連続式蒸留機を用いて蒸留した焼酎は焼酎甲類と呼ばれます。焼酎甲類が日本
で初めて造られたのは、明治
33年(西暦1900年)頃といわれています。高度な性能を有する連続式蒸留機は、約160年前(西暦1830年)イギリスで誕生しました。
以前から焼酎乙類、ウイスキー、ブランデーなどの蒸留酒に使用されている単式
蒸留機をポットスチルと呼ぶのに対し、連続式蒸留機はパテントスチルと呼ば
れています。
焼酎には、甲類と乙類があります。焼酎乙類は「甲」に対して「乙」というイ
メージがよくないということで、昭和46年から酒税法上の名称のほかに「本格焼
酎」の呼称が法的に認められました。同時に甲類乙類のいずれについても 〃ホワ
イトリカー” の呼称も認められました(酒税の保全及び酒類業組合等に関する
法律施行規則第11条の8)。現在市販されている焼酎乙類は、「本格焼酎」と称
しているので、ホワイトリカーは焼酎甲類の別名といってもよい現状です。
1.糖蜜
製糖工業の副産物です。粗糖を精製する時また氷砂糖をつくる時できる糖蜜で
す。糖化しなくても酵母により直接アルコール発酵可能です。
2
.ハイテスト糖蜜砂糖きびの搾汁を部分的に転化(酸を加え砂糖をぶどう糖と果糖に分解)し、
そのまま濃縮したもので、全糖分
70〜80%を含有します。3
.でんぷん質原料でんぷん質原料としては生甘藷、切干甘藷、キャッサバ(東南アジアおよび南
米で産するでんぷん原料用のいも)などの芋類、トウモロコシが主に使用されま
す。
4
.粗留アルコール発酵法でつくられるアルコールの原料は、昭和
20年頃まで甘藷が主体であり、亜流酸パルプ廃液も利用されましたが、次第に輸入産糖蜜におきかわり、昭和
40年頃には発酵アルコールの約
80%が糖蜜でつくられるようになりました。昭和42年以降の糖蜜高を背景に輸入ハイテスト糖類が経済的として活用されるようにな
りました。しかし、昭和
40年代後半よりアルコール蒸留廃液の公害対策が要求されるようになり、国外で糖類をアルコール発酵させ、蒸留した粗留アルコール
(アルコール度数約
88%)を輸入し国内で精留したアルコールが急増しました。昭和
63年度に生産された発酵アルコhルを原料別にみると、粗留アルコール79
.4%、糖蜜19.3%、甘藷0.3%、その他原料1.1%となっています。5
.特殊原料焼酎甲類は、純粋なアルコールと水のみから成ってますが、製品の多様化を図
るため蒸留方法の工夫などにより、アルコール以外に原料由来の香味成分をわず
かに含ませた製品も造られはじめました。このような香味付け用原料としては、大
麦、トウモロコシ、砕米、白ぬか、清酒粕、ナツメヤシ(デーツ)などが使われ
ています。製品の香味を増強する方法です。
糖蜜のような糖質原料はそのまま酵母によって発酵される糖分を含んでいるの
で、そのままあるいは適当な糖濃度に水で稀釈すれば使用できます。でんぷん質
原料はそのままでは発酵できないので、麹、アミロ菌酵素剤あるいは無機塩に
ょってでんぷんを糖分にかえてから発酵させる必要があります。粗留アルコール
を原料とする場合は、糖化工程も発酵工程も不要で、蒸留工程のみでアルコ←ル
以外の不純成分を分離して精製します。
1
.糖蜜からの製造法糖蜜に水を加え全糖分
30〜40タ古に稀釈後蒸煮して殺菌を行い冷水を加え、酵母が働きやすい糖濃度である全糖分
12〜20%に稀釈します。このうち約10%を酒母タンクにとり、純粋培養酵母を接種し培養後、残りの約
90%のもろみに添加します。もろみの発酵は
48〜72時間で終了します。発酵の終了したもろみは、酵母分離機を通し酵母を回収除去してから、蒸留機へ送り蒸留します。
2
。でんぷん質原料からの製造法糖化、発酵工程にはいろいろな製造法があります。
でんぷん質原料に水を加え蒸煮、殺菌および冷却後、約
20%を酒母用に、約10
%を液体麹用に、残りの約70%をもろみ用に使います。原料中のでんぷんを酵母がアルコール発酵可能な糖まで糖化する方法には、(
1)酵素剤を用いる酵素法(
2)黄麹菌、黒麹菌、くものすかび(アミロ菌)などのかびを利用する麹法、アミロ法、アミロ・麹法(
3)無機酸ででんぷんを加水分解する酸糖化法などがあります。
発酵歩合が高く、能率がよいため原料処理量の多い中規模以上の工場に適する
アミロ・麹法においては、蒸煮した甘藷と水を発酵槽に仕込み、
60℃に冷却し液体麹を加え、糖化しながら冷却し、
30℃前後でアミロ菌と酵母を培養したアミロ酒母を添加し、原料の糖化と発酵を併行して行う。発酵日数は
3〜4日。もろみのアルコール分が最高に達した時蒸留します。このように、糖化工程と発酵工程
とを併行して行う発酵型式を併行復発酵と呼びますも
3
.粗留アルコールからの製造法製糖現地で糖蜜を発酵させ、これを比較的簡単な連続式蒸留機でアルコール度
数約
88%の粗留アルコールにしたものを原料とします。発酵工程が不要で、高性能の連続式蒸留機でアルコール以外の不純成分を分離します
。
もろみの蒸留
アルコールを製造するため、もろみの蒸留は、もろみを連続的に供給しうる連
続式蒸留機で行う。もろみを連続的に蒸留して、アルコールと水以外の成分を完
全に分離する。これに対し、焼酎乙類、ウイスキー、ブランデーなどの製造に使
用される蒸留機は、もろみを一度に蒸留かんに入れ、直接又は間接に蒸気等で過
熱し、発生した蒸気を冷却機に導くもので単式蒸留機という。焼酎乙類は、単式
蒸留機で蒸留しアルコールと水以外の種々の香気成分を回収します。
連続式蒸留機には現在いろいろの型式の蒸留装置が考案されている。蒸留の途
中で留液に温水を加え、稀釈することによりアルデヒド、フーゼル油等の完全分
離を図るための抽出装置のあるなしによって大別されます。抽出方式のものに
はアロスパス式、スーパーアロスパス式があり、蒸留歩合を下げることなく、前
記不純物を除去できます。
−
TOPへ戻る焼酎甲類は、酒税法では、アルコール含有物を連続式蒸留機で蒸留したもので、
アルコール分
36度未満のものと定義されています。本格焼酎(焼酎乙類)のアルコール度数の上限値
45度以下と比べて、上限値に10度の差があります。10度も低く設定してあるのは、甲類の香味および外観上アルコール度数を高くするとスピ
リッツ類のウォッカと近似するためです。一方、本格焼酎は特有な香味を有し、そ
のような懸念がないためにアルコール度数の上限は高く設定されています。
市販の焼酎甲類のアルコール度数は
20度、25度、30度、35度ですが、25度の製品が最も多く飲用されています。
35度の製品は、各家庭で造る梅酒などのホームリカーに多く使われます。しかし、最近は低アルコールの
20度のもの、4〜8度の酎ハイ、リキュール等が急激に増加しています。
香味の多様化を目的に、焼酎甲類と乙類を混和した製品があります。このよう
な製品は「甲類・乙類混和」と表示されますが、乙類のブレンド割合が
5%以下のものは、甲類の表示だけで乙類混和を表示する必要はありません。また、焼酎
乙類、ウイスキーなどと同様に樫樽に貯蔵した製品も販売されています。
連続式蒸留機から製成されるアルコールの度数は、約
96度で不純物は含まれていません。原料アルコールと称し、全ての酒類の原料となります。焼酎甲類は、
原料アルコールを水で、稀釈して、アルコール度数を
36度未満にして造ります。製品にする前に調熟、ブレンド、濾過精製などの処理を行います。
焼酎甲類は、酒質変化が最も少ない酒です。しかし、直射日光を長く当てると
アルコールが酸化され刺激的な臭いがすることがあります。また、樫樽で貯蔵し
着色した製品では、退色することもあります。保存期間は、製品の品質にほとん
ど影響がありません。甲類・乙類混和焼酎の場合は、本格焼酎と同様の保存管理
をすべきです。
焼酎甲類は、純粋なアルコールと水以外の成分をほとんど含んでいません。香
りのききやすいブランデー型のグラスを使用し、製品のままと、アルコール度数
を
20度に割水したものをきき酒します。前者は主として”上立ち香〃 を、後者は味と”引き込み香”をききます。良質な
焼酎甲類は、アルコールの臭いや刺激臭がなく、ほのかな甘味を有しています。
ストレート、オンザロック、水割り、お湯割りなどで爽快な風味を楽しむ飲み
方のほかに、他の飲料とブレンドすることにより風味を生かしながら楽しむカク
テル的な飲み方もあります。
カクテル的な飲み方としては、昔から”梅割り”が有名ですが、酎ハイ、ビー
ル割り、番茶割り、ウーロン茶割り、ジュース割りなどがあります。
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果実の酒は、果物とか草根木皮などを
20度以上のアルコール飲料の中に浸して作る酒で、穀物とぶどう以外なら、家庭で作ることが許可されていますが、いま
から
30数年前まではあの梅酒さえ、酒税法上ではご法度でした。37年4月1日に梅酒が許可となったのを皮切りに現在に至っています。
ここでは、比較的ポピュラーな
20種類の果真の酒の作り方を紹介してみました。
果 実 の 酒
果 実 の 酒 材 料
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
梅 酒 青梅1kg、糖分400〜500g、あんず50g
青梅は傷のない粒のそろったものを使う。あんずを
入れると香りの高い梅酒ができる。最低3ヵ月以
上仕込んだ方がよい。
―――――――――――――――――――――――――――――――
レ モ ン 酒 レモン1kg、糖分200〜300g
レモンをタワシでよく洗い、黄色い皮をむき、白
いわたを取り、2つの輪切りにし、皮3個分と共に
入れる。皮は1週間、実は2ヵ月でだす。
―――――――――――――――――――――――――――――――
夏 み か ん 酒 夏みかん1kg、レモン3〜5個、糖分200g
夏みかんはお湯の中でよく洗い、皮をむく。皮は
1
個分だけ入れ、5日後に出す。熟成には2週間〜1
ヵ年要す。2ヵ月たったら布でこす。―――――――――――――――――――――――――――――――
イ チ ゴ 酒 イチゴ1也、レモン4〜5個、糖分200g
赤みの浸いイチゴを選び水洗いし、1粒ずつ乾い
た布で水分をとる。へタは漬ける時にとる。レモン
は実だけを輪切りにし入れる。熟成は3週間〜1ヵ
月要す。
―――――――――――――――――――――――――――――――
プ ラ ム 酒 プラム1kg、糖分200g
水洗いして1粒ずつ水気をふき取り、丸のまま漬
ける。熟成には3ヵ月を要す。実は1年で取り出す。
―――――――――――――――――――――――――――――――
び わ 酒 びわ1kg、レモン5個、糖分200〜300g
びわは黄熟したものを皮をむかずに丸のまま使う。
香気が泣出するのに3ヵ月はかかる。2ヵ月後に
レモンを、1年後にびわをとり出す。
―――――――――――――――――――――――――――――――
アメリカンチェリー酒 アメリカンチェリ1kg、レモン4個、糖分200g
チェリーはよく水洗いし、水気を取る。熟成には2
ヵ月要す。2ヵ月たったら布でこす。
―――――――――――――――――――――――――――――――
水 蜜 桃 酒 水蜜桃1kg、レモン3〜5個、糖分200g
水蜜桃は表面のケバをよくふき取り、丸ごと漬ける。
熟成には3ヵ月以上要す。レモンは2ヵ月、蜜
桃は6ヵ月で引き上げる。
―――――――――――――――――――――――――――――――
グレープフルーツ酒 グレープフルーツ1kg、レモン2〜5個、糖分100〜150g
グレープフルーツは皮をむき、2つに切って入れる。
皮は1個分だけ入れ、1週間でとり出す。2ヵ月で材料
をだし、絞った汁は別にして飲んだ方がよい。
―――――――――――――――――――――――――――――――
パ イ ナ ッ プ ル 酒 パイナップル800g、レモン2〜5個、糖分100〜200g
パインは皮をむき、タテに8等分くらいに切る。実と
少量の皮を入れて、2ヵ月たったら中身を取り出す。
1
度布でこして保存するとよい。―――――――――――――――――――――――――――――――
バ ナ ナ 酒 バナナ1kg、レモン5個、糖分100g
バナナは皮をむき、適当な大きさに切って入れる。3
ヵ月で中身をとり出す。
―――――――――――――――――――――――――――――――
ラ ズ ベ リ ー 酒 ラズベリー500g、糖分200〜300g
赤く熟したラズベリーの実
を水洗いし、水気をよく取って入れる。熟成には3ヵ
月以上要す。中身は半年たったらとり出す。
―――――――――――――――――――――――――――――――
こ け も も 酒 こけもも800g、糖分100〜200g
丸ごと漬ける。カリンやボケ500gをミックスすると
風味が増す。熟成には1年要す。材料は入れたままでよい。
―――――――――――――――――――――――――――――――
カ リ ン 酒 カリン1kg、糖分200g
カリンはタワシで良く洗う。その後表面にミツが出て、
香りがよくなるので、皮ごと輪切りにし漬ける。実は半
年で出す。
―――――――――――――――――――――――――――――――
干 し あ ん ず 酒 干しあんず300g、杏仁50g、レモン5個、糖分200g
干しあんずは種を取り除いてあるので杏仁を忘れずに加アンズ
える。レモンは2ヵ月でとり出すが、干しあんずはそ
のままでよい。
―――――――――――――――――――――――――――――――
コ ー ヒ ー 酒 コーヒー豆80〜100g、糖分200g
コーヒー豆は好みのものをそのまま入れ、3週間くらい
で香り、味ともに提出して飲めるようになる。苦味が
気になる人はこの時に豆をとり出す。
―――――――――――――――――――――――――――――――
し ょ う が 酒 ひねしょうが100g、レモン4〜5個、蜂蜜Hカップ
しょうがはよく洗い、皮をつけたまま、薄く切って入れ
る。2ヵ月で材料をとり出す
―――――――――――――――――――――――――――――――
に ん じ ん 酒 にんじん500〜700g、ひねしょうが60g、甘草30g
にんじんは皮をむき適当な大きさに切り、しょうがは
皮つきのまま薄く切って入れる。甘草も適当な
大きさで入れる。熟成は3ヵ月を要す。
―――――――――――――――――――――――――――――――
本格焼酎は、でんぷん質原料あるいは糖質原料を発酵させ蒸留した蒸留酒です
c麦焼酎、いも焼酎など原料により、多種類の焼酎があります。酒税法上、アル
コール分
45度以下、エキス分2度未満で、原料として発芽穀類、果実類、黒糖を使用しないのでウイスキー、ブランデー、ラムと区別されます。さらに蒸留の際発
生するアルコールを含む蒸気で香味付与のための抽出操作を行わない点でジンと、
蒸留液をしらかば炭でろ過しない点でウォッカと区別されます。
琉球列島は九州南端から台湾にかけて連なる南西諸島のうち、トカラ諸島、奄
美群島、沖縄本島、宮古群島、八重群島からなりたっている。琉球において蒸留
酒である焼酎がつくられるようになったのは、琉球史年表の記録などから
14世糸己の半ば頃(
1370年)からではなかろうかと思われる。15世紀の初頭(1404年)シャム船がはじめて交易の目的で琉球に来ており、ラオロンという酒もその頃か
ら入って釆たものと推察されます。
1477
年、沖縄本島で焼酎の存在が確認されています。焼酎は、東南アジア、特にシャム(タイ国)から沖縄に伝来したといわれています。沖縄から奄美大島諸
島を経て
16世紀初めに鹿児島に上陸し、16世紀末には熊本県の人吉(球磨)地方、宮崎県南部に伝わり広まりました。
わが国で焼酎という名の文字のはじめ
が、いつの頃かはっきりしませんでした。ところが、今から
435年前の永録2年(1559
年)ちょうど桶狭間合戦の前年、鹿児島県大口市の郡山八幡神社の社殿の棟木札に
2人の宮大工が書いた落書が近年発見されました。それは「永録2年8月11
日、其時座主は大キナこすでをぢゃりて一度もしょうちゅうを下されず侯何共めいわくな事哉(施工主がちけん坊で、焼酎をふるまってくれなかった)」とい
う、不満をぶちまけたいたずら書きです。焼酎という文字が使われていました。こ
れがなんとわが国で焼酎の字が現われる最初のものとされています。当時すでに
焼酎が薩摩に普及していたことや、甘藷伝来の
50年前ですから、焼酎は芋焼酎ではなく米焼酎だったことが推察されます。
甘藷焼酎;甘藷(蕃藷、唐芋、薩摩芋)が中国南部から沖縄を経て鹿児島へ渡っ
たのは
17世紀に入ってからですから、甘藷焼酎が造られるようになったのは17世紀中頃以後です。
16世紀初めに鹿児島に焼酎が上陸した当時の原料は、米、ひえ、あわ、きびなどの穀類であったと考えられます。
壱岐島の麦焼酎;麦焼酎で有名な壱岐で、焼酎が造られ初めたのは、江戸時代
末期(
19世紀初め)であるとされています。壱岐は米作の豊かな島で、元来は清酒が造られていましたが、幕府の参勤交替制が敷かれてから藩の財政が逼迫し、
米の供出が厳しくなったため、現在では麦焼酎が島の主産品となっています。
伊豆諸島の甘藷焼酎;伊豆諸島は甘藷焼酎の産地ですが、江戸時代末期(
19世紀中頃)八丈島に流された鹿児島の貿易商、丹宗庄右衛門が八丈島の救荒作物と
して甘藷の栽培を普及させ、さらに故郷の鹿児島から焼酎の製造設備一式を取り
よせて、甘藷焼酎の製造法を島民に伝授したのが始まりです。
粕取り焼酎;粕取り焼酎は、九州の清酒生産地である福岡で
17世紀頃から造られていたと思われます。
本格焼酎の原料は麹原料(一次仕込み原料)と主原料(二次仕込み原料)に分
けられ、主原料によって焼酎の種類が決まります。主原料としては、各製造場の
地域で収穫される農産物が使用されるため、主原料に基づく焼酎の風味特徴が現
われます。
(
1)麹原料麹原料には米が使われますが、最近は香味の多様化を目的に麦も使用されます。
@ 米は、麦焼酎以外の焼酎の麹米として、米焼酎の掛米(主原料)として用
いられます。焼酎用として用いられる米は、他用途米の内地破砕精米が主ですが、
この他にも丸米、砕米など、新米から古々米まで粒度、形状の異なる米が用い
られます。
沖縄の泡盛の原料には、現在タイ国産の砕米が使用されています。今から約
500
年前に泡盛の醸造法の原型がタイから沖縄に渡来したときに、原料もタイ国から取りよせて泡盛造りが始められましたその時以来の因縁です。
A 麦焼酎の原料としては、大麦が使れ、国内で生産される内麦と外国から
輸入される外麦に区別されます。外麦は最近まで、オーストラリア産の二条大麦
が使用されていましたが、現在では農業政策上、内麦のみが焼酎原料として使わ
れています。
製品の品質向上のために、原料の品質が問題であり、原料からくる特異臭を除
くには精白が必要です。現在、焼酎に使用される大麦の精麦歩合は、
60〜65%で、65
%精麦の使用が最も多い。大麦は米に比べて栄養分が多いため、麹の温度が上二り過ぎる傾向があり、製麹管理がむずかしいです。
(
2)主原料主原料には米、麦などの穀類、甘藷や馬鈴薯(じゃがいも)のような芋類、清
酒の副産物である白糠や酒粕、票糖のような糖質原料、木の実、その他の原料な
どが使用されています。最近、焼酎の多様化がすすみ、主原料はニンジン、トマ
ト、ホウレン草、里いも、栗ごま、かぼちゃなど
50種類以上です。果糖は、奄美大島諸島のみ麹と併用して使用されています。
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穀類、いも類などのでんぷん質原料から焼酎を造る場合は、まず原料中のでん
ぷんを麹の糖化酵素の作用で糖分に変えます。次いで糖分を焼酎酵母の作用でア
ルコールに変えます。すなわち、糖化と発酵の
2つの工程が必要で、糖化を麹が、発酵を酵母が分担しています。
@ 微生物
麹は、もろみの防腐に必要な酸を多く生成する麹菌を使用しています。沖縄の
泡盛には黒麹菌を、九州をはじめとする他府県では白麹菌を使用しています。最
近は、風味の多様化の面から清酒用の黄麹菌が、一部で使用されています。
酵母は、焼酎酵母が使用されています。
A 原料処理
麹原料および主原料の洗浄、浸潰、水切り、蒸し、冷却が行われ、麹原料は製
麹工程へ、主原料は
2次もろみ仕込工程へと運ばれます。B 製麹
冷却した蒸し米(または大麦)と麹菌を混ぜ合わ
34〜38℃の温度で2日間かけて造ります。焼酎麹は原料をもろみで 分解するのに必要な酵素のほかに、もろ
みの腐造防止に必要な酸(クエソ酸)を 生産します。
C
1次もろみ(酒母)麹は、全て
1次もろみに使います。麹 に水と焼酎酵母を加えて25〜30℃で7日間かけて、発酵に必要な酵母を培養しま す。
D
2次もろみ(本もろみ)1次もろみに主原料および水を加え、 25〜32℃で発酵させます。期間は、いも
類、果糖、酒粕が主原料の場合は
8〜10 日間、穀類の場合、米、麦製では13日前後です。麹による糖化、酵母による発酵 が、清酒と同様併行して同時に行われて
います。このような発酵形式を並行複発酵と呼んでいます。
E 蒸留
いろいろな形の蒸留機が使われていま すが、単式蒸留機です。常圧(大気圧)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
本 格 焼 酎 の 熟 成
熟成段階 期 期間 熟成変化
初期熟成 3カ月〜6カ月 ガス臭成分の揮散、刺激臭味の減少
中期熟成 6カ月〜3年 ヵルポニル化合物の重・縮合、酸化的
変化、丸味の増加
古酒化期 3 年 以 上 エステル化、成分の漫縮、丸味の増加
、 固有の香味形成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
で加熱、蒸留されるのが普通ですが、最近は風味を柔らげる目的で減圧蒸留法
(40〜60℃で沸騰)も行われます。減圧蒸留では、香味が軽く非常にマイルドな
焼酎になります。
F 濾過
蒸留直後の焼酎は、原料中の脂肪分などのために白く濁っています。貯蔵中に
脂肪分が分解して油臭といういやな臭いを発生します。そこで、焼酎を冷却し、
濾過綿などの層を通して白濁物質を取り除き、透明にします。
G 熟成
表に示すように
3段階に分けて考えられ、古酒と称する焼酎は、3年以上熟成されたものとされています。熟成に使う容器は、伝統的には素焼きのカメでした
が、現在では大型のタンクが主に使われています。素焼きのカメで焼酎を熟成さ
せると古酒に早く成るといわれていますが、カメ肌から焼酎が揮散するために
減っていく欠点もあります。
H 割水・精製・びん詰
原酒で熟成させているので、目的のアルコール濃度に割水します。原酒を割水
すると再び不溶物が生じますから、仕上げ濾過によって精製後、びん話します。
キャップ、ラベルを施してから出荷します。
分類 TOPへ戻る
本格焼酎は、わが国の南端に主産地がかたより、それぞれの地域で収穫される
農産物を原料に、各地域に残されている伝統的な製造法で造られています。その
風味は非常にバラエティに富み、ローカルカラーが豊かです。
原料の種類による風味の多様性のほかに、麹菌・酵母などの微生物の種類、単
式蒸留機の種類と蒸留方法、製品の精製方法および熟成方法など製法上の相違に
よって香味が多様化します。このため、酒類の中でも最も香味の種類が豊かな酒
です。
(
1)特殊な原料による焼酎 ‘従来、焼酎の原料には使われたことのなかった原料で造った珍しい焼酎が各地
に散見されます。いずれの焼酎も製造量は少なく、多様化製品として珍しがられ
ています。
馬鈴薯焼酎(北海道、長崎県、宮崎
県)
かぼちゃ焼酎(北毎道)
長いも焼酎(青森県)
里いも焼酎(八丈島)
ごま焼酎(福岡県)
小豆焼酎(福岡県)
にんじん焼酎(福岡県)
菱焼酎(佐賀県)
栗焼酎(愛媛県、宮崎県)
稗廃酎(熊本県、宮崎県)
粟虎酎(熊本県、宮崎県)
黍舵酎(熊本県、宮崎県
)はと麦焼酎(大分県)
などがある。今後ますます増加するもの
と予想される。
(
2)新しいタイプの焼酎焼酎の酒質は、蒸留方法、精製方法、熟成方法などによって大きく変化します。
原料による焼酎の多様化のほかに、製造法による多様化がますます盛んになると
考えられます。現在まで蒸留および精製工程では、淡麗な酒質を目的とした方法
がとられてきましたが、伝統的な風味の濃厚なタイプの焼酎を待ち望んでいる消
費者も多いと考えられます。
(
3)新しいタイプのリキュール本格焼酎の酒類と主な産地
種 類
主 な 産 地米 鮨 酎
熊本県泡 盛
沖縄県け 藷 鮨 酎
鹿児島県、宮崎県南部、東京都八丈島穀類焼尉
宮崎県、福岡県、壱岐島、大分県、信州白 糖 療 酎
北九州、四国崇 析 舵 酎
奄美大島酒 粕 焼 酎
全 国清 酒 焼 酎
北九州、広島県その他の焼欝
北海道、九州、四国※
1.麦、トーモロコシ、ソノ_ ヒエ、アワ等を主原料とし、主原料名で例えば麦焼酎などと呼称する。
※
2.馬鈴薯焼酎やくり焼酎などがある。平成になってから、焼酎、果実を原材
料にしたリキュールが販売されています。低アルコールであり、果実の香気成分、
色素を利用したリキュールです。醸造試験所が開発したリキュールは、焼酎に青
梅、砂糖及び赤シソの葉を加えることにより特徴のある香味、色を有するリ
キュールであり市販されています。
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きき酒は、品質を判定するのに有効な手段です。きき酒は、原料の選別、発酵
技術、蒸留方法、貯蔵・熟成、調合等焼酎の製造工程すべてに有効です。
(
1)判断基準@ 外観
販売容器に入れた状態のままで、くもり、にごり、沈殿、ごみなどがないこと。
封かん紙、扁張り、胴張りなどの位置が正しく、ゆがみ、よごれなどがないこと。
くもり、にごり、異物などは苦情の最大要因となり、レッテルの欠陥は内容に対
する魅力を減退させるから、市販焼酎の判定基準としては重要度をおいて考えな
ければなりなせん。
A 匂い
濾過臭、かび臭、炭臭、酸臭、油臭、腐敗臭などの異臭、不快臭がないこと。
B 味
口あたりが軟かく、刺激味がないこと。
(2)1きき酒の上達法
@ よい焼酎をたくさんきき酒して覚える。
A あらさがし、欠点を覚える。
B 色、香、味に分けて、その酒の特色を、きき酒用語と一緒に記憶する。
C 酒に対する興味をもつ。多くの酒類をきき酒する。焼酎だけでは上達が遅
れる。
頭の中にモノサシを作る。味の濃さのモノサシ、味のキレイサのモノサシ
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
色浮遊物、異物、にごり、着色外観・
香味共通 芋不良、炉過すぎ、炉過不足、麹不良、異臭味、古酒様、調和、
不調和、若い
味 辛い、渋味、苦味、酸味、古酒味、雑味、あらい、重い、刺激味、
うすい、軽い、丸い、旨味、きれい、甘残る、異味、濃い
香 ガス臭、初留臭、油臭、こげ臭、未だれ臭、酸臭、芋臭、炉過綿
臭、紙臭、ゴム臭、酪酸臭、崇班臭、アルコール臭、やに臭、木
臭、異臭、かび臭、エステル臭、糖臭、麹臭、炭臭、容器臭、腐
敗臭、醒臭、古酒臭、ダイアセチル臭
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
。
(
3)きき酒の方法a きき酒の条件
@ 試料温度
一般の舌の感覚は
15〜30℃で鋭敏に働くから、通常は20℃を標準とする。また、消費者が飲む状態に割水してから(温めて)きき酒する
0比較する全ての試料温度は、同一でなければならない。
A 試料の量
療酎の量によって、味嗅覚が影響されるので、比較する全ての量を等しくする
ことが大切であり、一つの試料を多人数
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蒸留酒の歴史
TOPへ戻る文明の発祥地であるメソポタミアで紀元前
3,000年頃にすでに蒸留器の原型が存在したといわれますが、蒸留器がお酒のために使われたのは、中国の元時代(
13世紀頃)とされています
。世界の蒸留酒の発祥地は中国の雲南地方とされ、さらにインドシナ半島を経て南洋諸島、特に琉球(現在の沖縄)に伝播し
たのが、わが国の焼酎の始まりであると言い伝えられています。
できき酒する時には、試料の補給に注意する。
B アルコール度数
焼酎はアルコール度数の濃淡があるか ら、一定のアルコール度数
20%あるいは25
%になるように割水してきき酒する。 アルコール濃度が異なる場合には、アルコール濃度の低い方から順に並べてきき酒する。
C 容器
容器はガラス製コップを使用し、
7割程度入れる。色をかくす必要があるときは、褐色または青紫色の色つきグラスを用いる。
D きき酒の時刻
早朝がよいという通念は誤りで、食事の直前直後を避けた昼間がよい。
E 予備知識
きき酒の判断には、あらかじめ与えられた予備知識が大きく影響するから、必
要以外の知識をきき酒する人に与えないように注意する。
F 喫煙
きき酒を行う部屋では喫煙を禁ずる。きき酒前、きき酒中はタバコをすっては
いけない。
b きき酒の手順
@ きき酒する人は香水を使用しないこと。 ポマード、チック、ベーラム、
ローションなどは匂いの弱いものを用いる。女子は口紅を拭きとる。
A きき酒の
30分前およびきき酒中は禁煙する。B きき酒する人は、きき酒の前に香料を用いてない洗剤で手を洗う。
C きき酒する人は、きき酒の前に口をすすぐ。
D きき酒中は無言であること。
E 試料を提出されたならば、最初に沈殿、にごり、異物の有無を確かめ、色
調を判断する。
F 容器を軽くゆり動かして流動性を検し、容器の壁を流れおちる状態から比
重、粘度などを推定する。
G 匂いを嗅ぐ。はげしく小きざみに嗅ぐことは有効である。また、多数の試
料を同時に判断するときは、すべての匂ようにすると判断の再現怯がよい。
H 口中に試料を約
4mL含み、試料が舌のまわりにまんべんなくゆきわたるようにまわして味覚を判断する。その間、口から息を出してふくみ香(口中香)を
検する。
R
5〜10秒後に試料を飲み込み(または吐き出し)、あと味を検する。結果は、短評・特徴を記録する。
J ただちに判断を記入する。
疲労したら休憩する。番茶、塩水でうがいをする。
本格焼酎は、蒸留酒ですので清酒、ビール、ワインなどの醸造酒と比べると、
保存・販売中の品質変化は少ない。びん詰めされた状態で長期間おいても、酒質
の熟成は殆んどありません。入荷後はできるだけ早く販売するなり、入荷の古い
ものから先に販売するなり、あまり古くならないように在庫管理が必要です。
直射日光に長期間さらして陳列すると、成分の酸化、化学変化などが起り、酒質
が変化し劣化します。透明なびんは紫外線を通しやすく、成分が変化します。品
質管理の点では、温度よりも光線に最も注意を払う必要があります。
気温の高い所に長く放置すると、成分の化学変化が起り、酒質が変化し本格焼
酎の香味をそこなうことがあります。一方、極端な冷所に置くと白く濁ったり、
沈殿の生じることがあります。これは炊酎中の脂肪分の溶解度が落ちて生じる現
象ですので、そのまま飲んでも問題はありませんが、商品価値が低下します。白
色沈殿が生じた場合は、冷所から常温の所に置きかえて少々振り混ぜると沈殿が
とけて透明な製品に戻ります。
本格焼酎の飲み方2
本格焼酎の原料の種類は多く、製造法は多様化しています。香り・味を楽しみ
ながら飲みましょう。ストレhト、オンザロック、水割り、お湯割りなどのほか
に、他の飲料とブレンドすることにより風味を生かしながら楽しむカクテル的な
飲み方もあります。
爛酒;焼酎の本場九州では最も普通の飲み方です。香りと味の調和がよくとれ
て、焼酎のようにその個性を楽しむ酒には適しています。球磨地方では正式には
25
度の焼酎をそのままお爛して飲む習慣があり、鹿児島県および宮崎県ではお湯割りして
17〜18%の度数で飲んでいます。水割りとオンザロック;都会、沖縄県、奄美大島では水割り・オンザロックで飲
むことが多いようです。
酎ハイ:焼酎甲類がこの飲み方で消費を伸ばしています。本格焼酎でもこの飲
み方が試みられています。ソ
ーダで割るばかりでなく、ジュース割り、ビール割り、烏龍茶割りなどがあります。
昭和
61年目本酒造組合中央会は、本格焼酎製品の表示用語に一定の基準を作成公正取引委員会から承認されました。これを「公正競争規約」といいます。こ
の規約によって、製品に米焼酎、麦焼酎、いも焼酎など使用原料の表示(冠表示)
をする場合の守るべき基準が決められています。
冠表示できる本格焼酎は、その原料が
@ 使用原料の
50%以上であること。A 使用原料中最も多い原料であること。
B @Aに該当しない場合は、冠表示
した原料を何%使用したかを併記する。ことが決められています。
また、次.に掲げる表示が禁止されています。
(
1)焼酎乙類でないものについて焼酎乙類であるかのように誤認されるおそれがある表示
(
2)客観的事実に基づく根拠がなく、「最高」、「代表」、「第一」等世界における最上級を意味する用語の表示
(
3)成分、製法、品質、原材料等について実際のもの又は自己と競争関係にある他の事業者に係るものよりも優良であると誤認されるおそれがある表示
(
4)産地について誤認されるおそれがある表示(
5)貯蔵年数について誤認されるおそれがある表示(
6)伝統、歴史、製造技術、生産技術、生産設備、販売量、販売比率その他事業者の実態について、実際のもの又は自己と競争関係にある他の事業者に係るもの
よりも著しく優位にあるかのように誤認されるおそれがある表示
(
7)賞でないものについて賞であるかのように誤認されるおそれがある表示(
8)自己の取扱う他の商品又は自己の他の事業について受けた賞、推奨等を当該商品について受けたものであるかのように誤認されるおそれがある表示
(
9)他の事業者またはその製品を中傷し、ひぼうし又はこれらの信用をき損するような表示。
(10) 他の酒類と誤認されるおそれがある表示
(11) 官公庁御用達又はこれらに類する表示
(12) 客観的事実に基づく根拠なしに焼酎乙類が医薬上の効能又は効果があるかのように誤認されるおそれがある表示
(13) 上記に掲げるもののほかく 自己の製造し販売する焼酎乙類の内容又は取引条
件について、実際のもの又は自己と競争関係にある他の事業者に係るものよりも
著しく優良又は有利であるかのように誤認されるおそれがある表示
未成年老の飲酒防止に関する表示基準
未成年老の飲酒は法律で禁止されています。
酒類の自動販売機に対する表示は、「午後11時から翌日午前5時まで販売を停止
している」旨を表示することが決められています。自動販売機の全面の見やすい
所に、夜間でも判読できるよう明瞭に表示します。