ウィスキー・ブランディ
歴史WHISKY | 保存・管理のポイントB |
原料WHISKY | 歴史BRANDY |
製造法WHISKY | 原料BRANDY |
分類WHISKY | 製造法BRANDY |
利き酒のポイントWHISKY | 分類BRANDY |
保存・管理のポイントW | 利き酒のポイントB |
飲み方WHISKY | 飲み方BOK |
密造者と収税吏の競合
ウイスキーの語源は、ケルト人のウスケボー(生命の水)であり、今日のウイ
スキーの原型といえるものは、
12世紀頃にアイルランドで造られていました。その後イングランドのへンリー
2世のアイルランド征服により、ウイスキーの製法がスコットランドに伝えられ、そこで大きく発展するとともに、アイリッ
シュウイスキーとスコッチウイスキーに分岐しました。
ウイスキーの発展に主導的な役割りを果たしたのはスコットランドでした。
18世紀のはじめスコットランドがイングランドに併合され、大英帝国になるとウイ
スキーのあり方が大きく変ぼうしはじめます。
スコットランドがイギリス人の圧政者によって踏みにじられ、ウイスキーに課
税されるようになると、スコットランドにおいては密輸や密造が一般化し密造者
と収税吏が競合するようになりました。しかし、歴史的にみると、この密造者と
収税吏の競合がスコッチウイスキーの発展に大きく寄与することになりました。
密造者は、ハイランドの山中深く隠れて密造することになり、麦芽税も払わな
いことから製造工程も簡単に麦芽だけを原料にし、蒸留も伝統的な蒸留器でゆっ
くり時間をかけて行ないました。このため、留出するウイスキーの品質は非常に
良く、正規の許可を受けて造られるものを圧倒するようになりました。このよう
な状況から、これによる国家的な損失を憂えたハイランドの大地主ゴードン公爵
の提言を入れて、
1823年政府は、蒸留器の許可基準を思い切って小さくし、生産量に比例して課税するとともに、麦芽使用に対しては税金の払戻しと密造者に対
する禁止的な罰金を課すことにしたため、密造も次第に下火になりました。
この新法による免許第
1号が、ジョージ・スミスGeoge Smithのグレンリベット
Glenlivetです。当時の方法で造られたモルト・ウイスキーは、やはりこの頃行われるようになったオーク樽での熟成や、麦芽乾燥時にピートの煙により燻香を付
けることと結びついてモルトウイスキーへ発展しました。
革命をもたらした
連続式蒸留機の発明
一方、
1831年にイーニアス・コフィーA・Coffeyにより改良された連続式蒸留機(パテントスチル)の導入はウイスキーの製造に革命をもたらしました。麦
芽のみを原料とした単式蒸留器(ポットスチル)による伝統的なモルトウイス
キーに対してこの方式では、麦やトウモロコシなどの穀類を原料とすることがで
き、またポットスチルに比べ、ウイスキーの大量生産が可能となりました。こ
の方式で造られたウイスキーをグレインウイスキーといいます。
大発展のきっかけは
ブレンドウイスキーの登場
更にウイスキーの大発展のきっかけとなったのは、
1850年代のプレンデッドウイスキーの登場です。モルトウイスキーの強い個性は、一部のファンにとっては
魅力ですが、大多数の人々にとっては強烈すぎました。この強い個性を穏やかな
グレインウイスキーで和らげるプレンデッドウイスキーの登場によって、ウイ
スキーは広く人々に受け入れられる風味となり、ウイスキーはスコットランドの
地酒から世界の酒へと大きく飛躍することになりました。
20世紀に入ると一転してスコッチウイスキーの業界は長い不況の時代にさらさ
れ、市場の奪い合いからモルトウイスキーとグレインウイスキーの間でウイス
キー論争が起こり、結局
1909年に王立委員会が、ウイスキー発展の歴史から「穀類の澱粉を麦芽で糖化、発酵させたものを蒸留して造られる蒸留酒(スピリッ
ツ)」がウイスキーだと裁定し、モルトウイスキーもグレインウイスキーもいず
れもウイスキーであると決着がつくことになりました。
なお、この裁定では熟成期間について全く触れられていませんでした。しかし、
それでは熟成期間の比較的短いグレインウイスキーに有利で、長い熟成が必要な
モルトウイスキーに不利になるということで、両者間のハンディキャップを取り
除く意味で、
1915年春に2年間の熟成必要期間を決め、更に同年秋には熟成必要期間を
3年間に延長しました。
日本のウイスキーの歩み
日本のウイスキー造りは、スコットランドのウイスキーを範として始まりました。
大正
12年(1923年)寿屋(現サントリー)の鳥井信治郎が京都郊外の山崎にウイスキー蒸留工場を建設したことから始まります。この時、技師として鳥井に
協力したのが、スコットランドに留学してウイスキー造りを学んだ竹鶴政孝(後
にニッカウヰスキーを設立)です。
当初、国産ウイスキーは苦戦の連続でしたが、転機をもたらしたのは第
2次大戦時に海軍の指定品となったことです。スコッチウイスキーになじんでいた士官
たちに、国産ウイスキーの品質の良さが認識されたことと、戦時中でもウイス
キーの生産が絶え間なく続けられ、貯蔵されていたウイスキーは戦後に持ち越さ
れてウイスキーの発展の大きな支えとなりました。また、戦後続いた酒不足も、
ウイスキーの発展に寄与しました。
その後、生活様式や食習慣の変化により、日本はアメリカに次ぐ世界第
2のウイスキー愛飲国となり、メーカー数も
30社程度にもなりました。スコッチ型のウイスキーを英国以外で成功させたジャパニーズウイスキーは、今や世界的なウイ
スキーになってきました。
なお、ウイスキーの消費拡大に「水割り」の普及は見逃せません。元来日本人
は欧米人に比べて酒に弱いといわれています。水割りは、ウイスキーを日本人に
飲み易い酒に変え、食後の酒から食前・食中にも楽しめるオールラウンドの酒へ
と変身させ、飲む機会を拡げました。
TOPへ戻るウイスキーの原料として最も重要なものは麦芽です。麦芽は主として大麦から
造られます。麦芽の役目は、清酒醸造の場合の麹と同様に大麦などの穀類に含ま
れている澱粉を糖化し、蛋白質をアミノ酸に分解することです。
その他、ウイスキーの原料として、とうもろこし(コーン)、小麦、ライ麦なと
が使われています。使用する原料は、ウイスキーの生産地によってそれぞれ特徴
がありますので、原料についての詳しい説明は分類の項で触れます。
糖化・発酵・蒸留工程
ウイスキーのタイプにより多少異なっていますが、原料組成と蒸留方式により、
ウイスキーの製造法は次の
2つに大別されます。
モルトウイスキー
malt whisky
製麦 大麦を水に浸漬し、発芽槽で発芽を行い麦芽を造ります。麦芽は火力で
乾燥させますが、スコッチタイプではピート(草炭)を使って燻煙香(スモー
キー・フレーバー)を付けます。
糖化 麦芽を破砕し、糖化槽で約4倍量の温水を加え、60〜65℃で糖化後濾過
して麦汁を得ます。その残ものに温水を加えて
75℃で糖化を続けて二番麦汁を取ります。
発酵 糖化された麦汁は、発酵タンクに送られ、酵母を添加して2〜3日間発
酵させます。その時の発酵温度は
20〜22℃で、アルコール分は約7%になります。蒸留 ポットスチル(単式蒸留器)を使い、通常2回蒸留します。第1回目の
蒸留で、アルコール分は
20〜25%となります。この粗留液を再留し、アルコール分を
65%程度にします。このものをニューポットといいます。
グレインウイスキー grain whisky
原料処理 原料のコーンとライ麦を破砕し、水と少量の麦芽を添加して蒸煮し
ます。蒸煮後更に
10〜30%程度の麦芽を加え糖化します。発酵 糖化したもろみを濾過して発酵槽に移し、酵母を加えて約3日間発酵さ
せます。発酵後のアルコール分は約
5〜6%になります。蒸留
パテントスチル(連続式蒸留機)で蒸留します。留出時のアルコール分は
93〜94%になります。
貯蔵・熟成工程
蒸留したてのウイスキーは、無色で香味が粗いので、ホワイトオークの樽に入
れて、空気のきれいな環境の中で静かに熟成させます。この間にニューポット中
の不快な成分が減少するとともに、樽からの香味成分の溶出、アルコールと水と
の分子どうしの会合等が起り香味はまるく、ふくよかになり色も付いてきます。
これを熟成といいます。熟成期間は最初の数年間は一般に長いほど良く、蒸留時
の個性が強いほど長期間の熟成期間を要します。熟成中、樽材を通して水、アル
コールなどが蒸散するので、ウイスキー量は減少し、
1年に2〜3%の欠減があるといわれています。この欠減のことを、ロマンティックな表現ではエンジェルズ
・シェア(天使の分け前)といいます。天使がその熟成中のウイスキーを飲んで
しまったというのです。モルトウイスキーは、含有成分が複雑ですから長い熟
成を要し、熟成の効果も大きく蒸留時とは見違えるような円熟味が加わります。
一方、グレインウイスキーは、比較的短い熟成期間で熟成効果が得られます。
ブレンド blend
モルトウイスキーどうしをブレンドする場合もありますが、スコットランドで
はモルトウイスキー
30〜40%、グレインウイスキー60〜70%程度の比率でブレンドされ、ブレンドウイスキー
blendedWhiskyとして商品化されます。このブレンドによりそれぞれの欠点が消え、香味はまるく軽やかになり、新しい長所が生
まれます。そのような意味で「調合は結婚」という言葉もあります。ブレンドは、
官能的経験に頼っていますが、長い経験から生まれるカンと研ぎ澄まされた感覚
による高度な技術です。特に日本人特有の繊細な感覚は、調和のとれたブレンド
を生みだしています。ブレンドの工程では、ウイスキーどうしのブレンドととも
に、アルコール濃度を調整するために純水が加えられ、アルコール分
37〜43%にし、タンク又は樽でしばらく貯蔵して味のなれるのを待って(これをマリッジと
いいます)、びん詰されます。
TOPへ戻る世界の代表的なウイスキーの生産地は、アイルランド、スコットランド、アメリ
カ、カナダ、日本などです、酒は文化に深いかかわりがありますので、各々の国
で独立して発展をしてきており、同じウイスキーと呼ばれても、それぞれの国に
よって違いがあります。
スコッチウイスキー
Scotch Whisky
日本のウイスキーが、スコットランドを範として始められたように、
17世紀以来世界のウイスキーの発展に主導的な役割を果たしてきました。
スコッチモルトウイスキーの特長は、麦芽をビートで薫煙するために、その煙
香(スモーキーフレーバー)がウイスキーの製品に移行すること、蒸留はポッ
トスチルで
2回すること、樽による貯蔵を最低3年以上行うよう義務付けられていることです。樽としては、シェリーの古樽が好まれます。
モルトウイスキーの力強い香りとしっかりしたコクは煙香によるところが大き
いのですが、最近、酒類全般に対する好みが軽快なものに移行しつつあり、煙香
を抑え気味にしているものが多くなりつつあります。
グレインウイスキーも最低
3年間の樽貯蔵が義務付けられています。プレンデッドウイスキーは、熟成年数やブレンド比率の違いにより、スタン
ダードウイスキーとプレミアムウイスキーの
2つに大別されますが、近年はイギリス国内では更に安価なチーパーウイスキーが伸びてきています。
アイリッシュウイスキー
Irish Whiskey
アイリッシュウイスキーのスペルには、
Whiskeyのように“e’’を入れております。アイルランドのウスケボの歴史は、スコットランド以上に長く、
12世紀にはすでに造られ、現在の世界にあるウイスキーの原型ともいうべきものです。アイ
リッシュウイスキーもスコッチウイスキーと同様に、密造の歴史を経て発展し
てきましたが、アイルランドは麦芽だけを原料とする製法ではなく、原料として
麦芽の外に未発芽の大麦、えん麦などを使用し、麦芽もピートによる燻香は付け
ません。
蒸留は単式蒸留器で行ないますが、蒸留器が非常に大型であること、蒸留を
3回線り返すことに特徴があります。
熟成は樫樽で行ない、最低
3年という規制があります。アイリッシュウイスキーは、煙香がなく、蒸留を
3回行うことから、柔らかな香りとまろやかなコクが特徴です。
なお、近年はグレインウイスキーとブレンドしたプレソデッドウイスキーが大
勢を占めており、従来のものよりソフトなタイプになっています。
アメリカンウイスキー
AmericanWhisky
アメリカのウイスキーは、初期にはヨーロッパ同様単式蒸留器で蒸留されて
ましたが、
1870年頃から経済的にも有利な連続式蒸留機に変わり、スコットランド、アイルランドとは大きく違う発展をしました。発展の中心になったのはケン
タッキー州のバーボン郡です。
アメリカのウイスキーは、法律上は
30種余の種類がありますが、現実にはストレートバーボンウイスキー(テネシーウイスキーを含む)とプレンデッドウイス
キーの
2種がほとんどです。ストレートバーボンウイスキーは、未発芽のコーンを主体の原料を約
12%の麦芽で糖化しますが、このとき仕込み水の一部に蒸留残液の一部を用いる(サワー
‘マッシュといいます)こと、糖化液は濾過せずにそのまま発酵させるのが特徴
です。
発酵終了後、連続式蒸留機でアルコール分
80%以下で留出させます。この留出液を内面を焼いたホワイトオークの新樽の中で、最低
2年間(実際にはもっと長い)熟成させます。このため、樽板から色、香りともに強い物質が溶けだし、世
界のウイスキーの中でも最も個性を持ったものとなり、特有の芳しい香味と濃色
が特徴的です。
テネシーウイスキーは、その造り方はバーボンウイスキーと同様ですが、テネ
シー州で造られ、蒸留液をさとうかえでを焼いてつくった炭をつめた塔の中に
ゆっくり通し、雑味を抜いてから樽熟成させるので、特にテネシーウイスキーの
名が許されています。
ストレートバーボンウイスキーとアメリカの市場を
2分しているのが、ブレンデッドウイスキーです。ブレンデッドウイスキーは、数本の蒸留塔を用いて精留
したアルコール分
95%以上のグレインスピリッツなどをブレンドしたもので、ストレートウイスキーが
20%以上含まれるものです。たとえば50%以上がストレートバーボンウイスキーであれば、そのタイプの名を付けてブレソデッドバーボン
ウイスキーと呼びます。それらの酒質は温和しい性格です。
なお、アメリカにはこの外にライウイスキー、小麦ウイスキー、コーンウイス
キー、スピリッツウイスキー、ライトウイスキーなどの規定があります。
カナデイアンウイスキー TOPへ戻る
Canadian Whisky
カナダでのウイスキー造りは
19世紀以降です。カナデアンウイスキーの製造法は、バーボンウイスキーにやや似ていますが、味がライトで香りもデリケートで
す。
ほとんどがブレンデッドウイスキーとして市場に出ていますが、カナダの場合
はアメリカのストレートウイスキーとほぼ同様な方法で造られたフレバリングウ
イスキーとグレンスピリッツに似たベースウイスキーのブレンドを行っておりま
す。
熟成は、ホワイトオークの樽で
3年以上貯蔵することが義務付けられています。カナデアンウイスキーは、フレバリングウイスキーのブレンド割合が少ないため、
他国のウイスキーに比べ風味が軽く、ソフトなタイプとなっています。
日本のウイスキー
Japanese Whisky
日本のウイスキーはスコッチタイプですが、ピートによる燻香は、スコッチウ
イスキーに比べて控え目で、樽に由来するアクセントが強く華やかです。水割り
等の飲み方をする日本人の嗜好を考慮するとともに、日本独特のウイスキーと
なっています。
ウイスキーの利き酒用グラスは、細長いチューリップ型で、
2本の線が刻まれております。下線までウイスキーを満たし、次いで上線まで水を加えほぼ倍量に
したものを希釈しないものと同様に利き酒するためです。利き酒はまず色および
澄明度を調べ、次いでグラスを回してから立ちのぼる香りを嗅ぎます。次いで口
に含んでその香味をきき、最後に口中に残った残味香を調べます。その他、香り
を特に調べるときは、グラスを空にして残香をきいたり、手の平にウイスキーを
垂らし、両手をすり今わせてから香りを調べることもあります。
外観
色調はバーボンウイスキーはやや赤味を帯びた暗褐色、スコッチウイスキーは
黄褐色で、日本のウイスキーより淡色です。アイリッシュウイスキーも黄褐色で、
カナデイアンウイスキーより淡色なのが一般的です。ウイスキーに水を加えた後
に濁ることがありますが、これはウイスキー中のアルコールに溶け易い成分が溶
解度の減少により濁りとなったもので 、何ら異常ではありません。
香り
モルト香は麦芽由来のもので、やや甘い匂いがします。グレインウイスキーの
香りは軽く、華やかですが、未熟成のものは青臭い感じがします。スコッチタイ
プ以外のものは、原料由来のコーン香、ライ麦香などがあります。燻香はビート
から由来するもので、特にスコッチウイスキーは強く感じられます。樽に由来す
る香りは、ウイスキーにとって重要な香りの一つです。スコッチウイスキーの樽
は、シェリー酒を貯蔵したものであり、バーボンウイスキーの場合は内面を焦が
したものであることから両者の違いははっきりでてきます。また、熟成したウ
イスキーには、樽材の成分から由来するバニラ系の匂いが付きます。
味
旨味はウイスキーの場合解りにくく、アルコールの甘味と調和した酸味とわず
かな苦味などがあります。熟成味は芳香、口中香、まるみなどを総合したものです。
甘辛はアルコールの甘味、樽材からの微量の糖分、アミノ酸類などによりますが、
ウイスキーによって甘く感じるものと、辛く感じるものがあります。軽い重いは
ウイスキーの特徴を示す重要なものです。一般にスコッチウイスキーでは、モルト
が多いと重くなります。アメリカンウイスキーでは、ライ麦比率が多い方が軽く
なります。軽すぎると平板になり、重すぎるとくどくなります。
ウイスキーはアルコール度数も高く、また蒸留してあるためにエキス分も少な
いため、醸造酒に比べると品質劣化はあまりみられない酒類です。
光、温度、時間等による影響はあまり受けませんから、酒販店頭においても他
の酒類ほど神経質になる必要はありません。しかし、品温を上げたり、直接日光
に当てますと濁りが生じたり退色したりします。
ウイスキーの飲み方としては、水割りが最もポピュラーです。本格焼酎のよう
に、水の代わりにお湯で割るお湯割りも最近増えてきました。水やお湯の代わり
に、ビールや牛乳などいろんなもので割ることもできます。ソーダ水を加えると
ハイボールです。カクテルとしては、ウイスキーサワーやマンハッタンが有名で
す。
しかし、ウイスキー特有の香味を楽しむためには、そのままストレートで飲み
ながらまろやかな味を味わって飲むことを奨めます。この時には、チェイサーと
いって水を飲んで口直しをします。氷にウイスキーを注ぐとオンザロックになり
ます。
ブランディー
TOPへ戻る生命の水、ブランデ
フランスでは現在でもブランデーのことをオー・ドー・ヴィー(
Eau−de−Vie、生命の水)と呼んでいますが、英語のブランデー(
Brandy)という言葉は、ドイツ語のプラントヴァイン(
Branntwein)、オランダ語のブランドヴイン(Brand−ewijn
)といずれもワインを燃やしたものから由来しています。12
世紀頃のイタリア、南仏、スペインの生命の水は、当然ワインを蒸留したものと思われますが、明確な形でブランデーが登場するのは、南仏アルマニャッ
クの
1411年、続いてアルザスなどです。 ブランデーの産地として有名なのは、コニャック地方とアルマニャック地方が知られていますが、コニャック地方のブ
ランデー造りはフランスの中でも遅いほうで、最初の企業がコニャックで操業を
はじめたのは
1613年とされています。アルマニャックに比べて歴史の新しいコニャックが、世界で最も有名なブラン
デー産地になった理由は、ワインを造っていた時代から輸出市場を持っていたた
めでしょう。コニャック地方は、ラ・ロシェルの良港を控え、ボルドーよりも掘
出ワイン産地としては早くから発達していましたが、気候が悪い年にはより厳し
く影響を受け、飲用ワインとしてはボルドーに押されたため、蒸留してブラン
デーを中心とするように変化したと考えられます。
コニャックの有名メーカーは、大部分が
18世紀前半に創業を開始していますが、ボルドーのワイン同様に輸出中心であったこともあって、コニャックメーカーも
ボルドーのワイン同様、外国や他のフランスの地方から集まってきたよそ者がほ
とんどです。
本格樟熟成は
19世紀から
コニャックの本格的樽熟成は、19世紀
前半から始まり、これとともにロンドンの上流階級の間にも浸透しました。
現在コニャック地方のぶどう栽培面積は、
9万ヘクタール程度で、昔に比べればはるかに小さくなっています。しかし、栽培技術の発達により、ワインの生産量
は、豊年作で
100万kLを超え、販売量の9割近くは世界中に広く輸出されています。
コニャックに次ぐ高い知名度を持つブランデーは、南フランスのガスコーニュ
地方のアルマニャックです。前記のとおり、アルマニャックの歴史はコニャック
よりも古く、丁度ウイスキーのアイルランドとスコットランドの関係に似て、知
名度、販売量ではコニャックに大きな差をつけられています。この原因は、歴史
の流れとともに、消費の中心地へのつながりの変化によるものといえるでしょう。
ブランデー用として望ましい原料ぶどうの品種は、糖度が余り高くなく酸度が
多い方がよく、これはワイン用として最適のぶどう品種という訳ではありません。
有名ブランデー産地では、病気に強く熟期が遅くて酸が低下し難い、豊富な品
種を選択して栽培しています。コニャックでは、サンテミリオン種(
St.Emilion)が主で、病気に弱いフォル・ブランシュ(
Folle blanche)は減少しています。アルマニャックでは、サンテミリオンとバコ・
22A(Baco−22A)の2品種が主に使われています。
醸造
コニャックの場合、原料ぶどうは据分
18〜19%になると収穫し、破砕、搾汁します。発酵は多くは自然発酵で、発酵後のアルコール度数は
7〜10%(平均8.5
%)となります。ワイン製造に欠かせない亜硫酸は、ブランデー用の自ワインには、留出スピリッツの味を拐なうため使用しません。
蒸留
発酵が終わったワインは、できるだけ早く蒸留します。コニャックとアルマ
ニャックでは蒸留方法が違います。コニャックの蒸留はシャラント型といわれ
る玉ねぎ型の特殊な銅製の単式蒸留器を使って
2回蒸留します。1回目は粗留といい、アルコール分
24〜30%程度の留液を得、これを再び蒸留(再留)して初留と後留を適当に除き、ブランデー原酒として良質な部分を集め(アルコール分
60
〜70%)、これをオーク樽に詰めて熟成させます。アルマニャックでは、ウイスキーの連続式蒸留機の原始的形のような蒸留器で
蒸留します。釜の上部に数段の棚を持つ塔が付いていて、加熱されたワインはこ
こで精留されて、冷却器に導かれます。この方式では
1回蒸留で、コニャックとほぼ同じアルコール波度の留出液が得られます。昔からの伝統的なアルマニャッ
クの蒸留器は、台車付きで醸造場を巡回できるようになっています。アルマ
ニャックでも最近は、コニャック式のシャラント型単式蒸留器を使うところも
でてきています。
樟熟成
コニャックの場合は、リムーザンまたはトロンセ産のオークを使用します。容
量は
300ゼ位でぶどう酒檜よりも厚く、胴回りが太くなっています。樽は2段に積んで熟成させます。
アルマニャックの熟成は、近くのモンレザンの森からとれるオーク樽を使用し
ます。樽の大きさは
400L程度とやや大きくなります。蒸留直後のブランデーは無色透明ですが、一年もすると黄色になり、年月の経
過とともに暗褐色になります。
ブレンド
同じように造ったブランデーも、ぶどうの品質、蒸留器、樽のくせ等で同一に
はなりません。そこで、一定の製品を得るためにブレンドします。ブレンドした
ものは大樽に入れてなじませ、加水、冷却、濾過してからびん話します。
コニャック
Cognac
フランス南部のコニャック市を中心としたシャラント地方のみで造られるブラ
ンデーをコニャックといいます。この呼称は
1909年に政令で定められ、その後地域を
6つに区分し、その区域内で造られ、他の区域のものを調合していないブランデーはコニャックの名称の他に区域名を呼称してもよいとされています。区域名
は、コニャック市を中心としてほぼ同心円状になっており、グランド・シャン
パーニュ、プチト・シャンパーニュ、ボルドリー、ファン・ボア、ボン・ボア、
ボア・オルデイネールの
6地域です。このうち最も良質なグランド・シャンパーニュ産
50%以上のブランデーに良質なプチト・シャンパーニュ産のものを調合したものは、フイン・シャンパーニュ
と呼称することができます。
アルマニャック
Armagnac
フランス南西部のアルマニャック地方で造られるもので、コニャック同様
3つの地域に分けられています。バー・アルマニャック、テナレーズ、オー・アルマ
ニャックの
3地域で、バー・アルマニャックが最も良質といわれています。バー・アルマニャックと呼称できるものは、全量この地域産のものをブレンドし
たブランデーです。オー・アルマニャックは主にブレンド用に使われ、市場にで
ることはほとんどありません。
フレンチブランデー
フランスでは、コニャックとアルマニャック以外でもブランデーは造られて
います。これらをフレンチブランデーと称し、ワインに不向きなものを原料とし
たり、長期間熟成しないものをびん話したりしています。
マール
Marc
ワイン用果汁を搾った粕に糖と水を加えて発酵・蒸留したもの或は赤ワインの
搾り粕を直接蒸留した粕取ブランデーです。このワイン副産物をフランスでは
マール、イタリアではグラッパ
Grappaと呼称しています。アップルブランデー
フランスのノルマンジー地方のリンゴ酒を蒸留したものをカルバドス(
Calvados
)と称し、高級なものは樽詰を数十年行います。キルシュヴァッサー
ドイツ、スイスで造られる桜桃酒を蒸留したものです。製品は主として無色で
す。
日本のブランデー
製法はコニャックとほぼ同様です。原料ぶどうは、甲州種やユニブラン(サン
テミリオン)種が望ましい性格を具えています。ブランデーは、多くの点でウイ
スキーと共通しており、日本人特有の繊細な感覚を生かすことができ、品質的に
優れたものとなっています。
コニャックの表示について
コニャックの表示は前記のとおり、一定の規格で造ったものに許されます。コ
ニャックでは、熟成年数の表示は特に行いません。これは異なった年数のものが
ブレンドされているからです。コニャックの貯蔵年数については法律的なものと
商習慣によるものとがあります。法律的にはX.
0、X.S.0.Pなどは最低4
年以上、Napoleon、Extraなどは最低6年以上となっています。なお、メーカーによっては次のような独特な方法で表示しています。しかし、これは各会社
なりのコンセプトで行っているもので、大きな幅もあります。
表示 推定年数。
☆☆☆ 3〜5年
V.S.O.P 10〜20年
NAPOLEON
30〜40年extra 40〜50年
Extra
という名で売られているクラスは、そのメーカー最高クラスだけに素晴らしい製品ですが、宣伝文に見られるような
60〜70年も熟成されていると考えない方がよいでしょう。もしそうであれば風味のバランスはもっと崩れているはず
です。
ブランデー用の利き酒グラスは、チューリップ型のブランデーグラスや、
ウイスキーの場合と同じ細長いチューリップ型のグラスを使います。
利き酒の手順も、ウイスキーと同様に行います。
色
ブランデーに色があるかどうかで判定規準が異なります。無色の場合は調和と
まるさが決め手です。褐色の場合は、樽の効果と熟成による芳香があるかないか
が判断の基準となります。
香り
香りの評点の比重は非常に大きくなります。グラスを静かに回して、香りを確
かめます。異常香の有無をチェックした後、やや強く香気を吸いこみ、樽材の良
否、熟成度合いなど判断します。次に少量を口に含んで口中香を確かめます。
味
味のまるみ、甘味を確かめるとともに、特に苦味についてよくチェックします。
総合判断
ブランデーは果実が原料ですから、独特の芳香を持っています。とくに熟成年
数の違いによって、歴然と品質に差がでます。また、樽材の種類、蒸留方法の違
いも微妙な差異を生じます。更にコニャック、アルマニャック、粕ブラン
デーなのか特徴をつかむことも大切なことです。
ブランデーもウイスキーと同様にアルコール度数が高く、エキス分が少ないた
め、清酒やワインなどの醸造酒ほど神経質になる必要はありません。ただ、ウイ
スキーと違って原料ぶどう品種、蒸留方法、熟成年数などの差異によって微妙に
香りに差がありますから、温度変化には注意して、直射日光の当たるところは避
けることが必要です。
飲み方B
ブランデーは食後くつろぎながら、芳醇な香りを楽しむのが昔からの飲み方で
す。ブランデーグラスは、ちょうど手の中に入るような形をしていますから、体
温で温めると一層香りが楽しめます。しかし、最近は飲み方も多様化し、従来ま
でのストレートー本槍から水割りやカクテルなど、好みに合わせてさまざまな飲
み方がされるようになり、食後の酒からオールラウンドの酒へ変わりつつありま
す。