をいいます。したがって、精米

歩合60%というときには、玄米の表層部を40%削り取った白米をいいます。

 

 

l特定名称酒の表示                                                                

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特 定 名 称 使 用 原 料 精 米 歩 分 香 味 等の要件

 

吟  醸  酒      米、米こうじ、       60%以下           吟醸造り固有の香味       醸造アルコール 色沢が特に良好

 

大  吟  醸      米、米こうじ、        50%以下          吟醸造り固有の香味、     醸造アルコール 色沢が特に良好

 

純  米  酒       米、米こうじ         70%以下         香味、色沢が特に良好

 

純米吟醸酒           米、米こうじ         60%以下          吟醸造り

 

純米大吟醸酒       米、米こうじ          50%以下          固有の香味、色沢が特に良好

 

特別純米酒           米、米こうじ          60%以下        又は 香味、色沢が特に良好     製造方法の表示義務

 

本 醸 造 酒       米、米こうじ、       70%以下  香味、色沢が良好     醸造アルコール

 

特別本醸造酒       米、米こうじ、       60%以下        醸造アルコール   製造方法の表示義務 香味、色沢が特に良好

 

脂肪、灰分、ビタミンなどが多く含まれ、精米によって精米歩合70%程度までは

徐々に削り取られそれ以後はあまり大きな変化はありません。これらの成分は、

清酒の醸造に必要な成分ですが、必要以上では、麹菌や酵母の増殖あるいは発酵

が進みすぎること、雑味成分が多く品質が悪くなること、貯蔵中の劣化が促進さ

れることが知られています。

 ちなみに、家庭で食べているお米は、精米歩合92%程度の白米(玄米の表層部

を8%程度削り取る)ですが、清酒の原料とする米は、精米歩合75%以下の白米

が用いられています。殊に、特定名称の清酒に使用する白米は、3等以上に格付

けされた玄米に限られます。

 醸造アルコールとは、でんぷん質物や含糖質物を原料として発酵させ蒸留した

アルコールをいいます。

 吟醸酒や本醸造酒に使用できる醸造アルコールの量は、白米の重量の10%以下

に制限されています。

 吟醸造りとは、特別に吟味して醸造することをいい、伝統的には、よりよく精

米した白米を低温でゆっくり発酵させ、かすの割合を高くして、特有な芳香(吟

香)を有するように醸造することをいいます。

 吟醸酒は、吟醸造り専用の優良酵母、原料米の処理、発酵の管理からびん詰・

出荷に至るまでの高度に完成された吟醸造り技術の開発普及により商品化が可能

となったものです。

 

■必要記載事項の表示

 活酒には、次の事項を、原則として8ポイントの活字以上の大きさの日本文字

で表示することになっています。

 原材料名 使用した原材料を使用量の多い順に記載します。原材料

     には副原料として醸造用アルコールのほか、醸造用糖類、

    有機酸類、アミノ酸が認められていますが、副原料はおも

    に増醸酒に使用され、増醸酒は単独に出荷されることはな

    く、普通酒に調合(主として成分の調整)して出宿されま

    すが、その場合は使用した副原料名をそれぞれに記載する

    必要があります。なお使用する副原料には量的な制限があ

    り、しかも、搾る前のもろみに加えなければならないなど

    厳しい条件があります。

製造時期

 次のいずれかの方法で記載    します。

     製造年月

          平成2年10月、

             2.10、

            1990.10、

             90.10、

     なお、容器の容量が300mL以下である場合には、「年月」

    又は「製造年月」の文字を省略してもかまわないとされています。

 

 

保存又は飲用上の注意事項 生酒のように加熱処理(火入)をしな

     いで出荷する活酒に、保存あるいは飲用上の注意事項又は

     これに代えて賞味期限を記載します。 

      生酒以外の一般的な清酒は、製成後貯蔵する前と、びん詰

     めをして製品化する前との2回火入れ(65度前後に加熱す

     る)により殺菌処理をしています。

 原産国名 輸入品の場合に表示します。以上のほか、次の事項も必ず表示する

よう清酒製造業者に表示義務が課されています。   .

○製造者の氏名又は名称

○製造場の所在地(記号で表示されることもあります)

○容器の容量

○清酒(「日本酒」と表示してもよい)

○アルコール分

 

歴史

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発祥は7世紀? 

 清酒が澄んだ酒になる以前、濁ったままの酒が存在していたと思われますが、

現在の清酒の味の特徴を考えるためにその時代にまでさかのぼって考えてみたい

と思います。

 日本で農耕文化が成立したのがいつごろであるかは現在でも色々研究されてい

ますが、稲作文化の渡来は紀元前2〜3世紀とされています。日本酒を「米の

酒」としてとらえるならば、その歴史は稲作とともにはじまった弥生時代以後を

考えればよいでしょう。

 日本人とお酒についての一番古い記録は、紀元前3世紀に書かれた中国の歴史

書で、そこには「人性酒ヲ嗜ム」とか、人が死んだとき他人が集って歌舞飲酒す

るといった風習が書かれていますから、当時すでにお酒があったといえます。                                 

 日本でお酒の製造方法を詳細に記録した最古の書物としては、10世紀に作成さ

れた「延喜式」が現存しています。この書物は、7世紀に成立した律令国家の政

治をどのようにとり行うかについて細かく規定したものです、そのなかに「造酒

司」という項があり、色々な酒の造り方が書いてありますが、そのほとんどが米

の酒ですから、日本での米の酒の成立は、少なくとも7世紀までさかのぼることが

可能です。*********

 しかし、民間では、今のように酒販店ではいつでも誰にでも買える時代ではあ

りませんでした。季節季節の農耕祭礼、豊作予祝や収穫感謝のお祭りのときだけ

酒を造り、神にそなえたのちそのお流れを直会の形で頂戴し、それ以外の日々は

飲もうにもお酒のなかった時代といわれています。

 政府が積極的に酒造業を支援しはじめたのは室町時代になってからで、14世紀

のことです。その陰には、禁裏財政の一助として酒屋に課税するという目的が

あったわけで、思えば酒税の歴史も長いものです。

 

■技術革新は、15〜16世紀

     僧侶の手によって

 つづく15〜16世紬は、日本酒造りにとって技術革新の時代でした。次項で述

べる三段仕込みや火入れといった清酒造りの特徴的な技術は、この時代に奈良の

寺院で僧侶によって完成されたものです。ワイン造りでも僧院の修道僧が活躍しま

したが、日本でも寺院のなかにあった鎮守さまにそなえるために酒が必要だった

のでしょう。特に当時のインテリ階級であった坊さん達は、うまい酒を造って信

徒の信頼を得るためにも技術をみがいたものと思われます。これらの技術を総合

して「大和諸白」と呼ばれる清酒が生まれるわけです。16世紀の終りの頃といわ

れています。

 

■木製の大桶出現で                                                                   

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     手工業的基盤が確立

 現在営業している酒造場の創業を調べてみると、古いところで文録、慶長年間、

それ以前というのはあまり聞きません。16世紀の末で、太閤秀吉が天下を統一し

た直後、各地の大名が戦国時代を終えて、術づくりに励んでいた時代ですが、同時

に大桶を作る技術が完成した時代でもあります。室町時代には、酒は壷で仕込ま

れていました。壷では、せいぜい1〜2石の仕込みしか出来ませんから、各酒造

家の生産量は自然と制限されます。ところが木製の桶となるとは30石容ぐらいの

ものも可能となり、生産量も飛躍的に増大し、近代的手工業の基盤が確立するわ

けです。

 従って、17世紀以降になると、酒造家が記録した酒造技術に関する文書がみら

れるようになります。そのなかから目ぼしいものをあげてみましょう。寛文年間

(1661〜1673年)に京・大阪で酒造りの勉強をしてきた御主人の筆記録が新潟県

のる酒造家に保存されています。そのなかで興味をひかれるのは、みりん、ある

いはそれに類似した酒の造り方が幾通りも書いてあって、「酒できて辛口に侯ば

もろみへも入れ申し、また夏酒に用い供えばなおなおよく御座侯」と記されてい

ることです。

 みりんの原料には、焼酎が使われます。本格焼酎の製造技術が南九州に渡来した

のは、16世紀と考えられていますが、その後わずか100年程度でみりんを実用化

させた日本人の技術的な適応力は大したものです。

 それと、甘い酒を得るためにいかに努力しているかということです。夏酒とい辛い酒になっ

てしまいます。当時の人の嗜好が、いかに甘口酒に価値を認めていたかが想像さ

れます。しかし、そのためにみりんをもろみに添加していたというのは更に驚か

されます。日本人の合理的な考え方のあらわれでしょう。近頃、清酒原料にアル

コールや糖を使うのはニセモノだという議論が一部の人達によってなされていま

すが、酒の歴史や日本人の合理性を理解しないものではないでしょうか。

 

■寒造りの技術確立以来

     酒質は淡白化へ

 夏酒という言葉に対して、現在では清酒は寒造りといって真冬の寒冷な気候を

利用して造られます。もろみを低温発酵させることによってうま味を蓄積させる

この技術が完成されたのは、17世紀末の元禄年間といわれており、これ以降みり

んの添加という話は出なくなってきます。 養生訓(貝原益軒著)の刊行されたの

は、正徳3年(1713年)です。益軒の飲食物に対する考え方は、「凡ての食、淡

薄なる物を好むべし。肥濃・油フの物多く食ふべからず」でした。日本の料理の

特徴をよくあらわしていると思われます。この思想は、清酒の酒質にも影響を与え

ずにはおきませんでした。

 明和8年(1771年)に記録された「元禄以来酒造伝記録」が秋田県にある酒造

家に残されていますが、その中に「惣じて、酒は米を白くするに極りたり。白け

れば、酒にくせなし、くろければにがみ、しぶみ有り」とあります。米の精米のち

がいがどのように酒質に影響しているかは、比較的簡単に確かめることができま

す。50%も精米した米を原料とする吟醸酒の味は、なめらかで淡白、のどごしが

良いのが特徴です。

 同書のなかには、焼酎をとっておいて上槽前のもろみに入れると良いと書かれ

ていますが、これも酒を淡白にするのに役立ったと思われます。アルコールの添

加も、すでに長い歴史を持っているわけです。

灘酒が有名になったのは天保年間(1830〜1844年)ですが、そのきっかけには

宮水の発見とともに三日三晩水車でついた高度精米の技術があげられています。

 このように考えてみると、寒造りでうま味の蓄積が可能になって以来の酒質は

淡白化への歴史と考えてよいでしょう。この流れは、明治以降今日までつづいて

います。歴史を勉強するのは、将来への予見のためだといわれますか、清酒でも

同じことがいえるのではないでしょうか。

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